ナースの勉強部屋

【小児看護】プレパレーションとは?子どもへのプレパレーションの技法とプレイルームの活用

【小児看護】プレパレーションとは?子どもへのプレパレーションの技法とプレイルームの活用

小児看護における「プレパレーション」は、患児が検査や処置、入院に対して抱く恐怖や不安を和らげ、前向きに医療を受けられるようにするための重要な心理的アプローチです。

この記事では、プレパレーションの目的や具体的な実践ステップ、現場でやってしまいがちなNG例について、看護師や看護学生に向けて分かりやすく解説します。

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目次
  1. プレパレーションとは?子どもに処置や検査を説明する目的
    1. 小児看護で重要な「インフォームド・アセント」
    2. プレパレーションとディストラクションの違い
  2. 年齢に応じた説明方法(プレイルーム、プレイング、プレイドール等)
    1. 効果的なツールと環境の活用
    2. プレパレーションを実践する5つの段階
  3. プレパレーションのNG例と正解
    1. NG例①:「痛くないよ」「すぐ終わるからね」と嘘をついてしまう
    2. NG例②:子どもが持ち込んだ「お気に入りのぬいぐるみ」で説明する
    3. NG例③:説明するタイミングが早すぎる(または遅すぎる)
  4. 保護者へのフォローと不安軽減の関わり
  5. まとめ:プレパレーションで子どもと家族の不安を和らげよう

プレパレーションとは?子どもに処置や検査を説明する目的

小児医療・小児看護におけるプレパレーション(Preparation)とは、子どもがこれから受ける医療行為(検査・処置・手術など)について、発達段階に合わせた方法で説明し、心理的な準備ができるよう援助するプロセスを指します。

大人であれば「病気を治すために必要な痛み」と頭で理解できますが、子どもにとって病院は未知で怖い場所です。無理やり処置を行うのではなく、子ども自身の「自ら乗り越えようとする力(対処能力)」を引き出すために、プレパレーションには以下の重要な目的があります。

  • 正しい情報の提供と理解の促進「何をされるのか」「なぜ必要なのか」を、嘘をつかずに子どもがイメージしやすい言葉やツールを用いて伝えます。
  • 感情の表出と受容「痛い」「怖い」「逃げたい」といった正直な気持ちを否定せず、看護師が共感的・受容的に関わることで心理的負担を軽減します。
  • 主体的な医療への参加(自己肯定感の向上)自分のタイミングで処置を進めるなどの自己決定を促し、乗り越えた後に「頑張った」という達成感を与えます。
  • 医療者との信頼関係の構築騙したり威圧したりせず誠実に関わることで、安心感と信頼関係を築きます。

小児看護で重要な「インフォームド・アセント」

学童期以下の子どもは、大人と同じように医療行為に対する責任を負う「インフォームド・コンセント(IC)」を行うことは困難です。しかし、子どもの知る権利を尊重し、発達段階に応じて分かりやすく説明し、子ども自身の賛同を得ることをインフォームド・アセント(IA)と呼びます。プレパレーションは、このIAを成立させるための具体的な手段でもあります。

プレパレーションとディストラクションの違い

プレパレーションと混同されやすい概念に「ディストラクション」がありますが、アプローチの目的と対象が異なります。これらを適切に使い分ける、あるいは組み合わせて実践することが大切です。

アプローチ目的と特徴主な対象・場面
プレパレーション医療行為について分かりやすく説明し、心理的準備を整えて負担を最小限に抑える。説明が理解できる幼児~学童(処置の前後を含む全体)
ディストラクションおもちゃや声掛けなどで注意をそらし、処置中の痛みや不安を直接的に感じにくくする。3歳未満の乳幼児、または処置の真っ最中

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年齢に応じた説明方法(プレイルーム、プレイング、プレイドール等)

子どもに説明を行う際は、単なる言葉だけでなく、視覚や触覚を刺激するツールを活用し、認知発達に合わせた工夫が不可欠です。

効果的なツールと環境の活用

  • プレイドール(人形)や模型「なぜお腹が痛いのか」「どこに注射をするのか」を、内臓が見える模型やプレイドールを使って視覚的に説明します。
  • 医療器具のおもちゃ・絵本聴診器や注射器の玩具を用いた「お医者さんごっこ」を通して、未知の器具への恐怖心を薄れさせます。
  • プレイルームの活用処置室の無機質な環境ではなく、プレイルームなどの子どもが安心できる環境で説明を行うことで、リラックスして話を聞くことができます。

プレパレーションを実践する5つの段階

プレパレーションは処置直前の説明だけではありません。以下の5つのプロセスを継続的に行うことが求められます。

ステップ(時期)具体的な実践内容・ポイント
1.事前の情報収集
(病院に来る前)
年齢、発達段階、過去の医療体験、
好きなキャラクター、親の理解度などを
アセスメントし、病棟と外来で連携します。
2.オリエンテーション
(入院・処置前)
来院時の子どもの様子や心理状態を観察し、
どのタイミングで、どのツールを使って
説明するか計画を立てます。
3.真実に基づく説明
(プレパレーションの実施)
人形や実物を用い、
「チクッとするよ」「冷たいよ」など、
子どもが実際に経験する感覚に焦点を当てて
誤魔化さずに伝えます。
4.処置中
ディストラクション
処置中は、一緒に数を数えたり、
音の出るおもちゃを使ったりして注意をそらします。
泣いてしまっても「頑張っているね」と
声をかけ、痛みに耐える姿勢を支持します。
5.処置後・退院後の遊び
(プレイング)
終わった後はご褒美シールなどを渡し、達成感を高めます。
また、医療ごっこなどの「遊び」を通して、
子ども自身が体験した恐怖やストレスを
発散させる(プレイセラピー)ことが、
心の回復に非常に重要です。

