看護診断の書き方|PES方式の型、3つのタイプの書き分け、ゴードンとNANDA-Iの対応、看護問題リストの優先順位
看護診断は「関連因子に関連した診断名(診断指標によって明らか)」という1文の型に、アセスメントで拾った情報を入れていけば書けます。
書けなくなる原因は、多くの場合センスではなく順番です。先に診断名を選んでから情報を探すと、根拠のない診断になり赤ペンが入ります。アセスメントで情報をまとめ、そこから診断名を当てはめる順で進めてください。
この記事では、1本の看護診断を型どおりに書くための手順と、看護問題リストに並べるときの優先順位のつけ方を整理します。実習記録全体の流れやSOAPの書き方は看護実習記録の書き方|SOAPとアセスメントの例文で解説しているので、ここでは看護診断の1文に絞ります。
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看護診断は「診断名・関連因子・診断指標」の3つでできている
NANDA-I(NANDAインターナショナル)は、看護診断を「健康状態や生命過程に対する人間の反応、またはその反応への脆弱性についての臨床判断」と定義しています。医師の診断が病気そのものを扱うのに対し、看護診断は病気や治療に対して患者がどう反応しているかを扱います。
1本の看護診断は、次の3つの要素で組み立てます。
| 要素 | 中身 | 情報の出どころ |
|---|---|---|
| 診断名 | 患者に起きている反応の名前(例:急性疼痛、身体可動性障害) | NANDA-Iの分類から選ぶ |
| 関連因子 | その反応の原因・引き金になっているもの | アセスメントの「解釈」の部分 |
| 診断指標 | その反応が起きていると判断できる、観察・訴えの具体的な証拠 | S情報・O情報 |
リスク型の診断では、関連因子の代わりに「危険因子」を使います。まだ起きていない問題なので、診断指標はありません。
関連因子に書いてはいけない「ハイリスク群」と「関連する状態」
NANDA-Iは2018-2020年版から、診断の手がかりに「ハイリスク群(年齢や既往など、その反応が起きやすい集団の特徴)」と「関連する状態(医学診断・手術・医療機器・薬剤)」という区分を設けています。どちらも看護師が独自に変えられないものなので、関連因子ではない扱いです。
たとえば「大腿骨頸部骨折に関連した身体可動性障害」は、原因を医学診断で書いてしまっています。骨折そのものは看護ケアで変えられません。看護で働きかけられる「術後の創部痛と筋力低下に関連した」と書き直すと、看護計画のTP(ケア計画)につながります。骨折や年齢は、診断を考える手がかりとしてアセスメントに書いておきます。
看護診断の書き方をPES方式で3ステップに分ける
PES方式は、看護診断を次の3つの要素で書く型です。
- P(Problem):問題=診断名
- E(Etiology):原因=関連因子
- S(Signs/Symptoms):徴候・症状=診断指標
NANDA-Iの公式テキストでも、看護診断を学ぶときの一般的な書式として「〔診断名〕related to〔関連因子〕as evidenced by〔診断指標〕」が紹介されています。日本語の記録では、語順を入れ替えて次のように書くのが一般的です。
〔E:関連因子〕に関連した〔P:診断名〕(〔S:診断指標〕によって明らか)
学校や病院によっては、S(診断指標)を1文に含めず、アセスメント欄に書けばよいとする場合もあります。電子カルテでは「関連」「明らか」の欄がないこともあります。その場合でも、根拠がアセスメントに書かれていないと診断の正しさを確かめられない、とNANDA-Iは注意しています。
ステップ1:アセスメントで情報をまとめ、問題を1つ言葉にする
最初に、アセスメントで分かったことを「患者に何が起きているか」の1文にします。まだ診断名を選ばず、自分の言葉で構いません。
