【看護師向け】採血で刺しにくい血管の探し方と失敗しない角度・コツ|手順と注意点を解説
「血管が見えない」「触れても逃げてしまう」「一度で入らず、患者さんに申し訳ない」——。採血は看護師の基本手技でありながら、多くの人が苦手意識を持つ処置です。
うまくいかない原因の多くは、実は「刺す技術」より「刺す前の準備」にあります。血管をしっかり浮き上がらせ、良い血管を選べれば、成功率は大きく変わります。この記事では、公的なガイドラインなどの一次情報に基づき、刺しにくい血管の探し方と、失敗しないための角度・手順を具体的に解説します。
まず知っておきたい「採血に適した血管」
採血では、肘の内側(肘窩)にある静脈を選ぶのが基本です。日本臨床検査標準協議会(JCCLS)の「標準採血法ガイドライン」においても、解剖学的安全性の観点から以下の優先順位が推奨されています。
- 正中皮静脈:太く固定されており、最も安全で第一選択となる血管
- 橈側皮静脈:親指側にあり比較的なぞりやすいが、やや逃げやすい傾向がある
- 尺側皮静脈:小指側。正中神経や上腕動脈が近くを通っているため、神経損傷のリスクが高い部位です。日本看護協会の「静脈注射の実施に関するガイドライン」でも注意が喚起されており、他の血管がどうしても見つからない場合を除き、優先順位は下げましょう。
選ぶときのポイントは、「見えるか」より「触れて弾力を感じるか」です。太くまっすぐで、押すと弾力がある血管が理想。逆に、拍動を感じる場所は動脈の可能性があるため避けます。
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血管が出ないときの「浮き上がらせる」テクニック
血管が見えない・触れにくいときは、次の方法で怒張(血管を浮き上がらせること)を促します。
- 温める
蒸しタオルなどで前腕を温めると、血管が広がって出やすくなります。冬場や末梢が冷えている患者さんに特に有効です。 - 腕を心臓より低くする
腕を下げて重力を利用すると、静脈に血液がたまりやすくなります。 - 手を軽く握ってもらう
グーパーを数回してから握ってもらうと血管が浮きます。ただし、強く握り込みすぎる「クレンチング」は、カリウム値や数値検査に影響を与えるため(※JCCLSガイドライン参照)、軽く握ってもらう程度にとどめます。 - 駆血帯の位置と強さを見直す
駆血帯は刺す部位から7〜10cmほど中枢側に巻きます。きつすぎると動脈まで止めてしまい逆効果です。指が1本入る程度を目安にしましょう。 - 叩くより「さする」
血管を強く叩くと、かえって収縮したり内出血の原因になったりします。中枢から末梢へ軽くさすって血液を集めるほうが効果的です。
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【準備】血管が細い・虚脱しやすいときは「器具」を変える
刺しにくい血管に挑む際は、技術だけでなく「器具選び」も成功率を左右します。
- 翼状針を活用する:針先が短く翼を持って角度を微調整できるため、浅く細い血管でも安定して穿刺できます。
- シリンジ採血に切り替える:細い血管や虚脱しやすい血管の場合、真空採血管の陰圧で血管がペタッと潰れてしまい血流が止まることがあります。シリンジを使い、手動でゆっくり引くことで血流を確保しやすくなります。
- 針の太さ(ゲージ)を見直す:通常は21G〜22Gを使用しますが、血管が非常に細い場合は23Gなどの細い針を選択するのも有効です(溶血を防ぐため、吸引時は無理に強く引かないよう注意します)。
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失敗しない「角度」と「手順」
血管を選び、怒張させたら、いよいよ穿刺です。標準手技に沿って手順を確認しましょう。
手順1:血管を固定する
穿刺部位より少し下(末梢側)の皮膚を、親指で軽く手前に引いて固定します。これで血管が逃げにくくなります。
手順2:角度は10〜20度
針の刃面(ベベル)を上に向け、皮膚に対して10〜20度(一般に15度前後)の浅い角度で刺入します。角度が深すぎると血管を突き抜け、神経損傷のリスクが高まります。「思ったより寝かせる」意識が安全かつ確実です。
手順3:血管に入ったら角度を寝かせる
血液の逆流(フラッシュバック)を確認したら、針の角度をさらに寝かせ、数ミリだけ進めて固定します。深追いは禁物です。
手順4:駆血帯を外してから抜針
採血が終わったら、必ず「先に駆血帯を外してから」針を抜きます。抜いた後はすぐに乾綿でしっかり圧迫止血を行います。もまずに3〜5分ほどしっかり押さえるよう患者さんに伝えます。
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それでも入らないときの判断
