認知症高齢者の日常生活自立度とは?判定基準の表(Ⅰ〜M)と症状の例、看護師が迷わない判定・記録のコツ
認知症高齢者の日常生活自立度は、認知症による症状・行動や意思疎通の困難さが、日常生活にどのくらい支障を来しているかを、Ⅰ・Ⅱa・Ⅱb・Ⅲa・Ⅲb・Ⅳ・Mの7区分(Ⅱ・Ⅲを細分しない場合はⅠ〜Ⅳ・Mの5ランク)で表す基準です。認知症があるかどうかを決めるものではなく、生活の中で「どのくらい見守りや介護が要るか」を表します。
看護サマリー、退院時の情報提供、介護保険の主治医意見書や認定調査など、看護師がこのランクを書いたり、医師に情報を渡したりする場面は多くあります。一方で「夜だけ混乱する人はⅢa?Ⅲb?」「家の中では困っていないがⅠでいいの?」のように、境目で迷いやすい評価でもあります。
この記事では、厚生労働省の判定基準をもとに、各ランクの中身、見られる症状・行動の例、判定の手順と迷いやすい境目、記録での書き方を整理します。
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認知症高齢者の日常生活自立度の判定基準表(ランクⅠ〜M)
判定基準のもとは、1993年(平成5年)の厚生省老人保健福祉局長通知「痴呆性老人の日常生活自立度判定基準」です。2006年(平成18年)の通知で現在の「認知症高齢者の日常生活自立度判定基準」の名称になり、介護保険の認定調査票や主治医意見書の記入の手引きに載っています。
下の表は、主治医意見書記入の手引きにある判断基準です。
| ランク | 判断基準 |
|---|---|
| Ⅰ | 何らかの認知症を有するが、日常生活は家庭内及び社会的にほぼ自立している |
| Ⅱ | 日常生活に支障を来たすような症状・行動や意思疎通の困難さが多少見られても、誰かが注意していれば自立できる |
| Ⅱa | 家庭外で上記Ⅱの状態がみられる |
| Ⅱb | 家庭内でも上記Ⅱの状態がみられる |
| Ⅲ | 日常生活に支障を来たすような症状・行動や意思疎通の困難さが見られ、介護を必要とする |
| Ⅲa | 日中を中心として上記Ⅲの状態が見られる |
| Ⅲb | 夜間を中心として上記Ⅲの状態が見られる |
| Ⅳ | 日常生活に支障を来たすような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られ、常に介護を必要とする |
| M | 著しい精神症状や周辺症状あるいは重篤な身体疾患が見られ、専門医療を必要とする |
書類でⅡやⅢを選ぶときは、aかbまで決めてチェックします。認知症をまったく有しない人は、表のどのランクでもなく「自立」を選びます。
5つのランクを一言でつかむ
手引きの「判断にあたっての留意事項」を短くまとめると、各ランクの状態像は次のようになります。
- ランクⅠ:在宅生活が基本で、一人暮らしも可能
- ランクⅡ:在宅生活が基本だが、一人暮らしは難しい場合もある。誰かが注意していれば自立できる
- ランクⅢ:一人暮らしは難しく、介護が必要。ただし一時も目を離せない状態ではない
- ランクⅣ:常に目を離すことができず、常に介護が必要
- ランクM:精神症状や身体疾患のため、専門医療が必要
認知症高齢者の日常生活自立度で見られる症状・行動の例
判定基準の表には、ランクごとに「見られる症状・行動の例」も示されています。判定のときは、この例と目の前の人の生活をすり合わせます。
| ランク | 見られる症状・行動の例(手引きの記載) |
|---|---|
| Ⅰ | 例の記載なし(家庭内・社会的にほぼ自立) |
| Ⅱa | たびたび道に迷う、買物や事務、金銭管理などそれまでできたことにミスが目立つ |
| Ⅱb | 服薬管理ができない、電話の応対や訪問者との対応など一人で留守番ができない |
| Ⅲa | 着替え、食事、排便、排尿が上手にできない・時間がかかる。やたらに物を口に入れる、物を拾い集める、徘徊、失禁、大声・奇声をあげる、火の不始末、不潔行為、性的異常行為 |
| Ⅲb | ランクⅢaと同じ(夜間を中心に見られる) |
