ナースの勉強部屋

患者から求められる看護師像とは

患者から求められる看護師像とは

いきなりですが看護師のみなさん、患者から求められる看護師とはどのようなものだという風に感じますか? 日々働いていると、「今の対応は悪くなかったかな」「ちゃんと患者に寄り添えているかな」など、ふと思う瞬間がありませんか? 私はよくあります。忙しいあまり余裕が持てず、時間内に業務を終えることばかり考えてしまい、「すこしきつい言い方をしてしまったな」「忙しさは患者には関係ないことだしな」と退勤後に振り返ることがよくあります。

そんななか、学校卒業後、何度か転職してきましたが、患者からどのような看護師が求められるのかについての具体的な指導や教育を受けたことがないことに気づいたのです。経験する中で学ぶべきことという考えも理解できるのですが、経験のない新人看護師にこそ、きちんとした指導や教育をすべきだという風に感じました。

そこで今回は、

  • 実際私が患者から求められた看護師像について
  • 間違った看護師の価値観

などを実体験も踏まえてご紹介していきたいと思います。

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目次
  1. 患者が求める看護師像について
    1. 看護師と患者の思いのズレ
    2. 介護浴で急変?
    3. 過去のトラウマ
  2. 患者が求める看護師
    1. 患者をよく観察している看護師
    2. 患者みんなに平等な看護師
    3. 話し相手になってくれる看護師
  3. まとめ

患者が求める看護師像について

まずは、実際に患者がどのような看護師像を求めているのかについてご紹介していきます。

看護師と患者の思いのズレ

患者A(90代・女性)は何度も入退院を繰り返し、ほとんど歩けない状態でした。私の知る限りで3度目の入院。Aのことを知っている看護師も少なくありませんでした。Aは「またお世話になるね」と小さな声で話しかけてくださり、そのときは骨折での入院でもう歩くことは年齢的にも危険との判断でしたが、たとえ歩けるようにならなくても、傷だけはしっかり治して退院していただきたいと誰もが思っていました。

入院して2週間が経とうとしたところ、ようやくAの脚のギブスが取れることとなり、入浴できることになりました。Aはギブスが取れたことについてはとても喜んでいましたが、入浴できることに関してはあまり喜んでいない様子でした。入院して初めての入浴当日、ギブスは外れたものの歩くことは困難であることから、寝たままでOKの介護浴をしていただくことになりました。2週間程入浴出来なかったということで、看護師たちも「Aさん良かったですね! ゆっくり入ってきてくださいね」と声をかけていました。ですが、看護師たちの思いとは裏腹に、Aの表情はあまりいいものではありませんでした。

介護浴で急変?

Aは入浴に対してあまり意欲的ではありませんでしたが、拒否はなくすんなりと介護浴室へと移動していきました。その日は、私と別の先輩看護師Bの2人が入浴担当でした。Aは手術箇所の右足以外は問題なく動かすことができていたので、自分の手が届く範囲は洗ってもらうようにとリハビリスタッフから申し送りをされていました。Bは申し送り通り、「Aさん、届くところはご自分で洗えますか?」とAに尋ねました。するとその瞬間、Aのそれまでの穏やかな雰囲気が一変したのです。

「見えないんだから自分でやれるわけないでしょう! 中途半端にされるくらいならはじめから全部自分でしますから!」と興奮気味にBに対して感情を露わにしたのです。Aは基本的に穏やかで、ご家族にも私たちにもいつも温かい言葉を投げかけてくれるような方であったので、見たことのないAの姿に驚きました。

「見えないんだから自分でやれるわけないでしょう!」という発言に対して、確かに寝たままドーム状の機械に入り首から下はカーテンで仕切られているので見えないというのはその通りだと思いました。ですが、BはAが初めての介護浴で少し恐怖を感じて緊張していると思ったのか、「そんなに怖がらなくても大丈夫ですよ。胸やお腹は洗えますか?」と続けて発言したのです。

するとAは更に興奮して、「しつこいわね! あなたたちからは見えてるんでしょ? だったら洗ってくれてもいいじゃない! 私は入りたくて入ってるんじゃないんだから」と言い、はじめてAの本当の思いを聞いたような気がしました。

