看護研究の目的の書き方|背景・研究の問い・目標との違い、「明らかにする」で終わる型と例文、計画書で差し戻される目的の直し方
テーマは決まった。けれど計画書の「研究目的」の欄に何を書けばいいかが分からない。「転倒を減らすため」と書いたら、指導者から「それは研究の目的ではない」と戻された。院内研究で最初に差し戻されやすいのが、この目的の欄です。
この記事では、看護研究の目的を1文で書くための型と、研究の種類ごとの例文、差し戻されやすいパターンの直し方を説明します。テーマの決め方から知りたい方は、看護研究テーマの決め方を先にご覧ください。
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看護研究の目的とは|この研究で「何を明らかにするか」
研究目的は、その研究で何を明らかにするのかを書いたものです。計画書の中で、方法・結果・考察はすべて目的に合わせて組み立てるため、目的があいまいなままだと、何を調べればよいか、どう分析すればよいかが決まりません。
研究目的は、研究が終わったときに「明らかになった/ならなかった」と答えられる形で書きます。「転倒を減らす」は研究が終わっても答えが出ないため、研究の目的としては書けません。
背景・研究の問い・看護目標との違い
目的の欄で迷うのは、似た言葉が計画書の中にいくつも出てくるためです。
| 言葉 | 書くこと | 例 |
|---|---|---|
| 背景 | なぜこの研究が必要か(現場の問題、先行研究で分かっていないこと) | 夜勤帯の転倒が日勤帯より多い。予防策の実施状況を調べた報告は少ない |
| 研究の問い | 研究で答えたい問いを疑問文で書いたもの | 夜勤帯の転倒予防策は、どの程度実施されているのか |
| 研究目的 | 研究の問いを「〜を明らかにする」の形で書いたもの | 夜勤帯の転倒予防策の実施状況を明らかにする |
| 研究の意義 | 結果が分かると、看護にどう役立つか | 実施されにくい予防策と、その理由に応じた対策を検討できる |
| 看護目標 | 患者がどうなることを目指すか(看護計画の言葉) | 入院中に転倒せずに過ごせる |
「転倒を減らす」「患者の不安を軽くする」は、看護目標や研究の意義に入る言葉です。研究目的に書くと、研究が終わっても答えが出ない目的になります。看護目標の書き方は看護目標の書き方で解説しています。
研究目的を1文で書く型
研究目的は、次の型に当てはめると1文で書けます。
〔対象〕における〔知りたいこと〕を明らかにする。
「知りたいこと」は、研究の種類によって次のどれかになります。
- 実態:〜の実施状況、〜の割合、〜の現状
- 関係:〜と〜との関連
- 違い・効果:〜の前後での〜の変化、〜群と〜群の違い
- 経験・意味:〜が〜をどのように経験しているか、〜の思い
- 看護の振り返り:〜への看護を振り返り、有効だった関わりを明らかにする
文末は「明らかにする」「検討する」「記述する」のどれかにそろえます。「調査する」「実施する」は方法を書いた言葉なので、目的の文末には使いません。
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研究の種類別|研究目的の例文
実態を知りたい研究(質問紙調査など)
A病院の内科病棟に勤務する看護師における、夜勤帯の転倒予防策の実施状況を明らかにする。
関係を知りたい研究
病棟看護師の夜勤回数と、転倒予防策の実施頻度との関連を明らかにする。
取り組みの前後を比べる研究
入院時の転倒リスク評価の手順を見直す前後で、評価の実施率がどう変わったかを明らかにする。
経験や思いを知りたい研究(インタビューなど)
夜勤帯に転倒した患者を発見した看護師が、その後の看護をどのように経験しているかを明らかにする。
1事例の看護を振り返る研究(事例研究)
退院を拒否していた高齢患者への関わりを振り返り、退院への思いが変化したきっかけとなった看護を明らかにする。
事例研究の構成は看護のケーススタディの書き方にまとめています。
目的が決まると、研究デザインもおおよそ決まります。実態や関係を知りたいなら質問紙調査などの量的研究、経験や思いを知りたいならインタビューなどの質的研究です。デザインの選び方は看護研究のデザインの種類で解説しています。
計画書で差し戻される目的のパターンと直し方
結果が先に書いてある
- 差し戻される例:「転倒予防策が十分に実施されていないことを明らかにする」
- 直した例:「転倒予防策の実施状況を明らかにする」
「十分に実施されていない」は、研究をしてみないと分からない結果です。目的に書くと、結論を決めてから調べる研究に見えます。
目的が大きすぎる
- 差し戻される例:「高齢患者の転倒を防ぐ看護を明らかにする」
- 直した例:「A病院内科病棟の夜勤帯に、看護師が行っている転倒予防策の実施状況を明らかにする」
対象・場所・時間帯を絞ると、1年の院内研究で答えが出る大きさになります。
目的が2つ以上ある
- 差し戻される例:「転倒予防策の実施状況と、看護師の負担感と、患者の満足度を明らかにする」
知りたいことが3つあると、質問紙が長くなり、分析も考察もまとまりません。院内研究では目的を1つにし、どうしても2つになるときは「目的1」「目的2」に分けて、それぞれ方法と対応させます。
方法が目的になっている
- 差し戻される例:「看護師にアンケートを実施する」
- 直した例:「看護師が感じている転倒予防策の負担を明らかにする(方法:質問紙調査)」
アンケートやインタビューは、目的を達成するための方法です。
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正社員の求人を見る目的を書いたら確かめること
- [ ] 研究が終わったときに「明らかになった/ならなかった」と答えられる
- [ ] 文末が「明らかにする」「検討する」「記述する」のどれかになっている
- [ ] 結果を先に書いていない
- [ ] 対象(誰を・どこで)が書いてある
- [ ] 目的は1つ(2つなら番号を付けて分けている)
- [ ] 背景で書いた「分かっていないこと」と、目的が対応している
- [ ] 抄録・発表スライドの目的と同じ文になっている
抄録に書くときの字数の配分は、看護研究の抄録の書き方で解説しています。
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院内研究の進め方や支援の手厚さは、病院によって違います。教育体制が整った職場で経験を積みたい方は、病院の種類や働き方から求人を比べてみてください。
よくある質問
研究目的と研究目標は同じですか?
施設や指導者によって使い分けが違います。研究目的を大きな目的とし、それを達成するための具体的な項目を「研究目標」として並べる書き方もあります。計画書の様式にどちらの欄があるかを確かめ、施設の書き方に合わせましょう。
仮説は書く必要がありますか?
関係や効果を確かめる量的研究では、目的とあわせて「〜であれば〜だろう」という仮説を書くことがあります。実態を知る調査や、経験を知る質的研究では、仮説を立てないのが一般的です。
目的は研究の途中で変えてもよいですか?
データを集める前なら、指導者と相談して直すことはあります。倫理審査の承認を受けた後に目的や方法を変える場合は、変更の申請が必要になることがあるため、所属施設の倫理審査委員会の手順を確かめてください。
まとめ
看護研究の目的は、「〔対象〕における〔知りたいこと〕を明らかにする」の1文で書きます。「転倒を減らす」のような看護目標や研究の意義の言葉を入れず、結果を先に書かず、目的は1つに絞ります。目的が決まれば、研究デザインと分析方法も決まりやすくなります。
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参考
- 文部科学省・厚生労働省・経済産業省「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」(厚生労働省「研究に関する指針について」) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hokabunya/kenkyujigyou/i-kenkyu/index.html
- 日本看護協会「看護職の倫理綱領」(2021年) https://www.nurse.or.jp/nursing/assets/statistics_publication/publication/rinri/code_of_ethics.pdf