ナースの勉強部屋

看護研究の分析方法の種類と選び方|量的・質的の違い、アンケートの集計と検定、インタビューの質的分析の流れ

看護研究の分析方法の種類と選び方|量的・質的の違い、アンケートの集計と検定、インタビューの質的分析の流れ

テーマは決まり、アンケートやインタビューの準備も進んでいる。けれど「集めたデータをどう分析すればいいのか」が決まらない。看護研究の計画書で手が止まりやすいのが、この分析方法の欄です。

この記事は、院内研究や看護研究に初めて取り組む臨床の看護師に向けて、分析方法の種類と選び方をまとめたものです。読み終えたときに、自分の研究で「量的か質的か」「どの集計・検定か」の見当がつき、指導者や統計の相談先に具体的に質問できる状態を目指します。統計ソフトの操作方法や数式の解説は扱いません。

テーマの決め方から整理したい方は、先に看護研究テーマの決め方を読んでおくと流れがつかみやすくなります。

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目次
  1. 分析方法は「研究の問い」と「データの形」で決まる
  2. 看護研究で使われる分析方法の種類一覧
  3. 量的研究の分析方法|記述統計と検定
    1. 平均値と中央値の使い分け
  4. アンケート調査の集計から検定までの進め方
    1. 検定の選び方の早見表
    2. 関係を見たいとき
  5. 質的研究の分析方法の種類と、インタビューデータの分析の流れ
    1. インタビューを質的記述的に分析する流れ
    2. KJ法が向いている場面
  6. 分析方法を選ぶときの境界線
  7. 看護研究の分析でよくある失敗
  8. 分析の前に確かめる倫理的配慮
  9. よくある質問
    1. 統計ソフトがなくても分析できますか
    2. 回答者が20人程度でも検定してよいですか
    3. 質的研究は何人にインタビューすればよいですか
  10. まとめ
  11. 参考

分析方法は「研究の問い」と「データの形」で決まる

分析方法は、データを集めてから選ぶものではありません。研究の問いを立てた時点で、ほぼ決まっています。問いの形と、集めるデータの形を先にそろえておくことが、分析で迷わないいちばんの近道です。

研究の問いの形 集めるデータ 向いている分析
実態を知りたい(例:夜勤明けの睡眠時間はどのくらいか) 数値・選択肢の回答 記述統計(度数、割合、平均、中央値など)
違いを比べたい(例:研修の前後で知識テストの点は変わったか) 数値・選択肢の回答 検定(2つ以上のグループや時点を比べる)
関係を見たい(例:経験年数と自己効力感は関係があるか) 数値・選択肢の回答 相関分析、回帰分析
経験や考えの中身を知りたい(例:新人看護師は初めての急変をどう受け止めたか) 語り・自由記述 質的分析(内容分析、KJ法など)

上の3つが量的研究、最後の1つが質的研究です。「違いがあるか」を確かめたいのにインタビューだけ行ったり、「どんな経験か」を知りたいのに選択肢のアンケートだけ取ったりすると、分析の段階で問いに答えられなくなります。

看護研究で使われる分析方法の種類一覧

看護研究でよく使われる分析方法を、量的・質的に分けて並べます。

区分 分析方法 何が分かるか
量的 単純集計(度数・割合) 回答ごとの人数と割合
量的 クロス集計 属性ごと(経験年数別など)の回答の分布
量的 記述統計量(平均、中央値、標準偏差など) データの中心とばらつき
量的 比率の検定(カイ二乗検定など) グループ間で割合に差があるか
量的 平均値・分布の差の検定(t検定、マン・ホイットニーのU検定など) 2つのグループや時点で差があるか
量的 3つ以上の比較(分散分析、クラスカル・ウォリス検定など) 3つ以上のグループで差があるか
量的 相関分析(ピアソン、スピアマン) 2つの変数がどのくらい一緒に動くか
量的 回帰分析 ある変数が別の変数にどのくらい影響しているか
質的 質的記述的分析・内容分析 語りや記述にどんな内容が含まれるか
質的 KJ法 ばらばらの意見・記述をまとまりとして整理する
質的 グラウンデッド・セオリー・アプローチ 現象のプロセスを説明する概念や理論を作る
質的 現象学的アプローチ ある経験がその人にとってどんな意味をもつか

