ナースの勉強部屋

看護のケーススタディの書き方|構成テンプレートと章ごとの例文、看護研究・リフレクションとの違いの判定表

看護のケーススタディの書き方|構成テンプレートと章ごとの例文、看護研究・リフレクションとの違いの判定表

ケーススタディは、自分が受け持った1人の患者さんへの看護を、文献を手がかりに振り返り、「なぜそう関わったのか」「何が言えるのか」を言葉にするまとめです。書き方で迷ったら、「はじめに・事例紹介・看護の実際・考察・結論」の5章に分け、考察を一番厚くすると形になります。

この記事では、まず看護研究やリフレクションとの違いを判定表で整理し、事例の選び方、章ごとのテンプレートと例文、考察と文献の書き方、患者さんが特定されないための匿名化の順に説明します。

なお、院内研修やラダーの課題では、書式・字数・提出方法が施設ごとに決まっていることがほとんどです。要項がある場合はそちらが正です。この記事は、要項に沿って中身を組み立てるときの手引きとして使ってください。

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目次
  1. 看護のケーススタディとは:1事例の看護を振り返り、意味づけるまとめ
  2. ケーススタディ・看護研究・リフレクションの境界線:どれを書くかの判定表
  3. ケーススタディの事例の選び方:迷ったら3つの条件で決める
  4. ケーススタディの構成テンプレート:はじめに・事例紹介・看護の実際・考察・結論
  5. ケーススタディの章ごとの書き方と例文
    1. はじめに:取り上げた理由と目的を2〜3文で書く
    2. 事例紹介:匿名化した情報を、考察に必要なぶんだけ書く
    3. 看護の実際:問題・目標・行ったこと・反応を時系列で書く
    4. 考察:「なぜそうしたか」「どうだったか」「次にどうするか」を文献と照らす
    5. 結論:学びを1〜3点に絞る
  6. ケーススタディの考察で使う文献の選び方と引用の書き方
  7. ケーススタディの個人情報の匿名化:倫理綱領と院内ルールで確かめること
  8. よくある質問
    1. ケーススタディは何文字くらい書けばいいですか?
    2. 看護過程の展開とケーススタディは何が違いますか?
    3. ケーススタディに倫理審査は必要ですか?
  9. まとめ
  10. 参考

看護のケーススタディとは:1事例の看護を振り返り、意味づけるまとめ

看護のケーススタディ(事例研究・事例のまとめと呼ぶ施設もあります)は、次の3つがそろったものです。

  • 対象が1つの事例(1人の患者さん、またはその家族)である
  • 自分が実際に行った看護を、経過に沿って書く
  • その看護を文献や理論と照らし合わせて考察し、次の看護に使える学びを出す

看護記録や看護サマリーと違うのは、「何をしたか」の記録で終わらず、「なぜそうしたのか、それは妥当だったのか」まで書く点です。考察が無いものは、ケーススタディではなく経過報告になります。

ケーススタディ・看護研究・リフレクションの境界線:どれを書くかの判定表

「ケーススタディを書いて」と言われても、指導者が求めているものが看護研究やリフレクションに近いことがあります。何を書くべきかは、次の表で判定できます。

こういう条件なら 書くもの 主な特徴
自分が受け持った1人の患者さんへの看護を、文献を使って振り返る課題 ケーススタディ 対象は1事例。看護の経過と考察が中心
複数の患者さんや看護師にアンケート・測定・インタビューを行い、問いに答える 看護研究(量的研究・質的研究) 研究計画書と、施設によっては倫理審査が先に要る
患者さんの経過よりも、自分の感情や判断の揺れを振り返り、次の行動を決める リフレクション 主語は自分。患者さんの情報は最小限でよい
まだ受け持ちの途中で、看護の結果が出ていない まだ書かない 受け持ちが終わるか、一区切りついてから書く。途中の悩みはカンファレンスで相談する

