RASSの評価表と判定手順|+4〜−5の10段階、観察・呼びかけ・身体刺激の3ステップと迷う境目、看護記録の例文
RASS(Richmond Agitation-Sedation Scale、リッチモンド興奮・鎮静スケール)は、患者の状態を興奮側の+1〜+4、意識清明で落ち着いている0、鎮静側の−1〜−5の10段階で表すスケールです。2002年にSesslerらが発表しました。
日本集中治療医学会の「日本版・集中治療室における成人重症患者に対する痛み・不穏・せん妄管理のための臨床ガイドライン(J-PADガイドライン)」は、RASSとSAS(Sedation-Agitation Scale)を、成人患者の鎮静深度と鎮静の質を評価するうえで最も有用なスケールとしています。評価者間の一致が高く、検証の対象者数も十分だというのが理由です。
RASSは、鎮静中の患者だけでなく、不穏やせん妄がみられる患者の状態を共有するときにも使われます。数字だけで「さっきより起きている」「落ち着いてきた」を伝えられる一方、呼びかけ方や見る時間がそろっていないと、看護師ごとに点数がずれます。この記事では、評価表、判定の手順、迷いやすい境目、記録の書き方を整理します。
看護師専門転職サービス
「クリアス看護」
LINE友だち追加で、希望条件に合った求人紹介や
非公開求人のご案内を無料で受けられます。
給与・働き方・勤務条件など、
転職に関するご相談もLINEで気軽に可能です。
RASSの評価表(+4〜−5の10段階と判定基準)
J-PADガイドラインに載っているRASSの日本語の表(Table 11)の内容を、言葉を整理して並べると次のようになります。右端の列は、その段階を判定するときに使う刺激です。
| スコア | 用語 | 説明 | 判定に使う刺激 |
|---|---|---|---|
| +4 | 好戦的 | 明らかに好戦的・暴力的で、スタッフに危険が差し迫っている | 観察 |
| +3 | 非常に興奮 | チューブ類・カテーテル類を引っ張る、または自己抜去する。攻撃的 | 観察 |
| +2 | 興奮 | 目的のない動きが頻繁にある。人工呼吸器とファイティングしている | 観察 |
| +1 | 落ち着きがない | 不安でずっとそわそわしているが、動きは攻撃的でも激しくもない | 観察 |
| 0 | 意識清明で落ち着いている | — | 観察 |
| −1 | 傾眠 | 完全には清明でないが、呼びかけで開眼し、アイ・コンタクトが10秒以上続く | 呼びかけ |
| −2 | 軽い鎮静 | 呼びかけでアイ・コンタクトはとれるが、10秒未満で途切れる | 呼びかけ |
| −3 | 中等度の鎮静 | 呼びかけで体が動く、または開眼するが、アイ・コンタクトはない | 呼びかけ |
| −4 | 深い鎮静 | 呼びかけには反応しないが、身体刺激で体が動く、または開眼する | 身体刺激 |
| −5 | 昏睡 | 呼びかけにも身体刺激にも反応しない | 身体刺激 |
0から+4は見ているだけで判定します。−1から−3は声をかけたときの反応、−4と−5は体に触れたときの反応で決まります。どの刺激で判定したかが、そのまま点数の範囲を決めるのがRASSの特徴です。
RASSの判定手順(観察・呼びかけ・身体刺激の3ステップ)
表の「判定に使う刺激」の列を上から順にたどると、判定の手順になります。弱い刺激から始め、反応がなければ次の刺激に進みます。
- 観察する。声をかけずに患者の様子を見る。目を開けて落ち着いていれば0。そわそわしている、興奮している場合は、その程度で+1〜+4を付ける
- 呼びかける。目を閉じている、ぼんやりしている場合は、名前を呼んで目を開けてこちらを見るように声をかける。開眼してアイ・コンタクトが10秒以上続けば−1、10秒未満で閉じてしまえば−2、体が動く・目を開けるがこちらを見ない場合は−3
- 体に触れる。呼びかけに反応がない場合だけ、肩を揺するなどの身体刺激を加える。動きや開眼があれば−4、反応がなければ−5
