ナースの勉強部屋

長谷川式認知症スケール(HDS-R)とは?9項目と配点の表、看護師が迷わない実施・採点・記録のコツ

長谷川式認知症スケール(HDS-R)とは?9項目と配点の表、看護師が迷わない実施・採点・記録のコツ

長谷川式認知症スケールの正式名称は「改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)」です。記憶を中心に、認知機能の低下があるかどうかを大まかにとらえるスクリーニングのための9問・30点満点の評価で、5〜10分ほどで実施できます。

看護師が病棟や外来、訪問の場面で実施を任されることもあります。ところが「ヒントを出したら何点?」「100から7を引いた答えを間違えたら、次の問題はどうする?」のように、細かい採点ルールで手が止まりがちです。やり方が人によって違うと、同じ人を別の日に評価したときに点数の変化を比べられません。

この記事では、開発者による解説論文をもとに、9項目と配点、実施の手順と声かけ、採点で迷うところ、点数の見方、記録の書き方を整理します。

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目次
  1. 長谷川式認知症スケール(HDS-R)の9項目と配点
  2. 長谷川式認知症スケールの実施手順と声かけのコツ
    1. 始める前に目的を伝える
    2. 環境は個室で、家族は同室させない
    3. 問4から問7は続けて行う
    4. 答えに自信がなさそうなときは促す
    5. 終わったらねぎらって会話に戻す
    6. 拒否されたときは無理に続けない
  3. 長谷川式認知症スケールの採点で迷うところ
  4. 長谷川式の点数の見方(30点満点と20点・21点の区分点)
    1. 点数より項目ごとの答え方がケアに役立つ
  5. 長谷川式認知症スケールとMMSEの違い
  6. 長谷川式認知症スケールの記録の書き方と例文
    1. 例文
  7. よくある質問
    1. 長谷川式認知症スケールは看護師が実施してもよいですか?
    2. 同じ人に何度も実施すると、答えを覚えてしまいませんか?
    3. 長谷川式の点数から、認知症高齢者の日常生活自立度のランクは決まりますか?
  8. まとめ
  9. 参考

長谷川式認知症スケール(HDS-R)の9項目と配点

HDS-Rは、1974年に発表された長谷川式簡易知能評価スケール(HDS)の質問や採点基準を見直し、1991年に改訂版として発表されたものです。書いたり描いたりする動作の課題を含まず、口頭のやりとりだけで進むため、手や腕に運動障害がある人でも実施できます。

問 項目 何を見るか 配点 採点の要点
1 年齢 自分についての見当識 1点 満年齢で2年までの誤差は正答
2 日時(年・月・日・曜日) 日時の見当識 4点 年・月・日・曜日それぞれ正答で1点
3 今いる場所 場所の見当識 2点 自発的に正答で2点。5秒ほど待ってからの選択肢のヒントで正答なら1点
4 3つの言葉の記銘 即時記憶 3点 1語正答ごとに1点
5 計算(100から7を順に引く) 計算とワーキングメモリー 2点 正答1つに1点。最初を誤ったら打ち切り
6 数字の逆唱 ワーキングメモリー 2点 正答1つに1点。最初の逆唱を誤ったら打ち切り
7 3つの言葉の遅延再生 数分前の近時記憶 6点 自発的に正答で各2点、ヒントで正答なら各1点
8 5つの物品の記銘 短期記憶・視覚的な記銘 5点 1つ正答ごとに1点
9 野菜の名前 言葉の流ちょう性 5点 5個までは0点、6個目から1個ごとに1点

合計は30点です。問4と問7で使う3つの言葉は、「桜・猫・電車」と「梅・犬・自動車」の2系列があり、どちらか1つを選んで使います。この言葉と野菜の名前の課題は、開発時の予備調査で選ばれたものなので、別の言葉に置き換えてはいけません。

長谷川式認知症スケールの実施手順と声かけのコツ

HDS-Rは、実施そのものより導入の仕方が難しいといわれます。「何を試されるのか」という不安を抱えたまま始めると、本来答えられる問題にも答えられず、点数が実際の力より低く出てしまいます。