院内研究で使われることが多いのは、量的なら単純集計・クロス集計・基本的な検定、質的なら質的記述的分析やKJ法です。グラウンデッド・セオリー・アプローチや現象学的アプローチは、方法論の学習と指導者の支援が前提になるため、初めての研究では選ぶ前に指導者と相談してください。

量的研究の分析方法|記述統計と検定

量的研究の分析は、大きく2段階です。

  1. 記述統計:集めたデータそのものを要約する(何人が、どのくらい、どう答えたか)
  2. 推測統計(検定など):手元のデータから、差や関係が偶然とはいえないかを判断する

すべての研究で検定が必要なわけではありません。病棟の実態を把握する調査なら、記述統計とクロス集計で問いに答えられることも多くあります。検定は「差がある」「関係がある」と主張したいときに使う方法です。

平均値と中央値の使い分け

データの中心を示すときは、平均値と中央値のどちらを使うかを決めます。一般に、一部の極端に大きい(小さい)値に引っぱられやすいデータでは、平均値より中央値のほうが実態に近くなります。残業時間のように、多くの人は短く一部の人だけ極端に長いデータが典型です。迷ったら両方を出し、ばらつき(標準偏差や四分位範囲)も添えます。

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アンケート調査の集計から検定までの進め方

看護研究でもっとも多いアンケート調査を例に、分析の流れを示します。

  1. 回答を整理する:回収数と有効回答数を数え、無回答や矛盾した回答の扱いを決める
  2. 単純集計:設問ごとに人数と割合を出す
  3. クロス集計:経験年数・勤務形態など、比べたい属性ごとに回答を並べる
  4. 検定:クロス集計で見えた差が偶然とはいえないかを確かめる
  5. 結果を表と図にする:検定の名前、有意水準、結果を明記する

有意水準は分析の前に決めておきます。多くの研究では5%が使われますが、研究計画で定めた値を使ってください。

検定の選び方の早見表

どの検定を使うかは、比べるデータの種類と比べるグループの数・関係で決まります。下の表は一般的な目安です。データの分布やサンプルの大きさで適した方法が変わるため、最終的には統計に詳しい指導者に確認してください。

比べるデータ 2つのグループ(別々の人) 同じ人の2時点(前後比較) 3つ以上のグループ
選択肢の人数・割合(はい/いいえなど) カイ二乗検定、フィッシャーの正確確率検定 マクネマー検定 カイ二乗検定
順序のある回答(5段階評価など)、分布が偏った数値 マン・ホイットニーのU検定 ウィルコクソンの符号付順位検定 クラスカル・ウォリス検定
分布が左右対称に近い数値(点数、時間など) t検定(対応のないt検定) 対応のあるt検定 一元配置分散分析

「とてもそう思う〜まったくそう思わない」のような5段階の回答は、順序はあっても間隔が等しいとは限らないため、順序のあるデータとして扱う考え方がよく使われます。どちらで扱うかは、計画書の段階で決めて書いておきます。

関係を見たいとき

経験年数と自己効力感の得点のように、2つの数値がどのくらい一緒に動くかを見るには相関分析を使います。分布が左右対称に近い数値同士ならピアソンの相関係数、順序のあるデータや偏った分布ならスピアマンの順位相関係数が一般的です。相関があっても、どちらが原因かは相関分析だけでは言えません。

質的研究の分析方法の種類と、インタビューデータの分析の流れ

質的研究は、語りや自由記述の言葉そのものをデータにして、その中身を明らかにする研究です。数を数えることが目的ではありません。

インタビューを質的記述的に分析する流れ

院内研究で多い、半構造化インタビューを質的記述的に分析する場合の一般的な流れです。

  1. 逐語録を作る:録音を一字一句文字に起こす。個人や施設が特定される固有名詞は記号に置き換える
  2. 全体を繰り返し読む:1人分の語りを通して読み、全体像をつかむ
  3. コード化する:研究の問いに関係する部分を切り出し、意味を短い言葉(コード)で表す
  4. まとめる:似た意味のコードを集めてサブカテゴリにし、さらにカテゴリにまとめる
  5. カテゴリ同士の関係を見る:カテゴリがどうつながっているかを整理し、結果として記述する
  6. 分析の確からしさを高める:複数の研究者で検討する、質的研究の経験者にスーパーバイズを受けるなど、解釈の偏りを減らす手続きを取る