呼びかけで反応がある患者に、身体刺激まで加える必要はありません。反対に、呼びかけをせずにいきなり体を揺すって起こすと、本来は−2の人を「開眼したから−1」と付けてしまうことがあります。刺激は必ず弱い順に進めます。
RASSで迷う境目(+1と+2、−1と−2、−3と−4)
点数がずれやすいのは、次の境目です。
| 迷う場面 | 付け方の考え方 |
|---|---|
| 体を動かし続けているが、ルートやチューブには手を出していない | 動きが攻撃的・活発でなければ+1。頻繁に目的のない動きがある、人工呼吸器と合わないなら+2 |
| チューブを触る、引っ張ろうとする | チューブ類を引っ張る・抜く、攻撃的な行動があれば+3(原著の英語版の表記は「引っ張る、または抜く」)。触るだけで止まるなら、動きの頻度で+1か+2 |
| 目は開いているが、ぼんやりしていて会話がかみ合わない | 開眼してこちらを見ているなら、観察だけで0か、呼びかけて−1を検討する。会話の内容はRASSでは評価しない(せん妄の評価で見る) |
| 呼びかけで目を開けるが、すぐ閉じる | アイ・コンタクトが10秒以上続くかで−1と−2を分ける。秒数を数えて確かめる |
| 呼びかけで顔をしかめる、手が動くが目は開かない | 声に対して動きで応答しているので−3 |
| 呼びかけには反応せず、吸引や体位変換のときだけ動く | 身体刺激で動いているので−4 |
−1と−2は「10秒」を数える
−1と−2の違いは、アイ・コンタクトが10秒以上続くかどうかだけです。目分量で付けると評価者による差が出やすいため、時計を見ながら確かめる習慣をつけると点数がそろいます。
処置の直後は避けて評価する
吸引や体位変換の直後は、刺激で一時的に覚醒したり、興奮したりしていることがあります。定時の評価は、処置から少し時間をおいて行い、処置の直後に評価したときはその旨を記録に書いておきましょう。
看護師専門転職サービス
「クリアス看護」
LINE友だち追加で、希望条件に合った求人紹介や
非公開求人のご案内を無料で受けられます。
給与・働き方・勤務条件など、
転職に関するご相談もLINEで気軽に可能です。
RASSとCAM-ICU・JCS・GCSの関係
RASSは、意識のレベルと興奮の程度を一つの物差しで表すスケールです。似た場面で使う評価と並べると、役割の違いは次のとおりです。
| 評価 | 何を見るか | RASSとの関係 |
|---|---|---|
| RASS | 興奮から昏睡までの状態 | 鎮静の深さと、不穏・興奮の程度を共有する |
| CAM-ICU・ICDSC | せん妄があるかどうか | せん妄の評価の前提として、まずRASSで覚醒の程度を確かめる。J-PADガイドラインは、RASS−3の患者にはCAM-ICUは適さないとする報告にも触れている |
| JCS・GCS | 意識障害の程度 | 興奮の側を段階で表す項目はない。脳神経の病気や頭部外傷で意識の変化を追うときに使われる |
RASSで0でも、せん妄がないとは限りません。落ち着いて目を開けているのに、注意が続かない、話がまとまらないといった様子があれば、施設で使っているせん妄の評価につなげます。JCSの判定基準はJCS(ジャパン・コーマ・スケール)とはで整理しています。
緩和ケアでは改変版のRASSもある
人工呼吸器に関する記述と、身体刺激の「胸骨を圧迫する」の記述を除き、+1の説明を足した、緩和ケア向けの改変版RASSもあります。日本語版は2016年にPalliative Care Researchで報告されています。所属先がどちらを使っているかを確かめてから評価しましょう。
RASSの看護記録の書き方と例文
記録には、スコアに加えて、どの刺激でどんな反応があったかを書きます。同じ−2でも、反応の様子が書いてあれば、次の評価者が同じ基準で付け直せます。
書く要素は次の4つです。
- 評価した時刻と、処置の直後かどうか
- RASSのスコア
- 判定に使った刺激(観察・呼びかけ・身体刺激)と、そのときの反応
- 興奮側なら、具体的な行動(チューブへの手の動き、体動の様子など)
