ナースの勉強部屋

看護師の自己効力感とは?自分自身の高め方と患者支援への活かし方

看護師の自己効力感とは?自分自身の高め方と患者支援への活かし方

看護の現場では、急変対応や多重業務、正解のない患者さんとの関わりなど、瞬時の判断力や行動力が求められる場面が日常的に発生します。こうした環境下で、日々のパフォーマンスやメンタルの安定、そして患者さんのセルフケア向上に大きく影響するのが「自己効力感」です。

本記事では、看護師自身が自己効力感を高める実践的な方法から、患者さんの意欲を引き出す看護アプローチまで、現場で役立つ知識を網羅して解説します。

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目次
  1. 自己効力感(セルフ・エフィカシー)とは?
    1. 自己肯定感との違い
    2. 自己効力感を生み出す4つの要因
  2. 看護業務において自己効力感が重要な理由
  3. 【看護師自身】自己効力感を高める4つの実践法
    1. 1. 小さな成功体験を積み重ねる(遂行達成)
    2. 2. 先輩や同僚の成功を参考にする(代理経験)
    3. 3. ポジティブなフィードバックを得る(言語的説得)
    4. 4. 十分な休養を取り心身を整える(生理的・情動的喚起)
  4. 自己効力感が育ちやすい職場の特徴
  5. 【患者支援】自己効力感を高める具体的な看護アプローチ
  6. 自己効力感に関するよくある質問
  7. 自身の力を信じて、より良い看護を実践するために

自己効力感(セルフ・エフィカシー)とは?

自己効力感(Self-efficacy)とは、何らかの課題や困難な状況に直面した際に、「自分ならこれくらいできるのではないか」「うまく対応できるはずだ」と、自身の可能性を認知し信じられる感覚のことです。1977年にカナダ人心理学者のアルバート・バンデューラ(Albert Bandura)によって提唱されました。行動の選択や、困難に対する努力の継続に直結する「行動を起こすためのエンジン」として機能します。

自己肯定感との違い

自己効力感と混同されやすい言葉に「自己肯定感」がありますが、対象や役割が明確に異なります。

項目自己肯定感自己効力感
意味ありのままの自分を受け入れる感覚特定の状況に対し「自分ならできる」と思える感覚
対象自分の存在そのもの課題に対する自身の行動や対応力
役割心の安定を支える土台行動を起こすための実践的な原動力

業務でミスをした際、「ミスはしたけれど、自分の価値が下がるわけではない」と受け止めるのが自己肯定感です。一方、「次は知識を増やして確実に乗り越えられるはずだ」と前向きな行動へつなげるのが自己効力感です。

自己効力感を生み出す4つの要因

アルバート・バンデューラは、自己効力感を高めるためには以下の4つの情報源(要因)があるとしています。

  1. 直接的達成経験(遂行達成): 自分で目標を達成した「成功体験」。最も影響力が大きい。
  2. 代理経験(モデリング): 他者の成功や経験を観察し、「あの人にできるなら自分にもできる」と感じること。
  3. 言語的説得: 他者から「あなたならできる」「よくできている」と評価や励ましを受けること。
  4. 生理的・情動的喚起(情緒的喚起): リラックスできている、体調が良いなど、心身のコンディションが整っている状態。

看護業務において自己効力感が重要な理由

自己効力感は、看護師自身のメンタルヘルスを守るだけでなく、患者さんの治療効果にも直結する重要な要素です。

  • 困難なケアにも粘り強く対応できる: コミュニケーションが難しい患者さんに対しても、すぐには諦めず「関わり方を工夫すれば関係を築けるかもしれない」と別のアプローチを探ることができます。
  • ストレスを軽減しメンタルを保つ: 多忙で責任の重い環境でも、「どうすれば対応できるか」と解決思考になるため、過度な不安やプレッシャーを感じにくくなります。
  • 患者のセルフケアを促進する: ドロセア・オレムの看護理論でも示されているように、患者さん自身が「自分でもできる」という自己効力感を持つことで、リハビリや治療への意欲が飛躍的に向上します。

【看護師自身】自己効力感を高める4つの実践法

自己効力感は生まれ持った性格ではなく、後天的に育むことができます。日々の業務のなかで取り入れられる具体的な実践法は以下の通りです。

1. 小さな成功体験を積み重ねる(遂行達成)

