ナースの勉強部屋

助産師と産婦人科医の違い|できること・なるまでの年数・開業を比較し、進路を決める境界線判定表つき

助産師と産婦人科医の違い|できること・なるまでの年数・開業を比較し、進路を決める境界線判定表つき

助産師と産婦人科医の一番大きな違いは、「正常な経過のお産」と「異常があるとき」で、担える範囲が法律で分けられていることです。

助産師は、正常に経過している分娩なら自分の判断で介助できます。一方で、妊婦・産婦・赤ちゃんに異常があると認めたときは、医師の診療を求めなければならず、自分で処置はできません(保健師助産師看護師法 第38条)。産婦人科医は医師なので、異常の有無にかかわらず診断・処方・手術を含む医業を行えます。

この記事では、資格・業務範囲・働く場所・なるまでのルートと年数・開業の可否・収入を順に比べます。最後に「助産師を目指す人/産婦人科病棟の看護師のままでよい人/医師を目指す人」を分ける判定表を置いたので、進路に迷っている人はそこから読んでも大丈夫です。

看護師専門転職サービス
「クリアス看護」

LINE友だち追加で、希望条件に合った求人紹介や
非公開求人のご案内を無料で受けられます。
給与・働き方・勤務条件など、
転職に関するご相談もLINEで気軽に可能です。

目次
  1. 助産師と産婦人科医の違いを一覧表で比較
  2. 資格の違い:助産師は保健師助産師看護師法、産婦人科医は医師法
    1. 助産師は看護師免許とセットで取る国家資格
    2. 産婦人科医は「医師」が選ぶ診療科の1つ
  3. 業務範囲の違い:正常な分娩は助産師、異常があれば産婦人科医
    1. 助産師ができること
    2. 異常があるときは医師へ:保助看法第38条
    3. 産婦人科病棟の看護師は助産をしてはいけない
  4. 働く場所の違い:助産師の約6割は病院、助産所は1割未満
  5. 助産師と産婦人科医になるまでのルートと年数
    1. 助産師になるルート
    2. 産婦人科医になるルート
  6. 助産所の開業:助産師は開業できるが嘱託医が必要
  7. 助産師と医師の収入差を賃金構造基本統計調査で見る
  8. 助産師を目指す人・産婦人科病棟の看護師のままでよい人・医師を目指す人の境界線判定表
  9. 産婦人科・助産師の求人を実際に見る
  10. よくある質問
    1. 看護師は分娩介助をしてはいけないのですか?
    2. 助産師も出生証明書を書けますか?
    3. 助産師から産婦人科医になる近道はありますか?
  11. まとめ
  12. 参考

助産師と産婦人科医の違いを一覧表で比較

比べる項目 助産師 産婦人科医
根拠になる法律 保健師助産師看護師法(保助看法) 医師法
必要な免許 看護師免許+助産師免許(両方の国家試験に合格) 医師免許(「産婦人科医」という別の免許は無い)
性別の定め 法律で「女子」と定められている(第3条) 定めなし
仕事の中心 助産(正常な分娩の介助)と、妊婦・褥婦・新生児の保健指導 診断・治療・処方・手術を含む医業全般
異常があるとき 医師の診療を求める。自ら処置はできない(臨時応急の手当を除く) 自ら診療する
主な職場 病院 59.5%、診療所 22.4%、助産所 7.5% 病院・診療所
なるまでの最短年数 高校卒業から4年 医学部6年+臨床研修2年。専門医はさらに3年以上
開業 助産所を開設できる(嘱託医の確保が必要) 臨床研修を修了していれば診療所を開設できる

助産師の職場の割合は、厚生労働省「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)」の就業助産師 38,721人の内訳です。

資格の違い:助産師は保健師助産師看護師法、産婦人科医は医師法

助産師は看護師免許とセットで取る国家資格

保助看法 第3条は、助産師を「厚生労働大臣の免許を受けて、助産又は妊婦、じよく婦若しくは新生児の保健指導を行うことを業とする女子」と定めています。

助産師免許は、助産師国家試験と看護師国家試験の両方に合格して初めて受けられます(第7条第2項)。看護師免許を持たずに助産師だけになる道はありません。

産婦人科医は「医師」が選ぶ診療科の1つ

医師法 第17条は「医師でなければ、医業をなしてはならない」と定めています。産婦人科医は、医師免許を持つ人が産婦人科を専門に選んだ状態を指す呼び名で、産婦人科医という独立した国家資格はありません。

産婦人科の専門性を示すものとしては、専門研修を修了して取る産婦人科専門医があります。ただしこれは学会・専門医制度の認定で、医師が産婦人科で働くための免許ではありません。