2回試して入らなければ、一度手を止め、他のスタッフに交代を依頼するのが基本です。何度も刺すことは、患者さんの負担にも信頼低下にもつながります。「無理をしない」ことも医療安全上の大切な技術です。
また、穿刺後に強いしびれや電気が走るような痛みを訴えられた場合は、神経損傷が疑われます。ただちに穿刺を中止して抜針し、適切な処置を行うとともに医師へ報告してください。
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苦手を克服する3つの心がけ
- 準備に時間をかける
成功する採血は、刺す前にほぼ決まっています。焦って刺さず、良い血管を探すことに時間を使いましょう。 - 患者さんに声をかける
「今、血管を探していますね」と一声かけるだけで、患者さんの緊張がほほぐれ、血管も出やすくなります。 - うまくいった感覚を覚えておく
成功したときの角度や手ごたえを意識的に記憶すると、次に再現しやすくなります。
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環境を変えるのも一つの選択
採血の機会が多い病棟や検査科で自信をつけるのも良いですが、「もう少し落ち着いた環境で、一つひとつの手技を丁寧に磨きたい」と感じることもあるでしょう。クリニックは処置の種類がある程度絞られ、自分のペースでスキルを積み上げやすい職場です。
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血管が細い・見えにくい患者さんへの対応
高齢者や脱水ぎみの方など、血管が探しにくい患者さんもいます。タイプ別に少し工夫しましょう。
- 高齢者:血管が硬く逃げやすいうえ、もろくて内出血しやすい傾向があります。皮膚をしっかり手前に引いて固定し、浅め・ゆっくり刺入。止血は長めにとります。
- 脱水ぎみ:血管が虚脱して出にくくなります。温めと駆血で怒張を促し、可能なら水分摂取後を狙います。
- むくみのある方:血管が沈んで見えにくいので、指の腹で軽く押して余分な水分をよけ、走行を触知してから狙います。
- 肥満ぎみの方:深さの見極めが難しいため、見た目より「触知した弾力」を頼りに、角度をつけすぎないよう注意します。
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内出血を防ぐ「抜針後」のケア
採血後のトラブルで多いのが、抜針後の内出血(皮下血腫)です。次を徹底しましょう。
- 抜針の前に、必ず駆血帯を外す
- もまずに「押さえる」(揉むと組織が損傷し内出血が広がります)
- 3〜5分ほど、患者さん自身にもしっかり圧迫してもらう
- 抗凝固薬(血液をサラサラにする薬)を服用中の方は、止血確認ができるまで長めに圧迫する
「止血までが採血」と考えると、失敗の印象も最小限にできます。
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まとめ
採血の成功率は、次の流れを押さえることで着実に上がります。
- 触れて弾力のある血管を選ぶ(正中皮静脈を第一選択とする)
- 温め・駆血帯・さすりで血管を浮かせる
- 皮膚を固定し、10〜20度の浅い角度で穿刺
- 逆流を確認したら角度を寝かせる
- 無理をせず、2回で入らなければ交代
大切なのは、刺す瞬間の技術以上に「刺す前の準備」。ガイドラインに基づいた丁寧な手順を重ねるほど、採血は少しずつ怖くなくなっていきます。
よくある質問(FAQ)
Q. 何度刺しても入りません。コツはありますか?
A. 刺す技術より「準備」を見直しましょう。温め・駆血帯の位置・血管の触知に時間をかけるだけで成功率は変わります。患者安全の観点からも、2回失敗したら無理せず他のスタッフに交代してもらいましょう。
Q. 手の甲や前腕の血管を使ってもいいですか?
A. 肘窩が難しい場合の選択肢になりますが、手背や手関節付近は神経損傷のリスクが高く痛みを感じやすい部位です。自施設のインシデント防止マニュアルや基準に従い、慎重に行ってください。
Q. 駆血帯はどのくらいの時間巻いていていいですか?
A. 長時間の駆血は血液濃縮を起こし、検査値(血液濃度や酵素など)に影響を与えます。JCCLSガイドラインでは「1分以内」の採血完了が推奨されています。準備に時間がかかる場合は一度駆血帯を外して休ませましょう。
Q. 患者さんが採血中に「気分が悪い」と言い出したら?
A. 迷走神経反射(VVR)の可能性があります。直ちに採血を中止して抜針・止血し、患者さんを仰臥位(横になった状態)にしてバイタルを測定します。症状が改善しない場合は速やかに医師へ報告・指示を仰ぎます。
参考文献・根拠資料
- 日本臨床検査標準協議会(JCCLS)「標準採血法ガイドライン GP1-A3」
- 公益社団法人 日本看護協会「静脈注射の実施に関するガイドライン」
- 厚生労働省「静脈注射等の実施について」(医政発第0930002号)
- 日本採血学会「採血ガイドライン」