ナースの勉強部屋

看護師のナラティブの書き方と例文|ラダー昇格で使える構成テンプレートと経験年数別の例文3つ

看護師のナラティブの書き方と例文|ラダー昇格で使える構成テンプレートと経験年数別の例文3つ

看護師のナラティブは、自分が実際に関わった看護の場面を、物語のように書き起こす文章です。何に気づき、なぜそう判断し、どう動き、患者さんがどう変わったかを、一つの場面に絞って書きます。

ナラティブの提出を求める場面で多いのは、院内のクリニカルラダーの昇格や、年度末の振り返りです。ナラティブを求めるかどうか、字数や様式は施設が決めているので、最初に所属先の要項を確かめてください。

この記事では、ナラティブの構成テンプレート、経験年数別の例文3つ、評価で見られるポイント、リフレクションやケーススタディとの違い、患者情報の扱いを整理します。例文に出てくる患者さんの情報は、すべて架空のものです。

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目次
  1. 看護師のナラティブとは(看護実践を物語で振り返る文章)
  2. 看護師のナラティブの構成テンプレート(場面・判断・行動・結果・学び)
  3. 看護師のナラティブの例文(2〜3年目・5年目前後・10年目以上)
    1. 2〜3年目の例文:受け持ち患者さんの行動の理由に気づいた場面
    2. 5年目前後の例文:本人の「大丈夫」の奥にある不安に気づいた場面
    3. 10年目以上の例文:チームと家族をつなぎ、本人の意思を中心に置いた場面
  4. ラダー昇格のナラティブで見られるポイント(判断の根拠と変化)
  5. ナラティブとリフレクション・ケーススタディの違い
  6. ナラティブを書くときの患者情報の扱い
  7. よくある質問
    1. ナラティブは何文字くらい書けばよいですか?
    2. 題材にする場面が思いつきません。
    3. 失敗した場面を書いてもよいですか?
  8. まとめ
  9. 参考

看護師のナラティブとは(看護実践を物語で振り返る文章)

ナラティブ(narrative)は「語り」「物語」という意味です。看護師のナラティブでは、教科書の手順どおりにできたかではなく、目の前の患者さんに対して自分が何を考えて動いたかを書きます。

クリニカルラダーは、看護実践能力を段階で示す仕組みです。チェックリストだけでは、同じ「できる」にどんな判断が含まれていたかが見えません。そこで、実際の場面を文章で書いてもらい、判断の中身を読み取る材料として、ナラティブを使う施設があります。ラダーの全体像はクリニカルラダーとは? 日本看護協会版の5段階と4つの力、評価で見られる中身で紹介しています。

日本看護協会の「看護師のまなびサポートブック」(2023年)は、自分の成長の記録として目標や経験をポートフォリオにまとめておくことを勧めています。日々の印象に残った場面をメモしておくと、ナラティブの題材を探すときに役立ちます。

看護師のナラティブの構成テンプレート(場面・判断・行動・結果・学び)

ナラティブは自由に書いてよいとされることも多いですが、次の7つの順に書くと、読み手が判断の流れを追いやすくなります。

順番 書くこと 分量の目安
1. タイトル 場面を一言で表す(例:「夜中のナースコールの理由」) 1行
2. 場面の背景 自分の立場(受け持ち・リーダーなど)、患者さんの状況を、必要な分だけ 1割
3. 気づいたこと 何を見て、何がいつもと違うと感じたか 1〜2割
4. 判断とその根拠 なぜそうしようと考えたか。迷ったことも書く 2〜3割
5. 行ったこと 自分が実際にした看護、誰とどう相談したか 2割
6. 患者さんの反応・結果 行ったあと、患者さんや家族がどう変わったか 1割
7. 振り返りと次に活かすこと この場面から学んだこと、次の場面でどうするか 1〜2割

分量で一番厚くするのは4の判断とその根拠です。ここが薄いと、「良い看護をした話」で終わり、どんな力を使ったのかが伝わりません。

書き方は、「私は」を主語にした一人称で、場面が目に浮かぶように書きます。患者さんの言葉は「」で残すと、その時の様子が伝わります。

看護師のナラティブの例文(2〜3年目・5年目前後・10年目以上)

経験年数ごとに、取り上げる場面と書く判断の幅を変えています。ラダーのレベルは年数と一致するとは限らないので、自分が申請するレベルの要件に合わせて場面を選んでください。

