夜勤の72時間ルールとは?看護師の月平均夜勤時間の計算例と、個人の上限ではない理由
72時間ルールは、病棟で夜勤をする看護職員の「月の夜勤時間の平均」を72時間以下にするという、病院が入院基本料を算定するための条件です。看護師一人ひとりの夜勤時間の上限ではありません。
平均なので、ある人が月80時間夜勤をしても、それだけで違反にはなりません。逆に、誰かが夜勤に入れなくなると、残った人の夜勤が増えて平均が72時間に近づきます。「72時間ルールがあるから夜勤を増やせない」「夜勤を減らしてほしい」と言われる理由は、この平均の計算にあります。
この記事では、計算に入る人・入らない人と計算例を示し、ルールがかかる病棟とかからない病棟を判定表で整理します。
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72時間ルールとは:入院基本料の施設基準にある「月平均夜勤時間72時間以下」
72時間ルールは、労働基準法の決まりではなく、診療報酬の決まりです。厚生労働省の告示「基本診療料の施設基準等」で病院の入院基本料の共通の条件とされ、通知では次のように表されています。
夜勤を行う看護職員の1人当たりの月平均夜勤時間数が72時間以下であること
同じ通知に「療養病棟入院基本料を算定する病棟の看護職員については、この限りではない」とあり、療養病棟は対象外です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 誰の決まりか | 病院(入院基本料を算定する条件) |
| 対象の職種 | 看護職員(看護師・准看護師)。看護補助者は計算に入らない |
| 何を見るか | 同じ入院基本料を算定する病棟全体の、1人当たりの月平均夜勤時間 |
| 守れないと | 入院基本料が減額される(後の節で説明) |
ポイントは「同じ入院基本料を算定する病棟全体」で計算することです。厚生労働省の通知には、病棟(看護単位)ごとに72時間以下である必要はないと明記されています。急性期一般の病棟が3つある病院なら、3病棟を合わせた平均で見ます。
72時間ルールの計算方法:夜勤時間帯と延べ夜勤時間の数え方
計算式は次のとおりです。
月平均夜勤時間数 = 病棟全体の看護職員の月延べ夜勤時間数 ÷ 夜勤時間帯に従事した実人員数
1か月または4週間の実績で計算し、小数第2位以下は切り捨てます。
「夜勤時間」は病院が決めた16時間の中で働いた時間
通知では、夜勤時間帯を「午後10時から翌日の午前5時までを含めた連続する16時間」として、病院ごとに決めることになっています。たとえば「16時から翌朝8時まで」と決めている病院なら、その16時間の中で実際に働いた時間が夜勤時間です。
- 夜勤時間帯に病棟で働いた時間を数える。夜勤帯に病棟以外で働いた時間は入らない
- 申し送りにかかった時間は、申し送った人の夜勤時間から除いてよい(除くかどうかは病棟全体で月単位で決める)
- 2交代か3交代かは関係なく、夜勤時間帯に働いた時間で数える
1回あたりの夜勤時間と夜勤回数の目安
72時間に届く夜勤回数は、1回の夜勤で夜勤時間帯に何時間働くかで変わります。次の表は、休憩や申し送りを除いた時間を仮に置いた試算です。
| 勤務の形 | 1回あたりの夜勤時間(試算) | 月72時間になる回数 |
|---|---|---|
| 3交代(準夜・深夜) | 8時間 | 9回 |
| 2交代(夜勤) | 14時間 | 約5回(5回で70時間、6回で84時間) |
| 2交代(夜勤) | 16時間 | 4.5回(4回で64時間、5回で80時間) |
自分の病院の数字は、夜勤時間帯の設定と、勤務表の1回あたりの勤務時間で変わります。師長に「夜勤時間帯は何時から何時か」を聞けば計算できます。
72時間ルールの計算に入る人・入らない人
平均を出すときの分母(実人員数)と分子(延べ夜勤時間数)には、入らない人がいます。ここを知っておくと、病棟で言われることの意味がわかります。
| どんな人か | 計算に入るか |
|---|---|
| 夜勤を含む交代制で働く看護職員 | 入る |
| 夜勤専従者(夜勤だけをする人) | 入らない(人数にも時間にも) |
| 月の夜勤時間が16時間未満の人(急性期病院一般入院基本料、急性期一般入院基本料、7対1・10対1入院基本料の病棟) | 入らない。短時間正職員は12時間以上なら入る |
| 月の夜勤時間が8時間未満の人(上記以外の病棟) | 入らない |
| 夜勤帯に病棟と外来などを兼務する人 | 病棟で働いた時間の割合に応じて、0.5人などに按分して入る |
| 育児・介護などで夜勤をしていない人 | 夜勤時間がないので入らない |
| 看護補助者 | 入らない(72時間ルールは看護職員の基準) |
ここから、病棟でよく起きることが説明できます。
- 夜勤専従者がいると、他の人の夜勤が減る。専従者は計算に入らないので、専従者が受け持った夜勤の分だけ、計算に入る人の夜勤時間が減ります
- 「月2回だけ夜勤に入って」と頼まれるのは、急性期の病棟では月16時間以上夜勤をすれば分母に入るので、夜勤の少ない人が加わると平均が下がるからです
- 夜勤ができる人が減ると、残った人の平均が上がる。産休・育休や夜勤免除の人が増えると、その人たちの夜勤を残りの人が受け持つことになります
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72時間ルールの計算例:2交代の急性期一般病棟