例:「術後2日目、創部の痛みで体の向きを変えられず、ベッド上で過ごす時間が長い」
ステップ2:診断名と、その定義・診断指標を照らし合わせる
ステップ1の文に近い診断名の候補を、NANDA-Iのテキストから探します。候補が見つかったら、定義を読み、診断指標のうち患者に当てはまるものを複数拾えるかを確認します。
1つも当てはまらない、または定義が患者の状態とずれている場合は、別の診断名を探します。似た診断名(例:身体可動性障害と活動耐性低下)で迷ったら、両方の定義を並べて、患者の状態をよりよく説明するほうを選びます。
ステップ3:関連因子を「看護で変えられる言葉」で書く
関連因子は、そのまま看護計画の標的になります。「痛みを和らげる」「筋力を保つ」のようにケアで働きかけられる表現にします。
ステップ1〜3を通した完成形は、次のとおりです。
術後の創部痛と筋力低下に関連した身体可動性障害(自力での体位変換困難、「痛くて動けない」との訴え、日中の臥床時間の延長によって明らか)
診断名の日本語表記は、版によって変わることがあります。2026年9月時点の最新版は『NANDA-I看護診断 定義と分類 2024-2026 原書第13版』(医学書院、2025年2月発行)で、56の診断が新しく加わり、123の診断が改訂されています。実習では、手元のテキストの版を指導者と揃えておくと、表記の違いで赤が入るのを防げます。
問題焦点型・リスク型・ヘルスプロモーション型の看護診断の書き分け
看護診断には、書き方の異なるタイプがあります。実習でよく使うのは次の3つです。
| タイプ | 使う場面 | 必要な要素 | 1文の型 |
|---|---|---|---|
| 問題焦点型 | 問題がいま起きている | 診断名+関連因子+診断指標 | 〔関連因子〕に関連した〔診断名〕(〔診断指標〕によって明らか) |
| リスク型 | 問題はまだ起きていないが、起きやすい状態にある | 診断名+危険因子 | 〔危険因子〕に関連した〔〜リスク状態〕 |
| ヘルスプロモーション型 | 患者が健康をより良くしたいと望み、行動に表れている | 診断名+診断指標 | 〔〜促進準備状態〕(〔診断指標〕によって明らか) |
このほか、複数の診断がまとまって起きる「シンドローム(症候群)」型もあります。
問題焦点型:「起きている証拠」が書けるかで判断する
問題焦点型の診断は、診断指標(観察・訴えの証拠)を書けることが条件です。証拠がS情報・O情報から拾えないなら、問題はまだ起きていないので、リスク型を検討します。
例:創部の炎症を伴う手術侵襲に関連した急性疼痛(NRS 6、体動時の顔をしかめる表情、鎮痛薬の追加希望によって明らか)
リスク型:危険因子に「看護で減らせるもの」を入れる
リスク型は、まだ起きていない問題を防ぐための診断です。危険因子には、看護で減らせるものを書きます。「80歳」「脳梗塞の既往」はハイリスク群や関連する状態なので、アセスメントに書き、危険因子には「ふらつきのある歩行」「夜間の頻尿によるトイレ歩行」のように書きます。
例:ふらつきのある歩行と夜間の頻回なトイレ歩行に関連した成人転倒転落リスク状態
ヘルスプロモーション型:本人の意欲が情報に出ているかを確かめる
ヘルスプロモーション型は、患者の「もっと良くしたい」という意欲に基づく診断です。問題がなくても使えます。退院前の患者や、慢性疾患と付き合っていく患者に向いています。
条件は、意欲が本人の言葉や行動に表れていることです。「退院後も自分で血糖を管理できるようになりたい」との発言や、指導内容のメモを取る様子などを診断指標に書きます。看護師の側から見て「指導が必要そう」というだけでは、この型にはなりません。
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ゴードンの11の機能的健康パターンとNANDA-Iの13領域の対応
