ナースの勉強部屋

嚥下機能評価スケールの看護記録|RSST・改訂水飲みテスト・FOISの結果の書き方と記録例、医師・STに委ねる境目

嚥下機能評価スケールの看護記録|RSST・改訂水飲みテスト・FOISの結果の書き方と記録例、医師・STに委ねる境目

嚥下機能の評価で使うスケールには、飲み込みに問題がありそうかを短時間で確かめる「スクリーニングテスト」と、いま口からどのくらい食べられているかを段階で表す「摂食状況の評価」があります。RSSTや改訂水飲みテストは前者、FOISは後者です。

この2つは見ているものが違います。「RSST 2回」と「FOIS レベル3」は、同じ患者さんでも別のことを表しています。記録では、どの評価の結果かと、どんな条件で行ったかを一緒に書くことが大切です。

この記事では、各評価の結果の意味と記録の書き方、看護師が記録する場面と医師・言語聴覚士(ST)に委ねる場面の境目、記録例を整理します。テストの手順や食形態は扱いません。テストの実施と食形態は、医師の指示と施設の手順、医師・STの判断に従ってください。

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目次
  1. 嚥下機能評価のスケールとは(飲み込みのスクリーニングと食べている状況の評価は別物)
  2. 反復唾液嚥下テスト(RSST)の結果と記録の書き方
  3. 改訂水飲みテスト(MWST)とフードテストの評価点と記録の書き方
  4. FOISで経口摂取の状況を7段階で記録する
  5. 嚥下機能評価スケールの使い分けの境界線(看護師が記録する場面と医師・STに委ねる場面)
  6. 嚥下機能評価の看護記録の例文(入院時・食事場面・経過)
    1. 入院時のスクリーニングの例
    2. 改訂水飲みテストの例(医師の指示による)
    3. 評価できなかった例
    4. FOISの更新と食事場面の例
  7. よくある質問
    1. RSSTは看護師が行ってよいですか?
    2. FOISの段階は誰が付けますか?
    3. 浮腫や便の形のスケールと同じように、点数だけ書いてもよいですか?
  8. まとめ
  9. 参考

嚥下機能評価のスケールとは(飲み込みのスクリーニングと食べている状況の評価は別物)

日本摂食嚥下リハビリテーション学会の医療検討委員会がまとめた「摂食嚥下障害の評価 2019」は、反復唾液嚥下テスト(RSST)、水飲みテスト、改訂水飲みテスト(MWST)、フードテストなどをスクリーニングテストとして挙げています。いずれも、口腔ケアで口の中を清潔にしたうえで行うとしています。

種類 代表的なもの 何が分かるか 記録での使い方
スクリーニングテスト RSST、改訂水飲みテスト、フードテスト 飲み込みに問題がありそうか(誤嚥の可能性) 結果と実施の条件を書き、医師・STへ伝える
摂食状況の評価 FOIS いま口からどのくらい食べているか 食事の状況が変わったときに段階を更新する
詳しい検査 嚥下造影(VF)、嚥下内視鏡(VE) 飲み込みの様子を画像で確かめる 医師が行う。看護記録には実施した事実と、医師から伝えられた内容を書く

スクリーニングテストは「問題がありそうか」を拾うためのもので、誤嚥があるかどうかや、どの食形態がよいかを決めるものではありません。学会の資料でも、各テストの診断の精度は、嚥下造影で確かめた誤嚥と比べた値として示されています。

反復唾液嚥下テスト(RSST)の結果と記録の書き方

RSSTは、30秒間に何回、唾液を飲み込む動き(空嚥下)ができるかを数えるテストです。

結果 学会資料の評価基準
30秒間に3回以上 テスト陰性
30秒間に3回未満 テスト陽性(問題あり)
口頭の指示を理解できない 判定不可

学会資料は、「手をあげて下さい」などの指示に従えなければ判定不可とみなすとしています。この場合は回数を書くのではなく、「指示理解が難しく判定不可」と書きます。0回と書くと、飲み込めなかったと読まれてしまうためです。

