ブリストルスケールの看護記録|7段階の見分け方と、迷う境目(3と4・5と6)の付け方、SOAPの例文
ブリストルスケール(ブリストル便形状スケール)は、便の形と硬さを1〜7の7段階で表す指標です。数字が小さいほど硬く、大きいほど水っぽい便を表します。
病棟や施設では「普通便」「軟便」「泥状便」といった言葉で便を記録することも多いですが、言葉の受け取り方は人によって違います。ある看護師の「軟便」が、次の勤務帯の看護師には「泥状便」に見えていることもあります。ブリストルスケールの番号で書いておけば、勤務帯や職種が変わっても同じ物差しで便の変化を追えます。
この記事では、7段階の見分け方と記録での書き方、迷いやすい境目の付け方、SOAPのOに書く例文、一緒に記録したい項目をまとめます。下剤の調整や、下痢・便秘の原因の判断は扱いません。それらは医師の指示と施設の手順に沿って行ってください。
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ブリストルスケールとは(便の形を7段階で記録する指標)
ブリストルスケールは、英国ブリストル大学のLewisとHeatonが1997年に発表した便の形の分類です。66人のボランティアを対象にした研究で、便の形が、食べた物が腸を通り抜けるのにかかる時間(全腸管通過時間)と最もよく相関していました(相関係数 r=-0.54)。通過時間が変わると便の形も変わる、という関係も示されています。
つまり、便の形は腸の動きを外から見るための手がかりになります。看護記録で便の形を番号で残しておくと、日ごとの変化を数字で追えるのはこのためです。
日本消化管学会の「便通異常症診療ガイドライン2023」でも、便の形を表す物差しとしてこのスケールが使われています。たとえば慢性便秘症の診断基準では「兎糞状便または硬便(ブリストル便形状スケール1,2)」、慢性下痢症の診断基準では「軟便あるいは水様便(ブリストル便形状スケール6,7)」という書き方をしています。医師の診断にも同じ番号が使われているので、看護記録の番号はそのまま医師への報告にも使えます。
ブリストルスケール7段階の表(見た目と記録での書き方)
各タイプの見た目と、記録での書き方の例を並べます。原典の英語の説明を日本語に置き換え、病棟でよく使う呼び方を添えています。
| タイプ | 原典の説明(要旨) | 見た目の目安 | よく使う呼び方 | 記録の書き方の例 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | ナッツのような硬い塊がばらばらに出る。出しにくい | 小さく丸い粒がいくつも出る | コロコロ便、兎糞状便 | BS1 硬い粒状便 少量 |
| 2 | ソーセージ状だが、塊がくっついてでこぼこしている | 粒が固まって1本になっている | 硬便 | BS2 でこぼこの硬い便 |
| 3 | ソーセージ状で、表面にひび割れがある | 形はなめらかに近いが表面が割れている | やや硬い普通便 | BS3 表面にひび割れのある有形便 |
| 4 | ソーセージや蛇のように、なめらかで軟らかい | 表面がつるっとしたバナナ状 | 普通便 | BS4 なめらかな有形便 |
| 5 | 縁のはっきりした軟らかい塊。出しやすい | 半分に割ったような塊が、形を保っている | 軟便 | BS5 縁のはっきりした軟らかい塊状便 |
| 6 | 縁がぎざぎざの、ふわっとした小片。泥のような便 | 形が崩れ、おむつに広がる | 泥状便 | BS6 形の崩れた泥状便 |
| 7 | 水っぽく、固形物を含まない液体状 | 水のようにしみ込む | 水様便 | BS7 固形物のない水様便 |
記録では「BS4」「ブリストル4」「B4」など、病棟によって略し方が違います。番号の書き方は施設で決めたものに揃えてください。「BS4(普通便)」のように番号と言葉を並べておくと、スケールに慣れていない職種にも伝わります。
ブリストルスケールで迷いやすい境目の付け方(3と4・5と6)
7段階のうち、評価者によって番号が割れやすいのは「3と4」「5と6」の境目です。どちらも、見るところを1つに決めておくとぶれが減ります。
3と4は「表面にひび割れがあるか」で分ける
3と4はどちらもソーセージ状で、硬さの印象だけで付けると人によって分かれます。見るのは表面です。
- 表面にひび割れや筋が入っていれば3
