ナースの勉強部屋

介護と看護の違い|根拠法・業務範囲・給与の境界線

介護と看護の違い|根拠法・業務範囲・給与の境界線

介護と看護は同じ利用者を前にしながら、根拠法も、担える業務も、資格の取り方も別の制度で動いています。
特養や老健で働くと、この境界線がどこにあるかを毎日判断することになります。
ここでは法令と公的統計をもとに、両者がどこで分かれるのかを整理します。

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目次
  1. 根拠法と資格の性格の違い
  2. 業務範囲はどこで線が引かれるか
  3. 喀痰吸引と経管栄養は誰が行えるか
  4. 資格の取り方と学習量の違い
  5. 同じ調査で見る給与の違い
  6. 働く場所と、同じ職場での役割分担
  7. 看護に向いている人/介護に向いている人/どちらでもない道
    1. 看護を選ぶ条件
    2. 介護を選ぶ条件
    3. どちらでもない道を選ぶ条件
  8. 介護職から看護師へ、看護師から介護分野へ
    1. 介護職から看護師になる
    2. 看護師が介護分野で働く
  9. 介護施設の看護師求人を実際に見る
  10. よくある質問
  11. 参考

根拠法と資格の性格の違い

看護師は保健師助産師看護師法(昭和23年法律第203号)、介護福祉士は社会福祉士及び介護福祉士法(昭和62年法律第30号)が根拠です。
別の法律なので、資格の性格そのものが違います。

看護師 介護福祉士
根拠法 保健師助産師看護師法 社会福祉士及び介護福祉士法
免許・登録 厚生労働大臣の免許(第5条) 介護福祉士登録簿への登録(第42条)
業務独占 あり(第31条) なし
名称独占 あり(第42条の3第3項) あり(第48条第2項)

一番大きな違いはここです。
保助看法第31条は「看護師でない者は、第五条に規定する業をしてはならない」と定めていて、看護師の業務は資格がなければ行えません
一方、社会福祉士及び介護福祉士法に業務独占の規定はなく、あるのは第48条第2項の名称独占だけです。
つまり介護の仕事自体は無資格でも従事でき、「介護福祉士」と名乗ることだけが資格者に限られます

看護助手や無資格の介護職員が現場に存在できるのはこの構造によるものです。
逆に、無資格者が「看護師」として働くことは制度上ありえません。

業務範囲はどこで線が引かれるか

保助看法第5条は看護師を「傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者」と定義しています。
同法第37条はさらに、主治の医師または歯科医師の指示がある場合を除き、診療機械の使用や医薬品の授与などを行ってはならないと定めています。

対して社会福祉士及び介護福祉士法第2条第2項は、介護福祉士を「身体上又は精神上の障害があることにより日常生活を営むのに支障がある者につき心身の状況に応じた介護を行い、並びにその者及びその介護者に対して介護に関する指導を行う」者と定義しています。

読み比べると境界線が見えます。

  • 医行為(医師が行うのでなければ危害を生ずるおそれのある行為)は医師の領域で、看護師は医師の指示のもとで診療の補助として担う
  • 療養上の世話は看護師が医師の指示なく自らの判断で行える領域
  • 介護は日常生活の支障に対応する領域で、医行為を含まないのが原則

食事・入浴・排泄の介助は、看護師の「療養上の世話」と介護職の「介護」が重なります。
重なるからこそ、実務では「この行為は医行為に当たるか」の判断が日常的に発生します。

喀痰吸引と経管栄養は誰が行えるか

原則の例外が、喀痰吸引と経管栄養です。
社会福祉士及び介護福祉士法第48条の2は、保助看法第31条第1項及び第32条の規定にかかわらず、介護福祉士が診療の補助として喀痰吸引等を行うことを業とできると定めています。
平成24年4月1日施行の制度で、介護福祉士本人については平成28年4月1日施行です。

対象となる行為は次の5つです。

  • 喀痰吸引(口腔内)
  • 喀痰吸引(鼻腔内)
  • 喀痰吸引(気管カニューレ内部)
  • 経管栄養(胃ろうまたは腸ろう)
  • 経管栄養(経鼻経管栄養)

ただし、資格を持っているだけでは行えません。制度上の条件が重なっています。

  1. 介護福祉士で当該行為の実地研修を修了しているか、喀痰吸引等研修を修了して都道府県知事から認定特定行為業務従事者の認定を受けていること
  2. 勤務先が登録喀痰吸引等事業者(登録特定行為事業者)として都道府県知事の登録を受けていること
  3. 登録の要件として、医師・看護職員等の医療関係者との連携が確保されていること
  4. 医師の指示の下で行われること

研修は、対象者を特定せずに行う場合(第1号・第2号研修)と、特定の利用者に限って行う場合(第3号研修)で内容が異なり、実施する行為を限定するかどうかでも変わります。
第1号・第2号研修の基本研修は講義50時間です。

看護師の側から見ると、ここが役割分担の要になります。
介護職が喀痰吸引等を行う事業所では、連携する看護職員がいることが登録の前提になっているためです。
なお、本記事が扱うのは誰が行えるかという制度上の範囲であり、手技の手順は対象としていません。

