経時記録の書き方|急変・処置中に使う場面と時刻の書き方、SOAP・フォーカスチャーティングとの境界と例文
経時記録は、起きたことと行ったことを、時刻の順に文章で並べていく経過記録です。SOAPやフォーカスチャーティングのように欄を分けず、「何時に、何があり、誰が何をしたか」を上から順に書きます。
ふだんの記録はSOAPやフォーカスで書いている病棟でも、急変や転倒の発見、処置の最中など、出来事が短い時間に続く場面では経時記録に切りかえることがあります。どこで切りかえるか、時刻をどう書くかで迷う人が多い記録です。
この記事では、経時記録を使う場面、時刻の書き方、ほかの書き方との境界、場面別の例文、迷いやすい点を整理します。記録の様式は施設ごとに決まっているので、実際の運用は所属先の記載基準に合わせてください。
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経時記録とは(時系列で事実を並べる経過記録)
日本看護協会の「看護記録に関する指針」は、看護記録の様式として基礎情報・看護計画・経過記録・要約(サマリー)を挙げ、経過記録にはいくつかの方法があるとしています。経時記録は、この経過記録を時間の流れに沿って叙述する方法です。
同じ指針は、記録の基本の一つに「適時に記録する」ことを挙げ、看護実践の過程を時間の経過とともに書くこと、時間を正確に書くことを求めています。とくに、予期せぬ事態が起きた場合は、経時的に書き、行った処置と時間だけでなく、発見・発生の状況、観察したこと、対処後の結果・反応も正確な時間とともに書くとしています。
経時記録の特徴は次のとおりです。
| 項目 | 経時記録の特徴 |
|---|---|
| 並べ方 | 時刻の順。1行に1つの出来事 |
| 主に書くこと | 観察した事実、行ったこと、患者さんの反応、報告・連絡 |
| 得意なこと | 短い時間に出来事が続く場面を、抜けなく残す |
| 苦手なこと | 長い期間の経過から、問題ごとの変化を読み取る |
入院基本料の施設基準の通知(令和8年度、別添6 別紙6)は、経過記録を「個々の患者について観察した事項及び実施した看護の内容等」を記録するものとしています。経時記録も、この経過記録の一つの書き方です。
経時記録を使う場面(急変・処置中・転倒の発見・移送)
経時記録が向いているのは、時刻そのものが記録の中身になる場面です。
| 場面 | 経時記録にする理由 |
|---|---|
| 急変・状態の急な変化 | 発見から医師への報告、到着、処置、反応までの時刻が後から確認される |
| 転倒・転落の発見 | 発見時の状況と、その後の観察・報告の順番が大切になる |
| 処置・検査の介助中 | 開始・終了、途中の変化を時刻と並べて残す |
| 点滴の自己抜去・離院など、予期しない出来事 | 気づいた時刻と、それまでの最終確認の時刻を残す |
| 転棟・手術室や検査室への移送 | 出棟・帰室の時刻と、その時の状態を残す |
| 家族への説明・連絡 | 誰に、何時に、何を伝えたかを残す |
看護記録は、厚生労働省の「診療情報の提供等に関する指針」で診療記録の一つに挙げられ、患者さんから求められれば開示の対象になります。また、診療録と同様に法的な証拠となり得ます。前述の指針は、記録に書かれていない看護実践は、実際に行われていても裁判所で事実と認められないことがあり、また看護実践の時間や処置の記載と、他職種の記載との整合性が問題になることがあるとしています。急変や転倒などの場面では、医師の記録や麻酔記録などと時刻がずれていないかも確かめられるので、経時記録が使われます。
経時記録の時刻の書き方(何の時刻を、どの時計で書くか)
経時記録で一番大切なのは時刻です。次の4点をそろえると、後から読んだときに経過を再現できます。
1. 「記録した時刻」ではなく「起きた時刻」を書く
経時記録の各行の時刻は、出来事が起きた時刻、行為を行った時刻です。電子カルテでは記録を入力した時刻が自動で残ります。入力した時刻と出来事の時刻は別のものとして扱い、本文には出来事の時刻を書きます。
2. 最後に確認した時刻も書く
