看護師の大卒と専門卒の違い|初任給・離職率・資格の道をデータで比べた境界線
看護師国家試験は、大学を出ても専門学校を出ても同じ試験です。受かれば同じ免許で、同じ病棟で働きます。
それでも「大卒と専門卒で何が違うのか」が気になるのは、給料や将来の選択肢に差が出ると聞くからです。この記事では、どこに差があり、どこには差が無いのかを公的なデータで確かめます。
結論を先に言うと、差が出るのは「初任給のわずかな差」と「大学院が前提の資格」の2か所です。それ以外の多くは、学歴より勤務先と経験で決まります。
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免許と仕事の中身は同じ
保健師助産師看護師法第21条は、看護師国家試験を受けられる人として、大学で必要な学科を修めた人、文部科学大臣が指定した学校(短期大学など)で3年以上修めた人、都道府県知事が指定した看護師養成所を卒業した人などを並べています。
どのルートでも、受ける試験と取れる免許は同じです。免許を取った後の業務の範囲に、学歴による違いはありません。
採用の現場でも、大卒と専門卒はほぼ同じ規模で採られています。日本看護協会の「2025年 病院看護実態調査」で、2024年度の新卒採用看護師(正規雇用)を基礎教育の種別で見ると、次のとおりです。
| 基礎教育の種別 | 新卒採用者数 |
|---|---|
| 大学(看護系大学、大学校) | 15,963人 |
| 看護師学校養成所(3年課程) | 15,059人 |
| その他(5年一貫教育・高等学校専攻科など) | 2,053人 |
| 看護師学校養成所、短期大学(2年課程) | 846人 |
| 短期大学(3年課程) | 829人 |
大学と3年課程の養成所(主に専門学校)で、採用者数はほぼ半々です。
初任給の差は月5千円台
同じ調査で、2025年度に採用した新卒看護師の初任給は次のとおりでした。
| 区分 | 平均基本給与額 | 平均税込給与総額 |
|---|---|---|
| 高卒+3年課程新卒 | 216,416円 | 285,078円 |
| 大卒 | 221,883円 | 292,527円 |
| 差 | 5,467円 | 7,449円 |
税込給与総額は、夜勤手当や住宅手当などを含み、時間外手当を除いた額です。基本給の差は月5,467円、12か月で約6万6千円になります。賞与が基本給の月数で決まる病院なら、賞与にも差が反映されます。
一方で、専門学校は3年、大学は4年です。専門卒は大卒より1年早く働き始めるため、同じ年齢で比べると、専門卒のほうが1年分の給与と経験を先に積んでいます。
勤続を重ねた後の差については、この調査には学歴別の数字がありません。勤続10年・31〜32歳・非管理職の看護師の平均基本給与額は254,286円ですが、これは学歴を分けていない数字です。差が何年続くかは病院の給与規程次第なので、気になる人は応募先の給与規程で学歴区分の扱いを確かめるのが確実です。給与明細の見方は看護師の給料は何で決まる?で解説しています。
新卒1年目の離職率も大差は無い
同じ調査で、2024年度の新卒採用看護師の離職率を基礎教育の種別で見ると、次のようになります。
| 基礎教育の種別 | 新卒離職率 |
|---|---|
| 大学(看護系大学、大学校) | 7.5% |
| 短期大学(3年課程) | 8.1% |
| 看護師学校養成所(3年課程) | 8.7% |
| その他(5年一貫教育・高等学校専攻科など) | 9.2% |
| 看護師学校養成所、短期大学(2年課程) | 12.3% |
大学と3年課程の養成所の差は1.2ポイントです。2年課程は准看護師から看護師になるルートで、働きながら学んできた人が多く含まれるため、同じ土俵では比べられません。
学歴で辞めやすさが決まる、とまでは言えない数字です。1年目を乗り切れるかは、配属先の教育体制や人間関係のほうに左右されます。
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差がはっきり出るのは「大学院が前提の資格」
専門看護師は修士課程の修了が要件
日本看護協会の専門看護師の認定審査は、看護系大学院の修士課程を修了し、所定の単位(総計38単位)を取ることを求めています。加えて、実務研修が通算5年以上(うち3年以上は専門看護分野)必要です。
大学院に進むには、原則として学士の学位が要ります。専門卒の人でも道はありますが、学士を取るところから始める分、時間がかかります。
認定看護師と認定看護管理者は、学歴を問わない道がある
認定看護師の認定審査の要件は、看護師免許を取った後の実務研修が通算5年以上(うち3年以上は認定看護分野)であることと、教育機関の課程を修了することです。学歴の条件はありません。
認定看護管理者の認定審査は、看護師免許を取った後の実務経験が通算5年以上あることに加え、認定看護管理者教育課程サードレベルの修了か、看護管理に関連する修士以上の学位のどちらかを求めています。サードレベルを修了する道なら、学位は要りません。
認定看護師の分野の一覧は認定看護師の種類一覧にまとめています。
