ナースの勉強部屋

MMT(徒手筋力テスト)とは?6段階の評価基準と正しいやり方を徹底解説

MMT(徒手筋力テスト)とは?6段階の評価基準と正しいやり方を徹底解説

患者さんの運動機能や日常生活動作(ADL)を把握するために欠かせない「MMT(徒手筋力テスト)」。

整形外科や脳神経外科をはじめ、救急初療室やICU、リハビリテーション病棟など、あらゆる臨床現場で用いられる基本的なフィジカルアセスメントの一つです。

しかし、いざ実践となると「MMT3と4の違いが曖昧」「重力を除いた状態での評価が難しい」「指示が入らない患者さんの場合はどうすればいい?」など、悩みを抱える看護師の方も多いのではないでしょうか。

この記事では、MMTの基本的な意味や目的から、0〜5の6段階の評価基準、部位別の正しい測定方法、実施時の注意点や記録のコツまで、看護師が現場で直ぐに活かせる知識を網羅的に解説します。

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目次
  1. MMT(徒手筋力テスト)とは?看護における目的と重要性
    1. ADL(日常生活動作)の評価と介助量の決定
    2. 神経障害・麻痺の有無と部位の把握
    3. リハビリテーションの効果判定
    4. 異常の早期発見
  2. MMTの6段階の評価基準(0〜5)
    1. 評価のポイント
  3. 【部位別】MMTの具体的な測定方法と手順
    1. 上肢のMMT評価(例:肘関節の屈曲)
    2. 下肢のMMT評価(例:膝関節の伸展)
    3. 体幹のMMT評価
  4. 看護師がMMTを実施する際の5つの注意点
    1. 1. 「代償運動」を見逃さない
    2. 2. 抵抗を加える手と力を一定にする
    3. 3. 体位変換は最小限にして疲労を防ぐ
    4. 4. プライバシーへの配慮
    5. 5. 意識障害がある(指示従命が困難な)場合の工夫
  5. MMTの記録の書き方・残し方
  6. まとめ:MMTをマスターして安全な看護ケアとADL向上に繋げよう

MMT(徒手筋力テスト)とは?看護における目的と重要性

MMT(Manual Muscle Test:徒手筋力テスト)とは、特別な機器や道具を使用せず、検査者の「手(徒手)」を用いて患者さんの筋力を評価する検査方法です。

看護師がMMTを実施・評価する主な目的には、以下の要素が挙げられます。

ADL(日常生活動作)の評価と介助量の決定

自力で起き上がれるか、車椅子へ移乗できるかなどを判断し、安全なケア計画を立案します。健康的な日常生活を送るためには、一般的にMMT3以上の筋力が必要とされています。

神経障害・麻痺の有無と部位の把握

筋力低下がどの筋肉に生じているかをみることで、原因となる神経障害の部位や麻痺の程度を推測する手がかりになります。

リハビリテーションの効果判定

理学療法士(PT)や作業療法士(OT)と共通の指標を用いることで、多職種連携をスムーズにし、回復の度合いを評価します。

異常の早期発見

経時的に評価することで、急激な筋力低下や麻痺の進行など、患者さんの状態変化を早期に察知します。

MMTの6段階の評価基準(0〜5)

MMTは、筋肉の収縮の有無、重力への対抗、検査者の加える抵抗への対抗という観点から、0〜5の6段階で評価します。

評価レベル判定の目安状態の詳しい説明
5 (Normal/正常)強い抵抗を加えても、全可動域を動かせる重力に打ち勝ち、さらに検査者が加える最大の抵抗に対しても関節の運動範囲を完全に動かし、維持できる状態。
4 (Good/良)中等度の抵抗を加えても、全可動域を動かせる重力に打ち勝って動かせるが、検査者の強い抵抗には負けてしまう状態。
3 (Fair/可)抵抗なしで重力に抗して、全可動域を動かせる検査者が抵抗を加えなければ、自力で重力に逆らって関節を動かしきることができる状態。
2 (Poor/不良)重力を除いた状態で、全可動域を動かせる重力に逆らって持ち上げることはできないが、床やベッドに腕や脚を滑らせるようにすれば(重力を除けば)全可動域を動かせる状態。
1 (Trace/微)筋収縮は確認できるが、関節運動は生じない筋肉がピクッと動いたり、触れると硬くなったりする(筋収縮がある)ものの、関節を動かすには至らない状態。
0 (Zero/ゼロ)筋収縮がまったく確認できない関節運動が起こらず、筋肉の収縮もまったく触知できない状態。

評価のポイント

現場では、より細かな変化を共有するために「4+」や「3-」といった中間評価を用いることもあります。厳密な定義は施設によって異なる場合がありますが、リハビリスタッフとの情報共有において、微妙な回復過程を表現するために役立ちます。