業務範囲の違い:正常な分娩は助産師、異常があれば産婦人科医

助産師ができること

助産師は、正常に経過している分娩を、医師の指示が無くても自分の判断で介助できます。これは看護師にも准看護師にも無い、助産師だけの業務です。

保助看法 第37条は、看護職が医師の指示なく医薬品を与えたり、医師でなければ危害が生じるおそれのある行為をしたりすることを禁じています。そのうえで、ただし書きとして「助産師がへその緒を切り、浣腸を施しその他助産師の業務に当然に付随する行為をする場合」は例外としています。

分娩を介助した助産師には、次の義務もあります。

  • 出生証明書・死産証書などの交付を求められたら、正当な理由なく拒めない(第39条第2項)
  • 助産録を遅滞なく記載し、5年間保存する(第42条)

異常があるときは医師へ:保助看法第38条

業務範囲の境界線を決めているのが第38条です。

助産師は、妊婦、産婦、じよく婦、胎児又は新生児に異常があると認めたときは、医師の診療を求めさせることを要し、自らこれらの者に対して処置をしてはならない。ただし、臨時応急の手当については、この限りでない。

つまり、正常な経過を見守り、異常に気づいたら医師につなぐのが助産師の役割です。異常への処置、薬の処方、帝王切開などの手術は産婦人科医が担います。何を「異常」とみなすかは医学的な判断になるため、この記事では扱いません。

産婦人科病棟の看護師は助産をしてはいけない

保助看法 第30条は「助産師でない者は、第三条に規定する業をしてはならない」と定めています(医師が医師法に基づいて行う場合を除く)。

産婦人科病棟で長く働く看護師でも、助産を業として行うことはできません。分娩に「自分の判断で」関わりたいかどうかが、助産師を目指すかの大きな分かれ目になります。

看護師専門転職サービス
「クリアス看護」

LINE友だち追加で、希望条件に合った求人紹介や
非公開求人のご案内を無料で受けられます。
給与・働き方・勤務条件など、
転職に関するご相談もLINEで気軽に可能です。

働く場所の違い:助産師の約6割は病院、助産所は1割未満

厚生労働省「令和6年衛生行政報告例」によると、2024年末時点で働いている助産師は38,721人です。就業場所の内訳は次のとおりです。

就業場所 人数 割合
病院 23,054人 59.5%
診療所 8,672人 22.4%
助産所 2,905人 7.5%
市区町村 1,689人 4.4%
看護師等学校養成所・研究機関 1,534人 4.0%
保健所 435人 1.1%

助産所で働く助産師は1割に届きません。助産師として働く人の8割以上は、産婦人科医と同じ病院・診療所で、チームとして働いています。

病院・クリニック・助産院で働き方がどう違うかは「助産師の求人はどこで探す?病院・クリニック・助産院の違いと、分娩取扱いの有無で変わる働き方」で詳しく比べています。

助産師と産婦人科医になるまでのルートと年数

助産師になるルート

助産師国家試験を受けられるのは、文部科学大臣が指定した学校で1年以上助産に関する学科を修めるか、都道府県知事が指定した助産師養成所を卒業した人です(保助看法 第20条)。主なルートは次の3つです。

ルート 年数の目安 向いている人
看護系大学(4年)で助産の課程を選ぶ 4年 高校生・大学入学前の人。大学内で選抜がある
看護専門学校・短大(3年)+助産師養成所・専攻科(1年) 4年 看護師を目指して学校に通っている人
看護系大学(4年)+専攻科(1年)または大学院(2年) 5〜6年 大学卒業後にじっくり学びたい人

すでに看護師として働いている人は、1年以上の養成所・専攻科か、2年の大学院に進学して受験資格を得ます。看護師からの進み方は「看護師から助産師になった人は実際にいる?なる方法は?」も参考にしてください。

産婦人科医になるルート

段階 年数 根拠
大学医学部 6年 学校教育法 第87条第2項
医師国家試験 ― 医師法 第2条・第11条
臨床研修 2年以上 医師法 第16条の2
産婦人科の専門研修(専攻医) 3年以上 日本産科婦人科学会の専門研修プログラム

医学部に入ってから産婦人科の専攻医として働き始めるまで最短8年、産婦人科専門医の受験資格を得るまで最短11年かかります。看護師免許や助産師免許を持っていても、医学部の年数が短くなる仕組みはありません。

助産所の開業:助産師は開業できるが嘱託医が必要

助産師は、自分で助産所を開設できます。開設した助産師は、開設後10日以内に都道府県知事(保健所設置市・特別区は市長・区長)へ届け出ます(医療法 第8条)。助産所の管理者は助産師でなければなりません(同 第11条)。

開業には次のルールがあります。

  • 入所施設は、妊婦・産婦・褥婦9人まで。10人以上の入所施設は持てない(医療法 第2条第2項)
  • 産科または産婦人科を担当する医師を嘱託医師として定める(医療法 第19条、医療法施行規則 第15条の2第1項)
  • 嘱託医師が対応できない場合に備え、産科または産婦人科と小児科があり、新生児を診療でき、入院施設のある病院・診療所を嘱託先として定める(医療法施行規則 第15条の2第3項)
  • 出張だけで助産を行う助産師も、異常に対応する病院・診療所を定める(医療法 第19条第2項)