| Ⅳ | ランクⅢと同じ(頻繁に見られ、常に介護が必要) |
| M | せん妄、妄想、興奮、自傷・他害などの精神症状や、精神症状に起因する周辺症状が継続する状態 |
病棟や施設の生活に置き換えると、たとえば次のような場面が当てはまります。
- Ⅱb:配薬した薬を飲み忘れたり二重に飲もうとしたりするが、声をかければ正しく飲める
- Ⅲa:日中、食事の途中で手が止まり、声かけと介助がないと食べ終わらない。日中に病棟内を歩き回り、見守りが要る
- Ⅲb:日中は穏やかだが、夜間に起き出して大声を出す、おむつを外すなどが続き、夜勤帯の対応が要る
- Ⅳ:昼夜を問わずⅢの症状が頻繁にあり、目を離せない
認知症高齢者の日常生活自立度の判定手順と迷いやすい境目
判定で大事なのは、診断名や認知機能テストの点数ではなく、症状・行動が日常生活にどのくらい支障を来しているかで見ることです。同じ診断名でも、生活への影響が違えばランクは変わります。
判定の手順は「自立か」→「介護が要るか」→「頻度と時間帯」の順
上から順に絞り込むと迷いにくくなります。
- 認知症の症状があるか:まったくない → 自立
- 症状はあるが、家庭内・社会的にほぼ自立しているか:している → ランクⅠ
- 支障はあるが、誰かが注意していれば自立できるか:できる → ランクⅡ(家庭外だけならⅡa、家庭内でも見られればⅡb)
- 介護が必要か:必要 → ランクⅢ(日中が中心ならⅢa、夜間が中心ならⅢb)
- 症状が頻繁で、常に目を離せないか:そうである → ランクⅣ
- 著しい精神症状や重篤な身体疾患があり、専門医療が必要か:そうである → ランクM
迷いやすい境目と決め方
| 迷う場面 | 決め方 |
|---|---|
| ⅠとⅡの境目 | 日常生活に支障が出ているか、見守りや声かけが要るか。物忘れの自覚があっても、生活がほぼ自立していればⅠ |
| ⅡaとⅡbの境目 | 支障が外出先や社会的な場面(買物・金銭管理など)だけならⅡa。服薬管理や留守番など家の中でも見られればⅡb |
| ⅡとⅢの境目 | 「誰かが注意していれば自立できる」か、「介護を必要とする」か。声かけや見守りで済むならⅡ、介助の手が要るならⅢ |
| ⅢaとⅢbの境目 | 症状が主に出る時間帯で分ける。日中が中心ならⅢa、夜間が中心ならⅢb |
| ⅢとⅣの境目 | 症状・行動の種類は同じで、頻度で分ける。一時も目を離せないほど頻繁ならⅣ |
| 意識障害があり判断できない | 主治医意見書では、遷延性の意識障害などで判断できない場合はMにチェックし、傷病の経過の欄に具体的な内容を書くとされている |
| 認知症をまったく有しない | 「自立」を選ぶ。Ⅰは「何らかの認知症を有する」人のランク |
Ⅲの留意事項には、「ときどき」がどのくらいの頻度かは症状・行動の種類で異なるため一概には決められないが、一時も目を離せない状態ではない、と書かれています。ⅢとⅣは症状の中身ではなく頻度で分ける、と覚えておくと整理しやすくなります。
認定調査では「訪問調査時の様子」を基本に、特記事項で補う
認定調査票記入の手引きでは、訪問調査時の様子から判定基準を参考に該当するものを選ぶとされています。あわせて、調査項目に含まれない幻視・幻聴、暴言・暴行、不潔行為、異食行動などは、関連する項目か、認知症高齢者の日常生活自立度の特記事項に書くよう定められています。
病棟でも、夜間の様子や日中との差は、日勤の短い時間だけでは見えません。夜勤帯の記録や家族からの情報を合わせて判定すると、実際の生活とのずれが小さくなります。
よくある判定のずれ
- 認知機能テストの点数だけで決めてしまう:自立度は生活への支障で見る。点数が同じでも、支えがあれば生活できている人と、そうでない人ではランクが違う
- 入院直後のせん妄などで一時的に重く見てしまう:一時的な混乱か、以前から続く状態かを家族や前の担当者に確かめる
- ランクだけ書いて根拠を書かない:次に読む人が再評価できないため、決め手になった症状・行動と時間帯を一緒に書く
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認知症高齢者の日常生活自立度が使われる書類・場面