記録に書くこと:

  • 回数(「30秒で2回」)と、陽性・陰性・判定不可
  • 実施した時の覚醒の状態と姿勢
  • 飲み込みの動きで気づいたこと(1回目までに時間がかかった、など)

改訂水飲みテスト(MWST)とフードテストの評価点と記録の書き方

改訂水飲みテストは少量の冷水で、フードテストは少量のプリンで、飲み込んだときの様子を観察して5段階で評価します。学会資料の評価基準は次のとおりです。

評価点 改訂水飲みテスト フードテスト
1 嚥下なし、むせる and/or 呼吸切迫 嚥下なし、むせる and/or 呼吸切迫
2 嚥下あり、呼吸切迫 嚥下あり、呼吸切迫
3 嚥下あり、呼吸良好、むせる and/or 湿性嗄声 嚥下あり、呼吸良好、むせる and/or 湿性嗄声、口腔内残留中等度
4 嚥下あり、呼吸良好、むせなし 嚥下あり、呼吸良好、むせなし、口腔内残留ほぼなし
5 4に加え、反復嚥下が30秒以内に2回可能 4に加え、反復嚥下が30秒以内に2回可能

(日本摂食嚥下リハビリテーション学会 医療検討委員会「摂食嚥下障害の評価 2019」より)

学会資料は、改訂水飲みテストで評価点が4点以上の場合はテストを最大2回くり返し、最も悪い結果を評価点とするとしています。また、評価できなかった場合はその旨を、実施した体位などの情報も記載するとしています。とろみ水で行った場合は、使ったとろみの程度を明記するとしています。

記録に書くこと:

  • 評価点(くり返した場合は最も悪い点)と、何回行ったか
  • 実施した体位(ベッドの角度など、施設で決めている書き方)
  • 水か、とろみ水か。とろみ水ならとろみの程度
  • むせ、声の変化(湿った声)、呼吸の変化など、点数の根拠になった様子
  • 評価できなかった場合は、その理由

点数だけでは、次に同じ条件で比べられません。どの体位で、何を使って行ったかまで書くと、前回との比較ができます。

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FOISで経口摂取の状況を7段階で記録する

FOIS(Functional Oral Intake Scale)は、口から食べている状況を7段階で表す尺度です。原典は脳卒中の患者さんを対象に作られ、食事と水分の経口摂取の状況の変化を記録するための尺度として報告されています。

レベル 内容(原典の英語の定義を訳したもの)
1 口からは何も摂らない
2 経管栄養に頼っており、食べ物や水分を口から試す程度
3 経管栄養に頼りながら、食べ物や水分を口から継続して摂っている
4 すべて口から摂っているが、1種類の形態のみ
5 すべて口から摂り、複数の形態を食べているが、特別な調理や代償的な方法が必要
6 すべて口から摂り、特別な調理は不要だが、食べられない食品がある
7 制限なく、すべて口から摂っている

FOISはテストではなく、いまの食事の状況を当てはめる尺度です。食形態が変わった、経管栄養が終わった、といった変化があったときに段階を書き換えます。

令和8年度の診療報酬の留意事項の通知では、摂食機能療法の「摂食嚥下機能回復体制加算」を算定するときに、FIMとFOISを測定することとされています。この加算の届出がある病棟では、FOISを記録する場面が多くなります。

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嚥下機能評価スケールの使い分けの境界線(看護師が記録する場面と医師・STに委ねる場面)