保健師・助産師は、どちらのルートでも取れる
保健師国家試験(第19条)と助産師国家試験(第20条)は、どちらも指定された学校や養成所で1年以上学ぶことが受験の条件です。
大学によっては、4年間のうちに保健師や助産師の課程を選べる場合があります。ただし選択制で人数に限りがあることもあるため、志望校の募集要項で確かめてください。専門学校を出た後に、1年課程の養成所や大学の専攻科に進む道もあります。詳しいルートは保健師の資格はどう取る?で扱っています。
専門卒でも後から学士を取れる
大学改革支援・学位授与機構は、専修学校の専門課程を修了した人(学校教育法第132条により大学に編入学できる人)を、単位を積み上げて学士の学位を申請できる人に含めています。働きながら学士(看護学)を取り、そこから大学院を目指すことも制度上は可能です。
大卒と専門卒の境界線
| 判断 | 当てはまる条件 |
|---|---|
| 大学を選ぶ | 将来、専門看護師や大学院への進学、教育・研究職を考えている/在学中に保健師や助産師の課程も視野に入れたい/4年間の学費と生活費を用意できる、または奨学金の返済計画が立てられる |
| 専門学校を選ぶ | 1年でも早く現場に出て経験を積みたい/学費を抑えたい/病院附属の学校で、実習先がそのまま就職先の候補になる環境が合う |
| どちらでも変わらない | 病棟で臨床を続けたい/認定看護師や認定看護管理者を目指す/訪問看護やクリニックなど、学歴区分を設けない職場を考えている |
| まだ決めなくていい | すでに看護師として働いていて、学歴差が気になり始めた段階の人。大学院を目指すと決めたときに、学位授与機構の制度で学士を取る道がある |
学校選びそのものの年数や費用は看護学校は何年かかる?、奨学金の条件は看護師の奨学金は3種類で詳しく比べています。
よくある質問
Q. 大卒のほうが国家試験に受かりやすいのですか。
国家試験は同じ試験で、合格の基準も同じです。第115回看護師国家試験(令和8年2月実施)の合格率は全体で88.3%、新卒者では94.1%でした。学校ごとの合格率は各校が公表しているので、志望校の数字を見るほうが判断に使えます。
Q. 大卒のほうが出世しやすいですか。
看護師長や看護部長への昇進に、学歴の条件を設けていない病院が多くあります。認定看護管理者も、教育課程サードレベルを修了する道なら学位は要りません。ただし病院によって方針は違うため、目指す職場の人事制度を確かめてください。
Q. 専門卒で転職するとき、不利になりますか。
求人の多くは、看護師免許と経験年数で条件を出しています。学歴で初任給の区分を分けている病院では、前職の経験年数の換算方法も確かめておくと安心です。
Q. 社会人から看護師を目指すなら、どちらがいいですか。
年齢が上がるほど、1年早く働き始められる専門学校の利点が大きくなります。一方で、大学院まで進むつもりがあるなら、最初から大学を選ぶほうが遠回りを避けられます。
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まとめ
- 看護師の免許と業務の範囲は、大卒と専門卒で同じ
- 新卒の初任給は、大卒が基本給で月5,467円高い(2025年度の平均)
- 専門卒は1年早く働き始めるため、同じ年齢では1年分の給与と経験が先行する
- 新卒1年目の離職率は、大学7.5%・3年課程養成所8.7%で大差は無い
- はっきり差が出るのは、修士課程の修了が要件の専門看護師
- 認定看護師は学歴を問わず、認定看護管理者もサードレベル修了の道なら学位は不要
- 専門卒でも、後から学士を取り大学院を目指す道がある
参考
- 保健師助産師看護師法(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000203
- 日本看護協会「2025年 病院看護実態調査 報告書」(日本看護協会調査研究報告 No.102) https://www.nurse.or.jp/nursing/assets/102.pdf
- 厚生労働省「第112回保健師国家試験、第109回助産師国家試験及び第115回看護師国家試験の合格発表」 https://www.mhlw.go.jp/general/sikaku/successlist/2026/siken03_04_05/about.html
- 日本看護協会「専門看護師」 https://www.nurse.or.jp/nursing/qualification/vision/cns/
- 日本看護協会「認定看護師」 https://www.nurse.or.jp/nursing/qualification/vision/cn/
- 日本看護協会「認定看護管理者」 https://www.nurse.or.jp/nursing/qualification/vision/cna.html
- 大学改革支援・学位授与機構「基礎資格を有する者の確認」 https://www.niad.ac.jp/n_gakui/tsumiage/degree_awards_system/1174157_845.html