境目でよく迷うのは次の2つです。

国の「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」のガイダンスでは、医療従事者が自ら行った医療の経過を、機関内の症例検討会などで共有するために個別に報告すること(いわゆる症例報告)は、研究目的でない医療の一環とみなせる場合には、指針の「研究」に当たらないと説明されています。一方で、施設の規程や院外の学会の発表規定で、事例の報告にも倫理審査や本人の同意を求めていることがあります。院外で発表する予定があるなら、書き始める前に看護部や指導者に手続きを確認しておきましょう。

ケーススタディの事例の選び方:迷ったら3つの条件で決める

事例は「うまくいった看護」でなくてかまいません。むしろ、迷った・思うように進まなかった事例のほうが考察を書きやすくなります。迷ったら次の3つを満たすものを選びます。

  1. 自分が中心になって関わった期間がある(受け持ちとして数日以上かかわり、自分で計画し実施した看護がある)
  2. 「なぜだろう」「これでよかったのか」と引っかかった場面がある(これがそのまま考察の問いになる)
  3. 記録が残っていて、経過をたどれる(自分のメモではなく、カルテや看護記録で事実を確かめられる)

反対に、次のような事例は避けたほうが無難です。

  • 経過が非常に珍しく、病名や経過を書くだけで誰のことか分かってしまう
  • 医師の治療方針の是非が論点の中心になり、看護の振り返りにならない
  • 自分の関わりが1回だけで、看護の経過を書けない

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ケーススタディの構成テンプレート:はじめに・事例紹介・看護の実際・考察・結論

多くの施設で使われている5章の構成です。字数の配分は、施設の指定が無い場合の目安です。

章 書くこと 配分の目安
はじめに この事例を取り上げた理由、ケーススタディの目的 1割
事例紹介 患者さんの基本情報(匿名化したもの)、入院までの経過、受け持ち期間 1〜2割
看護の実際 看護上の問題、目標、行った看護と患者さんの反応を経過に沿って 3割
考察 看護の意味づけ。文献と照らして、なぜそうしたか・妥当だったか・次にどうするか 3〜4割
結論(おわりに) この事例から得た学びを短くまとめる 1割

これに、タイトル、引用文献を加えると一式です。施設によっては「研究目的」「倫理的配慮」の項を立てるよう指定されます。

ケーススタディの章ごとの書き方と例文

ここからの例文は、書き方を示すために設定した一般的な場面で、実在の事例ではありません。「退院後の生活に不安を話す高齢の入院患者さんへの関わり」を題材にします。

はじめに:取り上げた理由と目的を2〜3文で書く

書くのは「どんな場面で何に引っかかったか」と「このケーススタディで何を明らかにしたいか」です。一般論から書き始めないのがコツです。

受け持ち中、A氏は退院の話題が出るたびに「家に帰っても1人で何もできない」と話していた。退院に向けた関わりを振り返り、A氏が不安を言葉にできるようになった過程と、その中での看護師の関わりの意味を明らかにしたいと考え、本事例を取り上げた。

事例紹介:匿名化した情報を、考察に必要なぶんだけ書く

患者さんの情報は「考察で使うもの」に絞ります。病名や治療の詳細を書き込むほど、誰のことか分かりやすくなるうえ、看護の振り返りからも離れます。

A氏、80歳代、女性。自宅で1人暮らし。近隣に住む家族が週に数回訪れている。自宅で転倒して入院した。入院前は身の回りのことを自分で行っていた。受け持ち期間は入院◯日目から◯日目までの◯日間。

日付は「入院◯日目」のように経過の日数で書くと、時系列が分かり、特定もされにくくなります。

看護の実際:問題・目標・行ったこと・反応を時系列で書く

看護上の問題と目標を示し、行った看護と、それに対する患者さんの言葉や様子をセットで書きます。患者さんの言葉は「 」でそのまま引くと、考察で使いやすくなります。

看護上の問題:退院後の生活に対する不安がある。
目標:A氏が不安に思っていることを具体的に言葉にできる。

入院◯日目、退院の話題を避けるように話を変えることがあったため、清拭の時間に「お家ではどんな1日を過ごしていましたか」と生活の様子から尋ねた。A氏は「朝は庭の花に水をやるのが楽しみだった」と笑顔で話した。
入院◯日目、A氏から「階段のあるお風呂場が一番怖い」と具体的な場面が語られた。家族の面会時に同席し、A氏の了承を得たうえで、この言葉を家族と共有した。