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資格の取り方と学習量の違い

看護師国家試験の受験資格は保助看法第21条に列挙されていて、大学、または文部科学大臣の指定した学校で3年以上、あるいは都道府県知事の指定した看護師養成所を卒業することが必要です。
「働きながら実務経験を積んで受験する」というルートは存在しません。

介護福祉士は、法第40条第2項に基づく4つのルートがあります。

ルート 要件の骨格
養成施設ルート 指定養成施設で2年以上(福祉系大学等の卒業者は1年以上)
実務経験ルート 実務経験3年以上+実務者研修の修了
福祉系高校ルート 指定された科目・単位を修めて卒業
EPAルート 経済連携協定に基づく在留資格で実務経験3年以上

実務経験ルートがあることが、看護師との決定的な違いです。
働きながら資格を取れるため、無資格で介護職に就き、初任者研修、実務者研修と段階を踏んで介護福祉士に至る道が制度として用意されています。
研修時間は介護職員初任者研修が130時間、介護福祉士実務者研修が450時間です(初任者研修修了者は130時間分が免除され320時間)。

なお養成施設ルートには経過措置があり、令和8年度末までの卒業者は卒業後5年間の暫定登録が認められ、その間に国家試験に合格するか5年間介護等の業務に従事すれば登録を継続できます。
この期限は延長の議論が続いているため、受験年度の告示を確認してください。

国家試験の規模も違います。
第115回看護師国家試験(2026年2月実施)は受験者59,614人・合格者52,666人で合格率88.3%、新卒者は94.1%でした。
第38回介護福祉士国家試験(2026年1月25日実施)は受験者78,469人・合格者54,987人で合格率70.1%です。

同じ調査で見る給与の違い

看護師と介護職の給与比較は、調査が違うと職場の構成も違ってしまい比較になりません。
同じ介護保険施設・事業所の中で両者を比べられるのが、厚生労働省の介護従事者処遇状況等調査です。

以下は令和6年度調査(令和6年9月時点)から、介護職員等処遇改善加算を取得している施設・事業所の、月給・常勤の者の数字です。
平均給与額は基本給+手当+一時金(4〜9月支給額の1/6)で、賞与相当分を含みます。

職種 平均給与額 基本給等 平均勤続年数
看護職員 384,620円 290,590円
介護職員(全体) 338,200円 253,810円 9.5年
うち介護福祉士 350,050円 10.4年
うち保有資格なし 290,620円 5.8年

同じ施設の中で、看護職員と介護福祉士の平均給与額の差は月額約3.5万円です。
一方で、介護職員のうち保有資格なしと介護福祉士の差は月額約6万円あり、介護の中でも資格の有無による差のほうが大きいことがわかります。

ここでの「看護職員」には准看護師が含まれます。また、これは介護保険施設・事業所の数字であり、病院で働く看護師の水準とは別に見る必要があります。

働く場所と、同じ職場での役割分担

令和6年衛生行政報告例によると、令和6年末時点の就業看護師は1,363,142人で、就業場所別では病院が895,944人(65.7%)と最も多くなっています。
介護保険施設等は107,984人、訪問看護ステーションは91,022人、社会福祉施設は28,093人です。
看護師の主戦場は病院で、介護分野で働く看護師は全体の1割程度にとどまります。

介護側から見ると比率は逆転します。特別養護老人ホームの人員配置基準(指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準・平成11年厚生省令第39号)第2条は次のように定めています。

  • 介護職員と看護職員の総数は、常勤換算で入所者3人につき1人以上
  • そのうち看護職員は、入所者30人以下で常勤換算1人以上、30人超50人以下で2人以上、50人超130人以下で3人以上
  • 看護職員のうち1人以上は常勤

入所者100人の特養なら、介護・看護合わせて常勤換算34人以上、うち看護職員は3人以上です。
現場の人数比としては、看護職員はごく少数派になります。

この人数比が役割分担を決めます。日常の生活支援は介護職員が担い、看護職員は健康状態の観察、医師や家族との連絡調整、服薬や処置の管理、急変時の判断を担うという分かれ方になりやすい構造です。

なお、この省令が定めているのは常勤換算による総数であって、夜間に看護職員を配置することは求めていません。
夜間の看護体制は施設ごとの運用に委ねられており、オンコールで対応する特養があります。
求人を見るときは、看護職員の人数だけでなく夜間体制の記載も確かめます。

老健は施設に医師が常勤し、看護職員の配置も特養より手厚い基準です。
有料老人ホームは施設類型によって看護職員の配置義務が異なり、訪問看護は1人で判断する場面が増えます。
同じ「介護分野」でも、看護職としての働き方はかなり違います。

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看護に向いている人/介護に向いている人/どちらでもない道

