ナースの勉強部屋

ヘンダーソンの14項目でアセスメントする方法|一覧表と集める情報の例、どの項目に書くか迷う情報の振り分けと例文

ヘンダーソンの14項目でアセスメントする方法|一覧表と集める情報の例、どの項目に書くか迷う情報の振り分けと例文

ヘンダーソンの14項目は、アメリカの看護師ヴァージニア・ヘンダーソンが、国際看護師協会(ICN)の依頼で1960年に著した『看護の基本となるもの(Basic Principles of Nursing Care)』で示した「基本的看護の構成要素」です。呼吸、飲食、排泄から学習まで、人が生きていくうえで誰もが持つ欲求を14に分け、それぞれについて本人が自分で満たせているかを見ていきます。

日本では看護基礎教育で長く教えられ、実習のアセスメント用紙や病棟の情報収集の枠組みとして使われています。一方で、「この情報は何番に書くのか」「満たされているかどうかをどう判断するのか」で手が止まりやすい枠組みでもあります。

この記事では、14項目の一覧、ヘンダーソンの考え方の要点、項目ごとに集める情報、迷いやすい振り分け、アセスメントの書き方を整理します。

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目次
  1. ヘンダーソンの14項目の一覧(基本的看護の構成要素)
  2. ヘンダーソンの考え方(看護独自の機能・自立・常在条件と病理的状態)
    1. 欲求に影響する「常在条件」と「病理的状態」
  3. ヘンダーソンの14項目で集める情報の例
  4. ヘンダーソンの14項目でどこに書くか迷う情報の振り分け
    1. 「充足」と「未充足」の判断で迷うとき
  5. ヘンダーソンの14項目でアセスメントを書く手順と例文
    1. 例文
  6. ヘンダーソンの14項目とゴードンの11パターンの使い分け
  7. 教育体制のある職場の看護師求人を探す
  8. よくある質問
    1. ヘンダーソンの14項目は暗記した方がよいですか?
    2. 14項目すべてを毎回アセスメントしますか?
    3. マズローの欲求階層とはどう違いますか?
  9. まとめ
  10. 参考

ヘンダーソンの14項目の一覧(基本的看護の構成要素)

14項目は、どれも「患者が〜するのを助ける」という形で書かれています。訳書の表現をもとに要点をまとめると次のとおりです。

番号 項目 主な領域
1 正常に呼吸する 身体
2 適切に飲食する 身体
3 老廃物を排泄する 身体
4 身体を動かし、望ましい姿勢を保つ 身体
5 睡眠と休息をとる 身体
6 適切な衣類を選び、着たり脱いだりする 身体・社会
7 衣類の調節や環境の調整で、体温を正常な範囲に保つ 身体
8 身体を清潔に保ち、身だしなみを整え、皮膚を保護する 身体・社会
9 環境の危険を避け、他人を傷つけないようにする 安全
10 他者とコミュニケーションをとり、感情や欲求、恐怖、意見を表す 心理・社会
11 自分の信仰に従って行動する、価値観に沿って行動する 精神
12 達成感をもたらすような仕事をする 社会
13 遊び、さまざまな種類のレクリエーションに参加する 社会
14 学習し、発見し、好奇心を満たし、健康につながる行動をとる 心理・社会

1〜9は主に身体と安全、10〜14は心と人とのつながりに関わる項目です。実習では1〜9に情報が偏りがちなので、10〜14にも何を書くかを意識すると、患者の全体像がつかみやすくなります。

ヘンダーソンの考え方(看護独自の機能・自立・常在条件と病理的状態)

14項目を使う前に、ヘンダーソンが看護をどう定義したかを押さえておくと、アセスメントの方向がぶれません。

ヘンダーソンは看護独自の機能を、病気の人にも健康な人にも、その人が体力や意思、知識を持っていれば自分でできるはずの、健康や回復、あるいは安らかな死につながる行動を助けることとし、できるだけ早く自分でできるようになるよう助けることだと述べています。

ここから、アセスメントで見るポイントが3つ出てきます。

  • 14項目それぞれの欲求が、いま満たされているか
  • 満たされていない場合、その原因は体力、意思、知識のどれが足りないためか
  • 本人が自分でできるようになるには、何を助ければよいか