- 表面がなめらかで、割れ目がなければ4
硬さを指で確かめる必要はありません。見た目で付けられるのがこのスケールの利点です。1本の便の一部だけが割れているときは、全体で多い方の様子で付けます。
5と6は「塊の縁がはっきりしているか」で分ける
5と6はどちらも軟らかい便ですが、原典では5を「縁のはっきりした軟らかい塊」、6を「縁がぎざぎざの小片、泥のような便」と書き分けています。
- 1つ1つの塊の輪郭がくっきりしていて、形を保っていれば5
- 塊の輪郭が崩れ、どこまでが1つの塊か分からなければ6
おむつの中で押しつぶされて広がった便は、6に見えやすくなります。体位変換やおむつ交換で形が崩れた可能性があるときは、広がり方ではなく、残っている塊の縁を見て付けます。
1回の排便で形が変わるときは、両方書く
最初は硬い便が出て、あとから軟らかい便が続く、ということはよくあります。このときは1つの番号にまとめず、「BS2→BS5」のように出た順に両方を書きます。1つにまとめると、硬い便がつかえていた様子が記録から消えてしまうためです。
スケールで付けにくい便は、番号を付けずに文章で書く
次のような便は、7段階のどれかに無理に当てはめると、かえって誤解を生みます。番号は空けて、見たままを文章で書く方が伝わります。
| 場面 | 書き方 |
|---|---|
| おむつや肛門周囲への少量の付着のみ | 「便付着少量(性状判定できず)」のように、量と付着の様子を書く |
| 粘液や血液が主で、便の形がほとんどない | 「粘液のみ」「血液混入あり」と内容物を書く |
| ストーマからの排泄物 | ストーマの種類と、水様・泥状・有形などの性状を施設の書式で書く |
| 浣腸や摘便の直後の便 | 番号は付けてよいが、浣腸後・摘便による排便であることを必ず添える |
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ブリストルスケールと一緒に記録する項目のチェックリスト(回数・量・色)
便の形だけでは、その日の排便の状態は伝わりません。ブリストルスケールに加えて、次の項目を一緒に残します。
- [ ] 排便の時刻(夜間か日中か)
- [ ] その日の排便回数と、最終排便日(何日目か)
- [ ] ブリストルスケールの番号(形が変われば出た順に両方)
- [ ] 量(施設で決めた目安で書く。例:片手1杯未満・片手1杯以上・両手1杯以上)
- [ ] 色(茶色・黄土色・黒色・赤色の混入・白っぽいなど)
- [ ] 血液や粘液の混入の有無
- [ ] においの変化(いつもと違う強いにおいなど)
- [ ] 便意の有無、トイレでの排便かおむつ内か、失禁の有無
- [ ] 排便時の様子(強くいきんでいた、痛みの訴え、残便感の訴え)
- [ ] 下剤・浣腸・摘便を行った後の排便か
- [ ] 腹部の様子(張り、腸蠕動音、腹痛の訴え)
量の目安は、施設ごとに書式が違います。たとえば京都市の右京医師会が配っている記載方法の参考資料では、便量を「片手1杯より少ない(+)」「片手1杯以上(++)」「両手1杯以上(+++)」の3段階で書き、下剤や浣腸を使ったときは備考欄に書く、としています。番号と同じく、量の書き方も病棟内で揃えておくと比べやすくなります。
色の異常(黒い、赤い血が混じる、白っぽいなど)は、形とは別に記録してください。どの所見を医師に報告するかは、施設の手順に従います。
ブリストルスケールを使った看護記録の例文(SOAPのO)
ブリストルスケールの番号は、観察した事実なのでSOAPのO(客観的情報)に書きます。本人の訴えはS、番号から読み取った看護師の評価はAに分けます。
おむつ内の排便の例
O:10時、おむつ内に排便あり。BS6、量は片手1杯程度、茶色、血液・粘液の混入なし。本日1回目。前回排便は昨日16時(BS4)。腹部膨満なし、腸蠕動音聴取。殿部の皮膚に発赤なし。
トイレで排便し、途中で形が変わった例
S:「最初が出にくかった。まだ残っている感じがする」
O:14時、トイレで排便あり。BS2→BS5、量は片手1杯程度、茶色。排便時に強いいきみあり。最終排便から4日目。下剤内服後の排便。
付着のみで判定できない例
O:6時のおむつ交換時、便付着少量あり(性状判定できず)。茶色、粘液なし。夜間の排便はこれのみ。
夜勤から日勤への経過を書く例
