看護職の倫理綱領16条の一覧|本文の原文と、看護記録・カンファレンス・看護研究で使う場面の早見表
倫理カンファレンスの資料に「倫理綱領の第◯条」と書きたい。看護研究の計画書で倫理的配慮の根拠を示したい。そんなときに、16条の本文を一度に見渡せる一覧があると便利です。
この記事では、日本看護協会が2021年3月に公表した「看護職の倫理綱領」の本文16条を原文のまま載せ、現場のどの場面でどの条文を引くかを整理します。各条には本文に続けて解説文がありますが、この記事では転載せず、必要な箇所だけ要約しています。要約と書いた部分は原文ではありません。
倫理原則(自律尊重・善行など)の考え方は倫理・倫理観とは?看護師に必要な倫理の基本と原則で、カンファレンスの進め方は倫理カンファレンスの進め方で解説しています。
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看護職の倫理綱領とは|前文と本文16条、2021年の改訂
日本看護協会のウェブサイトによると、同会は1988年に「看護師の倫理規定」を作成し、2003年に「看護者の倫理綱領」として改訂しました。その後の環境や社会情勢の変化を受けて見直し、2021年3月に「看護職の倫理綱領」として公表しています。
倫理綱領は、前文と本文16条でできています。前文は、この綱領を次のように位置づけています。
日本看護協会の『看護職の倫理綱領』は、あらゆる場で実践を行う看護職を対象とした行動指針であり、自己の実践を振り返る際の基盤を提供するものである。また、看護の実践について専門職として引き受ける責任の範囲を、社会に対して明示するものである。
対象は看護師だけでなく、保健師・助産師・准看護師を含む「看護職」です。病院・診療所・訪問看護・施設など、働く場を問いません。
看護職の倫理綱領16条の一覧(本文の原文)
本文16条は次のとおりです(出典:日本看護協会「看護職の倫理綱領」)。
| 条 | 本文(原文) |
|---|---|
| 1 | 看護職は、人間の生命、人間としての尊厳及び権利を尊重する。 |
| 2 | 看護職は、対象となる人々に平等に看護を提供する。 |
| 3 | 看護職は、対象となる人々との間に信頼関係を築き、その信頼関係に基づいて看護を提供する。 |
| 4 | 看護職は、人々の権利を尊重し、人々が自らの意向や価値観にそった選択ができるよう支援する。 |
| 5 | 看護職は、対象となる人々の秘密を保持し、取得した個人情報は適正に取り扱う。 |
| 6 | 看護職は、対象となる人々に不利益や危害が生じているときは、人々を保護し安全を確保する。 |
| 7 | 看護職は、自己の責任と能力を的確に把握し、実施した看護について個人としての責任をもつ。 |
| 8 | 看護職は、常に、個人の責任として継続学習による能力の開発・維持・向上に努める。 |
| 9 | 看護職は、多職種で協働し、よりよい保健・医療・福祉を実現する。 |
| 10 | 看護職は、より質の高い看護を行うために、自らの職務に関する行動基準を設定し、それに基づき行動する。 |
| 11 | 看護職は、研究や実践を通して、専門的知識・技術の創造と開発に努め、看護学の発展に寄与する。 |
| 12 | 看護職は、より質の高い看護を行うため、看護職自身のウェルビーイングの向上に努める。 |
| 13 | 看護職は、常に品位を保持し、看護職に対する社会の人々の信頼を高めるよう努める。 |
| 14 | 看護職は、人々の生命と健康をまもるため、さまざまな問題について、社会正義の考え方をもって社会と責任を共有する。 |
| 15 | 看護職は、専門職組織に所属し、看護の質を高めるための活動に参画し、よりよい社会づくりに貢献する。 |
| 16 | 看護職は、様々な災害支援の担い手と協働し、災害によって影響を受けたすべての人々の生命、健康、生活をまもることに最善を尽くす。 |
第12条の「ウェルビーイング」には原文で注が付いていて、身体的、精神的、社会的に良好な状態であることと説明されています。
16条を4つのまとまりで読む(編集部の整理)
16条を順番に覚えるより、「誰に対する責任か」で分けると、場面ごとに引く条文を探しやすくなります。次の分け方は倫理綱領に書かれたものではなく、この記事での整理です。
| まとまり | 条 | 何についての条文か |
|---|---|---|
| 看護の対象となる人々との関係 | 1〜6 | 尊厳と権利、平等、信頼関係、意思決定の支援、秘密と個人情報、不利益や危害からの保護 |
| 看護職個人の責任と学び | 7・8 | 自分の責任と能力の把握、継続学習 |
| 看護の質を支える仕組みと組織 | 9〜13 | 多職種協働、行動基準、研究と看護学の発展、看護職自身のウェルビーイング、品位と社会の信頼 |
| 社会への責任 | 14〜16 | 社会正義、専門職組織への参画、災害支援 |
1〜6が「目の前の患者さん・利用者さん」、7以降が「看護職とその集団」と、外側に向かって広がる並びになっています。
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倫理綱領を現場で使う場面の早見表
日々の看護で倫理的に引っかかる場面と、関係の深い条文の対応を、よくある例で並べました。1つの場面に複数の条文が関わることも多いので、条文を探す手がかりとして使ってください。
| 現場の場面 | 関係の深い条 |
|---|---|
| 本人の希望と家族の希望が食い違っている | 4(意思決定の支援)、3(信頼関係) |
| 認知機能が低下した患者さんの治療方針を決める | 4(自らの意思を表明することが難しい場合の支援)、1(尊厳と権利) |
| 身体拘束を続けるかどうかを話し合う | 1(尊厳と権利)、6(安全の確保)、9(多職種協働) |
