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ICF(国際生活機能分類)とは?6つの構成要素とアセスメントでの書き方・具体例を徹底解説

ICF(国際生活機能分類)とは?6つの構成要素とアセスメントでの書き方・具体例を徹底解説

ICF(国際生活機能分類)は、人間の生活機能や健康状態を多面的に評価するため、2001年にWHO(世界保健機関)で採択された世界共通の分類方法です。

介護・看護・リハビリの現場において、患者や利用者のアセスメント(状態把握)や支援計画を作成する際の最も重要な枠組みとして活用されています。単なる疾患の分類ではなく、「その人がその人らしく生きるための全体像」を捉えるツールと言えます。

この記事では、ICFの基本的な仕組みや6つの構成要素から、実際の現場でのアセスメントの書き方、多職種連携への活かし方までを徹底解説します。

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目次
  1. ICF(国際生活機能分類)とは?
    1. ICFの目的と「共通言語」としての役割
    2. 前身であるICIDH(国際障害分類)との違い
  2. ICFを構成する6つの要素(分類)
    1. 健康状態
    2. 生活機能① 心身機能・身体構造
    3. 生活機能② 活動(している活動・できる活動)
    4. 生活機能③ 参加
    5. 背景因子① 環境因子
    6. 背景因子② 個人因子
  3. 【職種・事例別】現場で活きるICFのアセスメント・書き方のコツ
    1. マイナス面だけでなく「プラス面・強み」に着目する
    2. 専門用語を避け、誰もがわかる言葉で記載する
    3. 患者・利用者の「希望や価値観」を重視する
    4. 具体的な書き方例(脳梗塞・認知症などのケース)
  4. 専門的な記録に用いる「ICFの分類コードと評価点」
    1. アルファベットと数字からなる「分類コード」
    2. 問題の重大さを示す「評価点」のルール
  5. ICFを介護・看護・リハビリ現場に導入するメリット
    1. 患者・利用者に「本当に必要なケア」が明確になる
    2. 多職種連携・チーム医療での情報共有がスムーズになる
  6. まとめ

ICF(国際生活機能分類)とは?

ICFの目的と「共通言語」としての役割

ICF(International Classification of Functioning, Disability and Health)は、人の健康状態や、それに影響を与える背景因子を深く理解するための国際的な枠組みです。

最大の特徴は、病気や障害という医学的な側面だけでなく、「その人に何ができるのか」「どのような生活環境で暮らしているのか」を含めて総合的に評価する点にあります。

医療や福祉の現場では、医師、看護師、理学療法士、介護職、ケアマネジャーなど多様な専門職が関わります。

しかし、職種ごとに着眼点や専門用語が異なると、支援の方向性がブレてしまうリスクがあります。ICFは、これらの専門職はもちろん、患者本人や家族も含めたチーム全体が、同じ視点で生活の全体像を捉えるための「共通言語」として極めて重要な役割を果たします。

前身であるICIDH(国際障害分類)との違い

ICFを深く理解するためには、1980年にWHOが発表した前身の分類「ICIDH(国際障害分類)」との違いを知る必要があります。

ICIDHは、「病気があることで、何ができなくなったか(能力低下)、どのような社会的不利が生じたか」という、障害のマイナス面を直線的に捉えるモデルでした。この考え方は障害の整理には役立ちましたが、「できないこと」ばかりに焦点が当たる課題がありました。

これに対し、ICFは「できること・強み(プラス面)」や、周囲の「環境因子」も含めた相互作用モデルへと進化しました。

「障害をどう治すか」ではなく、「環境を整えることで、どうすればその人らしく社会参加できるか」に焦点を当てており、障害のある人だけでなく、すべての人を対象としている点が大きな違いです。

ICFを構成する6つの要素(分類)

ICFでは、人間の生活機能が「健康状態」「心身機能・身体構造」「活動」「参加」「環境因子」「個人因子」の6つの要素から構成されると考えます。これらは独立しているのではなく、双方向に影響し合う「相互作用モデル」です。

健康状態

疾患名や外傷、妊娠、加齢に伴う状態など、その人の健康に関するベースとなる状態を指します。

単なる病名(脳卒中、糖尿病、骨折など)だけでなく、既往歴や合併症、現在の体調(高血圧、肥満、慢性的なストレスなど)も含みます。ただし、ICFにおいて健康状態はあくまで一要素であり、「この病気だからこうなる」と決めつけるものではありません。

生活機能① 心身機能・身体構造

健康状態によって生じている、生命維持に関わる機能や構造の状態です。

  • 心身機能: 身体・精神の生理的な働きを指します。手足の運動機能、視覚・聴覚、記憶や判断といった認知・精神機能、嚥下機能、疼痛などが含まれます。
  • 身体構造: 身体を構成する解剖学的な部位の状態です。手足や関節、筋肉、骨、内臓などの欠損や変調を評価します。

生活機能② 活動(している活動・できる活動)

生活の中で個人が行う具体的な行動(歩行、食事、更衣、排泄、入浴、家事など)を指します。

ICFの評価で特に重要なのが、これを「している活動(実行状況:Performance)」と「できる活動(能力:Capacity)」に分けて捉える点です。「リハビリ室なら手すりを使って歩ける(能力)」状態でも、「自宅では転倒が怖くて車いすで過ごしている(実行状況)」というギャップは頻繁に起こります。両者を区別することで、何が活動を阻害しているのかが明確になります。

生活機能③ 参加

家庭や社会の中で、その人がどのような役割を担い、関わっているかを表します。

仕事に就く、学校に通う、家族の一員としての役割を果たす、趣味のサークルに参加する、自治体活動やデイサービスを利用するなど、社会生活への関わり全般を指します。「活動」が個人レベルの動作であるのに対し、「参加」は社会との接点に重きを置いた概念です。