その後、2人掛かりで体を洗いなんとか終えることができました。

過去のトラウマ

Aの見たことのない表情や初めて聞いた本当の思い、何か原因がないとおかしいと感じ、謝罪も含めて私はAの部屋に向かいました。私が訪室するや否やAの方から「さっきはみっともないところを見せて悪かったね。こんな年寄りの体を洗ってくれることだけでもありがたいのに、本当に嫌な思いをさせてごめんなさいね」と言ってきたのです。私はてっきり、怒鳴られたり毛嫌いした態度をとられたりするのではないかと思っていたので、Aからの謝罪にとても驚きました。

私「とんでもないです。私たちも無理を言って申し訳なかったです。今はご気分いかがですか?」

A「大丈夫だよ。久しぶりのお風呂で綺麗に洗ってもらって極楽でした」

とさっきのAとは別人のような表情で話して下さったのです。

認知症の方であれば、周辺症状として怒りやすくなることが考えられるのですが、Aは認知症も患っていなかったことから、尚更入浴時の剣幕に疑問を感じました。

私「Aさんは元々お風呂が嫌いなんですか?」

A「とんでもない! 主人がまだいたころはよく2人で温泉に行っていたほどお風呂は好きだよ。歳を取ってすこし億劫になったけどお風呂は大好き。でも前にいたところ(病院)で嫌な思いをしてね」

それから、なぜお風呂が嫌いになったのかAは話して下さいました。Aがまだ歩けていた頃、自宅退院を目標に日々励んでいたときの話です。私たち看護師を含め、医師、リハビリスタッフ、薬剤師など全てのスタッフが「お家に帰れるようにがんばりましょうね。」とAに向けて声かけなどをしていましたが、それが次第にAの負担になっていったと言います。

特に体に問題があるわけではないものの、90代と高齢ということもあり、日々の疲れやストレスが溜まりリハビリが乗り気でない時も多々あったようで、あるときこう言ったそうです。

A「今日はリハビリお休みしたいんだけど」

リハビリスタッフ「熱とかではないんですよね? 1日でもさぼるとせっかく今までやってきたことが水の泡になってしまいますよ! 早くお家に帰れるようにがんばりましょう!」

そう言われ、なかば強引にリハビリをさせられていたそうです。その頃から、段々病院にいることが嫌になり、早く退院したけどリハビリも嫌になっていたと話していました。お風呂に関しても、その頃はまだ歩けていたので介護浴ではなくシャワー浴で、ある日、助手介助のもと入浴したときに決定的な出来事が起こったそうです。

何度も言うようですが、90代と高齢であることから、ただでさえ濡れた浴室内を歩くことだけでも怖いのに、助手からは「自分で洗えるところは洗いましょう! リハビリでもやっていますよね?」や、手の届かないところを少しお願いしただけでも「できるようにならないとお家に帰ってから大変ですよ~」といった、寄り添うどころか厳しいことばかり言われて、Aは限界を感じ、家族に相談して急遽退院することにしたといいます。

それ以来、Aは入院するたび看護師やその他のスタッフの心無い発言に敏感になってしまい、一番印象の強いお風呂でのエピソードが原因で、大好きなお風呂も自分で体すら洗えないなら入る資格がないとまで思ってしまうようになったこと、そしてこのことがフラッシュバックして、私たちの前で感情を露わにしてしまったことを話してくれました。

話を聞き、病院側・A側双方の言い分を理解することができましたが、Aのエピソードを聞いて私自身強くハッとさせられたのです。看護師として働くなかで退院支援は非常に重要なことですが、Aの周りにいたスタッフのように、知らない間に患者にプレッシャーを掛けていたり、支援のつもりが裏目に出てしまったりすることがあるのです。ましてや患者のやる気を損なったり、クレームにも繋がったりしては元も子もありません。

