ナースの勉強部屋

看護記録で避けたい不適切な表現|主観・断定・略語・あいまい語の言い換え表と、悪い例から良い例への書き直し

看護記録で避けたい不適切な表現|主観・断定・略語・あいまい語の言い換え表と、悪い例から良い例への書き直し

「不穏だった」「様子観察」「拒否的」。忙しい勤務の中では、つい短い言葉で記録を済ませたくなります。ところが、こうした表現は読み手によって受け取り方が変わり、次の勤務の看護師には何が起きたのかが伝わりません。

看護記録は、患者や家族から開示を求められることがあり、裁判や医療安全の調査では記載内容から事実を確かめられることもあります。日本看護協会の「看護記録に関する指針」も、看護記録は法的証拠となり得るとしています。だからこそ、誰が読んでも同じ場面が思い浮かぶ言葉で書くことが大切です。

この記事は、病棟で記録を書く新人〜中堅の看護師に向けて、看護記録で避けたい表現と言い換え方をまとめたものです。SOAPやフォーカスチャーティングといった記録方式の選び方、転倒転落など場面ごとの書き方は扱いません。

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目次
  1. 看護記録の不適切な表現は5つの型に分けられる
  2. 主観・推測の表現を事実に言い換える
  3. 決めつけ・診断めいた表現を観察した事実に言い換える
  4. 看護記録で使わない略語・俗語・院内の隠語
  5. 患者を貶める言葉・レッテル貼りを避ける
  6. あいまい語(多い・少し・様子観察)を数字と行動に置き換える
  7. 看護記録の悪い例と良い例の書き直し3例
    1. 例1:夜間の睡眠
    2. 例2:服薬の説明
    3. 例3:ケアを断られた場面
  8. 看護記録を書いたあとに見直すチェックリスト
  9. 不適切な表現を書いてしまったときの訂正の仕方
  10. よくある質問
    1. 「〜と思われる」は看護記録に一切書いてはいけませんか
    2. 患者の暴言をそのまま書いてもよいですか
    3. 先輩が使っている表現が不適切だと思ったら
  11. まとめ
  12. 参考

看護記録の不適切な表現は5つの型に分けられる

避けたい表現は、思いつくままに覚えるより、型で分けると自分の記録を見直しやすくなります。

型 よくある表現 何が問題か
主観・推測 「つらそう」「理解していない様子」 書いた人の受け止めで、事実が残らない
決めつけ・診断めいた表現 「せん妄状態」「脱水」 看護師が観察した事実ではなく、判断だけが残る
略語・俗語・隠語 「ステった」「ムンテラ済み」 施設外の人や他職種に意味が通じない
患者を貶める言葉 「わがまま」「クレーマー」 開示されたときに信頼を失い、偏見を引き継ぐ
あいまい語 「多量」「少し」「様子観察」 量や程度が読み手ごとに変わる

5つに共通するのは、書いた人の頭の中にしかない情報が記録に残っているという点です。見たこと・聞いたこと・行ったことに置き換えると、避けたい表現のほとんどは直せます。

主観・推測の表現を事実に言い換える

主観的な表現は、読み手に「どうしてそう思ったのか」を想像させてしまいます。そう感じた根拠になった表情・言葉・行動を書くのが基本です。

避けたい表現 言い換えの例
つらそうだった 眉間にしわを寄せ、腹部に手を当てている
理解していない様子 説明後、「何回飲むんでしたっけ」と2回質問あり
機嫌が悪い 声をかけると「放っておいて」と返答し、顔をそむける
落ち着いている 臥床し、問いかけに目を合わせて返答あり
眠れていないようだ 0時、2時、4時の巡視時に開眼している
痛みは軽減したと思われる 「さっきより楽になった」と発言あり。NRS6から3

本人の言葉は、かぎかっこでそのまま残すと誤解が生まれにくくなります。看護師の解釈を書きたいときは、事実と分けて「A(アセスメント)」の欄に根拠とセットで書きます。

決めつけ・診断めいた表現を観察した事実に言い換える

「せん妄」「脱水」「誤嚥」のように、状態に名前を付ける表現は、記録の中で診断名のように扱われてしまいます。名前を付けるのではなく、その言葉を使いたくなった観察を書きます。

避けたい表現 言い換えの例
せん妄状態 「ここは家だ、帰る」と繰り返し、点滴ルートを触る動作あり
不穏 夜間、柵を乗り越えようとする動作が3回あり
誤嚥した 食事中にむせ込みが5回あり、湿った咳が続く
認知症のため理解困難 3分前の説明内容を本人に尋ねると「聞いていない」と返答

医師の診断として記載されている病名を書くのは問題ありません。避けたいのは、看護師が見た場面に、根拠なく診断のような名前を付けて終わることです。

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看護記録で使わない略語・俗語・院内の隠語

日本看護協会の指針は、略語は施設内で統一し、施設で定める際は国の標準規格や学術団体のガイドラインなどを参考にするよう求めています。言い換えると、施設の略語一覧にない略語は記録に書かないのが基本です。

避けたい表現 理由 言い換えの例
ステった 俗語で、死亡の記録として不適切 〇時〇分、医師により死亡確認
ムンテラ済み 説明の中身が残らない 医師より本人・妻へ手術の説明あり。妻より「再発の可能性はありますか」と質問あり
エッセン全量 施設によって通じない 昼食を全量摂取
個人的に作った略語 書いた人しか読めない 正式な名称で書く