始める前に目的を伝える

いきなり質問に入ったり、「決まりだから受けてください」と伝えたりすると、緊張や反発を招きます。開発者の解説では、「あなたのことをよく知るために行う」「今後のケアに活かすために行う」といった目的をきちんと伝えるほうが、かえって不安が和らぐとされています。たとえば次のような伝え方です。

これから、もの忘れの具合を確かめるための質問をいくつかさせてください。○○さんのこれからの治療やケアに役立てるためのものです。答えにくいものがあっても大丈夫です。

始めるときは名前を聞き、次に年齢を聞くといった日常会話の流れから入ると自然です。

環境は個室で、家族は同室させない

待合室や大部屋など、人が多い場所では行いません。本人が周囲を気にして集中できないうえ、周りの人に質問の内容が知られてしまいます。面談室や個室など、落ち着ける場所を用意しましょう。

家族の同室も避けます。家族が「さっき言った言葉、思い出して」と急かしたり、本人が答えに迷って家族を振り返ったりすると、評価が成り立たなくなるためです。眼鏡や補聴器を普段使っている人は、着けてもらってから始めます。

問4から問7は続けて行う

HDS-Rは、どの問題から始めても構いません。もの忘れを気にして自分から評価を希望した人には、問8の物品の記銘から始めるほうがよい場合もあります。

ただし、問4(3つの言葉の記銘)→問5(計算)→問6(数字の逆唱)→問7(遅延再生)は、この順で続けて行います。覚えてから思い出すまでの間に、別の課題をはさむ必要があるためです。

答えに自信がなさそうなときは促す

高齢者は、自信のない問題には答えない傾向があり、実際には正解を思い浮かべていても「無回答」で失点することがあります。「思いついたもので大丈夫ですよ」と、答えを促しましょう。

終わったらねぎらって会話に戻す

最後の問9を野菜の名前にしたのは、正解・不正解の印象を与えにくく、終わったあとに「野菜はお好きですか?」と日常会話へ戻しやすいからだとされています。「これで終わりです」で切り上げるより、「お疲れさまでした」「たくさん答えてくださいましたね」とねぎらって終えましょう。

拒否されたときは無理に続けない

「そんなことを聞いて馬鹿にしているのか」と怒ったり、途中で「もうやめたい」と言ったりする人もいます。その場で説得を重ねたり、無理に最後まで続けたりすると、本人の不安や不信感が強くなり、次の機会にも応じてもらいにくくなります。

  • いったん中止し、嫌な思いをさせたことを詫びる
  • 実施できた項目と、拒否・中断の状況をそのまま記録する
  • 体調や時間帯を変えて、日を改めて声をかける
  • 実施できなかったことを医師に報告し、進め方の指示を確認する