いきなり高い目標を掲げるのではなく、「今日は患者さんと目を合わせて話せた」「報告を簡潔にまとめられた」といった日常のささいな成功に目を向けましょう。業務終了後に「今日できたこと」を一つ言語化して振り返る習慣をつけることで、確実な自信へとつながります。失敗を「より賢く再挑戦するための機会」と捉え直すことも大切です。

2. 先輩や同僚の成功を参考にする(代理経験)

年齢や経験年数が近いスタッフの対応を観察し、ロールモデルにしましょう。「近い立場の人ができるなら、自分にもできるはず」という感覚が自信を生みます。単に観察するだけでなく、「なぜその対応を選んだのか」を言語化して共有し合うことで、より実践的な学びになります。

3. ポジティブなフィードバックを得る(言語的説得)

同僚や上司からの「あの時の対応、良かったよ」といった具体的な評価は自信に直結します。もしフィードバックが得にくい環境であれば、研修やグループワークに参加して他者から認められる機会を作るか、過去の自分の成功体験をリストアップして自己評価することも有効です。

4. 十分な休養を取り心身を整える(生理的・情動的喚起)

疲労や睡眠不足は「うまくできないかもしれない」というネガティブな認知を引き起こします。夜勤などの不規則な勤務だからこそ、質の高い睡眠や仕事から完全に離れるオフの時間を作り、心身のコンディションを整えることが、自己効力感を保つベースとなります。

自己効力感が育ちやすい職場の特徴

個人の努力だけでなく、身を置く環境も自己効力感の形成に強く影響します。

  • 失敗を恐れず挑戦できる環境: ミスを厳しく責めるのではなく、「どうすれば次は安全にできるか」を共に考え、適切なサポートのもとで再挑戦を促す文化がある。
  • 日常的なポジティブフィードバック: 課題やミスだけでなく、「できている点」や「患者さんが安心していた事実」を日常的に共有し合える風土がある。

もし現在の職場が、失敗を強く責められる環境やポジティブな評価が一切ない環境であれば、どれだけ努力しても自己効力感は育ちにくくなります。その場合は、より成長や挑戦を後押ししてくれる環境へ移ることも一つの有効な手段です。

【患者支援】自己効力感を高める具体的な看護アプローチ

患者さんが治療やリハビリに対して消極的な場合、看護介入によって自己効力感を高め、意欲を引き出すことが可能です。

  • 段階的な目標設定(スモールステップ): 血糖測定をまずは1日1回だけやってみるなど、確実に達成できる小さな目標を患者さんと一緒に設定し、少しずつ難易度を上げます。
  • 成功体験の言語化と承認: 「今日は昨日より手が上がりましたね」など、患者さんの小さな進歩や努力を見逃さず、具体的な言葉で伝えて承認します。
  • 客観的なフィードバック: リハビリの進捗や検査数値をグラフなどで可視化し、成長を客観的なデータとして実感してもらいます。
  • モデリングの活用: 同じ疾患や状況を乗り越えた患者さんの体験談や成功例を共有し、「自分にもできるかもしれない」という希望を持たせます。
  • 感情的サポート: 技術的な指導だけでなく、「大変でしたね」「よく頑張っていますね」と不安や葛藤に寄り添うことで、挑戦する心理的な土台を作ります。

自己効力感に関するよくある質問

自己肯定感とどちらを優先して高めるべきですか?

どちらも重要ですが、看護実践や行動変容においては、実践的なエンジンとなる「自己効力感」を高めることが優先されます。まずは小さな成功体験を積み重ねて「できる」という感覚を養うことで、現場での対応力が向上します。

自己効力感が低いとどのような影響がありますか?

「どうせできない」という思い込みが先行し、新しい業務や困難な状況を避けるようになります。結果として経験を積む機会を逃し、さらに自信を失うという悪循環に陥り、判断の遅れや消極的な看護につながるリスクがあります。

短期間でも高められますか?

一朝一夕で劇的に変わるものではありませんが、日々の「できたこと」に意図的に目を向ける習慣をつければ、着実に変化を感じられます。毎日の振り返りで小さな成功を言語化し続けることが最短のルートです。

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自身の力を信じて、より良い看護を実践するために

自己効力感は、意識的な行動の積み重ねと、それを支える環境の力によって着実に育てていくことができます。自身への自信を持てずに悩んでいる場合も、患者さんの意欲を引き出せずに戸惑っている場合も、まずは「実現可能な小さな成功」を一つ見つけることから始めてみてください。

その小さな「できた」の積み重ねが、やがて揺るぎない自信となり、あなたらしい前向きな看護実践を支える強固な土台へと変わっていくはずです。