例文
鎮静中の定時評価の例
10:00 RASS−2。閉眼していたため名前を呼ぶと開眼し、こちらを見るが約5秒で閉眼。体動なし。吸引の2時間後に評価。
興奮がみられた場面の例
22:30 RASS+2。開眼しており、上肢を頻繁に動かし、寝具をはがす動作を繰り返す。ルート・ドレーンへの手の動きはなし。声かけに一時的に手を止める。医師へ報告。
変化を申し送る例
日勤帯のRASSは−3から−1で推移。14:00は呼びかけに開眼するがアイ・コンタクトなし(−3)、16:00は呼びかけで開眼し10秒以上こちらを見る(−1)。夜勤者と16:00の評価を一緒に確認し、−1で一致。
スコアをもとにした報告の基準や、目標とする範囲は、施設のマニュアルと医師の指示に従います。記録では、スコアの変化と反応の様子を事実として残すことに集中しましょう。
ICU・HCUの看護師求人を探す
RASSを日常的に使うのは、ICUやHCU、救急の病棟、術後の患者が多い病棟です。看護師の求人一覧では、勤務地や働き方などの条件で求人を絞り込めます。
看護師専門転職サービス
「クリアス看護」
LINE友だち追加で、希望条件に合った求人紹介や
非公開求人のご案内を無料で受けられます。
給与・働き方・勤務条件など、
転職に関するご相談もLINEで気軽に可能です。
よくある質問
RASSは何段階ですか?
+4から−5までの10段階です。0が「意識清明で落ち着いている」状態で、プラス側が興奮、マイナス側が鎮静を表します。
眠っている患者も、起こして評価しますか?
RASSは、観察で目を閉じていれば呼びかけに進む手順になっています。夜間の睡眠中に評価のために起こすかどうかは、施設の手順に従ってください。起こさずに観察だけで済ませた場合は、「睡眠中のため観察のみ」のように記録に書いておくと、点数の意味を読み違えません。
RASSとSASはどちらを使えばよいですか?
J-PADガイドラインは、どちらも鎮静深度の評価に最も有用としています。どちらを使うかは施設で決まっていることがほとんどです。同じ病棟で両方を混ぜると比較ができなくなるため、所属先の決まりに合わせましょう。
まとめ
- RASSは、興奮の+1〜+4、落ち着いている0、鎮静の−1〜−5の10段階で状態を表す
- 判定は観察、呼びかけ、身体刺激の順に、弱い刺激から進める。どの刺激で反応したかで点数の範囲が決まる
- −1と−2はアイ・コンタクトが10秒以上続くかで分ける。秒数を数えると点数がそろう
- 記録にはスコアだけでなく、使った刺激と反応、興奮側なら具体的な行動を書く
参考
- 日本集中治療医学会 J-PADガイドライン作成委員会「日本版・集中治療室における成人重症患者に対する痛み・不穏・せん妄管理のための臨床ガイドライン」日本集中治療医学会雑誌 2014;21:539-579(Table 11 RASS) https://www.jsicm.org/pdf/2015-J-PAD-guideline.pdf
- Sessler CN, Gosnell MS, Grap MJ, et al. The Richmond Agitation-Sedation Scale: validity and reliability in adult intensive care unit patients. American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine. 2002;166(10):1338-1344.
- 今井堅吾、森田達也、森雅紀、横道直佑、福田かおり「緩和ケア用Richmond Agitation-Sedation Scale(RASS)日本語版の作成と言語的妥当性の検討」Palliative Care Research 2016;11(4):331-336 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspm/11/4/11_331/_article/-char/ja