看護研究のデザインの種類|実験・観察・質的・事例研究の一覧と、研究目的から選ぶ判定表、院内研究で選ばれやすいデザイン
研究目的は書けた。次の欄は「研究デザイン」。横断研究、準実験研究、質的記述的研究……と並ぶ言葉を見て、自分の研究がどれに当たるのか分からない。そんなときに確認できるよう、この記事では看護研究で使われるデザインの種類と、研究目的から選ぶ考え方をまとめます。
研究デザインは、データを「どう集めるか」の設計です。集めたデータを「どう分析するか」は、看護研究の分析方法の種類と選び方で解説しています。
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研究デザインとは|研究目的に答えるためのデータの集め方の設計
研究デザインは、研究目的に答えるために、誰から・いつ・どのようにデータを集めるかを決めたものです。同じ「転倒予防」の研究でも、実施状況を知りたいのか、新しい手順の効果を知りたいのか、看護師の経験を知りたいのかで、デザインは変わります。
最初に分かれるのは次の2点です。
- 研究者が対象に何かを行うか(介入するか)、ありのままを調べるか(観察するか)
- 数字で表せるデータを集めるか(量的研究)、言葉や行動のデータを集めるか(質的研究)
「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」では、研究目的で、健康に関する事象に影響を与える要因の有無や程度を制御する行為を「介入」としています。介入を伴う研究かどうかで、倫理審査で確かめられる内容も変わります。
看護研究のデザインの種類一覧
| 分類 | デザイン | 何を明らかにするか | 看護研究の例 |
|---|---|---|---|
| 量的・介入研究 | 実験研究(無作為化比較試験) | 介入の効果。対象を無作為に2群に分けて比べる | 新しい口腔ケアの方法と従来の方法を、無作為に分けた患者で比べる |
| 量的・介入研究 | 準実験研究 | 介入の効果。無作為に分けない、または対照群がない | 手順の見直し前後で、評価の実施率を比べる |
| 量的・観察研究 | 横断研究 | ある時点の実態や、要因同士の関連 | 病棟看護師に質問紙で、夜勤の負担感と睡眠の状況を一度に尋ねる |
| 量的・観察研究 | 縦断研究(コホート研究など) | 時間の経過による変化や、要因と結果の関係 | 新人看護師の職場適応を、入職時・3か月・1年で追う |
| 量的・観察研究 | 記述的研究(実態調査) | 現状の把握。割合や平均を示す | 入院患者の転倒発生の状況を記録から集計する |
| 質的研究 | 質的記述的研究 | 経験や思いを、語られた言葉に沿って記述する | 終末期の家族ケアについての看護師の思いをインタビューする |
| 質的研究 | 現象学的アプローチ | ある経験がその人にとってどんな意味をもつか | がんの告知を受けた患者の生活の経験 |
| 質的研究 | グラウンデッド・セオリー・アプローチ | 人の行動や関わりが進んでいく過程 | 新人看護師が独り立ちするまでの過程 |
| 質的研究 | エスノグラフィー | ある集団の文化や慣習 | 病棟の申し送りに見られる暗黙のルール |
| その他 | 事例研究 | 1事例(または少数事例)への看護を振り返り、意味づける | 退院を拒否していた患者への関わりの振り返り |
| その他 | 文献研究 | 既存の文献を集めて整理し、分かっていることと分かっていないことを示す | 夜勤看護師の睡眠に関する国内文献の検討 |
| その他 | アクションリサーチ | 現場の人と一緒に課題を見つけ、改善を実行しながら評価する | 病棟スタッフと退院支援の手順を作り、運用しながら見直す |
| その他 | 混合研究法 | 量的データと質的データを組み合わせる | 質問紙で負担感を測り、高い人にインタビューで理由を聞く |
研究目的から選ぶデザインの判定表
研究目的の文末に何が来るかで、デザインはおおよそ決まります。目的の書き方は看護研究の目的の書き方を参考にしてください。
| 研究目的で知りたいこと | 選ばれやすいデザイン |
|---|---|
| 〜の実施状況・現状・割合 | 記述的研究(実態調査)、横断研究 |
| 〜と〜との関連 | 横断研究(同じ時点)、縦断研究(時間をおいて) |
| 〜を行った前後の変化 | 準実験研究(前後比較) |
| 〜の方法Aと方法Bの効果の違い | 実験研究、準実験研究(2群比較) |