どのスケールを使うかは、何を知りたいかで決まります。

こういう場面なら 使うもの 看護師が記録すること 医師・STの判断に委ねること
入院時や状態の変化時に、飲み込みに問題がありそうか拾いたい RSSTなど、施設で決めたスクリーニング 結果、実施の条件、気づいた様子 追加の評価をするか
口から水分や食事を始めてよいかを判断する前 改訂水飲みテスト、フードテストなど(医師の指示による) 評価点、体位、使ったもの、むせ・声・呼吸の様子 経口摂取を始めるか、食形態
いまの食事の状況を共有したい・経過を追いたい FOIS 食事の状況が変わったときの段階 食形態をどう進めるか
スクリーニングで問題がありそうと出た 詳しい検査(VF・VE) 検査を行った事実、医師から伝えられた内容 誤嚥の有無、食形態、訓練の内容
覚醒が保てない、指示が伝わらない どれも使えない(判定不可) 判定不可と、その理由 評価の時期
毎回の食事の様子を残したい スケールではなく観察の記録 むせ、食べた量、時間、姿勢、食後の様子 ―

食形態や、とろみの程度を決めるのは医師とSTです。看護記録には、その判断の材料になる観察と、決まった食形態を書きます。

嚥下機能評価の看護記録の例文(入院時・食事場面・経過)

以下の例文に出てくる患者さんの情報は、すべて架空のものです。食形態の名前は省き、記録の形だけを示しています。

入院時のスクリーニングの例

10:00 口腔ケア後、ベッドの角度を施設の基準に合わせて座位でRSSTを実施。30秒で2回。陽性。1回目の飲み込みまでに時間がかかる。指示の理解は良好。
10:10 担当医へ結果を報告。追加の評価について指示を確認。

改訂水飲みテストの例(医師の指示による)

14:00 医師の指示により改訂水飲みテストを実施。座位(ベッドの角度は施設の基準どおり)、冷水。1回目の後に湿った声あり。評価点3。
14:10 担当医とSTへ結果を報告。食事の開始と形態は医師・STの判断を待つ。

評価できなかった例

9:00 RSSTの実施を試みるが、呼びかけに目を開けてもすぐに閉じ、指示に従えない。判定不可。
9:05 担当医へ報告。

FOISの更新と食事場面の例

経管栄養を併用しながら、昼食のみ口から摂取している。FOIS レベル3。
12:30 昼食。ST指示の食形態で全量の半分ほど摂取。食事の途中で2回むせる。むせた後、声の変化なし。食後30分は座位を保つ。
〇月〇日 経管栄養が終了し、3食とも口から摂取。医師・STの指示の食形態のみ。FOIS レベル4へ更新。

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よくある質問

RSSTは看護師が行ってよいですか?

施設によって決まりが違います。入院時のスクリーニングとして看護師が行う手順を決めている施設もあれば、医師の指示で行う施設もあります。所属先の手順書を確認してください。水や食べ物を使うテストは、誤嚥の可能性があるため、医師の指示と施設の手順に沿って行うのが一般的です。

FOISの段階は誰が付けますか?

決まりはなく、施設によって医師・ST・看護師のいずれかが付けます。FOISは食事の状況を当てはめる尺度なので、食事の様子をいちばん見ている看護師の記録が根拠になることも多くあります。病棟で誰がいつ更新するかを決めておくと、記録がそろいます。

浮腫や便の形のスケールと同じように、点数だけ書いてもよいですか?

点数だけでは足りません。嚥下の評価は、体位や使ったもの(水かとろみ水か)で結果が変わるため、条件も一緒に書きます。ほかの観察スケールの記録の書き方は浮腫スケールの評価と看護記録やブリストルスケールの看護記録でも紹介しています。

まとめ

  • RSST・改訂水飲みテスト・フードテストは飲み込みのスクリーニング、FOISは口から食べている状況の評価。見ているものが違う
  • RSSTは回数と陽性・陰性・判定不可を、改訂水飲みテストは評価点に加えて体位と使ったもの(とろみの程度)を書く
  • FOISは食事の状況が変わったときに段階を書き換える
  • 誤嚥の有無の判断や食形態は医師・STが決める。看護記録には、その判断の材料になる結果と観察を書く

参考