プレパレーションのNG例と正解

プレパレーションは頭で理解していても、実際の現場では良かれと思った行動が裏目に出てしまうことがあります。ここでは、小児病棟に配属された新人看護師が陥りやすい「3つのNG例」と、その改善策を紹介します。

NG例①:「痛くないよ」「すぐ終わるからね」と嘘をついてしまう

  • 【よくある失敗シーン】採血を嫌がって泣く4歳児に対し、なだめようと焦って「大丈夫、全然痛くないよ!」「お利口にしていればすぐ終わるよ!」と伝えてしまった。しかし、実際に針を刺すと激しく痛み、子どもはパニックに。それ以降、その看護師が病室に入るだけで怯えるようになってしまった。
  • 【なぜNGなのか?】その場を収めるための「嘘」は、子どもとの信頼関係を一瞬で破壊します。一度「騙された」と感じた子どもは、その後のすべての治療に対して強い拒絶反応を示すようになります。
  • 【正解のアプローチ】ごまかさずに「実際に感じる感覚」を正直に伝えます。「注射は少しチクッとするよ。でも、〇〇ちゃんが元気になるために必要なんだ。泣いてもいいから、腕だけは動かさないで頑張ろうね」と、嘘のない事実と、子どもに協力してほしい具体的な行動を伝えます。

NG例②:子どもが持ち込んだ「お気に入りのぬいぐるみ」で説明する

  • 【よくある失敗シーン】点滴の手順を説明する際、子どもが家から大切に持ってきたウサギのぬいぐるみを使い、「ウサギさんの手にも、こうやってシール(テープ)を貼るよ」と見立てて説明をした。すると子どもが「ウサギさんが痛い思いをする!」と泣き叫び、点滴そのものへの恐怖を増幅させてしまった。
  • 【なぜNGなのか?】子どもにとって、お気に入りのぬいぐるみは自分自身や家族と同じくらい大切な「安心の拠り所」です。そこに医療器具が向けられるのを見ると、強いショックやトラウマを植え付ける危険性があります。
  • 【正解のアプローチ】処置の説明や疑似体験には、必ず病院が用意した専用の「プレイドール」を使用します。「これは病院のお人形の〇〇ちゃんだよ」と切り離して説明することで、子どもは客観的に処置を理解しやすくなります。

NG例③:説明するタイミングが早すぎる(または遅すぎる)

  • 【よくある失敗シーン】「心の準備期間が必要だろう」と考え、3歳の幼児に対して「明日の朝、手術室に行くからね」と前日の夕方にプレパレーションを実施。結果、子どもは「明日」という時間がどれくらい先か理解できず、一晩中「怖い、今から行くの?」と怯えて一睡もできなかった。
  • 【なぜNGなのか?】幼児(特に学童期前)は「時間の概念」が未発達です。「明日」「来週」と言われてもピンとこず、ただ漠然とした不安だけが長く続くことになり、精神的に消耗してしまいます。
  • 【正解のアプローチ】年齢(発達段階)に応じた直前のタイミングで説明します。
    • 2〜3歳(幼児期前期): 処置の直前、または数分前。
    • 4〜6歳(幼児期後期): 処置の数時間前、または当日の朝。
    • 小学生以上: 数日前〜前日でも理解可能(疑問に答える時間を作る)。発達段階を見極め、子どもが不必要に恐怖を抱え込む時間を減らすことが大切です。

保護者へのフォローと不安軽減の関わり

小児看護のプレパレーションにおいて、家族(保護者やきょうだい)の参加とサポートは欠かせない要素です。

子どもは親の感情を非常に敏感に読み取ります。親自身が処置に対して強い不安や恐怖を抱いていると、それが子どもに伝播してしまいます。そのため、まずは看護師が親に対して十分な説明を行い、親の不安を取り除くことが第一歩となります。

  • 処置中の親の役割を明確にする「処置中は手を握ってあげてください」「〇〇ちゃんが好きな歌を一緒に歌ってあげてください」など、親が具体的にどう関わればよいかを事前に伝えます。親に抱っこされた状態での処置は、子どもにとって最大の安心材料になります。
  • 子どもの頑張りを共に承認する処置が終わった後は、看護師だけでなく親からも「よく頑張ったね」とたっぷり褒めてもらうよう促し、子どもの自己肯定感を家族全員で高めます。
  • 退院後の生活や学校への橋渡し退院して日常生活(保育園や学校)へ戻る際、子どもが戸惑わないよう、家庭での過ごし方や声掛けのポイントを指導します。必要に応じて、園や学校の先生に配慮してほしい事項を伝え、家族全体がスムーズに日常に戻れるよう支援することも看護師の重要な役割です。

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まとめ:プレパレーションで子どもと家族の不安を和らげよう

プレパレーションは、子どもが医療体験に対して抱く恐怖心を和らげ、自ら乗り越える力を引き出すための重要なプロセスです。

単なる「処置前の説明」にとどまらず、事前の情報収集から退院後のケアまで継続して関わること、そして発達段階に応じたツール(プレイドールなど)の活用や、家族全体への精神的サポートが求められます。

看護師として、インフォームド・アセントの視点を持ち、子どもと家族に寄り添ったプレパレーションを実践していきましょう。