夜勤時間帯を16時から翌朝8時、2交代の夜勤1回を14時間として計算します。
| 夜勤をする人 | 人数 | 月の夜勤 | 延べ夜勤時間 | 計算に入るか |
|---|---|---|---|---|
| 交代制の常勤看護師 | 18人 | 5回(70時間) | 1,260時間 | 入る |
| 夜勤を月2回だけする看護師 | 4人 | 2回(28時間) | 112時間 | 入る(16時間以上) |
| 夜勤専従者 | 2人 | 10回(140時間) | 280時間 | 入らない |
| 夜勤を月1回だけする看護師 | 1人 | 1回(14時間) | 14時間 | 入らない(16時間未満) |
月平均夜勤時間数は、(1,260時間+112時間)÷(18人+4人)=1,372時間÷22人=62.3時間です。72時間以下なので基準を満たします。
ここで夜勤専従者2人が退職し、その20回分の夜勤を常勤の18人で受け持つとします。延べ夜勤時間は280時間増えて1,652時間になり、1,652時間÷22人=75.0時間です。72時間を超えます。
常勤18人の一人ひとりは、月5回から6〜7回に増えただけです。それでも病棟全体の平均は基準を超えるので、病院は採用を急いだり、日勤中心の人に月2回の夜勤を頼んだりして、平均を戻そうとします。
72時間ルールは「個人の夜勤時間の上限」ではない
72時間ルールは平均の基準なので、個人の夜勤時間には上限がありません。上の計算例でも、夜勤専従者は1人140時間の夜勤をしています。
厚生労働省の通知は、この点について次の配慮を病院に求めています。
- 夜勤専従者の夜勤時間は、負担が過重にならないよう十分配慮する
- 72時間を超えて減額された入院基本料を算定している間は、夜勤時間の規定がないため、特定の看護職員に夜勤が偏らないよう配慮する
どちらも「配慮」で、個人の夜勤回数を何回までと決めたものではありません。労働基準法が夜勤について直接決めているのは深夜の割増賃金などで、夜勤回数の上限は定めていません。
個人の負担の目安として参考になるのは、日本看護協会の「看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン」です。3交代の夜勤は月8回以内を基本とし、勤務の拘束時間は13時間以内、勤務と勤務の間は11時間以上あけることなどを示しています。ただしこれは協会の目安で、診療報酬の条件ではありません。
夜勤専従の働き方と夜勤時間の考え方は、夜勤専従の看護師で詳しく整理しています。
72時間ルールがかかる病棟・かからない病棟の判定表
72時間ルールがかかるのは、病院の入院基本料を算定する病棟です。病棟の種類ごとに整理すると次のとおりです。
| 病棟の種類 | 72時間ルール | 計算から外れる人の基準 |
|---|---|---|
| 一般病棟(急性期病院一般入院基本料、急性期一般入院基本料) | かかる | 月の夜勤16時間未満 |
| 一般病棟(地域一般入院料) | かかる | 月の夜勤8時間未満 |
| 特定機能病院・専門病院・結核病棟・精神病棟・障害者施設等の病棟 | かかる | 7対1・10対1は16時間未満、それ以外は8時間未満 |
| 療養病棟入院基本料の病棟 | かからない | − |
| ICU・HCUなどの治療室と、回復期リハビリテーション病棟・地域包括ケア病棟など特定入院料の病棟 | 入院基本料の72時間の計算には入らない | − |
| クリニック、訪問看護、介護施設 | 病院の入院基本料ではないので関係ない | − |
回復期リハビリテーションや地域包括ケアでも、一般病棟の中の一部の病室で算定している場合(入院医療管理料)は、その病棟の看護職員は計算に入ります。自分の病棟がどの入院料かは、師長や事務に聞けばすぐわかります。
2026年度の改定で新しくできた急性期病院一般入院基本料も一般病棟入院基本料の一つで、72時間ルールがかかり、月16時間未満の人を除く扱いです。
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72時間を超えたら病院はどうなるか:入院基本料の減額
72時間を一時的に超えても、すぐに減額されるわけではありません。通知では、暦月で3か月を超えない期間の1割以内(79.2時間まで)の変動は、一時的な変動として扱われます。
それを超えて基準を満たせなくなると、一般病棟の場合、医科点数表で次のように決まっています。
| 区分 | 入院基本料 |
|---|---|
| 月平均夜勤時間超過減算 | 所定点数から15%を減算。基準を満たせなくなってから直近3か月に限る |
| 夜勤時間特別入院基本料 | 所定点数の70%を算定(当分の間の措置) |
月平均夜勤時間超過減算か夜勤時間特別入院基本料を最後に算定した月から1年以内は、この減算をもう一度使えません。入院基本料は病院の収入の中心なので、師長は勤務表を組むときに、病棟全体の平均夜勤時間を見ながら夜勤を割り振っています。
2026年度(令和8年度)診療報酬改定で72時間ルールは変わったか
72時間という基準と、計算方法は変わっていません。 2026年度改定の個別改定項目に、72時間の基準そのものの見直しは入っていません。
夜勤に関係して変わったのは次の3点です。
| 変わったこと | 看護師への影響 |
|---|---|
| 急性期病院一般入院基本料の新設 | この入院料の病棟も、月16時間未満の人を計算から除く扱いになった |
