クリニカルラダーとは? 日本看護協会版の5段階と4つの力、評価で見られる中身
ラダー(ladder)は「はしご」の意味で、看護の現場ではクリニカルラダーを指すことが多い。看護実践能力を段階で示し、いま自分がどの位置にいて、次に何ができるようになればよいかを見えるようにする仕組みである。
院内研修や人事評価で使われるため名前は知っていても、中身を説明できる人は意外と少ない。
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何のための仕組みか
クリニカルラダーが解こうとしているのは、次の2つである。
- 経験年数と実践能力が一致しない。5年目でも部署が変われば新人と同じ場面がある
- 「できる」の基準が人によって違う。同じ指導でも、評価する人が変われば結果が変わる
年数ではなく実践能力で段階を置くことで、この2つを揃えにいく設計になっている。
日本看護協会版の構造 — 5段階 × 4つの力
日本看護協会は2016年に「看護師のクリニカルラダー(日本看護協会版)」を公表している。どの施設でも使える共通の物差しとして作られたもので、次の構造を持つ。
5つのレベル
| レベル | 到達の目安 |
|---|---|
| Ⅰ | 基本的な看護手順に従い、助言を得ながら看護を実践する |
| Ⅱ | 標準的な看護計画に基づき、自立して看護を実践する |
| Ⅲ | ケアの受け手に合わせた個別的な看護を実践する |
| Ⅳ | 幅広い視野で予測的な判断をもって看護を実践する |
| Ⅴ | より複雑な状況において、最適な手段を選択し、ケアの受け手にとっての最善を実践する |
4つの力
レベルは1本の線ではなく、4つの力それぞれについて段階が置かれている。
| 力 | 中身 |
|---|---|
| ニーズをとらえる力 | ケアの受け手を理解し、必要なことを見きわめる |
| ケアする力 | 見きわめたことに基づいて援助を実践する |
| 協働する力 | ケアの受け手を含むチームで目標を共有し、連携する |
| 意思決定を支える力 | ケアの受け手が自分で決められるよう支える |
🔴 4つの力は同じ速さで上がらない。「ケアする力はⅢだが意思決定を支える力はⅡ」という状態は普通に起きる。弱いところが分かることがこの仕組みの価値であり、全部を揃えることが目的ではない。
院内ラダーとの関係
多くの病院は独自のラダーを持っている。協会版はそれを置き換えるものではなく、共通の土台として使う想定で作られている。
そのため、実際に評価されるのは勤務先のラダーである。転職を考えるときは、協会版の段階と勤務先の段階が一対一で対応するとは限らない点を押さえておく。
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評価では何を見られるか
多くの施設で、次の3つが材料になる。
- 自己評価 — 自分でチェックリストを付ける
- 上司評価 — 師長・主任による評価
- 実践の記録 — 事例のレポート、受け持ちの状況、研修の受講歴
⚠️ レポートで見られているのは、うまくいった事例かどうかではない。なぜそう判断したか、次はどうするかが書けているかを見ている。結果ではなく思考の過程が評価対象になる。
レベルが上がらないときに詰まりやすい点
- 経験の幅が足りない。同じ疾患・同じ処置ばかりだと、レベルⅢ以降の「個別性」が示しにくい
- 記録が残っていない。やっていても書いていないと材料にならない
- 4つの力のうち1つだけが低い。多くは「協働する力」か「意思決定を支える力」で、どちらもカンファレンスでの発言や家族への説明の場面が材料になる
転職のときにどう扱われるか
- ラダーのレベルは、そのまま次の職場へ引き継がれるとは限らない。施設ごとに基準が違うため
- ただし面接では説明を求められる。「レベルⅢです」ではなく、どの力がどの段階で、その根拠になる場面は何かを話せると通りやすい
- 教育体制を見るときの指標にもなる。ラダーが形だけで運用されている施設と、研修や配置と結び付いている施設では、育ち方が変わる
求人を見るときは、教育体制の欄にラダーの記載があるかを確認するとよい。
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よくある質問
Q. ラダーとキャリアラダーは違うか
A. クリニカルラダーは臨床実践能力の段階を示す。キャリアラダーは管理・教育・専門など進路を含めた広い枠組みを指すことが多い。施設によって呼び方が揺れる。
Q. レベルを上げないと働けないか
A. そうではない。ただし昇給・役割の付与・研修の受講条件と結び付いている施設が多い。
Q. ブランクがあるとレベルは下がるか
A. 復職時に再評価となる施設が多い。下がることを前提に、復職者向けの支援がある施設を選ぶほうが現実的である。
まとめ
- クリニカルラダーは看護実践能力を段階で示す仕組みで、年数ではなく実践能力で置く
- 日本看護協会版はレベルⅠ〜Ⅴの5段階 × 4つの力(ニーズをとらえる/ケアする/協働する/意思決定を支える)
- 4つの力は同じ速さで上がらない。弱いところが見えることが価値
- 実際に評価されるのは勤務先のラダー。転職時は段階の数字ではなく根拠になる場面を話す
参考
- 公益社団法人日本看護協会「看護師のクリニカルラダー(日本看護協会版)」