2〜3年目の例文:受け持ち患者さんの行動の理由に気づいた場面

夜中のナースコールの理由

2年目の夜勤で受け持った80代のAさんは、入院3日目から、夜中に何度もナースコールを押していました。訪室すると「何でもない」と言われることが多く、申し送りでは「夜間の不穏」と伝えられていました。

3回目の訪室のとき、Aさんがベッドの柵を握り、体を起こそうとしていることに気づきました。ナースコールの時刻を記録で見返すと、いずれも前回のトイレから2〜3時間たったころでした。私は、Aさんはトイレに行きたいのに、看護師を呼ぶことに遠慮して「何でもない」と言っているのではないかと考えました。

次にナースコールがあったとき、「トイレに行きますか」と先に尋ねると、Aさんは「実は行きたかった」と話しました。翌日のカンファレンスで、排泄の時間に合わせて訪室する案を出し、チームで試すことになりました。

その後の夜勤では、ナースコールの回数が減り、Aさんは朝まで眠れる日が増えました。「夜に何度も呼んで悪いと思っていた」と話してくれました。

この場面から、患者さんの行動を「不穏」とまとめる前に、その行動の理由を記録や様子から探すことを学びました。今は、気になる行動があるときは、時刻や前後の出来事を記録で見返すようにしています。

5年目前後の例文:本人の「大丈夫」の奥にある不安に気づいた場面

「大丈夫」と言ったBさんの退院準備

5年目のとき、一人暮らしのBさん(70代)の退院支援を担当しました。Bさんは退院前の面談で「家のことは全部一人でできるから大丈夫」と繰り返していました。

退院に向けて、薬を飲む時間を自分で管理する練習をしていたところ、Bさんが薬の袋を前に手を止めている場面が何度かありました。声をかけると「ちょっと考えていただけ」と答えました。私は、Bさんは一人で管理できないと思われたくなくて、困っていることを言い出せないのではないかと考えました。一方で、本人が「大丈夫」と言っている以上、こちらから支援を増やすと自信を失わせるかもしれないとも迷いました。

そこで、「家で困りそうなことを一緒に考えたい」と伝え、Bさん自身に生活の場面を一つずつ話してもらいました。Bさんは「夕方になると、飲んだかどうか分からなくなることがある」と話してくれました。その言葉を、本人の了承を得て退院前カンファレンスで共有し、訪問看護やケアマネジャーと、確認の方法を相談しました。

退院の日、Bさんは「困ったら電話していいと分かって安心した」と話しました。

この経験から、本人の「大丈夫」をそのまま受け取るのでも、こちらで決めて支援を足すのでもなく、本人が自分の困りごとを言葉にできる場をつくることが大切だと学びました。今は、退院支援で生活の場面を本人と一緒にたどる時間を取るようにしています。

10年目以上の例文:チームと家族をつなぎ、本人の意思を中心に置いた場面

Cさんの言葉を、話し合いの真ん中に置く

12年目、リーダーとして勤務していた病棟で、Cさん(80代)の今後の療養の場所について、家族の意見が分かれていました。長男は自宅での療養を、長女は施設への入所を望んでいました。

受け持ちの後輩から「どちらの家族の話を聞いても、もっともだと思ってしまう」と相談を受けました。私は、家族の意見を比べる前に、Cさん本人がどう考えているかが、まだ誰にもきちんと聞かれていないことに気づきました。Cさんは家族の前では「みんなに任せる」と話していましたが、清拭のときには「庭の見える部屋がいい」と話すことがありました。

私は、後輩と一緒にCさんの話を聞く時間をつくり、その言葉を記録に残すよう後輩に伝えました。そのうえで、医師、医療ソーシャルワーカー、家族が集まる話し合いの場を調整し、Cさんの言葉を本人の了承を得て伝えました。療養の場所は、医師から説明を受けたCさんと家族が話し合って決めました。

話し合いのあと、長女から「母がそんなふうに思っていたとは知らなかった」と声をかけられました。後輩はその後、別の患者さんでも、本人が話した言葉を記録に残すようになりました。

この場面から、リーダーの役割は答えを出すことではなく、本人の意思が話し合いの真ん中に置かれるよう場を整えることだと考えるようになりました。後輩が同じ場面で迷ったときに、自分で動けるように関わることも、今の自分の課題だと感じています。

3つの例文は、年数が上がるにつれて、一人の患者さんへの気づき → 本人の意思を引き出す関わり → チームや家族を動かす調整へと、判断の範囲が広がるように書いています。

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ラダー昇格のナラティブで見られるポイント(判断の根拠と変化)

