浮腫スケールの評価と看護記録|圧痕の深さと戻る時間の段階表、施設で基準が違う理由と迷う境目、例文
浮腫スケールは、むくみ(浮腫)の程度を段階で表すための評価の物差しです。よく使われるのは、皮膚を指で押したときにできるへこみ(圧痕)の深さと、へこみが戻るまでの時間で「1+」から「4+」に分ける方法です。
ただし、浮腫スケールに全国共通の決まりはありません。段階の区切りになる深さや秒数は資料によって違い、施設ごとに採用している表も違います。「足背に2+」と書いても、病棟が変われば同じ状態を指すとは限りません。
この記事では、代表的な段階表と評価の軸、評価の手順、迷いやすい境目、看護記録の書き方を整理します。むくみの原因の判断や、報告・処置の基準は、施設のマニュアルと医師の指示に従ってください。
看護師専門転職サービス
「クリアス看護」
LINE友だち追加で、希望条件に合った求人紹介や
非公開求人のご案内を無料で受けられます。
給与・働き方・勤務条件など、
転職に関するご相談もLINEで気軽に可能です。
浮腫スケールとは(評価の軸は3つ、施設で基準が違う)
むくみの程度を表す方法には、大きく分けて次の3つの軸があります。
| 評価の軸 | 何を見るか | 特徴 |
|---|---|---|
| 圧痕の深さと戻る時間 | 指で押したへこみの深さ、戻るまでの秒数 | ベッドサイドですぐできる。区切りの値は資料で違う |
| むくみの広がり | 足背まで、下腿まで、膝の上まで、のように範囲を見る | 範囲が体の中心に近づくほど程度が強いと考える |
| 周径・体積の左右差 | メジャーで測った周径や、体積の左右の差 | 数字で比べられる。測る位置をそろえる必要がある |
オーストラリアの医学誌Medical Journal of Australiaに載った解説では、末梢の浮腫は、むくみが体の中心側にどこまで広がっているかで程度を表すのが一般的で、膝より上に及ぶ浮腫は膝より下にとどまる浮腫より重いとしています。もう一つの方法として紹介しているのが、圧痕の深さと持続時間による段階分けです。
圧痕性浮腫のスケール表(1+〜4+の深さと戻る時間の例)
前述の解説に載っている段階分けは次のとおりです。カナダの病院の心不全のクリニカルパスをもとにしたもので、全国や国際的に統一された基準ではありません。
| 段階 | 圧痕の深さ | へこみが戻るまで |
|---|---|---|
| 1+ | 2mmまでのわずかなへこみ | すぐに戻る |
| 2+ | 2〜4mmのへこみ | 10〜15秒で戻る |
| 3+ | 4〜6mmのへこみ | 1分以上残ることがある |
| 4+ | 6mmを超える深いへこみ | 2〜5分残ることがある |
資料によっては、2mm・4mm・6mm・8mmのように区切りの深さが違ったり、戻るまでの秒数が違ったりします。段階の数え方も、「0〜4」とするもの、「1+〜4+」とするものがあります。異動や応援で病棟が変わったときは、最初にその施設の表を確かめましょう。
周径の差と生活への影響で段階を付ける基準もある
がん治療の副作用の評価に使われる「有害事象共通用語規準(CTCAE)v5.0」の日本語訳(JCOG版)では、四肢浮腫をおおむね次のように分けています(表は要点を言い換えたもの)。
| グレード | 内容 |
|---|---|
| 1 | 左右の差が最も目立つ部位で、体積か周径の差が5〜10%。よく診ると、腫れや手足の形のぼやけがわかる |
| 2 | 体積か周径の差が10%超〜30%。腫れや形のぼやけが診察ではっきりわかり、皮膚のしわが消える、輪郭の崩れが明らかなど。買い物や食事の準備など、身の回り以外の日常生活動作が制限される |
| 3 | 体積の差が30%超。輪郭の崩れが著しい。入浴や着替えなど、身の回りの日常生活動作が制限される |
