ナースの勉強部屋

フォーカスチャーティングの書き方|FDARの例文とフォーカスの立て方、SOAPとどちらで書くかの判定表

フォーカスチャーティングの書き方|FDARの例文とフォーカスの立て方、SOAPとどちらで書くかの判定表

フォーカスチャーティングは、患者さんに起きている「焦点(フォーカス)」を見出しに立て、その下にデータ・行ったこと・反応を分けて書く経過記録の方法です。日本では、フォーカス(F)・データ(D)・アクション(A)・レスポンス(R)の頭文字を取って「FDAR」と呼ぶことが多くあります。

迷いやすいのは、書き方そのものより「何をフォーカスに立てるか」と「SOAPで書くべき場面との区別」です。この記事では、FDARの各欄に書くこと、フォーカスの立て方、SOAPとの使い分けの判定表、場面別の例文、迷いやすい境目を整理します。

記録の様式や略語は施設ごとに決まっています。この記事の例は書き方の型として使い、実際の運用は所属先の記載基準に合わせてください。

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目次
  1. フォーカスチャーティングとは(FDARの4要素と経過記録での位置づけ)
  2. フォーカスチャーティングのFDARの書き方(D・A・Rに何を書くか)
    1. F:フォーカスは「名詞+状態」で短く
    2. D:データは「なぜこのフォーカスを立てたか」が分かる情報だけ
    3. A:アクションは「行ったこと」と「これから行うこと」
    4. R:レスポンスは「アクションのあとどうなったか」
  3. フォーカスチャーティングのフォーカスの立て方(問題・出来事・患者の言葉から)
  4. フォーカスチャーティングとSOAPの使い分けの判定表
  5. フォーカスチャーティングの例文(入院時・疼痛・転倒予防・退院指導)
    1. 入院時の例
    2. 疼痛の例
    3. 転倒予防の例
    4. 退院指導の例
  6. フォーカスチャーティングで迷う境目(DとAの書き分け、Rが書けないとき)
    1. Rを書き忘れやすい理由
  7. よくある質問
    1. FDARとDARは違うものですか?
    2. フォーカスに看護診断名を使ってもよいですか?
    3. フォーカスチャーティングだけで看護記録は足りますか?
  8. まとめ
  9. 参考

フォーカスチャーティングとは(FDARの4要素と経過記録での位置づけ)

フォーカスチャーティングは、1980年代に米国で記録を簡潔にする方法として提唱されました(Lampe, 1985)。看護記録は、基礎情報・看護計画・経過記録・要約などの様式で構成されます。フォーカスチャーティングは、このうち経過記録の書き方の一つです。

米国の病院でフォーカスチャーティングを導入した報告では、記録の質や、記録にかかる時間・残業代などの課題から記録の方式を見直し、看護職員1,200人への教育を行った経過がまとめられています(Gryfinski, Lampe, 1990)。

日本看護協会の「看護記録に関する指針」は、経過記録にはいくつかの方法があり、それぞれ特徴があるので、各施設で行った看護実践が的確に記載される方法を選ぶとしています。フォーカスチャーティングを採用するかどうかは施設が決めることで、病棟によってはSOAPや経時記録と組み合わせて使っています。

欄 意味 書くこと
F(フォーカス) 焦点 いま記録しておくべき患者さんの問題・出来事・状態を短い言葉で
D(データ) 情報 フォーカスを裏づける主観的・客観的な情報
A(アクション) 行為 看護師が行ったこと、これから行うこと
R(レスポンス) 反応 アクションに対する患者さんの反応・結果

もともとの形はD・A・Rの3つで、フォーカスは見出しとして別の欄に書く形でした。施設によって「F欄+DAR」「FDARの4欄」と様式の見た目が違いますが、中身は同じです。

フォーカスチャーティングのFDARの書き方(D・A・Rに何を書くか)

F:フォーカスは「名詞+状態」で短く

フォーカスは、記録を後から読む人が見出しだけで中身をつかめる言葉にします。「疼痛」「転倒リスク」「退院指導」のように、名詞か「名詞+状態」で書くのが基本です。文章にしないことで、一覧にしたときに経過をたどりやすくなります。

D:データは「なぜこのフォーカスを立てたか」が分かる情報だけ

Dには、フォーカスを立てた根拠になる情報を書きます。患者さんの言葉、観察したこと、測った値などです。SOAPのSとOを一緒にした欄と考えると分かりやすいでしょう。