助産師が単独で開業しても、産婦人科医との連携は法律で組み込まれている、ということです。

産婦人科医は、臨床研修を修了していれば診療所を開設できます(医療法 第8条)。

看護師専門転職サービス
「クリアス看護」

LINE友だち追加で、希望条件に合った求人紹介や
非公開求人のご案内を無料で受けられます。
給与・働き方・勤務条件など、
転職に関するご相談もLINEで気軽に可能です。

助産師と医師の収入差を賃金構造基本統計調査で見る

厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」の職種別の結果(企業規模10人以上、男女計)から、年収を「きまって支給する現金給与額×12か月+年間賞与その他特別給与額」で計算しました。

職種 平均年齢 月額(きまって支給する現金給与額) 年間賞与など 年収の目安
助産師 41.2歳 38万9,900円 98万8,200円 約567万円
看護師 42.1歳 36万5,900円 85万6,400円 約525万円
医師 45.7歳 116万3,200円 116万4,100円 約1,512万円

見るときの注意が2つあります。

  • 統計の「医師」は全診療科の合計です。産婦人科医だけの数字は、この調査では公表されていません
  • 月額には夜勤手当・残業代も含まれます。夜勤の回数で個人差が大きく出ます

助産師と看護師の差は、年収で約42万円です。助産師の給料を勤務先別に詳しく見たい人は「助産師の給料はいくら?看護師との差・勤務先別の傾向と、収入を上げる4つの道」をどうぞ。

助産師を目指す人・産婦人科病棟の看護師のままでよい人・医師を目指す人の境界線判定表

どれが「上」というものではありません。自分がどの条件に当てはまるかで判定してください。

進路 こういう条件なら 次にやること
助産師を目指す ・正常な経過のお産を、自分の判断で支えたい
・妊娠中の保健指導、産後の授乳や育児の支援をしたい
・いずれ助産所の開業や、地域の産後ケアに関わりたい
・1年以上、学校に通う期間と学費を用意できる
助産師養成所・専攻科・大学院の入試時期と、社会人入試の有無を調べる
産婦人科病棟の看護師のままでよい ・お産よりも、婦人科の手術や治療を受ける患者さんの看護に関心がある
・今の職場で分娩の場に関わる役割に満足している
・進学で1年以上収入が途切れるのが難しい
・男性で、周産期の看護に関わりたい(助産師は法律上女子に限られる)
今の職場で深めたい分野(母性看護・婦人科・NICUなど)を決め、関連する研修や認定の要件を確かめる
医師を目指す ・異常があるときの診断・処方・手術まで自分で担いたい
・医学部6年+臨床研修2年以上、最短8年かかっても進みたい
・医学部の入試と6年分の学費に向き合える
医学部の一般入試・学士編入の募集要項を確認する
まだ決めなくていい ・看護学生で、母性看護学実習をまだ終えていない
・分娩の場面を実際に見たことがない
実習で分娩の場面と、助産師・医師それぞれの動きを見てから決める

男性が周産期に関わる道は「男性は助産師になれる?法律で「女子」と定められている理由と、代わりに選べる3つの道」でまとめています。

産婦人科・助産師の求人を実際に見る

助産師として働く場所の違いや、分娩を取り扱う施設の探し方は「助産師の求人はどこで探す?」で解説しています。看護師のまま産婦人科で働きたい人は、クリアス看護の求人検索で診療科を絞り込んで探せます。

看護師専門転職サービス
「クリアス看護」

LINE友だち追加で、希望条件に合った求人紹介や
非公開求人のご案内を無料で受けられます。
給与・働き方・勤務条件など、
転職に関するご相談もLINEで気軽に可能です。

よくある質問

看護師は分娩介助をしてはいけないのですか?

保助看法 第30条で、助産師でない者は助産を業として行えないと定められています。看護師は、助産師や医師と一緒に産婦さんのケアにあたりますが、分娩の介助そのものを業務として担うことはできません。

助産師も出生証明書を書けますか?

書けます。分娩を介助した助産師は、出生証明書の交付を求められたら正当な理由なく拒めないと定められています(保助看法 第39条第2項)。医師にも同じ定めがあります(医師法 第19条第2項)。

助産師から産婦人科医になる近道はありますか?

ありません。医師になる道は、医学部で6年学ぶか医師国家試験予備試験に合格して実地修練を経たうえで医師国家試験に合格し、免許を受けるという流れだけです(医師法 第2条・第11条)。助産師や看護師の免許で年数が短くなる仕組みはありません。

まとめ

助産師と産婦人科医の境界線は、保助看法 第38条の「異常があると認めたら医師へ」です。正常な経過のお産を自分の判断で支えたいなら助産師、異常時の診断・治療まで担いたいなら医師、という分け方が出発点になります。迷ったら、判定表の「こういう条件なら」を1つずつ自分に当てはめてみてください。

参考