| 〜の経験・思い・意味 | 質的記述的研究、現象学的アプローチ |
| 〜が進んでいく過程 | グラウンデッド・セオリー・アプローチ |
| 1事例の看護で有効だった関わり | 事例研究 |
| これまでに分かっていること | 文献研究 |
| 現場の仕組みを変えながら評価する | アクションリサーチ |
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院内研究で選ばれやすいデザインと、選ぶときの境界線
院内研究は、期間が1年ほどで、対象も自施設の患者やスタッフに限られます。この条件で無理なく進めやすいのは、次の4つです。
- 質問紙による横断研究・実態調査:対象を集めやすく、1回の調査で終わる
- 前後比較の準実験研究:手順やマニュアルを見直したときの効果を見られる
- 質的記述的研究:数人へのインタビューで進められる
- 事例研究:1事例の看護を振り返るので、新人や2年目の研究にも向く
一方で、次のような場合は、院内研究のデザインとしては重くなりがちです。
- 無作為化比較試験:対象を無作為に分ける手続きと、十分な人数が要る。患者への介入を伴うと、倫理審査の負担も大きい
- 年単位の縦断研究:研究期間の中で追跡が終わらないことがある
- 現象学やグラウンデッド・セオリー:方法論の理解と、分析の指導を受けられる体制が要る
迷ったときは、「1年の中でデータを集め終わるか」「対象を何人集められるか」「分析を指導してくれる人がいるか」の3点で絞ると決めやすくなります。
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正社員の求人を見る計画書への書き方
計画書の「研究デザイン」の欄には、デザインの名前と、データの集め方を1文で書きます。
研究デザイン:無記名の自記式質問紙を用いた横断研究
研究デザイン:半構造化面接による質的記述的研究
研究デザイン:転倒リスク評価の手順の見直し前後を比較する準実験研究
デザインの名前だけでは、何をするかが読み手に伝わりません。「何を使って」「どう集めるか」を添えましょう。
看護研究に取り組める職場の求人を見る
研究委員会や、研究の相談ができる教育担当者がいるかどうかは、病院によって違います。研究の支援がある職場で経験を積みたい方は、病院の種類や働き方から求人を比べてみてください。
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よくある質問
アンケート調査は何という研究デザインですか?
質問紙で、ある時点の実態や要因同士の関係を調べる場合は、横断研究(または記述的研究・実態調査)に当たります。同じ人に時間をおいて何回か回答してもらう場合は、縦断研究になります。
事例研究とケーススタディは同じですか?
看護の現場では、ほぼ同じ意味で使われています。ただし施設によっては、事例研究を「研究として計画し、倫理審査を受けるもの」、ケーススタディを「看護の振り返りとしてまとめるもの」と分けることがあります。違いは看護のケーススタディの書き方で整理しています。
量的研究と質的研究を組み合わせてもよいですか?
組み合わせる方法は混合研究法と呼ばれます。質問紙の結果を、インタビューで深めるような使い方です。ただし、データを集める手間と分析の手間が2倍になるため、院内研究では目的を1つに絞り、どちらかを選ぶほうが進めやすくなります。
まとめ
研究デザインは、研究目的に答えるためのデータの集め方の設計です。介入するか観察するか、数字を集めるか言葉を集めるかで分かれ、研究目的の文末に何が来るかでおおよそ決まります。院内研究では、横断研究・前後比較の準実験研究・質的記述的研究・事例研究が進めやすく、「1年で集め終わるか」「人数」「指導体制」の3点で選ぶと無理がありません。
参考
- 文部科学省・厚生労働省・経済産業省「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」(厚生労働省「研究に関する指針について」) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hokabunya/kenkyujigyou/i-kenkyu/index.html
- 日本看護協会「看護職の倫理綱領」(2021年) https://www.nurse.or.jp/nursing/assets/statistics_publication/publication/rinri/code_of_ethics.pdf