O:22時 BS7 片手1杯未満、2時 BS7 片手1杯未満、5時 BS6 片手1杯程度。夜間3回、いずれも黄土色で血液混入なし。2時の排便時に腹痛の訴えあり、5時には訴えなし。
例文のように、番号に「量・色・回数・前回との比較」を添えると、読み手は便の状態の流れを追えます。番号だけを並べるより、前回の番号を1つ書き添えるだけで変化が伝わりやすくなります。
申し送りでブリストルスケールを共有するときの伝え方
申し送りでは、1回ずつの番号を読み上げるより、勤務帯の中での変化をまとめて伝える方が要点が伝わります。
- 「夜間に3回。BS7が2回、明け方はBS6。回数は減ってきています」
- 「4日ぶりの排便で、BS2からBS5。いきみが強く、残便感の訴えがありました」
- 「おむつに付着のみで、性状は判定できていません。日勤帯で排便があれば番号を付けてください」
最後の例のように、判定できなかったことも申し送ると、次の勤務帯で観察を続けやすくなります。
点数や番号で状態を共有する指標は、ほかにも病棟でよく使います。褥瘡のリスクを点数で共有するブレーデンスケールはブレーデンスケールとは?6項目の採点表と記録の例文、痛みの強さを数字で共有する方法はペインスケールの看護での使い分けと記録の書き方で整理しています。下痢が続く患者では、ブリストルスケールと一緒に皮膚の状態も観察しておくと、申し送りの内容がそろいます。
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よくある質問
ブリストルスケールの3〜5なら問題ないと考えてよいですか?
番号だけで良し悪しを決めるのは避けましょう。スケールは便の形を分類する物差しで、その人にとって問題があるかどうかは、普段の便の形、回数、腹部の症状、食事や治療の内容と合わせて医師が判断します。看護記録では、番号とあわせて「いつもと比べてどう変わったか」を書いておくことが大事です。
本人に便の形を聞いて記録してもよいですか?
聞き取りで記録すること自体はできます。7段階の絵が入った表を見せて、どれに近いかを指してもらうと、言葉で聞くより正確になります。その場合は、看護師が見て付けた番号と区別できるよう「本人申告でBS5」のように書きます。
「普通便」「軟便」と書くのではだめですか?
施設で言葉の定義が決まっていれば使えますが、言葉の受け取り方は人によって違います。「軟便」が5を指すのか6を指すのか、読み手には分かりません。番号を基本にして、言葉は補足として添える書き方をおすすめします。
ブリストルスケールは子どもにも使えますか?
形の分類としては子どもにも使えます。ただし、乳児の便は大人と形や性状が違うため、小児の病棟ではスケールを使わず別の書式で記録していることもあります。所属している病棟の書式に従ってください。
まとめ
- ブリストルスケールは、便の形を1(硬い粒)〜7(水様)の7段階で表す指標で、番号で書くと勤務帯や職種が変わっても同じ物差しで変化を追える
- 3と4は表面のひび割れ、5と6は塊の縁がはっきりしているかで分ける
- 1回の排便で形が変われば出た順に両方書き、付着のみなど判定できない便は番号を付けずに文章で書く
- 番号に、回数・量・色・混入物・下剤や浣腸の有無・前回との比較を添えてSOAPのOに書く
- 番号の良し悪しの判断や治療の調整は、医師の指示と施設の手順に沿って行う
参考
- Lewis SJ, Heaton KW. Stool form scale as a useful guide to intestinal transit time. Scandinavian Journal of Gastroenterology. 1997;32(9):920-924.
- 日本消化管学会編「便通異常症診療ガイドライン2023―慢性便秘症」「便通異常症診療ガイドライン2023―慢性下痢症」(南江堂、2023年)
- 日本内科学会雑誌 113巻10号「シリーズ 診療ガイドライン at a glance 便通異常症診療ガイドライン2023(慢性便秘症・慢性下痢症)」 https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/113/10/113_1948/_article/-char/ja/
- 右京医師会「便と尿の記載方法(参考資料)」 http://www.ukyo.kyoto.med.or.jp/download/pdf/kisai.pdf