血尿スケールの看護記録|5段階の色の目安と書き方の表、一緒に記録する項目、評価がぶれる要因と例文
血尿スケールは、肉眼で見える血尿の程度を、色見本と見比べて段階で表すための評価方法です。「淡血性」「トマト色」のような言葉だけの記録では、書いた人と読んだ人で思い浮かべる色がずれます。段階の数字で書けば、日勤と夜勤、看護師と医師の間で「さっきより濃いのか薄いのか」を同じ物差しで比べられます。
ただし、血尿スケールに全国共通の決まりはありません。日本緩和医療学会のガイドラインも「施設により血尿を観察し赤色の色調で情報を共有する取り組みがあるが,一定の評価方法はない」としています。段階の数も見本の色も、施設ごとに違います。
この記事では、5段階の見本を使う病棟を例に、段階ごとの記録の書き方、色と一緒に書く項目、評価がぶれる要因、記録の例文を整理します。スケールの値をもとにした報告や処置の基準は、必ず自施設のマニュアルと医師の指示に従ってください。
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血尿スケールとは(施設ごとに段階数と見本が違う)
血尿スケールは、主に次のような場面で使われています。
- TURBTやTURPなど、経尿道的な手術の後
- 3wayカテーテルによる持続膀胱洗浄(持続膀胱灌流)の最中
- 尿道カテーテル留置中に血尿が続いているとき
外来で使う病院もあります。日野記念病院の泌尿器科は、診察室の壁に5段階(ScaleⅠ〜Ⅴ)の色見本を貼り、「左から何番目の色でしたか?」と患者に聞いて確かめていると紹介しています。病棟では、カルテの記載やスタッフ間の報告での情報共有に使っているとのことです。
四国がんセンターのように、患者向けのクリニカルパスに血尿スケールの値(比色)を載せている病院もあります。患者も目標としてスケールの値を目にすることになります。
色ではなく「透け具合」で見るスケールもある
血尿スケールは色見本だけではありません。『臨床泌尿器科』に報告された例では、白い紙に大きさの違う文字を黒で印刷して蓄尿バッグの接続管の下に置き、文字の線が尿越しに見えるかどうかで1度から5度に分けています。血尿が濃くなると透明度が下がり、小さな文字から見えなくなることを使った方法です。
同じ「3」でも、色で見るスケールと透け具合で見るスケールでは意味が違います。異動や応援で病棟が変わったときは、最初にその病棟の見本と段階の数を確かめましょう。
血尿スケールの段階ごとの色の目安と記録での書き方の表
次の表は、薄いピンクから暗い赤までを5段階に分ける見本を使う病棟を想定した例です。色の名前は目安で、実際の判定は必ず病棟の見本と見比べて行います。
| 段階 | 色の目安(見本の例) | 記録での書き方の例 |
|---|---|---|
| 血尿なし | 淡黄色〜黄色。赤みがない | 「血尿なし」または施設で決めた表記(「0」「−」など) |
| 1 | ごく薄いピンク。ほぼ透明 | 「血尿スケール1」。見本と見比べて書く |
| 2 | ピンク〜薄い赤。透明感がある | 「血尿スケール2」。前回値も書くと変化が分かる |
| 3 | 赤。透明感が下がる | 「血尿スケール3」。凝血塊の有無を必ず添える |
| 4 | 濃い赤 | 「血尿スケール4」。凝血塊の量と尿の流出の様子を添える |
| 5 | 暗い赤。血液に近い | 「血尿スケール5」。凝血塊・流出・患者の訴えをまとめて書く |
| スケール外 | 茶色・黒っぽい | 段階を付けず「茶褐色」「黒色調」など言葉で書く |
見本と見比べて2つの段階の間に見えるときは、施設で決めた書き方に合わせます。決まりがなければ「2〜3」のように幅で書くより、「2と3の間、3寄り」のように近い方を書き添えると、次の観察者が比べやすくなります。
茶色・黒っぽい尿はスケールに当てはめない
前述の日野記念病院の紹介では、血尿スケールは新鮮な血液による血尿の指標であり、茶色っぽい・黒っぽい血尿は、出血が止まった後に尿路で固まった血の色を反映していることがあると説明されています。赤の濃さで並んだ見本に無理に当てはめると、実際とずれた数字が残ります。見本にない色は、段階を付けずに見たままの色を言葉で記録しましょう。
血尿スケールと一緒に記録する項目のチェックリスト
スケールの数字だけでは、読み手は「どんな条件で見た値か」が分かりません。日本緩和医療学会のガイドラインは、肉眼的血尿では尿路内で凝血塊ができて閉塞を起こすことがあると述べています。色と同じくらい、凝血塊や尿の流れの様子も記録に欠かせない情報です。