その時間に取ったバイタルサインをすべて書き写す必要はありません。フォーカスに関係する値だけを書き、ほかはフローシートに任せます。

A:アクションは「行ったこと」と「これから行うこと」

Aには、看護師が実施したケア・観察・報告・説明を書きます。医師への報告や、指示を受けて行ったことも入ります。「〇時に再評価する」のような、次に行う予定もAに書いてかまいません。

R:レスポンスは「アクションのあとどうなったか」

Rには、アクションに対する患者さんの反応や変化を書きます。痛みが和らいだか、説明を理解できたか、ケアを受け入れたかなどです。Rが書けると、行ったケアに効果があったかを次の勤務帯の人が判断できます。

フォーカスチャーティングのフォーカスの立て方(問題・出来事・患者の言葉から)

フォーカスは、次の4つのどれかから立てると迷いにくくなります。

フォーカスの種類 例 立てる場面
看護上の問題 疼痛、便秘、転倒リスク、不眠 看護計画にある問題について記録するとき
出来事・処置 入院、検査出棟、転棟、点滴の自己抜去 その時に起きたことを記録するとき
患者さんの言葉・感情 「家に帰るのが不安」、治療への迷い 本人の訴えそのものが看護の対象になるとき
状態の変化 発熱、食欲低下、意識レベルの変化 計画にない変化に気づいたとき

フォーカスの立て方で多い失敗は、次の2つです。

  • フォーカスが大きすぎる。「全身状態」「経過観察」では、何についての記録か分かりません。何を見て記録したのかに絞ります
  • 医学診断名をそのまま立てる。「心不全」ではなく、看護として扱う「呼吸困難」「むくみ」「活動への不安」など、看護の焦点に置きかえます

看護計画の問題名とそろえておくと、計画の評価をするときに、その問題についての記録を拾い出しやすくなります。看護計画の書き方は看護計画のOP・TP・EPとは? 意味・書き方・具体例を分かりやすく解説で整理しています。

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フォーカスチャーティングとSOAPの使い分けの判定表

SOAPは、問題志向型システム(POS)の経過記録の形式で、看護計画で挙げた問題ごとに「情報→アセスメント→計画」の順で書きます。フォーカスチャーティングとの一番の違いは、記録を何で整理するかです。SOAPは問題リストで、フォーカスチャーティングはその時の焦点で整理します。

こういう記録なら 向いている書き方 理由
看護計画の問題について、アセスメントと計画の変更を書く SOAP Aの欄で判断を書き、Pで計画を変えることが記録の目的になる
計画にない出来事・変化が起きた(転倒しかけた、急に不安を訴えた) フォーカスチャーティング 問題リストにない事柄も、その場でフォーカスとして立てられる
ケアを行い、その反応を残したい(疼痛時の対応、説明への反応) フォーカスチャーティング A(行為)とR(反応)を対で書ける
退院指導・服薬指導など、説明の内容と理解度を残す フォーカスチャーティング 説明したこと(A)と理解度(R)を分けて書ける
実習記録や事例検討で、思考の過程を見せる SOAP アセスメントを独立した欄で書くことが求められる
急変・処置中で、時刻ごとの事実を並べる どちらも使わず経時記録 判断より先に、何時に何が起きたかを残す

施設の記載基準でどちらか一方と決まっている場合は、それに従います。両方を使える施設でも、同じ出来事をSOAPとフォーカスで二重に書かないことが大切です。

SOAPの書き方はS情報とO情報の書き方の違いは? 看護スタッフのSOAP苦手意識をどう克服する?、実習記録でのSOAPは看護実習記録の書き方|SOAPとアセスメントの例文で紹介しています。

関連記事:経時記録の書き方|急変・処置中に使う場面と時刻の書き方、SOAP・フォーカスチャーティングとの境界と例文

フォーカスチャーティングの例文(入院時・疼痛・転倒予防・退院指導)

以下の例文に出てくる患者さんの情報は、すべて架空のものです。

入院時の例

F:入院
D:14:00 外来より車椅子で入院。「家で転んでから足に力が入りにくい」と話す。歩行はつかまり歩き。
A:病棟内の案内、ナースコールの使い方を説明。ベッドを最も低い位置にし、ナースコールを手の届く位置に置いた。
R:ナースコールを押す動作を自分で行えた。「トイレの時は呼びます」と話す。