ナラティブを評価する人が読み取ろうとしているのは、出来事の結果よりも、その場面で看護師が何を考えたかです。提出前に、次の点を見直してください。

見直す点 書けていない例 書けている例
気づいたきっかけが具体的か 「様子がおかしいと思った」 「ナースコールの時刻が、前回のトイレから2〜3時間後にそろっていた」
判断の根拠があるか 「必要だと思い〜した」 「〜と考えた。一方で〜とも迷った」
自分の行動と他者の行動を分けているか 「チームで対応した」 「私はカンファレンスで案を出し、チームで試すことになった」
患者さんの変化が分かるか 「良くなった」 「朝まで眠れる日が増え、『悪いと思っていた』と話した」
申請するレベルの要件に合う場面か 手順どおりにできた場面だけを書いている 個別性や予測、調整など、要件にある力が使われた場面を選んでいる
学びが次の行動になっているか 「大切さを学んだ」で終わる 「今は〜するようにしている」まで書く

うまくいった場面である必要はありません。迷ったこと、思いどおりにいかなかったことを書き、そこから何を考えたかを示すほうが、判断の過程が伝わります。

年度の目標と合わせて振り返りをまとめる場合は、看護師の目標管理シートテンプレート|ラダー・経験年数別の書き方例文と面談で見られるポイントも参考にしてください。

ナラティブとリフレクション・ケーススタディの違い

3つとも看護の場面を振り返る文章ですが、誰が読み、何のために書くかが違います。

文章 主な読み手 書く目的 中心になること
ナラティブ ラダーの評価者、上司 自分の看護実践の力を、場面を通して示す その場面での判断と行動
リフレクション 自分自身(指導者) 自分の感情や判断を見つめ、次の行動を決める 自分の内面と、次にどうするか
ケーススタディ 院内発表の聴き手、指導者 1事例の看護を、文献と照らして考察する 看護の経過と考察

ナラティブはリフレクションと重なる部分が多いですが、評価者に読まれる前提で、自分の判断を説明できる形に整える点が違います。リフレクションの書き方は看護のリフレクションの書き方|ギブスのリフレクティブサイクル6段階と例文(実習・新人看護師)、ケーススタディは看護のケーススタディの書き方|構成テンプレートと章ごとの例文、看護研究・リフレクションとの違いの判定表で紹介しています。

ナラティブを書くときの患者情報の扱い

ナラティブは院内の評価に使う文章でも、患者さんの情報を含みます。日本看護協会の「看護職の倫理綱領」(2021年)は、看護職は対象となる人々の秘密を保持し、取得した個人情報は適正に取り扱うとしています。また「看護記録に関する指針」は、看護記録には病歴などの要配慮個人情報が含まれるとし、所属施設の規定に則って取り扱うよう求めています。

ナラティブを書くときは、次の点に気をつけます。

  • 患者さんの名前は「Aさん」のように置きかえ、イニシャルも使わない
  • 年齢は「80代」のように幅で書き、入院日や病室など、人が特定できる情報は書かない
  • 場面の理解に必要のない病名や家族の事情は書かない
  • 電子カルテの画面や記録を印刷して持ち出さない。下書きを自宅で書く場合も、施設の規定を確かめる
  • 提出先や保管の方法は、施設の要項に従う

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よくある質問

ナラティブは何文字くらい書けばよいですか?

施設によって指定が違います。A4用紙1〜2枚程度や、字数の上限を決めている施設もあるので、要項を確認してください。字数が足りないときは、判断とその根拠の部分を厚くすると、内容の薄さを補えます。

題材にする場面が思いつきません。

「あのとき迷った」「いつもと違うと感じた」場面を思い出してみてください。大きな出来事である必要はありません。ふだんから印象に残った場面を短くメモしておくと、題材を探すのが楽になります。

失敗した場面を書いてもよいですか?

書いてかまいません。うまくいかなかった理由を自分で考え、次にどうしたかまで書ければ、判断の過程を示す材料になります。ただし、患者さんの安全にかかわる出来事は、施設の報告の手続きとは別に扱われるので、題材にする前に上司に相談しましょう。

まとめ

  • 看護師のナラティブは、一つの場面に絞り、何に気づき、なぜそう判断し、どう動き、患者さんがどう変わったかを書く文章
  • 構成は、タイトル・背景・気づき・判断と根拠・行ったこと・反応・振り返りの7つ。一番厚く書くのは判断と根拠
  • 経験年数が上がるほど、一人の患者さんへの気づきから、チームや家族を動かす調整へと、場面の範囲を広げる
  • 患者さんの情報は、特定できない形に置きかえ、施設の規定に従って扱う

参考