拒否された事実や、そのときの言動も、本人の状態を知る手がかりになります。点数が出なかったことも含めて記録に残しましょう。

長谷川式認知症スケールの採点で迷うところ

同じ人を別の人が評価しても同じ点数になるよう、採点ルールをそろえておきます。迷いやすい場面をまとめます。

問 迷う場面 決め方
1 年齢 誕生日や干支は言えるが年齢が出ない 正答にはならない。答えを受け止めたうえで「それでは今年でおいくつになりますか?」と聞き直す
2 日時 年月日と曜日をまとめて聞いてよいか まとめて聞かず、1つずつゆっくり聞く。「今日は何曜日ですか?」「何月何日ですか?」のように順不同でよい
3 場所 病院名を聞かれていると思って答えられない ヒントを出す前に「ここの名前はいいですよ。どんなところですか?」と質問の意図を確かめる。ヒントのあとに「病院」と答えると1点になってしまうため
3 場所 病院名や施設名が言えない いる場所が病院か施設か自宅かを本質的に理解できていれば正答
4 記銘 1回で3つ覚えられない 最初の1回を含め、提示は計3回まで。3回言っても覚えられない言葉は、問7の遅延再生から除外する
5 計算 2回目の問い方 「93引く7は?」と聞くのは誤り。必ず「それからまた7を引くと?」と聞く
5 計算 「いくつから7を引くんですか?」と聞き返された 「もう一度やってみましょう。100引く7は?」から聞き直す
6 逆唱 数字をそのまま復唱してしまう 「1-2-3を逆から言うと?」のように練習を入れ、それでもできなければ終了して次へ進む
7 遅延再生 ヒントの出し方 「植物と動物と乗り物がありましたね」とまとめて出さない。答えが出なかった言葉だけ、1つずつヒントを出す
8 物品 どんな物を使うか 時計・ペン・硬貨などは例で、必ずしもこの物でなくてよい。互いに関係のない、普段よく見る本物の物を使う。名前を言いながら1つずつ並べ、本人にも復唱してもらってから隠す
9 野菜 果物やキノコを言った、同じ野菜を繰り返した その場で遮らず「どんどん言ってください」と促す。答えは順に書き留め、あとで重複を除いて数える。果物との区別などの正確さにはあまりこだわらない
9 野菜 どこで打ち切るか 途中で言葉に詰まり、10秒ほど待っても出なければ終了

再評価の場面では、「桜・猫・電車のテストですね」と前回の言葉を覚えている人もいます。前にHDS-Rを受けたことがありそうな人には、もう一方の「梅・犬・自動車」の系列を使うとよいとされています。どちらの系列を使ったかは、次の人のために記録しておきましょう。

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長谷川式の点数の見方(30点満点と20点・21点の区分点)

HDS-Rの満点は30点です。開発時の研究では、20点以下を「認知症の疑い」、21点以上を「正常」と分けたときに、両者を最もよく見分けられたと報告されています。この20点と21点の間の線を区分点(カットオフポイント)といいます。

ただし、この区分点は「疑いがあるかどうか」をふるい分ける目安です。20点以下だから認知症、21点以上だから認知症ではない、と決めるものではありません。認知症かどうかの診断は、医師が問診や診察、ほかの検討とあわせて行います。

点数だけで判断できない理由として、開発者自身が次の点を挙げています。

  • もともと知的な力が高い人は、日常生活に支障が出ていても高い点数を取ることがある
  • うつ状態の人は点数が低く出やすい。認知症の人は間違っていても何か答えることが多いのに対し、うつ状態では「わかりません」「できません」という反応が増える
  • 自信のない問題に答えない「無回答の誤答」で、実際の力より低く出ることがある

看護師が点数を伝えるときは、「○点でした」だけでなく、どんな答え方をしていたか、どの項目でつまずいたかを添えると、医師が点数を読み解く材料になります。

点数より項目ごとの答え方がケアに役立つ

合計点は結果を要約したもので、ケアに生かすなら要約する前の情報、つまり項目ごとの答え方が役に立ちます。

  • 日時がわからない:カレンダーや時計を目につく場所に置く
  • 場所がわからない:いる場所がわからない不安を和らげる環境を整える
  • 計算の2回目や数字の逆唱でつまずく:一度に複数のことを話さず、1つずつ区切って伝える
  • 3つの言葉の記銘(問4)ができない:この課題は最も易しく、記憶に頼る生活の支障が大きいと考えて、説明は書いて残すなど記憶に頼らない工夫をする

長谷川式認知症スケールとMMSEの違い

認知機能のスクリーニングでは、MMSE(Mini-Mental State Examination)もよく使われます。どちらも30点満点で、所要時間も10分前後です。

長谷川式(HDS-R) MMSE
項目数 9項目 11項目
満点 30点 30点
区分点 20点以下で認知症の疑い 23点以下で認知症の疑いとする区分点がよく用いられる
動作の課題 含まない(口頭のやりとりだけ) 指示に従う、文を読む、文を書く、図形を写すの4つを含む
特徴 記憶の課題の比重が大きい 言語・動作を含め、より幅広い認知機能を見る