アセスメントの枠組みにゴードンの機能的健康パターンを使う学校は多くあります。NANDA-Iは特定の枠組みを指定していませんが、公式テキストの中で、ゴードンの枠組みを根拠に基づくアセスメントの例として挙げています。
ゴードンの11パターンでまとめた情報から診断名を探すときは、対応するNANDA-Iの領域を開くと候補を絞れます。対応の目安は次のとおりです。
| ゴードンの機能的健康パターン | 主に対応するNANDA-Iの領域 |
|---|---|
| 1 健康知覚-健康管理 | 領域1 ヘルスプロモーション、領域11 安全/防御 |
| 2 栄養-代謝 | 領域2 栄養、領域11 安全/防御(皮膚・体温) |
| 3 排泄 | 領域3 排泄と交換 |
| 4 活動-運動 | 領域4 活動/休息、領域3 排泄と交換(呼吸・ガス交換) |
| 5 睡眠-休息 | 領域4 活動/休息 |
| 6 認知-知覚 | 領域5 知覚/認知、領域12 安楽(痛み) |
| 7 自己知覚-自己概念 | 領域6 自己知覚 |
| 8 役割-関係 | 領域7 役割関係 |
| 9 セクシュアリティ-生殖 | 領域8 セクシュアリティ |
| 10 コーピング-ストレス耐性 | 領域9 コーピング/ストレス耐性 |
| 11 価値-信念 | 領域10 生命原理 |
NANDA-Iの領域13「成長/発達」は、特定のパターンに1対1では対応しません。小児や高齢者の発達段階に関わる情報は、各パターンにまたがって拾います。
ずれやすい3か所:呼吸・皮膚・痛み
表のうち、ゴードンとNANDA-Iで置き場所が違う情報が3つあります。
- 呼吸(ガス交換):ゴードンでは活動-運動、NANDA-Iでは領域3 排泄と交換
- 皮膚・体温:ゴードンでは栄養-代謝、NANDA-Iでは領域11 安全/防御
- 痛み:ゴードンでは認知-知覚、NANDA-Iでは領域12 安楽
パターンの名前だけで領域を探すと、ここで診断名が見つからなくなります。学校独自の対応表が配られている場合は、そちらに従ってください。
看護問題リストの書き方と優先順位のつけ方
看護問題リストは、立てた看護診断を優先順位の高い順に並べた一覧です。看護計画は、このリストの番号ごとに立てます。
看護問題リストに書く項目
一般的な看護問題リストの項目は次のとおりです。書式は学校・病院ごとに決まっているので、配られた様式に合わせます。
| 項目 | 書く内容 |
|---|---|
| 番号 | #1、#2…の順。優先順位の高いものから振る |
| 立案日 | その問題を挙げた日 |
| 看護診断(看護問題) | PES方式などで書いた1文 |
| 解決日・評価日 | 問題が解決した日、または評価した日 |
| 備考 | 優先順位を入れ替えた理由など |
問題が解決したら、番号は欠番にして線を引き、解決日を書きます。番号を詰め直すと、看護計画や経過記録の番号と合わなくなります。
優先順位は「命に関わるか」「本人が困っているか」「ほかの問題の原因か」で決める
優先順位をつける基準は、上から順に次の3つです。
- 生命に関わるか。呼吸・循環・意識など、放置すると命に関わる問題を最優先にする。マズローの欲求階層でいう生理的欲求・安全の欲求に当たるものが上に来る
- 本人が一番困っているか。患者が強く訴えている苦痛や、本人の希望を反映する
- ほかの問題の原因になっているか。痛みがあるから動けない、動けないから眠れない、という関係なら、原因側の問題を上にする
3つ目の判断には、関連図が役立ちます。関連図で矢印が多く出ている問題が、ほかの問題の原因になっている問題です。
リスク型を下に置くとは限らない
「いま起きている問題が先、リスクは後」と覚えている人は多いですが、NANDA-Iは、問題焦点型をリスク型より重要とみなすべきではないとしています。公式テキストでは、入所したばかりの高齢者で、活動耐性や記憶の問題より転倒転落のリスクを最優先にする例が挙げられています。
転倒・誤嚥・感染のように、起きれば命や回復に直結するリスクは、#1に置いて構いません。そのときは、備考や看護計画に上位にした理由を書いておくと、指導者に伝わります。