| 看護職員処遇改善評価料・ベースアップ評価料の収入を、夜勤手当の増額に使えるようにした | 夜勤手当が上がる可能性がある |
| 看護職員夜間配置加算などで、負担軽減の計画に「夜勤を含む」ことを明記 | 病院は夜勤を含む負担軽減の計画を作り、職員に周知することになった |
3つ目の計画は職員への周知が求められているので、自分の病院の計画を見せてもらうこともできます。夜勤手当の相場は看護師の夜勤手当の平均でまとめています。
職場選びで72時間ルールについて確かめること
72時間ルールを満たしていても、一人ひとりの夜勤回数は病院によって大きく違います。面接や見学で次のことを聞くと、入職後の夜勤のイメージがつかめます。
| 確かめること | わかること |
|---|---|
| 配属先の病棟の入院料(急性期一般か、療養か、特定入院料か) | 72時間ルールがかかる病棟か |
| 2交代か3交代か、夜勤時間帯は何時から何時か | 1回の夜勤が何時間として数えられるか |
| 病棟の看護師の月の夜勤回数(平均と多い人) | 夜勤が特定の人に偏っていないか |
| 夜勤専従者がいるか、いれば月何回か | 交代制の人の夜勤を専従者がどれくらい受け持っているか |
| 育児などで夜勤を免除されている人の数 | 残りの人に夜勤が寄っていないか |
| 夜勤手当の金額 | 夜勤の回数と手当のバランス |
「夜勤は月何回ですか」だけでなく「多い人で何回ですか」と聞くと、平均だけでは見えない偏りがわかります。
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夜勤の負担を確かめて求人を探す
夜勤の回数や勤務形態は、求人票と面接で確かめるのが確実です。上の表の項目を手元に置いて、病院・クリニック・施設の求人を勤務形態や地域で比べてみてください。
よくある質問
月72時間を超えて夜勤をしたら、違法ですか?
違法ではありません。72時間ルールは病棟全体の平均の基準で、病院が入院基本料を算定するための条件です。個人の夜勤時間が72時間を超えても、病棟全体の平均が72時間以下なら基準を満たします。ただし、時間外労働の上限(36協定)や深夜の割増賃金など、労働基準法の決まりは別に守られる必要があります。
夜勤専従になると、72時間ルールはどうなりますか?
夜勤専従者は72時間ルールの計算に入りません。そのため、夜勤専従者の夜勤時間には72時間の歯止めがかかりません。通知は夜勤専従者の負担が過重にならないよう配慮を求めているので、月の夜勤回数や連続勤務の決まりを、契約の前に確かめてください。
子育て中で夜勤を減らしたいのですが、72時間ルールを理由に断られますか?
小学校に入る前の子を育てている人は、育児・介護休業法の「深夜業の制限」で、午後10時から午前5時までの勤務をしないよう請求できます。継続雇用1年未満の人や、深夜に子の世話ができる同居の家族がいる人などは対象外です。病院が請求を拒めるのは「事業の正常な運営を妨げる場合」に限られるので、72時間ルールがあるというだけでは断る理由になりにくく、病院は残りの人の夜勤時間や採用で調整するのが基本です。
まとめ
- 72時間ルールは、病棟全体の看護職員の月平均夜勤時間を72時間以下にする、入院基本料の条件
- 夜勤専従者と、月の夜勤が16時間未満(病棟によっては8時間未満)の人は計算に入らない
- 平均の基準なので、個人の夜勤時間の上限ではない
- 療養病棟と、治療室・特定入院料の病棟には72時間ルールがかからない
- 2026年度改定で72時間の基準と計算方法は変わっていない
- 職場選びでは、夜勤回数の平均だけでなく、多い人の回数と夜勤専従者の有無を聞く
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参考
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
- 厚生労働省「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」(令和8年3月5日保医発0305第7号)https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001757361.pdf
- 厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部を改正する件(医科点数表)」(令和8年厚生労働省告示第69号)https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686842.pdf
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定 個別改定項目について」(令和8年2月13日)https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001655176.pdf
- 厚生労働省「深夜業の制限」(育児休業制度特設サイト)https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/ikuji/midnightwork/
- 日本看護協会「看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン」https://www.nurse.or.jp/nursing/home/publication/pdf/guideline/yakin_guideline.pdf