観察のたびに、次の項目を確かめて記録します。
- [ ] 血尿スケールの値(使った見本の種類が複数ある病棟では、どの見本か)
- [ ] 観察した時刻
- [ ] 観察した場所(カテーテルに近いチューブ、蓄尿バッグ、尿器など)
- [ ] 観察したときの照明(日中の自然光、病室の照明、夜間の手元灯など)
- [ ] 凝血塊の有無、大きさ、量(「米粒大が数個」「親指大1個」など)
- [ ] 尿量(持続膀胱洗浄中は排液量と、洗浄液を差し引いた尿量の考え方を施設の方法で)
- [ ] 持続膀胱洗浄中は、観察時点の洗浄液の流量の設定と、洗浄液の残量
- [ ] 尿の流出の様子(流れている・滴下が少ない・止まっているなど)
- [ ] カテーテルの脇から尿があふれていないか
- [ ] 患者の訴え(下腹部の張りや痛み、強い尿意など)
- [ ] 前回の値との比較(濃くなった・変わらない・薄くなった)
持続膀胱洗浄中の排液の色は、尿と洗浄液を合わせた色です。排液の色は洗浄液の流量によって変わります。同じ「スケール2」でも流量の設定が違えば意味が変わるため、観察時点の設定を値と並べて書いておきましょう。流量をどう変えるかは医師の指示に従います。
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血尿スケールの評価がぶれる要因(照明・バッグ内の色・時間経過)
同じ尿を見ても、見る人や見る条件で段階がずれることがあります。主な要因と、ぶれを減らす工夫は次のとおりです。
| ぶれる要因 | 起きやすいずれ | ぶれを減らす工夫 |
|---|---|---|
| 照明 | 夜間の暗い照明や暖色の照明では、日中と色の見え方が変わる | 見本と尿を同じ明かりの下で並べて見る。夜間は手元灯などで明るさをそろえ、照明の条件も記録する |
| 観察する場所 | 一般に、蓄尿バッグの中はたまった尿全体の色で、カテーテルに近いチューブ内の尿は直近の尿の色に近い | 病棟で見る場所を決めておき、記録にも場所を書く |
| バッグやチューブ自体の着色 | 長期留置では、蓄尿バッグが紫色に染まる紫色採尿バッグ症候群のように、尿以外の理由で色が付いていることがある | バッグの色ではなく、チューブ内の新しい尿の色で見る |
| 時間経過 | バッグ内に時間がたった尿が残っていると、新しい尿の変化が分かりにくい | 観察の時刻を書く。バッグ内の尿を廃棄した時刻も記録に残す |
| 洗浄液の流量 | 持続膀胱洗浄中は、流量によって排液の濃さが変わる | 観察時点の流量の設定を値と並べて書く |
| 見る人の経験 | 慣れていない人と慣れた人で、同じ色を違う段階に付けることがある | 交代時に一緒に見て段階をすり合わせる |
なかでも効果が大きいのは、申し送りのときに受け持ちの看護師どうしで同じチューブを見て、段階を確かめ合うことです。「私には3に見える」「私も3」と一度合わせておくと、その後の数字の変化を信頼して追えます。
血尿スケールの記録の例文
記録には、スケールの値に加えて、観察の条件、凝血塊、尿の流れ、患者の訴えを書きます。前回の値と比べた変化を一言添えると、読み手が経過をつかみやすくなります。
術後の定時観察の例
10:00 血尿スケール3(チューブ内で観察、病室照明下)。前回8:00の3から変化なし。凝血塊なし。尿の流出良好、2時間尿量150mL。下腹部痛の訴えなし。
持続膀胱洗浄中の例
14:00 排液の血尿スケール2(チューブ内で観察、日中の自然光下)。洗浄液の流量は指示どおりの設定で継続中、残量1,200mL。前回12:00の3から薄くなった。米粒大の凝血塊が数個流出、流出は良好。カテーテルの脇からのあふれなし。
夜勤から日勤への申し送りの例
夜間は血尿スケール2〜3で推移し、4:00は3、6:00は2。観察はいずれもチューブ内、手元灯下。4:00に小豆大の凝血塊1個流出、その後の流出は良好。下腹部の張りの訴えなし。日勤の担当者とチューブ内の色を一緒に確認し、2で一致。
例文の「洗浄液の流量は指示どおりの設定で」のように、設定の数値は施設の書き方に合わせて記載します。凝血塊の大きさは「米粒大」「小豆大」「親指大」など、病棟で使う言葉をそろえておくと読み手が迷いません。
血尿スケールのように、段階や点数で状態を共有する評価はほかにもあります。褥瘡のリスクを点数で記録する方法はブレーデンスケールとは?6項目の採点表と危険点の考え方で整理しています。
よくある質問
血尿スケールは5段階と決まっていますか?