結果には、カテゴリ・サブカテゴリの一覧に加えて、根拠となる語りを引用として載せます。読んだ人が「この語りからこのカテゴリが出てきた」と追えることが、質的研究の説得力になります。

KJ法が向いている場面

自由記述やグループワークの付箋のように、短い意見が大量にある場合はKJ法が使われることがあります。意見を1枚ずつカードにし、近いものを集めて表札(タイトル)を付け、まとまり同士の関係を図にする方法です。病棟の課題の洗い出しなど、実践の改善につなげる研究と相性がよい方法です。

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分析方法を選ぶときの境界線

どの分析を選ぶか迷ったときは、次の条件で自己判定してください。

こういう条件なら 選ぶ分析
「どのくらい」「差があるか」「関係があるか」に答えたい。対象者がある程度の人数いる 量的分析(記述統計+必要なら検定)
「どんな経験か」「なぜそう感じたか」に答えたい。少人数でも深く話を聞ける 質的分析
数で実態をつかみ、その理由を語りで掘り下げたい 量的と質的の組み合わせ(混合研究)。ただし作業量は2倍近くになる
1人の患者さんへの看護を振り返り、意味づけたい 検定や統計的な分析は不要。ケーススタディとしてまとめる

最後の行のように、そもそも統計的な分析をしないという選択肢もあります。1事例の看護の振り返りなら、看護のケーススタディの書き方で紹介している形のほうが目的に合います。

また、対象者が少人数の病棟調査で無理に検定をしても、差を見つけにくく、結果の解釈が難しくなりがちです。人数が限られる場合は、記述統計で実態を丁寧に示すほうが実践に役立つこともあります。

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看護研究の分析でよくある失敗

  • 分析方法をデータを集めた後で決める:問いに答えられない設問になっていることに、集計の段階で気づく
  • 検定を何度も繰り返す:設問ごとに検定を重ねると、偶然「有意」になる結果が出やすくなる。比べる組み合わせは計画で絞る
  • 有意差があれば意味がある、と考える:統計的な差と、看護の実践にとって意味のある差は別。差の大きさも合わせて示す
  • 相関を因果として書く:「関係がある」と「原因である」を区別する
  • 質的分析で頻度を数えて結論にする:何人が言ったかより、語りの中身と意味を記述する
  • 個人が特定される引用を載せる:逐語の引用でも、年齢・部署・出来事の組み合わせで個人が分かることがある

分析の前に確かめる倫理的配慮

アンケートやインタビューで人からデータを集める研究では、分析の前の段階で倫理的な手続きが済んでいる必要があります。人を対象とする研究には、文部科学省・厚生労働省・経済産業省の「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」があり、説明と同意、個人情報の扱いなどが定められています。所属施設の倫理審査委員会の規程とあわせて確かめてください。

日本看護協会の「看護職の倫理綱領」第11条は、研究や実践を通して看護学の発展に寄与することを求めると同時に、研究参加に対する人々の意向を尊重し、プライバシーをまもることを解説しています(要約)。条文の一覧は看護職の倫理綱領16条の一覧にまとめています。

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よくある質問

統計ソフトがなくても分析できますか

単純集計やクロス集計は表計算ソフトでもできます。検定も表計算ソフトの関数や分析機能で行えるものがありますが、どの検定を使うか、結果をどう読むかの判断は変わりません。施設で使える統計ソフトや相談窓口があれば、計画の段階で確認しておきましょう。

回答者が20人程度でも検定してよいですか

検定自体は可能ですが、人数が少ないと差を見つけにくく、使える検定も限られます。少人数の場合に使われる方法(フィッシャーの正確確率検定やノンパラメトリック検定など)があるため、指導者に相談してください。検定をせず、記述統計で実態を示す選択もあります。

質的研究は何人にインタビューすればよいですか

決まった人数はありません。研究の問いと分析方法によって変わり、新しいコードやカテゴリが出なくなるところまで続ける考え方もあります。院内研究では、計画の段階で指導者と人数の目安を決めておくのが現実的です。

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まとめ

看護研究の分析方法は、研究の問いとデータの形で決まります。「どのくらい・差・関係」を知りたいなら量的分析、「どんな経験か」を知りたいなら質的分析、1事例の振り返りなら統計的な分析は要りません。計画書を書く段階で、集計・検定の方法や質的分析の手順まで決めておくと、データを集めた後に迷わずに済みます。

参考