疼痛の例

F:疼痛
D:22:00 「お腹の傷が痛くて眠れない」と話す。NRSで6。顔をしかめ、体を丸めている。
A:医師の指示の範囲で対応。痛みの少ない体位を一緒に探し、側臥位に整えた。
R:23:00 NRSで3。「さっきより楽」と話し、入眠した。

痛みの程度をNRSなどの数字で書くときの使い分けは、ペインスケールの看護での使い分け|NRS・VAS・VRS・フェイススケールの境界線と看護記録の書き方で整理しています。

転倒予防の例

F:転倒リスク
D:3:00 ナースコールなしで一人でベッドから降りようとしていた。「トイレに行きたかった」と話す。ふらつきあり。
A:トイレまで付き添った。夜間は排泄の時間に合わせて訪室すること、離床時はナースコールを押すことを再度説明した。
R:「次からは呼びます」と話す。5:00の訪室時は入眠中。

退院指導の例

F:退院指導(自宅での生活)
D:退院予定の2日前。本人と長女が同席。長女は「夜に一人にして大丈夫か心配」と話す。
A:自宅で困りそうな場面を本人・長女と一緒に挙げ、退院後の相談先の連絡方法を説明した。説明内容を紙に書いて渡した。
R:本人は相談先の電話番号を指でさして確認できた。長女は「夜の過ごし方はケアマネジャーにも相談してみる」と話す。

例文では、フォーカスの言葉を名詞で短くし、DとAに時刻を入れています。Rには、患者さんの言葉や行動で確かめられたことを書いています。

フォーカスチャーティングで迷う境目(DとAの書き分け、Rが書けないとき)

迷う場面 書き方の考え方
観察したこと(例:傷を見た)はDかAか 見て分かった事実はD。「観察した」という行為そのものを残したい場合だけAに書く
看護師の判断(アセスメント)をどこに書くか 施設の基準に従う。決まりがなければ、判断の根拠はDに、判断にもとづいて行ったことはAに書き、判断の言葉だけを独立させない
ケアの直後で、Rがまだ分からない Rを空けたまま残さない。「〇時に再評価」とAに書き、再評価した時刻にRを追記する
同じフォーカスが何日も続く フォーカスを変えずに書き継ぐ。状態が変わったら(例:疼痛→退院に向けた疼痛の自己管理)、フォーカスを立て直す
フォーカスが2つ同時に起きた 1つの記録にまとめず、フォーカスごとに分けて書く。後から片方だけを追えるようにするため

Rを書き忘れやすい理由

フォーカスチャーティングの記録を見直すと、DとAで終わっていて、Rが書かれていないことがよくあります。ケアの直後は反応が出ていないことが多く、そのまま次の業務に移ってしまうためです。

Rが無いと、行ったケアに効果があったのかを次の勤務帯の看護師が判断できません。再評価の時刻をAに書いておくと、Rの追記を忘れにくくなります。

関連記事:看護記録の簡素化|記録時間を減らす5つの方法と、削ってはいけない記録の見分け方、病棟で進める手順

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よくある質問

FDARとDARは違うものですか?

中身は同じです。もともとの形はDARの3つで、フォーカスは見出しとして別に書く形でした。フォーカスも1つの欄として数えて「FDAR」と呼ぶ施設が多く、様式の欄の数が違うだけと考えてかまいません。

フォーカスに看護診断名を使ってもよいですか?

施設で看護診断を使っている場合は、診断名をフォーカスにすることもあります。ただし、フォーカスは看護診断に限らず、出来事や患者さんの言葉からも立てられるのが特徴です。施設の記載基準を確認しましょう。

フォーカスチャーティングだけで看護記録は足りますか?

経過記録の書き方の一つなので、看護計画や基礎情報、フローシートなど、施設が定めるほかの記録と組み合わせて使います。看護記録の保存のルールは看護記録の保存期間は何年?病院・クリニック・訪問看護の早見表と、訂正・持ち出しで問題にならない書き方で紹介しています。

まとめ

  • フォーカスチャーティングは、焦点(F)を見出しに立て、データ(D)・行為(A)・反応(R)を分けて書く経過記録の方法
  • フォーカスは「名詞+状態」で短く。看護上の問題・出来事・患者さんの言葉・状態の変化から立てる
  • 計画の問題についてアセスメントを書くならSOAP、計画にない出来事やケアの反応を残すならフォーカスチャーティングが向いている
  • Rは書き忘れやすい。再評価の時刻をAに書いておき、あとで追記する

参考