| 家族に病状をどこまで伝えてよいか迷う | 5(秘密の保持・本人の承諾)、4(知る権利) |
| SNSに職場や患者さんのことを書きたくなった | 5(ソーシャルメディアの利用)、13(品位の保持) |
| 他のスタッフの不適切な対応に気づいた | 6(疑義を唱え、保護し安全を確保する) |
| 経験のない処置を任されそうになった | 7(自己の能力を超える場合に支援や指導を求める) |
| 外国籍・生活困窮など、背景の異なる患者さんへの対応 | 2(個別的特性やニーズに応じた平等)、14(社会正義) |
| 長時間労働やハラスメントで心身が疲れている | 12(ウェルビーイング、ハラスメント・暴力などの危険への取り組み) |
| 院内の看護手順やマニュアルを作り直す | 10(行動基準の設定と改訂) |
条文の括弧内は、各条の解説文にある内容の要約です。
第4条と第5条は、解説文まで読むと使いどころが広がる
本文が短い条文ほど、解説文に具体的な場面が書かれています。たとえば第4条の解説には、知らないでいるという選択や、決定を他者に委ねるという選択もあること、自らの意思を表明することが難しい場合は関係者皆で協働することが書かれています(要約)。第5条の解説には、家族等と情報を共有する際も本人の承諾を得るよう最大限の努力を払うこと、ソーシャルメディアの業務上の利用と私的な利用を区別することが書かれています(要約)。
カンファレンスの資料に条文を引くときは、本文だけでなく、該当する解説の箇所まで確かめておくと、議論の焦点がずれにくくなります。
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正社員の求人を見る看護記録・倫理カンファレンス・看護研究で倫理綱領を使うとき
看護記録|条文番号を書くより、事実と意向を残す
看護記録に「倫理綱領第4条に基づき」と書く必要はありません。記録に残したいのは、本人がどう話したか、家族がどう話したか、誰とどう話し合ったかという事実です。第4条の意思決定支援も、第5条の本人の承諾も、記録に事実が残っていて初めて後から確かめられます。書き方の基本は看護記録の表現の言い換え表を参考にしてください。
倫理カンファレンス|「どの条文が守られていないか」で論点を絞る
事例を4分割表などで整理したあと、「この場面で揺らいでいるのはどの条文か」を参加者で確かめると、話し合いの焦点が定まります。複数の条文がぶつかっている場合(たとえば第4条の本人の意向と、第6条の安全の確保)は、それ自体が倫理的ジレンマの中身です。進め方の台本は倫理カンファレンスの進め方にあります。
看護研究|第11条と、研究の倫理指針を合わせて確かめる
第11条は、研究や実践を通して看護学の発展に寄与することを求める条文です。解説には、研究参加に対する人々の意向を尊重し、いかなる場合でも生命、健康、プライバシーをまもることが書かれています(要約)。
ただし、看護研究の倫理審査で求められる手続き(説明と同意、個人情報の扱いなど)は、倫理綱領だけでは足りません。人を対象とする研究では、厚生労働省などの「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」と、所属施設の倫理審査委員会の規程を確かめてください。事例をまとめるときの匿名化は看護のケーススタディの書き方でも触れています。
倫理綱領を引くときの注意点
- 条文番号は2021年版で確かめる。2003年の「看護者の倫理綱領」と番号や中身が同じとは限らないため、古い資料の条番号をそのまま使わない
- 本文の引用は原文どおりに書き、出典(日本看護協会「看護職の倫理綱領」)を添える
- 解説文を資料に載せるときは、要約か引用かを分けて書く
- 倫理綱領は行動指針で、法令ではない。業務の範囲や罰則にかかわる判断は、保健師助産師看護師法などの法令と施設の規程で確かめる(第7条の解説も、関連する法令の遵守に触れている)
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正社員の求人を見るよくある質問
看護職の倫理綱領は何条までありますか
本文は16条です。2021年3月に公表された「看護職の倫理綱領」は、前文と本文16条で構成されています。
看護師以外の准看護師や保健師にも当てはまりますか
当てはまります。前文で、あらゆる場で実践を行う看護職を対象とした行動指針と位置づけられています。
ICN(国際看護師協会)の倫理綱領とは違うものですか
別の文書です。ICNの「看護師の倫理綱領」は国際的な綱領で、日本看護協会のウェブサイトでも紹介されています。この記事で扱っているのは、日本看護協会の「看護職の倫理綱領」です。
まとめ
看護職の倫理綱領は前文と本文16条で、1〜6が看護の対象となる人々との関係、7・8が看護職個人の責任、9〜13が看護の質を支える仕組み、14〜16が社会への責任を扱っています。現場では、場面から関係の深い条文を探し、本文と解説の該当箇所を確かめてから資料や話し合いに使いましょう。
参考
- 日本看護協会「看護職の倫理綱領」(2021年3月15日) https://www.nurse.or.jp/nursing/assets/statistics_publication/publication/rinri/code_of_ethics.pdf
- 日本看護協会「看護倫理」 https://www.nurse.or.jp/nursing/rinri/index.html
- 厚生労働省「研究に関する指針について」(人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hokabunya/kenkyujigyou/i-kenkyu/index.html