数値や薬の量など、考察に使わない情報は書かなくてかまいません。

考察:「なぜそうしたか」「どうだったか」「次にどうするか」を文献と照らす

考察は、看護の実際を要約し直す章ではありません。次の3つの問いに、文献を根拠にして答えます。

  1. なぜその関わりを選んだのか(そのときの判断の根拠)
  2. その関わりは患者さんにとってどんな意味があったか(反応の変化を、文献の考え方で説明する)
  3. 次に同じような患者さんを受け持つとき、何を変えるか・何を続けるか

A氏は当初、退院の話題を避けていた。退院という言葉そのものではなく、生活の様子から尋ねたことで、A氏は自分の暮らしを具体的に思い浮かべ、不安を「お風呂場」という場面として語れるようになったと考える。〇〇(文献)は、□□と述べている。本事例でも、……。一方で、家族と不安を共有したのは入院◯日目であり、より早い時期に家族を交えて話す場を持つことができれば、……。

「〜と考える」「〜と推察される」のように、自分の解釈であることが分かる書き方にします。文献の言葉をそのまま写すだけでは考察にならないので、文献の考え方を、この事例のどの場面に当てはめたのかを必ず書きます。

結論:学びを1〜3点に絞る

考察で述べたことを短くまとめます。新しい話は入れません。

本事例を通して、退院への不安を抱える患者に対しては、退院そのものを話題にする前に、入院前の生活を具体的に尋ねることが、不安を言葉にするきっかけになることを学んだ。

ケーススタディの考察で使う文献の選び方と引用の書き方

考察の根拠には、看護理論、教科書、学会誌などの論文、学会や公的機関が出している指針を使います。個人のブログやまとめサイトは根拠になりません。

文献の探し方は、看護研究と同じく文献データベースを使うのが基本です。院内の図書室で、使えるデータベースや取り寄せの方法を確かめておきましょう。

引用のルールは次の3つを守ります。

  • 本文中で、どの文が文献からの引用かが分かるようにする。直接引用は「 」でくくり、要約して使う場合も出典を示す
  • 末尾に引用文献の一覧をつける。書き方は施設の要項、投稿先の規定に従う
  • 孫引きをしない。本や論文の中で紹介されていた別の文献を使う場合は、元の文献を読んで確かめる

施設に決まった書式が無い場合は、次のような形にすると、読み手が文献を探せます。

文献の種類 書き方の形
雑誌の論文 著者名(発行年):論文タイトル,雑誌名,巻(号),開始ページ-終了ページ.
書籍 著者名(発行年):書名(版),出版社名,引用ページ.
Webの資料 作成者(公開年):資料名,URL(閲覧日)

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ケーススタディの個人情報の匿名化:倫理綱領と院内ルールで確かめること

ケーススタディは、患者さんの病気や生活に深く触れる文章です。日本看護協会の「看護職の倫理綱領」(2021年3月公表)は、本文5で「看護職は、対象となる人々の秘密を保持し、取得した個人情報は適正に取り扱う」としています。また本文11では、研究や実践を通して看護学の発展に寄与することとあわせて、人々のプライバシーをまもり、尊厳と権利を尊重することを求めています。

法律の面でも、看護師には業務上知り得た人の秘密を正当な理由なく漏らしてはならない義務があります(保健師助産師看護師法第42条の2)。医療機関が院内で行う症例報告は、個人情報保護委員会・厚生労働省のガイダンスで、患者さんの情報の利用目的の例として挙げられていますが、院外で発表する場合は扱いが変わることがあるので、施設の手続きに従います。