【部位別】MMTの具体的な測定方法と手順

MMTを実施する際は、「まずはMMT3(重力に抗して動かせるか)があるかを基準にする」のが基本のセオリーです。MMT3が可能なら抵抗を加えて4・5を評価し、MMT3が不可能なら重力を除いた肢位に変更して2・1・0を評価します。

上肢のMMT評価(例:肘関節の屈曲)

食事や更衣、ナースコールの操作などに関わる重要な部位です。

  1. MMT3の確認:患者さんに前腕を上に向けた状態で、自力で肘を曲げて(持ち上げて)もらいます。これができればMMT3以上です。
  2. MMT4・5の評価:患者さんに肘を曲げた状態をキープしてもらい、看護師は手首付近を掴んで「肘を伸ばす方向」に引っ張り、抵抗を加えます。
  3. MMT2以下の評価:自力で持ち上げられない場合は、机やベッドに腕を置いた状態(重力の影響をなくした水平方向)で肘を曲げられるかを確認します。

下肢のMMT評価(例:膝関節の伸展)

立ち上がりや歩行、移乗動作に直結します。

  1. MMT3の確認:端座位(ベッドの端に腰掛けた状態)で、膝から下を真っ直ぐに持ち上げられるかを確認します。
  2. MMT4・5の評価:持ち上げた状態をキープしてもらい、看護師は足首の上あたりを上から下に押し下げるように抵抗を加えます。
  3. MMT2以下の評価:持ち上がらない場合は、側臥位(横向き)になり、重力を除いた状態で膝を伸ばせるかを確認します。

体幹のMMT評価

座位保持や寝返りに必要な筋力です。例えば腹臥位(うつ伏せ)の状態から上半身を反らせて持ち上げられるか(背部筋群の評価)などを確認します。

看護師がMMTを実施する際の5つの注意点

正確で安全なMMT評価を行うために、以下の点に注意しましょう。

1. 「代償運動」を見逃さない

筋力が低下していると、患者さんは別の筋肉や関節の反動を使って無理に動かそうとします(代償運動)。例えば、脚を持ち上げる際に上半身を後ろに大きく反らせるなどです。これを見逃すと実際よりも高く評価してしまうため、対象の筋肉だけが正しく使われているか観察しましょう。

2. 抵抗を加える手と力を一定にする

抵抗を加える際は、毎回「利き手」で行い、力の入れ具合を一定に保つよう心がけましょう。検査者の体重を乗せて強く押しすぎないよう注意が必要です。

3. 体位変換は最小限にして疲労を防ぐ

とくに高齢者の場合、何度も体位を変えることは大きな負担になります。仰臥位で行える評価はまとめて行うなど、効率よく検査を進める配慮が求められます。

4. プライバシーへの配慮

筋肉の収縮を目視で確認するため、検査部位を露出させる必要があります。周囲のカーテンを閉める、不要な露出を避けるためにタオルをかけるなど、患者さんの羞恥心に配慮しましょう。

5. 意識障害がある(指示従命が困難な)場合の工夫

MMTは原則として「患者さんが指示を理解し、協力できること」が前提です。意識障害や認知機能の低下により指示が入らない場合は、正確な数値化は困難です。

その際は、痛み刺激に対する逃避行動の際に「重力に抗して腕を持ち上げたか(=実質MMT3以上はある)」など、日常の動作観察からおおよその筋力を推測し、「指示従命困難のため動作観察より推測」と添えてカルテに記載します。

MMTの記録の書き方・残し方

MMTの記録は、一度きりの評価ではなく、経時的な変化を追えるように記載することが重要です。

  • 左右差を明確にする(例:肘関節屈曲 右5 / 左2)
  • 表形式で時系列を追う特定の筋肉の数値を日付ごとに横並びで記録することで、筋力が回復しているのか、あるいは麻痺が進行しているのかが一目で分かります。
  • 他の筋肉の評価と比較しないMMTはあくまで「その筋肉自体の相対評価」です。上腕のMMT3と足関節のMMT3では絶対的な力の強さは異なります。別々の筋肉の点数を比較するのではなく、同じ筋肉の過去と現在、あるいは左右差を比較するようにしましょう。

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まとめ:MMTをマスターして安全な看護ケアとADL向上に繋げよう

MMT(徒手筋力テスト)は、特別な道具を使わずに患者さんの運動機能を数値化できる非常に優れたアセスメントツールです。

まずは「MMT3(重力に抗して動かせるか)」を基準に考えるクセをつけることで、評価への迷いが大きく減るはずです。正しい評価基準と測定時の配慮を身につけ、リハビリスタッフや医師とのスムーズな連携、そして患者さんにとって最も安全で自立を促す看護ケアの提供に役立てていきましょう。