看護師のポケットノートの作り方|書き込む項目・ページ構成と、書いてはいけないもの
ポケットノートは、市販のものを買えば済むように見えます。それでも自分で作る人が多いのは、病棟ごとに手順も物品の置き場所も違うからです。
市販のノートに載っているのは一般論です。現場で本当に開きたいのは「この病棟では誰に電話するか」「この物品はどこにあるか」のほうです。この記事では、何を書き込むか、どう並べると開きやすいか、そして何を書いてはいけないかを順に整理します。
なお、薬の量や採血データの基準値のような臨床判断に使う数値は、この記事では一覧にしません。施設の採用薬や基準は病院ごとに違うため、自分の施設の資料から書き写す項目として枠だけ示します。
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ポケットノートは「自分の施設の手順」を持ち歩くためのもの
新人看護職員の研修について、厚生労働省は「新人看護職員研修ガイドライン」を示しています。そこでは、1年以内に到達を目指す項目が「基本姿勢と態度」「技術的側面」「管理的側面」の3つに分けて並べられています。
ガイドラインが繰り返し書いているのは、研修の中身や到達時期は各施設が決めるということです。同じ採血でも、使う物品、確認の手順、ダブルチェックの相手は病院ごとに違います。
ポケットノートの役割はここにあります。教科書には書いていない「うちの病棟ではこうする」を、1冊にまとめて持ち歩くことです。教科書の要約を作ると、分厚くなるうえに開かなくなります。
書き込む項目は5つのブロックに分ける
項目をばらばらに書き足していくと、どこに何を書いたか分からなくなります。最初にブロックを決めて、ページを割り当てておくのがコツです。
| ブロック | 書き込む内容 | 情報の出どころ |
|---|---|---|
| 1. 連絡先と体制 | 病棟の内線、夜間の連絡ルート、医療安全の報告先 | 病棟の連絡表、オリエンテーション資料 |
| 2. 1日の流れ | 日勤・夜勤のタイムスケジュール、申し送りの時刻 | 先輩の動き、病棟の業務基準 |
| 3. 手順メモ | 自分がよく迷う処置の手順、物品と置き場所 | 施設の看護手順書、指導を受けたときのメモ |
| 4. 自分で調べて書く数値 | 採用薬の規格、採血データの基準範囲など | 施設の採用薬一覧・院内の基準値一覧(自分で写す) |
| 5. 振り返り | 指導で言われたこと、次に確認すること | 自分の記録 |
ブロック4は、必ず施設の資料から自分で写してください。ネットや市販本の数値をそのまま書くと、施設の採用品や基準と食い違うことがあります。写したら、指導者に一度見てもらうと安全です。
作り方の手順
手順1 ノートを選ぶ
白衣のポケットに入るサイズ(おおむねA6からB7)を選びます。ページを差し替えられるリングタイプは、異動や手順の改訂に対応しやすくなります。
水に濡れる場面や、消毒用アルコールが付く場面もあります。表紙は拭けるものを選んでおくと長持ちします。
手順2 インデックスを先に付ける
5つのブロックの見出しを、インデックスシールで先に作ります。中身が空でもかまいません。書く場所が決まっていると、メモを取ったその場で正しいページへ書けるからです。
手順3 最初の1週間は「迷ったこと」だけ書く
最初からきれいに埋めようとすると、手が止まります。最初の1週間は、実際に迷ったこと、先輩に聞いたことだけを書き足していきます。
聞いたことを書くときは、次の3点をセットにします。
- 何を迷ったか(例:夜間に病棟の物品が足りないとき、どこに連絡するか)
- 答え(例:夜間は○○に内線)
- 誰に確認したか・いつ確認したか
「誰に・いつ」を残しておくと、手順が変わったときに誰に聞き直せばよいか分かります。
手順4 週末に清書して、並べ替える
走り書きのメモは、週に1回まとめて清書します。このとき、よく開くページを前に、あまり開かないページを後ろに移します。
略語や医療用語で迷うことが多い人は、ブロック3の後ろに「自分が迷った略語」だけのページを作ると便利です。一覧から全部を写す必要はありません。略語の読み方は医療略語・カルテ用語一覧(診療科別)で確認できます。
手順5 1か月ごとに「もう要らないページ」を抜く
身についた手順のページは抜いて、別のファイルに保管します。ポケットノートは厚くなるほど開かなくなります。薄く保つことが、使い続けるための条件です。
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そのまま写せる空欄テンプレート