こちらは圧痕の深さではなく、左右差と生活への影響で段階を付けます。化学療法を行う病棟や外来では、この基準で記録することもあります。
圧痕性浮腫の評価手順(押す場所・秒数・左右差)
圧痕の評価は、次の順で行うと毎回の条件をそろえられます。
- 両側を見比べ、むくみの範囲と左右差を確かめる
- 骨の上など、下が硬い部位を選ぶ(脛骨の前面、くるぶしの周り、足背など)
- 指の腹で、施設で決めた秒数だけ一定の強さで押す
- 指を離した直後のへこみの深さと、戻るまでの時間を見る
- 反対側の同じ部位でも同じように確かめる
前述の解説は、軽い圧痕性浮腫は骨の出っ張りの上を押すと見つけやすいとしています。下に骨がある部位を押すと、指の力が逃げず、へこみの有無が分かりやすくなります。
押す秒数は施設で決めた値にそろえる
何秒押すかは、資料によって違います。大切なのは、同じ病棟の中で秒数と部位をそろえることです。施設で決まっていない場合は、病棟で決めて記録にも書いておくと、次の評価者が同じ条件で比べられます。
長く寝ている人は背中側も見る
むくみは体の低い位置にたまりやすいため、長い時間ベッドで過ごしている人では、足だけでなく仙骨部や背中側にむくみが出ていることがあります。体位変換や清拭のときに背中側も確かめましょう。
看護師専門転職サービス
「クリアス看護」
LINE友だち追加で、希望条件に合った求人紹介や
非公開求人のご案内を無料で受けられます。
給与・働き方・勤務条件など、
転職に関するご相談もLINEで気軽に可能です。
浮腫スケールで迷う境目(2+と3+、深さと時間が合わないとき)
段階がずれやすいのは、次のような場面です。
| 迷う場面 | 付け方の考え方 |
|---|---|
| へこみは浅いが、戻るまでに時間がかかる | 施設の表が深さと時間のどちらを優先するかに従う。決まりがなければ、深さと秒数の両方を記録に書き、どちらで段階を付けたかを添える |
| 2+と3+の間に見える | 「2+〜3+」と幅で書くより、深さの目安と戻るまでの秒数をそのまま書き添える |
| 片側だけむくんでいる | 段階に加えて、左右どちらかと、反対側の状態を必ず書く |
| 押してもへこまないが、明らかに腫れている | 圧痕のスケールには当てはめず、「圧痕なし、腫脹あり」と見たままを書く。周径を測って数字で残す |
| 朝と夕方で程度が違う | 評価した時刻を書く。定時の評価は時刻をそろえる |
圧痕の評価は人によってぶれやすい
糖尿病の患者を対象に、浮腫を評価する8つの方法を比べた研究(Brodoviczら、2009年)では、看護師3人がそれぞれ評価したところ、圧痕の深さや戻る時間を見る臨床的な評価は、評価者の間の一致が低い結果でした。一方、足首の周径と、水に浸して体積を測る方法は一致が高く、足首の周径は1分ほどで測れたと報告されています。
圧痕の段階だけで経過を追うと、評価者が変わったときに「良くなったのか、見る人が違うだけか」が分かりにくくなります。むくみの変化を追う患者では、周径を同じ位置で測り、段階と並べて記録しておくと比べやすくなります。測る位置は、皮膚に印を付けるなどしてそろえましょう。
浮腫スケールの看護記録の書き方と例文
記録には、段階の数字に加えて、部位・左右・範囲・評価の条件を書きます。施設によって表が違うため、数字だけでは読み手が状態を思い浮かべられません。
書く要素は次のとおりです。
- 評価した時刻
- 部位と左右(足背、下腿、くるぶしの周りなど)
- 段階と、深さの目安、戻るまでの時間
- むくみの範囲(足背まで、下腿まで、膝の上まで)
- 周径を測った場合は、測った位置と値
- 皮膚の状態(張り、色、傷の有無)と本人の訴え(重さ、靴が入らないなど)
- 前回との比較
例文
定時の観察の例
10:00 両下腿に圧痕性浮腫あり。脛骨前面を押すと右は約3mmのへこみで10秒ほどで戻り2+、左も同程度で2+。むくみは両側とも下腿の中ほどまで。足首の周径(内くるぶしの上の印の位置)は右24.0cm、左23.8cm。皮膚の張りが強いが、傷や発赤なし。「靴がきつい」と話す。前日10:00と比べて変化なし。