認知症高齢者の日常生活自立度は、介護保険の認定と、医療・介護の報酬の両方で使われる共通の物差しです。
| 場面・書類 | 使われ方 |
|---|---|
| 介護保険の認定調査票 | 認定調査員が訪問調査時の様子から判定し、特記事項に具体的な状況を書く |
| 主治医意見書 | 主治医が「心身の状態に関する意見」の欄で判定する。看護師が日頃の様子を情報提供することも多い |
| 介護認定審査会 | 要支援2と要介護1を振り分けるとき、認知機能の低下の目安として「Ⅱ以上かどうか」が使われる |
| 看護サマリー・退院時の情報提供 | 転院先・施設・訪問看護へ、見守りや介護の必要度の目安として引き継ぐ |
| 入院中の認知症ケア加算 | 身体疾患で入院した、ランクⅢ以上の患者(重度の意識障害のある人を除く)が対象になる |
| 介護保険の認知症専門ケア加算など | 利用者のうちランクⅡ以上・Ⅲ以上の人の割合が算定要件に使われる |
加算の要件は改定で見直されることがあるため、算定に関わる判断は、その時点の告示・通知で確認しましょう。
認定調査と主治医意見書でランクが食い違うことがある
介護認定審査会委員テキストには、認定調査と主治医意見書で、一方が「自立またはⅠ」、他方が「Ⅱ以上」と判定が分かれるケースがあり、その場合は審査会資料に「Ⅱ以上である確からしさ」が推計値として表示される、と書かれています。認定調査員は認知症の医学的知識を持っているとは限らず、主治医も自宅での生活は限られた情報しか把握していない場合があるため、自立度は慎重に吟味する必要がある、とも書かれています。
つまり、ランクの数字だけでは判断がつかないときに、審査会が頼りにするのは特記事項や意見書に書かれた具体的な様子です。看護師が医師に渡す情報も、「Ⅱbです」だけでなく、何ができて何に見守りが要るかまで書いておくと、判定の材料として使われやすくなります。
看護サマリーの項目や書き方全体は看護サマリーとは?書く項目と、読む人に伝わる書き方のコツで解説しています。
寝たきり度(障害高齢者の日常生活自立度)との違い
主治医意見書や認定調査票では、認知症高齢者の日常生活自立度のすぐ隣に「障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)」の欄があります。2つは別の基準で、それぞれ独立して判定します。
| 認知症高齢者の日常生活自立度 | 障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度) | |
|---|---|---|
| 何を見るか | 認知症による症状・行動や意思疎通の困難さが生活に及ぼす支障 | 移動を中心とした身体の状態 |
| ランク | 自立・Ⅰ・Ⅱa・Ⅱb・Ⅲa・Ⅲb・Ⅳ・M | 自立・J1〜C2 |
身体はJ1で一人で外出できても、認知症の自立度はⅢaということもあります。2つをまとめて「自立度」と書かず、どちらの自立度かを明記しましょう。寝たきり度の判定基準と迷いやすい境目は寝たきり度とは?障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)判定基準の表と、看護師が迷わない判定・記録のコツで整理しています。
認知症高齢者の日常生活自立度の記録の書き方と例文
記録や書類には、ランクと、その判定の決め手になった症状・行動をセットで書きます。書く要素は次の4つです。
- ランク(例:Ⅲb)
- 決め手になった症状・行動(手引きの「見られる症状・行動の例」のどれに当たるか)
- 症状が出る時間帯と頻度(日中か夜間か、毎日か週に何回か)
- 必要な支援の内容(声かけで済むのか、介助が要るのか、目を離せないのか)
例文
Ⅱaの例
認知症高齢者の日常生活自立度:Ⅱa。自宅内の生活は自立しているが、買物で同じ物を繰り返し購入する、支払いで小銭の計算ができないことが家族から聞かれる。服薬は自己管理できている。
Ⅱbの例
認知症高齢者の日常生活自立度:Ⅱb。服薬の自己管理が難しく、配薬時の声かけで内服できる。日中は声かけがあれば身の回りのことを自分で行える。