ブロック3とブロック4は、次の枠で書くと後から見返しやすくなります。
手順メモの枠
| 項目 | 記入欄 |
|---|---|
| 処置・業務の名前 | |
| 施設の手順書の該当ページ | |
| 物品と置き場所 | |
| ダブルチェックの相手 | |
| 迷いやすいポイント | |
| 確認した人・日付 |
自分で調べて書く数値の枠
| 項目 | 記入欄 |
|---|---|
| 何の数値か | |
| 出典(施設のどの資料か) | |
| 資料の版・更新日 | |
| 指導者の確認 | 済・未 |
数値の欄には必ず「出典」と「版」を書きます。採用薬や測定方法が変わったとき、古い情報のまま使い続けるのを防ぐためです。
書いてはいけないもの
ここが一番大事です。ポケットノートは病院の外にも持ち出す可能性があります。
保健師助産師看護師法第42条の2は、看護師が「業務上知り得た人の秘密」を漏らしてはならないと定めています。看護師でなくなった後も同じです。新人看護職員研修ガイドラインの到達目標にも「プライバシーを保護して医療情報や記録物を取り扱う」が1年以内に到達を目指す項目として入っています。
具体的には、次のものは書かないでください。
- 患者の氏名、イニシャル、病室番号とベッド番号の組み合わせ
- 生年月日、住所、家族構成など、組み合わせると個人を特定できる情報
- その日の受け持ち患者の病名やデータ
その日の受け持ちのメモは、施設が用意した用紙に書き、勤務終了時に施設のルールどおりに処分します。ポケットノートには、患者に関係しない「手順」と「連絡先」だけを残す、と線を引いておくと迷いません。
医療機関での個人情報の扱いは、厚生労働省が医療・介護関係事業者向けのガイダンスとしてまとめています。自分の施設の個人情報保護規程も、オリエンテーションで一度確認しておきましょう。
報告や申し送りのメモとは分けておく
ポケットノートに、報告の型や申し送りのチェック項目まで詰め込む人もいます。ただ、これらはその場で使う型なので、別のカードにしたほうが取り出しやすくなります。
- 医師への報告の型はSBARの伝え方と例文
- 申し送りの項目は申し送り事項の書き方とコツ
- 振り返りの書き方は看護のリフレクションの書き方
ブロック5の「振り返り」には、指導で言われたことを一言だけ書き、詳しい振り返りは別のノートや研修手帳に回します。
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よくある質問
Q. 市販のポケットノートと自作、どちらがいいですか。
両方を使い分ける人が多いです。一般的な知識は市販のもので調べ、自分の病棟の手順や連絡先は自作のノートに書きます。市販のものに書かれた数値を使う前には、施設の資料と一致しているかを確認してください。
Q. デジタル(スマホのメモ)で作ってもいいですか。
施設のルール次第です。勤務中の私用スマホの持ち込みを禁止している施設や、撮影を禁止している施設があります。持ち込める場合でも、患者情報を入力しない点は紙と同じです。
Q. 異動したら作り直すべきですか。
ブロック1〜3は作り直したほうが早いです。連絡先、1日の流れ、物品の置き場所は部署ごとに違います。ブロック5の振り返りは、前の部署のものも残しておくと、自分の成長を確認する材料になります。
Q. 先輩のノートを写させてもらってもいいですか。
参考にするのは有効です。ただし、先輩のノートの数値や手順が最新とは限りません。写した後に、施設の手順書と照らし合わせてください。
まとめ
- ポケットノートは、教科書の要約ではなく「自分の施設の手順」を持ち歩くためのもの
- 書き込む項目は、連絡先・1日の流れ・手順メモ・自分で調べて書く数値・振り返りの5ブロックに分ける
- インデックスを先に付け、最初の1週間は迷ったことだけ書く
- 数値は施設の資料から自分で写し、出典と版を添える
- 患者の氏名や個人を特定できる情報は書かない
- 1か月ごとに身についたページを抜き、薄く保つ
参考
- 厚生労働省「新人看護職員研修ガイドライン【改訂版】」(平成26年2月) https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000049466_1.pdf
- 保健師助産師看護師法(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000203
- 厚生労働省「個人情報保護法等」(医療・介護関係事業者向けガイダンス) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000027272.html