転倒や自己抜去などの発見の記録では、発見した時刻に加えて、その前に最後に姿や状態を確認した時刻を書きます。どのくらいの時間のあいだに起きたかが分かるためです。
3. 時計をそろえる
病棟の壁の時計、モニターの時計、電子カルテの時刻、自分の腕時計は、少しずつずれていることがあります。急変時は、記録係がどの時計を基準にするかを決めておくと、時刻の食い違いを減らせます。施設で基準の時計が決まっている場合は、それに従います。
4. 分単位で、24時間表記で書く
「夕方」「しばらくして」のような書き方はせず、「17:42」のように分単位で書きます。午前・午後の取り違いを防ぐため、24時間表記にしている施設が多くあります。
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経時記録とSOAP・フォーカスチャーティングの境界(どちらで書くかの判定表)
SOAPとフォーカスチャーティングは、情報を欄に分けて構造化して書く方法です。経時記録は、構造化をいったんやめて、時刻の順に事実を並べる方法です。境目は「判断を書く時間があるか」「時刻の並びが大切か」で決まります。
| こういう場面なら | 書き方 | 判断の目安 |
|---|---|---|
| 数分おきに出来事が続き、その場で考察を書く余裕がない | 経時記録 | 出来事が落ち着くまで、判断より事実と時刻を優先する |
| 出来事が落ち着き、何が起きたかを振り返って評価する | SOAPかフォーカスへ戻る | 経時記録の最後に「以降は〇〇で記録」と区切る |
| 計画にある問題について、ふだんの経過を書く | SOAP | 問題ごとのアセスメントと計画が中心 |
| 計画にない出来事が1つ起き、ケアと反応を残す | フォーカスチャーティング | 時刻の並びより、行為と反応の対応が大切 |
| 定時のバイタルサインや観察の値 | フローシート | 数値は表に。文章で並べ直さない |
| 状態が安定していて、変わったことがない | 施設の基準どおり(フローシートの要点の欄など) | 経時記録で「変わりなし」を並べない |
ポイントは、経時記録に切りかえたら、どこから始めてどこで終えたかが分かるようにすることです。急変の記録が落ち着いたあと、評価や計画の見直しはSOAPやフォーカスで書き、同じ出来事を2つの書き方で丸ごと繰り返さないようにします。
関連記事:フォーカスチャーティングの書き方|FDARの例文とフォーカスの立て方、SOAPとどちらで書くかの判定表
経時記録の例文(急変時・転倒発見時・処置中)
以下の例文に出てくる患者さんの情報は、すべて架空のものです。薬の名前や量、医師の判断の中身は書かず、記録の形だけを示しています。
転倒の発見時の例
2:10 巡視時、ベッドで入眠中を確認。
2:48 物音で訪室。ベッド右側の床に、右側を下にして横たわっているところを発見。「トイレに行こうとして滑った」と話す。呼びかけにすぐ返答あり。
2:50 頭を打ったかを尋ねると「打っていない」と話す。右の肘に擦りむいた傷あり、出血は少量。ほかに痛む部位の訴えなし。
2:52 看護師2名でベッドへ移動を介助。
2:55 バイタルサイン測定(値はフローシートに記載)。
3:00 当直医へ電話で報告。
3:15 当直医が来棟し診察。医師の指示により、右肘の傷の処置を実施。
3:30 ベッドを最も低い位置にし、離床時はナースコールを押すよう説明。「呼びます」と返答。
3:35 以降の観察はフォーカス「転倒後の経過観察」で記録。
急変時の例
10:05 訪室時、呼びかけに対する返答がいつもより遅い。顔色不良。
10:06 ナースコールで応援を要請。モニター装着。
10:08 担当医へ電話で報告。
10:10 応援の看護師2名到着。1名が記録係となる。
10:12 担当医到着。
10:14 医師の指示による処置を開始(内容は所定の記録に記載)。
10:30 呼びかけへの返答が戻る。「急にぼーっとした」と話す。
10:40 家族(長男)へ電話で連絡。状態の変化があったこと、医師から説明があることを伝えた。
11:00 以降はSOAPで記録。
急変の例では、処置の開始時刻は経過の中に残し、薬の名前や量などの内容は指示簿などの所定の記録に書いたことを示しています。どの記録に何を書くかは施設の記載基準に従ってください。