欲求に影響する「常在条件」と「病理的状態」

ヘンダーソンは、同じ欲求でも人によって満たし方が違うことにも触れています。その違いを生むものとして挙げているのが、次の2つです。

区分 内容 情報の例
常在条件 いつもその人に備わっていて、欲求に影響する条件 年齢、気質や感情の状態、社会的・文化的な状態、身体的・知的な能力
病理的状態 病気やけがなどで、欲求そのものを変えてしまう状態 発熱、脱水、意識の障害、手術の前後、動けない状態、強い痛みなど

実習のアセスメント用紙では、常在条件と病理的状態を最初の欄にまとめて書き、14項目の判断の根拠として使う形が多く見られます。

ヘンダーソンの14項目で集める情報の例

項目ごとに、患者の話(主観的情報)と観察や記録(客観的情報)の両方を集めます。次の表は、病棟で集めることの多い情報の例です。

番号 集める情報の例
1 呼吸 息苦しさの訴え、呼吸の様子、酸素の使用、痰の量と性状、喫煙歴
2 飲食 食事の摂取量、食形態、むせの有無、口腔内の状態、食べ物の好み、経管栄養の有無
3 排泄 排尿・排便の回数と性状、失禁の有無、トイレまでの移動、使っている用具
4 姿勢・移動 寝返り、起き上がり、移乗、歩行の様子、使っている補助具、安静度の指示
5 睡眠・休息 眠れているかの訴え、夜間の覚醒、日中の過ごし方、入院前の睡眠習慣
6 衣類 着替えの自立度、衣類の好み、季節や場面に合った服を選べるか
7 体温 体温の推移、寒さや暑さの訴え、室温や寝具の調整を自分でできるか
8 清潔・皮膚 入浴・清拭・洗面の自立度、皮膚の状態、身だしなみへの関心
9 安全 転倒歴、ふらつき、認知機能、ルート類への理解、感染を広げない行動
10 コミュニケーション 会話の理解と表出、聴力や視力、不安や気持ちを話せる相手
11 信仰・価値観 大切にしている習慣や考え方、治療や生活についての意向
12 仕事・役割 職業、家庭での役割、入院で果たせなくなった役割
13 レクリエーション 趣味、入院中の気分転換、楽しみにしていること
14 学習 病気や治療についての理解、退院後の生活で必要な知識、知りたいこと

表のすべてを埋める必要はありません。患者の状態と入院の目的に照らして、関係の深い項目の情報を厚く集めます。

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ヘンダーソンの14項目でどこに書くか迷う情報の振り分け

1つの情報が複数の項目にまたがることはよくあります。迷ったときは「その情報が、どの欲求の満たされ方に影響しているか」で振り分けます。

迷う情報 入れる項目の考え方
痛み 痛みで眠れないなら5(睡眠)、動けないなら4(姿勢・移動)。痛みそのものは病理的状態として書き、影響している項目で判断する
点滴やドレーンが入っている 自己抜去や転倒の危険なら9(安全)、動きが制限されて着替えにくいなら6(衣類)
経管栄養 2(飲食)。食べる楽しみが話題なら13(レクリエーション)にも関わる
不安の訴え 気持ちを話せているかは10(コミュニケーション)。不安で眠れないなら5(睡眠)
退院後の生活への心配 必要な知識が足りないなら14(学習)、仕事や家庭の役割の心配なら12(仕事・役割)
尿道カテーテルの留置 3(排泄)。感染を広げない行動を見るなら9(安全)

同じ情報を複数の項目に書くこと自体は問題ありません。大事なのは、項目ごとに「その欲求がどう満たされていないか」を書き分けることです。

「充足」と「未充足」の判断で迷うとき

援助を受けて欲求が満たされている状態をどう書くかで迷う人は多いはずです。ヘンダーソンの看護の目標は、本人が自分でできるようになることです。そのため、介助で満たされていても、本人が自分で満たせていなければ、援助が必要な項目として扱います。