略語そのものの意味を確かめたいときは、カルテ略語・医療用語一覧も参考になります。ただし、記録に使えるかどうかは自施設の一覧で判断してください。

患者を貶める言葉・レッテル貼りを避ける

記録は患者本人が読む可能性がある文書です。厚生労働省の「診療情報の提供等に関する指針」は、患者等から診療記録の開示を求められた場合は原則として応じなければならないとし、診療記録に看護記録を含めています。

「わがまま」「依存的」「クレーマー」「問題患者」のような言葉は、性格への評価であって観察ではありません。次の勤務者に先入観を引き継ぎ、ケアの質も下げてしまいます。

避けたい表現 言い換えの例
わがままな患者 1時間に4回ナースコールあり。用件は体位変換2回、飲水の介助2回
拒否的 清拭を勧めると「今日は寒いからやめておく」と返答
家族がうるさい 長男より面会時に「説明が足りない」と訴えあり。内容は退院日の見通し
指示が入らない 歩行時は呼ぶよう3回説明したが、1人で歩行している場面を2回確認

ケアを断られた場面は、断った理由と、代わりにどうしたかまで書くと、次の勤務で同じ場面になったときに役立ちます。

あいまい語(多い・少し・様子観察)を数字と行動に置き換える

あいまい語は、書いた人には十分でも、読む人によって量や程度が変わります。数えられるものは数字に、程度は比べられる基準に置き換えます。

避けたい表現 言い換えの例
多量の出血 ガーゼ4枚が浸透し、交換
少量の発汗 前額部に発汗あり、寝衣の交換は不要
食事摂取不良 朝食は主食2割、副食3割を摂取
様子観察 30分後に再度訪室し、NRSを確認する
特に変わりなし 何を確かめたかを書く(例: 創部の滲出液なし、痛みの訴えなし)
時々むせる 昼食中にむせ込み3回

「様子観察」は、何を・いつまでに・どうなったら報告するのかが抜けやすい言葉です。観察の項目と時間を添えるだけで、引き継ぎの質が変わります。

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看護記録の悪い例と良い例の書き直し3例

ここまでの言い換えを、記録1件に当てはめてみます。

例1:夜間の睡眠

  • 悪い例:夜間不穏あり、様子観察。眠れていないようだった。
  • 良い例:23時、「家に帰る」と言いながら柵を外そうとする動作あり。訪室し会話すると、5分ほどで臥床。1時、3時、5時の巡視時は閉眼し、呼びかけに開眼なし。

例2:服薬の説明

  • 悪い例:服薬指導したが理解不十分。
  • 良い例:退院後の内服について薬袋を使って説明。説明後に飲む時間を尋ねると「朝だけ?」と返答があり、昼と夕も飲むことを再度説明。明日の日勤で、本人に薬袋を分けてもらい確認する。

例3:ケアを断られた場面

  • 悪い例:清拭拒否。
  • 良い例:14時、清拭を勧めると「寒いからやめておく」と返答。室温を上げ、15時に再度勧めると上半身のみ実施。

良い例は長く見えますが、書いているのは「いつ・何を見て・何をして・どうなったか」だけです。慣れると、考える時間はむしろ短くなります。

看護記録を書いたあとに見直すチェックリスト

記録を確定する前に、次の項目を確かめます。

  • [ ] 「〜そう」「〜様子」「〜と思われる」で終わる文がないか
  • [ ] 状態に名前を付けただけの文(「不穏」「拒否」など)がないか
  • [ ] 施設の略語一覧にない略語・俗語を使っていないか
  • [ ] 患者や家族の性格を評価する言葉がないか
  • [ ] 「多い」「少し」「様子観察」を数字や行動に置き換えたか
  • [ ] 本人の言葉をかぎかっこで残したか
  • [ ] 時刻を書いたか

記録の時間そのものを減らしたい場合は、看護記録の簡素化で、削ってよい記録と削ってはいけない記録を整理しています。

不適切な表現を書いてしまったときの訂正の仕方

あとから避けたい表現に気づいたら、施設の訂正手順に沿って直します。日本看護協会の指針は、訂正するときは訂正した人・内容・日時が分かるようにし、訂正前の記載は読み取れる形で残すとしています。

紙の記録なら、二重線で消して訂正者と日時を書きます。電子カルテなら、多くのシステムで訂正履歴が残ります。修正テープや塗りつぶしで消すのは、改ざんと受け取られる原因になるので避けましょう。

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よくある質問

「〜と思われる」は看護記録に一切書いてはいけませんか

看護師のアセスメントとして書くのは問題ありません。避けたいのは、根拠を書かずに推測だけを残すことです。「〇〇のため、〜と考える」と根拠を前に置きます。

患者の暴言をそのまま書いてもよいですか

本人の言葉は、かぎかっこで正確に残すほうが事実として伝わります。言い換えたり要約したりすると、看護師の受け止めが入り込みます。

先輩が使っている表現が不適切だと思ったら

個人を指摘するより、病棟の記録の勉強会や監査の場で、言い換え表を共有するほうが受け入れられやすいです。

まとめ

看護記録で避けたい表現は、主観・決めつけ・略語・貶める言葉・あいまい語の5つの型に分けると見直しやすくなります。どの型も、見たこと・聞いたこと・行ったことに置き換えるのが基本です。まずは「様子観察」と「〜そう」を自分の記録から探すところから始めてみてください。

参考