Aと距離を取るのではなく、しっかり向き合った結果、原因を知ることができてとても勉強になっただけでなく、看護師としての糧ができたような気持ちになりました。

患者が求める看護師

Aのエピソードも踏まえて、患者はどのような看護師を求めているのかについてご紹介します。

患者をよく観察している看護師

私が実際に、自分のことをよく見てくれていると感じた患者の声をいくつかご紹介します。

スプーンを使うことがかっこ悪いと思っている男性患者。スタッフに「スプーンください」と言えずお箸で食事をしていると、その患者がいないときにそっと受け持ち看護師が数本のスプーンを置いていってくれた。看護師は、その患者の食事摂取量にムラがあることを疑問に思い、日頃から注意して観察していたことでお箸が原因だということに気づくことができた。

麻痺足側に降り場があったベッドを、健足側に降り場のあるベッドに、患者がいない間に交換してくれていた。その患者は麻痺があるとはいえ歩行は自立であるにも関わらず、あまり部屋から出てこないことを疑問視した看護師が気づいたことによるもの

これらは、日頃から患者をよく見ていることから気づくことができた一例です。ベッドの件に関しては、事前に知っておけば防げたことでもあるため、情報漏れや報告漏れなども考えられますが、いかんせん、日頃からきちんと患者を見ている看護師だからこそ気づくことができたことでもありますし、患者はそのような看護師を元得ています。

患者みんなに平等な看護師

  • 自立している患者・退院が決まっている患者への対応がずさんになりがち
  • 余裕の有無で患者への態度にムラができる

こういった看護師は患者から敬遠されがちです。気を付けなければならないとわかってはいるものの、長く医療現場にいると無意識にやってしまうので私も反省の毎日です。

処置が早く完璧な先輩看護師がいます。ですが、いつも表情は固く患者との会話も業務的なもので患者たちからは、「いくら手当てが上手くても怖い顔してやられたら治るものも治らないよ」と話されたことがあります。

反対に、ミスが多く看護師内ではお荷物扱いされているけど、常に明るいことから、患者には好かれているという看護師もいます。どんなに忙しくてもみんなに平等に笑顔で対応する看護師だと、「その人が担当の日は嬉しいよ」という声も聞いたことがあります。

患者は私たちが思っている以上に看護師のことを見ています。処置の完璧さなどが重要視されやすい医療現場ですが、患者が本当に求めているのはそれだけでは無いということがおわかりいただけたと思います。

話し相手になってくれる看護師

私は緩和ケア病棟で働いていたとき、あることがきっかけで患者の思いに気づくことができました。男性患者Aは、私たちが忙しくなればなるほど頻繁にコールを押す人でした。正直看護師全員頭を抱えており、何か原因があるのではないかと私はAに向き合ってみることにしました。いつものようにコールが鳴りAのところへ向かうと、驚くことにとても笑顔で私を迎えてくれたのです。

A「普通に来てくれたのはあなたがはじめてだよ。来る人みんな凄い形相でろくに話もしてくれないし、特に用が無いと言うとみんなすぐ行ってしまうから」

Aはそう話してくれました。

確かに、忙しい合間に訪室して「特に用はない」と言われると拍子抜けしたような気持ち似なりますが、Aはただ看護師と会話がしたかっただけだそうです。よくよく考えて見れば、ただ世間話をするために訪室する時間なんてないし考えてもいなかったので、患者はそのような業務ばかりの看護師たちや入院生活に寂しさを感じていたのだと気づくことができました。

Aとはその後ちょくちょく会話をするようになり「今日もみんな忙しそうだね。ちゃんと休憩はとれているの?」と気にかけてくれていたことにも気づくことができました。心細い入院生活の中で少しでも話し相手になって安心させてくれる看護師を、患者は求めていることをおわかりいただけたと思います。

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まとめ

  • 自分のことをよく見てくれている看護師
  • 患者全員に平等な看護師
  • 話し相手になってくれる看護師

患者が求める看護師の一部をご紹介させていただきましたが、全てを実践するのは難しいと思います。正直、気にしている暇がないくらい忙しい日もありますし、私たち看護師も人間ですし元気で明るくいられないときだってもちろんあります。ですが、このことを心の隅に置いておくことで、より患者側の立場になって考えられますし、看護師としてだけでなく人としてのスキルアップにも繋がりますので、少しずつでも実践していただきたいと思います。