看護診断の書き方でよくある赤ペン指摘6つ
実習で看護診断に赤が入りやすいのは、次の6つです。
| 指摘 | よくある書き方 | 直し方 |
|---|---|---|
| 医学診断が関連因子になっている | 「肺炎に関連した〜」 | 肺炎で起きている「痰の貯留」「咳嗽力の低下」など、看護で働きかけられる言葉にする |
| 診断指標がない、または1つだけ | 診断名と関連因子だけで終わっている | S情報・O情報から、定義に合う証拠を複数書く |
| 診断名と関連因子が同じことを言っている | 「疼痛に関連した急性疼痛」 | 痛みの原因(創部の炎症、同一体位など)を関連因子にする |
| 看護師側の問題になっている | 「指導不足に関連した〜」 | 患者の状態(知識の不足、理解の程度)として書く |
| リスク型なのに診断指標を書いている | 「〜リスク状態(ふらつきによって明らか)」 | リスク型は診断指標を持たない。ふらつきは危険因子として書く |
| 診断名が自分の造語になっている | 「動けない状態」「術後の不安定」 | NANDA-Iのテキストにある診断名から選ぶ。学校がNANDA-Iを使わない場合は、その学校の書き方に従う |
書き終えたら、1文を読み上げて「関連因子を取り除いたら、この問題は良くなるか」を確かめてください。良くなる関係になっていれば、看護計画のOP(観察)・TP(ケア)・EP(教育)がそのまま立てられます。看護計画の組み立ては看護計画のOP・TP・EPとは?で解説しています。
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よくある質問
看護診断と看護問題は何が違いますか?
看護診断は、NANDA-Iなどの分類にある標準化された用語で書いたものです。看護問題は、患者の問題を看護師が自分の言葉で書いたもので、NANDA-Iを使わない学校や病院では「看護問題」「看護上の問題」と呼ぶことが多くあります。どちらを使うかは、実習先の様式に従ってください。
看護診断はいくつ挙げればいいですか?
決まった数はありません。実習では、受け持ち期間中に看護で働きかけられる問題を2〜4つ程度挙げる場合が多いですが、数より、1つひとつに根拠(診断指標や危険因子)が書けていることが重視されます。根拠が書けない診断は、数を増やしても赤が入ります。
新人看護師になっても、PES方式で書く必要がありますか?
病院の電子カルテでは、診断名を一覧から選び、関連因子や診断指標をチェック欄で選ぶ形式が多くあります。1文で書く機会は減りますが、選ぶときの考え方は同じです。関連因子と診断指標がアセスメントに書かれていないと、診断の根拠を後から確かめられません。記録全体の書き方は電子カルテの看護記録の書き方も参考にしてください。
まとめ
- 看護診断は、診断名・関連因子・診断指標の3つで組み立てる
- 日本語の型は「〔関連因子〕に関連した〔診断名〕(〔診断指標〕によって明らか)」
- 関連因子には、医学診断や年齢ではなく、看護で変えられるものを書く
- リスク型は危険因子だけ、ヘルスプロモーション型は本人の意欲を示す診断指標で書く
- ゴードンのパターンからNANDA-Iの領域を探すときは、呼吸・皮膚・痛みの置き場所のずれに注意する
- 看護問題リストは「命に関わるか」「本人が困っているか」「ほかの問題の原因か」で並べる。リスク型が#1になることもある
参考
- NANDA International「Nursing Diagnoses: Definitions & Classification(Book)」 https://nanda.org/nanda-book/
- 医学書院『NANDA-I看護診断 定義と分類 2024-2026 原書第13版』 https://www.igaku-shoin.co.jp/book/detail/115380