決まっていません。5段階の見本を使う病院は多いものの、段階の数や見本の色、色ではなく尿の透け具合で判定する方法など、施設によって違います。自分の病棟の見本と段階の数を確かめてから使いましょう。
血尿スケールが何段階なら医師に報告すればよいですか?
報告の基準は施設や患者ごとに違うため、一律には言えません。病棟のマニュアルや、患者ごとの医師の指示に書かれた基準に従ってください。基準が分からないときは、先輩看護師や医師に確認しましょう。
夜間で暗く、色がよく見えないときはどうしますか?
見本と尿を同じ明かりの下で並べて見られるよう、手元灯などで明るさを確保します。照明の条件が普段と違うときは、「手元灯下で観察」のように記録に書いておくと、日中の値と比べるときの参考になります。
茶色や黒っぽい尿のときもスケールで記録しますか?
血尿スケールの多くは新鮮な血液による赤い尿を想定しています。見本にない茶色や黒っぽい色は、段階を付けずに「茶褐色」「黒色調」などと見たままの色を言葉で記録しましょう。
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まとめ
- 血尿スケールに全国共通の決まりはなく、段階の数や見本は施設ごとに違う。まず病棟の見本を確かめる
- 記録には段階の数字に加えて、時刻・観察場所・照明・凝血塊・尿の流れ・患者の訴え・前回との比較を書く
- 持続膀胱洗浄中は、観察時点の洗浄液の流量の設定も値と並べて書く
- 照明、観察する場所、時間経過で見え方が変わる。交代時に一緒に見て段階をすり合わせるとぶれが減る
- 報告や処置の基準は、施設のマニュアルと医師の指示に従う
参考
- 日本緩和医療学会 緩和医療ガイドライン委員会編「がん患者の泌尿器症状の緩和に関するガイドライン(2016年版)」Ⅱ章1 血尿 https://www.jspm.ne.jp/files/guideline/urology_2016/02_01.pdf
- 同ガイドライン Ⅱ章7 尿路カテーテル管理 https://www.jspm.ne.jp/files/guideline/urology_2016/02_07.pdf
- 日野記念病院 広報誌「血尿について」(泌尿器科) https://www.subarukai.jp/cms/wp-content/uploads/2016/07/hino10.pdf
- 四国がんセンター 泌尿器科 患者さんパンフレット(クリニカルパス) https://shikoku-cc.hosp.go.jp/hospital/support/clinical_path/prostate_bladder_kidney/data/zinnyokanzenteki_kan_240611.pdf
- 東北労災病院 クリニカルパス(泌尿器科) https://www.tohokuh.johas.go.jp/outline/guideline/date/2018/pdf/110070xx02020x.pdf
- 鈴木いつか ほか「尿の色調の表現方法の統一〜血尿スケールを作成して〜」岩見沢市立総合病院医誌 36巻1号 49-51, 2010
- 佐久間俊治「カテーテル留置中の肉眼的血尿の評価・表現方法」臨床泌尿器科 57巻2号 178-179, 2003
- 徳光正行、八竹直「簡易血尿判定スケール」臨床泌尿器科 56巻6号 458, 2002