「どちらが良いか」では選べません。判定できる条件で線を引きます。

看護を選ぶ条件

  • 医師の指示のもとで判断する仕事に関心がある。診療の補助は看護師にしかできない領域で、ここに面白さを感じるかどうかが分かれ目です
  • 養成課程に通う年数を確保できる。保助看法第21条は大学・指定学校3年以上・指定養成所の卒業を要件としていて、実務経験だけでは受験資格を得られません。最短でも3年課程、または准看護師を経て2年課程という順序になります
  • 夜勤を前提に働ける、または夜勤のない職場に絞る覚悟がある。病院勤務は夜勤が前提になりやすく、日勤のみを選ぶと職場の選択肢が絞られます
  • 資格取得後も学び続ける前提を受け入れられる。認定看護師、専門看護師、特定行為研修と、上に積む仕組みが用意されています

介護を選ぶ条件

  • 生活そのものを支える仕事に関心がある。医行為ではなく、日常生活の維持と回復が中心です
  • 働きながら資格を取りたい。実務経験3年+実務者研修450時間で国家試験に進めます。無資格・未経験から始められる点は看護にはない特徴です
  • 学習に何年もかけられない、または学費を先に投じられない。初任者研修130時間から入り、収入を得ながら段階を上げられます
  • 身体介助の負担を続けられる。移乗や入浴介助が業務の中心になり、身体的な負荷は看護より重くなる場面があります

どちらでもない道を選ぶ条件

  • まず現場を見てから決めたいなら、看護助手(介護助手)として働く選択肢があります。無資格で就業でき、業務独占資格ではないため始めるうえでの制約がありません
  • 看護に進みたいが3年をまとめて確保できないなら、准看護師から始める道があります。准看護師として実務を積んだうえで看護師養成所2年課程に進むルートが保助看法第21条第4号に定められています
  • 身体介助が体力的に難しいなら、生活相談員、介護支援専門員、福祉用具専門相談員など、直接介助を中心としない職種があります

いずれも「今すぐ看護師か介護福祉士か」を決めなくてよい道です。
資格を取ってから方向転換するより、先に数か月働いてから決めるほうが取り返しがつきます。

介護職から看護師へ、看護師から介護分野へ

介護職から看護師になる

介護福祉士の資格は看護師国家試験の受験資格になりません。
保助看法第21条の要件を満たす必要があり、実務経験による短縮もありません。

現実的なのは准看護師を経由するルートです。
准看護師として免許を得たあと、看護師養成所2年課程に進んで看護師国家試験の受験資格を得ます。
2年課程(通信制)の入学要件は、保健師助産師看護師学校養成所指定規則の改正(令和7年2月25日公布)により、令和8年4月1日から就業年数が7年以上から5年以上(60か月)に短縮されました。
就業場所は問われないため、介護施設や訪問看護ステーションでの就業期間も算入されます。

看護師が介護分野で働く

逆方向には資格上の障壁がありません。
看護師免許があれば特養、老健、介護医療院、訪問看護、デイサービスなどで働けます。

ただし仕事の中身は病院と別物です。
医師が常駐しない職場では、受診が必要かどうかの一次判断を看護職員が担います。
処置の件数は減る一方、介護職員への指示や相談対応、家族との調整といった業務の比重が上がります。
介護職が喀痰吸引等を行う事業所では、その連携の担い手にもなります。

給与面では、前掲の調査のとおり介護保険施設等の看護職員の平均給与額は月額384,620円(令和6年9月・加算取得事業所・月給常勤)です。
病院とどちらが高いかは職場によるため、求人ごとに基本給と手当の内訳を見て判断することになります。

介護施設の看護師求人を実際に見る

介護施設の看護師求人一覧

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よくある質問

Q. 介護福祉士は看護師の資格がなくても医療行為ができるのですか

社会福祉士及び介護福祉士法第48条の2により、喀痰吸引等(喀痰吸引3種・経管栄養2種)に限って、診療の補助として行うことができます。
ただし実地研修の修了、勤務先が登録喀痰吸引等事業者であること、医師の指示、看護職員等との連携という条件がすべて満たされている必要があります。それ以外の医行為は行えません。

Q. 無資格でも介護の仕事はできますか

できます。社会福祉士及び介護福祉士法にあるのは名称独占の規定のみで、業務独占の規定はありません。
「介護福祉士」と名乗ることだけが資格者に限られます。一方、看護師は保助看法第31条により業務独占です。

Q. 介護福祉士として働いた期間は、看護師国家試験の受験資格になりますか

なりません。保助看法第21条は大学・指定学校3年以上・指定養成所の卒業を要件としており、実務経験による代替は認められていません。
准看護師を経由して看護師養成所2年課程に進むルートが実務経験を活かせる道です。

Q. 特養に看護師は何人いますか

平成11年厚生省令第39号第2条により、入所者30人以下で常勤換算1人以上、30人超50人以下で2人以上、50人超130人以下で3人以上です。うち1人以上は常勤である必要があります。

Q. 介護分野で働く看護師はどのくらいいますか

令和6年衛生行政報告例では、就業看護師1,363,142人のうち介護保険施設等が107,984人、社会福祉施設が28,093人、訪問看護ステーションが91,022人です。

参考