状態 判断の書き方の例
自分で満たせている 充足。今の状態を保てるよう見守る
介助を受ければ満たされている 介助により充足しているが、自力では未充足。何が足りないかを書く
介助を受けても満たされていない 未充足。原因と、援助の方向を書く

ヘンダーソンの14項目でアセスメントを書く手順と例文

アセスメントは、集めた情報を並べるだけでなく、情報、解釈(なぜそうなっているか)、判断(充足か未充足か、援助の方向)の順で書きます。未充足の原因を、体力、意思、知識のどれが足りないためかで書くと、ヘンダーソンの枠組みに沿った文章になります。

例文

2 飲食の例

食事は全粥・きざみ食で、摂取量は毎食5割程度。「病院の味付けは薄くて食べにくい」と話す。右上肢の麻痺があり、左手でスプーンを使うが途中で疲れて手が止まる。摂取量が少ないのは、食べる体力の不足と、食事への意欲の低下が重なっているためと考える。飲食の欲求は未充足。食べやすい自助具の工夫と、好みを取り入れられるかを多職種と相談する。

4 姿勢・移動の例

安静度は病棟内歩行可。歩行器を使って一人でトイレまで歩くが、夜間は「暗くて足元が不安」と話し、ナースコールで付き添いを求める。日中は自力で移動の欲求を満たせているが、夜間は不安から介助を要している。夜間は介助により充足しており、足元の明るさの調整で自力での移動を目指す。

14 学習の例

退院後に自宅で血糖測定を続ける予定。手技は練習中で、測定の手順の一部を看護師が声かけしている。本人は「家で一人でできるか心配」と話す。手技の知識と自信が十分ではなく、学習の欲求は未充足。退院までに手順を一人でできるよう、段階を分けて練習する。

ヘンダーソンの14項目とゴードンの11パターンの使い分け

アセスメントの枠組みとして、ヘンダーソンの14項目とよく比べられるのが、ゴードンの11の機能的健康パターンです。多くの場合、実習先や病棟でどちらを使うかは決まっています。自分で選べる場面では、次の条件で考えると迷いません。

条件 向いている枠組み
学校や病棟で様式が指定されている 指定された枠組み
食事・排泄・移動など、日常生活の援助を中心に見たい ヘンダーソン
看護診断(NANDA-I)につなげて看護問題を挙げたい ゴードン
健康の受け止め方や役割、性など、生活の幅広い面を整理したい ゴードン

看護診断の書き方は看護診断の書き方|PES方式の型、実習記録の書き方は看護実習記録の書き方|SOAPとアセスメントの例文で整理しています。

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よくある質問

ヘンダーソンの14項目は暗記した方がよいですか?

番号と項目の対応を覚えておくと、記録や申し送りで話が通じやすくなります。ただ、実習や臨床では、項目名を覚えることより、患者の情報をどの欲求に結びつけて判断するかの方が大切です。

14項目すべてを毎回アセスメントしますか?

入院時や受け持ち開始時には全体を一度確かめ、その後は患者の状態と看護の目標に関わる項目を重点的に見直すのが一般的です。様式で全項目の記入が求められている場合は、その決まりに従ってください。

マズローの欲求階層とはどう違いますか?

マズローは人の欲求を階層で説明した心理学の理論で、ヘンダーソンは看護が助ける生活の行動を14に分けた看護理論です。アセスメントの枠組みとして使うときは14項目に沿って情報を整理します。マズローの理論はマズローの5段階欲求とはで解説しています。

まとめ

  • ヘンダーソンの14項目は、呼吸から学習までの欲求を14に分けた「基本的看護の構成要素」
  • 看護の目標は、本人ができるだけ早く自分で欲求を満たせるようになること。未充足の原因は体力、意思、知識のどれが足りないかで考える
  • 常在条件と病理的状態は、14項目の判断の根拠として書く
  • 迷う情報は、どの欲求の満たされ方に影響しているかで振り分ける。介助で満たされていても、自力でできなければ援助が必要な項目として扱う

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参考

  • Henderson V. Basic Principles of Nursing Care. International Council of Nurses, 1960.
  • ヴァージニア・ヘンダーソン著、湯槇ます・小玉香津子訳『看護の基本となるもの』日本看護協会出版会