左右差がある例
14:00 左下腿のみ浮腫あり。左脛骨前面で約4mmのへこみ、戻るまで15秒以上で、施設の基準で3+。右は圧痕なし。左足首の周径は右より2.5cm大きい。左下腿に熱感あり。医師へ報告。
訪問看護での例
両足背に圧痕性浮腫あり、2+程度。前回訪問時は足背のみだったが、今回はくるぶしの上まで広がっている。体重は前回訪問時より増加と家族より。本人は「足が重い」と話す。前回からの変化として主治医へ報告。
例文の段階は、施設の表で付けた値として書いています。どの程度の変化で報告するかは、施設のマニュアルと主治医の指示に従ってください。
むくみと同じように、段階で皮膚や状態を共有する評価には、褥瘡のリスクを点数で表すブレーデンスケールもあります。採点の仕方はブレーデンスケールとは?6項目の採点表と危険点の考え方で整理しています。
訪問看護・病棟の看護師求人を探す
むくみの観察は、心不全や腎臓の病気の患者が多い病棟、長く臥床している患者の多い療養病棟、訪問看護など、さまざまな職場で日常的に行います。看護師の求人一覧では、勤務地や働き方などの条件で求人を絞り込めます。
看護師専門転職サービス
「クリアス看護」
LINE友だち追加で、希望条件に合った求人紹介や
非公開求人のご案内を無料で受けられます。
給与・働き方・勤務条件など、
転職に関するご相談もLINEで気軽に可能です。
よくある質問
浮腫スケールは何段階と決まっていますか?
決まっていません。圧痕の深さと戻る時間で4段階に分ける表が多く使われていますが、区切りの値や段階の数え方は資料や施設によって違います。所属先の表を確かめてから使いましょう。
何秒押せばよいですか?
押す秒数も資料によって違います。同じ病棟の中で秒数と部位をそろえることが大切です。施設の手順に決まりがあれば、それに従ってください。
むくみの原因も記録に書いた方がよいですか?
原因の判断は医師が行います。看護記録には、部位、程度、範囲、皮膚の状態、本人の訴え、前回との変化など、観察した事実を書きましょう。
まとめ
- 浮腫スケールに全国共通の基準はない。圧痕の深さと戻る時間、むくみの範囲、周径の左右差のどれで見るかも施設で違う
- 圧痕の評価は、骨の上を施設で決めた秒数で押し、左右を比べる
- 圧痕の段階は評価者によってぶれやすい。経過を追うときは周径を同じ位置で測って並べて書く
- 記録には段階の数字に加えて、部位、左右、範囲、評価の条件、前回との比較を書く
参考
- Whiting E, McCready ME. Pitting and non-pitting oedema. Medical Journal of Australia. 2016;205(4):157-158. https://www.mja.com.au/journal/2016/205/4/pitting-and-non-pitting-oedema
- Brodovicz KG, McNaughton K, Uemura N, et al. Reliability and feasibility of methods to quantitatively assess peripheral edema. Clinical Medicine & Research. 2009;7(1-2):21-31. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19251582/
- 日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)「有害事象共通用語規準 v5.0 日本語訳JCOG版」 https://jcog.jp/doctor/tool/ctcaev5/