Ⅲaの例
認知症高齢者の日常生活自立度:Ⅲa。日中、食事の途中で手が止まり、声かけと一部介助で摂取。トイレの場所が分からず、日中に失禁が1日2〜3回ある。夜間は入眠できている。
Ⅲbの例
認知症高齢者の日常生活自立度:Ⅲb。日中は穏やかに過ごせているが、夜間に起き出して大声を出す、おむつを外すことが週4〜5回ある。夜間は1〜2時間ごとの訪室で対応。
Ⅳの例
認知症高齢者の日常生活自立度:Ⅳ。昼夜を問わず病棟内を歩き回り、他患者の物を持ち帰る。食事・排泄・更衣のすべてに介助が要り、常時見守りが必要。
状態が入院前と違う場合は、「入院前(家族情報)はⅡb相当。入院後3日間は夜間の混乱が強く、現時点ではⅢb」のように、いつの状態で判定したかを書き添えると、受け取った側が変化を追えます。
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あわせて読みたい:長谷川式認知症スケール(HDS-R)の実施と採点
よくある質問
認知症の診断がなくても、認知症高齢者の日常生活自立度はつけますか?
判定基準は、生活の中で見られる症状・行動の程度を表すものです。診断名の有無ではなく、認知症による生活への支障が見られるかで判定します。支障がまったくなければ「自立」を選びます。
ⅡaとⅡbはどう違いますか?
どちらも「誰かが注意していれば自立できる」状態で、支障が見られる場所が違います。買物や金銭管理など家庭外の場面だけならⅡa、服薬管理や電話・来客への対応など家庭内でも見られればⅡbです。
認知症高齢者の日常生活自立度と長谷川式などの認知機能テストの点数は、どう関係しますか?
別のものです。長谷川式などのテストは認知機能を測るもの、自立度は生活への支障の程度を表すもので、点数からランクが決まるわけではありません。テストの点数は判定の参考情報の一つとして扱い、ランクは日頃の生活の様子で決めます。
まとめ
- 認知症高齢者の日常生活自立度は、認知症による生活への支障をⅠ・Ⅱa・Ⅱb・Ⅲa・Ⅲb・Ⅳ・Mで表す。認知症がなければ「自立」
- Ⅱは「注意していれば自立」、Ⅲは「介護が必要」、Ⅳは「常に目を離せない」。ⅢとⅣは症状の種類でなく頻度で分ける
- aとbは、Ⅱでは家庭外か家庭内か、Ⅲでは日中か夜間かで分ける
- 主治医意見書・認定調査・看護サマリーのほか、認知症ケア加算などの対象判定にも使われる
- 記録にはランクと、決め手になった症状・行動、時間帯、必要な支援をセットで書く
参考
- 厚生労働省「要介護認定における『認定調査票記入の手引き』、『主治医意見書記入の手引き』及び『特定疾病にかかる診断基準』について」(平成21年9月30日 老老発第930002号)https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb6469&dataType=1&pageNo=4
- 厚生労働省「認定調査票記入の手引き」障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)・認知症高齢者の日常生活自立度 https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000077382.pdf
- 厚生労働省「介護認定審査会委員テキスト2009 改訂版(令和3年4月)」https://www.mhlw.go.jp/content/000819417.pdf
- 厚生労働省 中央社会保険医療協議会 総会(令和5年11月29日)総-4「個別事項(その8)認知症」https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001172378.pdf
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)」介護保険最新情報Vol.1225(令和6年3月15日)https://www.mhlw.go.jp/content/001227740.pdf