処置の介助中の例
14:00 処置室へ車椅子で移動。処置の流れを説明し、「分かりました」と返答。
14:05 処置開始。
14:12 「少し気持ちが悪い」と話す。医師へ伝え、処置を一時中断。
14:15 「もう大丈夫」と話す。医師の判断で処置を再開。
14:25 処置終了。
14:30 病室へ帰室。
経時記録で迷う境目(後から書くとき・メモの転記・推測を書かない)
| 迷う場面 | 書き方の考え方 |
|---|---|
| 急変中は記録できず、落ち着いてから書く | 出来事の時刻はメモや記録係の記録から書く。後から書いたことが分かる形にする(施設の追記・遅れ記載の決まりに従う) |
| 記録係のメモを転記する | メモの時刻をそのまま使う。転記の際に時刻を丸めない |
| 時刻があいまいな出来事 | 推測で時刻を埋めない。「〇時〇分ごろ」と書くか、確かな時刻(発見時刻・最後の確認時刻)だけを書く |
| 原因を書きたくなる | 「滑って転倒した」と本人が話した場合は、本人の言葉として書く。看護師の推測で原因を決めつけて書かない |
| 書き間違えた | 消さずに、施設の訂正方法で訂正する。訂正前の記載は読める形で残す |
前述の指針は、訂正する場合は訂正した人・内容・日時が分かるようにし、訂正前の記載は読み取れる形で残すこと、追記する場合はいつのどの箇所への追記かが分かるようにすることを求めています。急変の後は記録が後回しになりがちですが、記憶だけで時刻を書き直すことは避けましょう。
訂正や記録の持ち出しで問題にならない書き方は看護記録の保存期間は何年?病院・クリニック・訪問看護の早見表と、訂正・持ち出しで問題にならない書き方で紹介しています。
関連記事:看護記録の簡素化|記録時間を減らす5つの方法と、削ってはいけない記録の見分け方、病棟で進める手順
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よくある質問
経時記録はいつも使ってはいけないのですか?
使ってはいけないわけではありません。施設によっては、経時記録を基本の書き方にしているところもあります。ただし、何日も経時記録だけが続くと、問題ごとの経過を追うのに時間がかかります。どの書き方を使うかは、施設の記載基準を確認しましょう。
経時記録にアセスメントを書いてもよいですか?
書いてはいけないという決まりはありませんが、経時記録の中心は時刻と事実です。落ち着いてからの評価や計画の見直しは、SOAPやフォーカスで書くと読みやすくなります。
申し送りのメモと経時記録はどう違いますか?
メモは記録を書くための材料で、正式な記録ではありません。経時記録は施設が保管する看護記録の一部です。申し送りで伝える内容の整理は申し送り事項の書き方とコツ|新人看護師でも迷わない6項目チェックリストで紹介しています。
まとめ
- 経時記録は、出来事と行ったことを時刻の順に並べる経過記録
- 急変、転倒の発見、処置中、予期しない出来事、移送など、時刻そのものが記録の中身になる場面で使う
- 時刻は「記録した時刻」ではなく「起きた時刻」を、分単位で書く。発見の記録では最後に確認した時刻も書く
- 出来事が落ち着いたら、どこで経時記録を終えたかを示してSOAPやフォーカスへ戻る
参考
- 日本看護協会「看護記録に関する指針」(2018年) https://www.nurse.or.jp/nursing/home/publication/pdf/guideline/nursing_record.pdf
- 厚生労働省「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」(令和8年3月5日保医発0305第7号)別添6 別紙6「入院基本料に係る看護記録」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
- 厚生労働省「診療情報の提供等に関する指針」 https://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/06/s0623-15m.html