手の麻痺などで書く・描く課題ができない人にはHDS-Rが向いています。MMSEは教育歴の影響を受けやすく、教育年数が長い人では区分点を上げるべきだという報告もあります。どちらを使うかは施設の運用や医師の指示に従い、前回と同じスケールで比べることが大切です。

長谷川式認知症スケールの記録の書き方と例文

記録には、合計点だけでなく、次に評価する人が同じ条件で比べられる情報を残します。

  • 実施日と実施者
  • 合計点と項目ごとの得点
  • 使った3つの言葉の系列(桜・猫・電車/梅・犬・自動車)
  • 実施した条件(場所、眼鏡・補聴器の有無、体調、時間帯)
  • 答え方の様子(無回答が多い、間違いでも答える、途中で疲れが見られた など)
  • 拒否や中断があれば、その状況と実施できた項目

例文

全項目を実施できた例

HDS-R実施(面談室、補聴器装着、第1系列使用)。合計18点。年齢1、日時2(年・曜日不正解)、場所2、記銘3、計算1(2回目不正解)、逆唱1、遅延再生3(ヒントで各1点)、物品4、野菜1。質問には穏やかに応じ、わからない問題でも答えようとする様子あり。結果を医師に報告。

途中で中断した例

HDS-R実施中、問5の計算で「こんなことを聞いてどうするんだ」と強い口調になり中断。問1〜4は実施(年齢1、日時1、場所1、記銘3)。本人に詫びて終了し、疲労の少ない午前中に改めて声をかける予定。中断したことを医師に報告。

再評価の例

HDS-R再評価(前回は第1系列使用のため第2系列を使用)。合計21点(前回18点)。遅延再生が前回3点から5点に上がる。前回と同じ面談室・同じ時間帯で実施。結果を医師に報告。

点数の解釈や認知症かどうかの判断は記録に書かず、実施した事実と様子を書いて医師に報告します。退院時の申し送りでは看護サマリーの書き方もあわせて参考にしてください。

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あわせて読みたい:認知症高齢者の日常生活自立度の判定基準

よくある質問

長谷川式認知症スケールは看護師が実施してもよいですか?

アセスメントの方法に習熟すれば、心理職のような専門家でなくても使えるスケールとして作られています。病棟や施設で看護師が実施することもありますが、実施するかどうか、結果をどう扱うかは、所属施設の運用と医師の指示に従いましょう。

同じ人に何度も実施すると、答えを覚えてしまいませんか?

3つの言葉を覚えてしまう人はいます。そのため言葉は2系列用意されており、前回と違う系列を使うことが想定されています。記録に使った系列を残しておくと、次の人が選びやすくなります。野菜の名前の課題は、覚えていても影響は少ないとされています。

長谷川式の点数から、認知症高齢者の日常生活自立度のランクは決まりますか?

決まりません。長谷川式は認知機能を測るもの、日常生活自立度は認知症による生活への支障の程度を表すもので、見ているものが違います。点数は自立度を判定するときの参考情報の一つです。

まとめ

  • 長谷川式認知症スケールの正式名称は改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)。9項目・30点満点で、動作の課題を含まない
  • 始める前に目的を伝え、個室で家族を同室させずに行う。問4〜問7は続けて行い、拒否されたら無理に続けない
  • 採点は「場所は自発で2点・ヒントで1点」「遅延再生は自発で2点・ヒントで1点」「計算と逆唱は最初の誤りで打ち切り」などのルールをそろえる
  • 20点以下は認知症の疑いを示すスクリーニングの目安で、診断は医師が行う
  • 記録には合計点に加えて、項目別の得点、使った系列、実施条件、答え方の様子を書く

参考

  • 加藤伸司「改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)の理解と活用」老年臨床心理学研究 4巻 47-55頁(2023)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjcgp/4/0/4_47/_pdf/-char/ja
  • Japanese Journal of Medical Technology 66巻 J-STAGE-2号「Neuropsychological tests」(2017)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jamt/66/J-STAGE-2/66_17J2-3/_html/-char/ja