書くときに確かめることをチェックリストにしました。

  • [ ] 氏名・イニシャル・ID・部屋番号を書いていない。「A氏」「B氏」のように、本人と関係のないアルファベットで表す
  • [ ] 年齢は「80歳代」のように幅で書いている
  • [ ] 日付は「入院◯日目」のように経過の日数で書いている
  • [ ] 住所、勤務先、施設名、珍しい職業や家族構成など、組み合わせると誰か分かる情報を書いていない
  • [ ] 写真や画像、検査結果のコピーを貼っていない(使う場合は施設の手続きを確認する)
  • [ ] 家族の情報も同じように匿名化している
  • [ ] 下書きや資料を院外に持ち出していない。自宅で書く場合は、患者さんの情報が入ったデータを個人のパソコンや私用のクラウドに保存しない。施設のルールが無い場合は指導者に確認する
  • [ ] 院外で発表する場合、施設の倫理審査や本人の同意が要るかを確認した

多くの学会の発表指針でも、氏名やイニシャル、ID番号は記載しないこと、日付は経過の日数などで示すことが求められています。院内発表でも同じ基準で書いておくと、後から院外で発表することになったときに書き直しが少なくて済みます。

倫理的に迷う場面が事例の中心にある場合は、ケーススタディにする前に、病棟の「倫理カンファレンス」で検討してから振り返るのも1つの方法です。

よくある質問

ケーススタディは何文字くらい書けばいいですか?

施設や課題によって違い、要項で字数や枚数が決まっていることがほとんどです。指定が無い場合は、まず5章の配分(考察が3〜4割)を守り、字数はそのあとで調整します。考察が短く、看護の実際が長くなっている場合は、看護の実際から考察に使わない経過を削ります。

看護過程の展開とケーススタディは何が違いますか?

看護過程の展開は、アセスメントから評価までを、今まさに行っている看護の計画として書くものです。ケーススタディは、その看護が終わった、または一区切りついたあとに、文献を使って振り返り、意味づけるものです。看護過程の記録は、ケーススタディの「看護の実際」を書くときの材料になります。

ケーススタディに倫理審査は必要ですか?

院内の研修として、自分が行った看護を院内で振り返るだけなら、国の指針上は「研究」に当たらないとされ、倫理審査の対象外としている施設もあります。ただし、施設の規程で求められている場合や、院外の学会で発表する場合、研究のために新しく情報を集める場合は手続きが要ることがあります。書き始める前に看護部や指導者に確認してください。

まとめ

  • ケーススタディは、1つの事例への自分の看護を、文献を手がかりに振り返り、意味づけるまとめ
  • 複数の対象からデータを集めるなら看護研究、主語が自分の体験ならリフレクション。受け持ちの途中ならまだ書かない
  • 事例は「自分が中心になって関わった」「引っかかった場面がある」「記録で経過をたどれる」の3つで選ぶ
  • 構成は「はじめに・事例紹介・看護の実際・考察・結論」。考察を一番厚くする
  • 考察は「なぜそうしたか」「どんな意味があったか」「次にどうするか」を文献と照らして書く
  • 氏名・イニシャル・日付・施設名など、誰のことか分かる情報は書かない。院外発表は施設の手続きを確認する

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転職に関するご相談もLINEで気軽に可能です。

参考

  • 日本看護協会「看護職の倫理綱領」(2021年3月15日)https://www.nurse.or.jp/nursing/assets/statistics_publication/publication/rinri/code_of_ethics.pdf
  • 文部科学省・厚生労働省・経済産業省「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針 ガイダンス」(令和3年4月16日、令和6年4月1日一部改訂)https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/001675438.pdf
  • 個人情報保護委員会・厚生労働省:医療・介護関係事業者向けの個人情報の取扱いに関するガイダンス(令和8年4月一部改正)https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/iryoukaigo_guidance/
  • e-Gov法令検索「保健師助産師看護師法」(第42条の2)https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000203