背景因子① 環境因子

生活や健康状態に外的な影響を与える環境のことです。本人の努力では変えにくい要素であり、以下の3つに分類されます。

  • 物的環境: 自宅の段差、階段、手すり、車いすや杖などの福祉用具、住宅構造など。
  • 人的環境: 同居する家族、サポートしてくれる友人、介護スタッフ、近隣住民など。
  • 社会的環境: 医療・介護保険制度、障害福祉サービス、公共交通機関、職場の配慮など。

背景因子② 個人因子

年齢、性別、生活歴、職業、価値観、性格、ライフスタイルなど、その人固有の背景や特徴です。

同じ疾患・同じ身体機能であっても、「絶対に職場復帰したい」と考える人と、「これからは自宅で穏やかに過ごしたい」と考える人では、必要となる支援やゴール設定が根本から異なります。

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【職種・事例別】現場で活きるICFのアセスメント・書き方のコツ

マイナス面だけでなく「プラス面・強み」に着目する

従来のアセスメントは「歩行困難」「更衣に介助が必要」など、できないことの羅列になりがちでした。しかしICFでは、本人の残存機能や強み(ストレングス)に目を向けます。

たとえば精神科の事例において、「幻聴がある(マイナス面)」という症状だけに注目すると社会生活が困難に見えます。しかし、「幻聴はあるが、服薬管理は自立しており、他者とのコミュニケーションも図れる(プラス面)」と捉えることで、就労支援や地域生活といった社会参加の道を具体的に模索できるようになります。

専門用語を避け、誰もがわかる言葉で記載する

ICFは多職種や家族で共有するツールであるため、特定の職種にしか伝わらない専門用語の多用は避けるべきです。

「ADL低下、MMSE低値、見当識障害あり」と専門的に記載するのも一つの方法ですが、チーム医療では「日中の居場所について迷うことがあるが、声かけがあれば自分で食事ができる」と具体的な生活場面に置き換えて記載する方が、ヘルパーや家族にも実際の生活状況が正確に伝わります。

患者・利用者の「希望や価値観」を重視する

アセスメントの起点は、常に「本人が望む生活」であるべきです。

「医療者が考える安全なゴール」を押し付けるのではなく、退院後はどこで暮らしたいか、どのような役割を取り戻したいのかを個人因子としてしっかり拾い上げます。本人の意向(例:また趣味の旅行に行きたい)を明確にすることで、日々のつらいリハビリやケアに対するモチベーション向上にもつながります。

具体的な書き方例(脳梗塞・認知症などのケース)

実際にICFの要素を用いて、プラス面とマイナス面を整理したアセスメントの記載例を紹介します。

【事例1:脳梗塞で右片麻痺が残る患者】

  • 健康状態: 脳梗塞の既往はあるが全身状態は安定(プラス)/ 右片麻痺が残存(マイナス)
  • 心身機能・身体構造: 左上下肢の運動機能は保たれている(プラス)/ 右上下肢の筋力低下(マイナス)
  • 活動: 杖を使用すれば病棟内歩行が可能、上衣着脱は自立(プラス)/ 階段昇降や下衣の着脱に時間を要する(マイナス)
  • 参加: 妻との生活再開と職場復帰を強く希望(プラス)/ 現在は仕事や地域活動が困難(マイナス)
  • 環境因子: 妻による見守りや一部介助が可能(プラス)/ 自宅玄関に段差がある(マイナス)
  • 個人因子: リハビリへの意欲が非常に高い(プラス)/ 屋外歩行には転倒の不安を感じている(マイナス)

【事例2:認知症で一人暮らしの利用者】

  • 健康状態: 慢性疾患はコントロールされ安定(プラス)/ 認知症の進行(マイナス)
  • 心身機能・身体構造: 視力や聴力に問題はない(プラス)/ 短期記憶の低下、見当識障害(マイナス)
  • 活動: 食事・排泄・屋内歩行は自立している(プラス)/ 確実な服薬管理が困難(マイナス)
  • 参加: デイサービスでの他者との交流を楽しんでいる(プラス)/ 一人で買い物に出ることは困難(マイナス)
  • 環境因子: 離れて暮らす家族が週に1回訪問支援(プラス)/ 独居のため日常的な見守りが不足(マイナス)
  • 個人因子: 長年の趣味である園芸には強い関心を示す(プラス)/ 新しい環境や人に対して不安を抱きやすい(マイナス)

専門的な記録に用いる「ICFの分類コードと評価点」

アルファベットと数字からなる「分類コード」

専門的な研究や公的な記録において、ICFは「アルファベット+最大5桁の数字」からなる分類コードを用いて状態を数値化します。

先頭のアルファベットは、以下の構成要素を示します。

  • b(Body Functions):心身機能
  • s(Body Structures):身体構造
  • d(Activities and Participation):活動・参加
  • e(Environmental Factors):環境因子※「個人因子」については、多様性が高すぎるためICFの公式な分類コードは設定されていません。

数字部分は階層構造になっており、桁が増えるほど詳細な内容を示します。例えば「s7(運動に関連した構造)→ s730(上肢の構造)→ s7301(前腕の構造)」のように、身体のどの部位・機能について評価しているのかを明確にします。

問題の重大さを示す「評価点」のルール

分類コードの後ろに小数点(分離点)を打ち、その後に続く「評価点」によって問題の程度を示します。

基本的には、0から4までの5段階(0:問題なし、1:軽度の問題、2:中等度の問題、3:重度の問題、4:完全な問題)でパーセンテージの目安とともに評価されます。

身体構造(s)の評価においては、小数点以下に複数の数字が並び、詳細な状態を記述します。

(例:s7301.221

  • 第1評価点「2」:構造障害の程度(中等度の問題)
  • 第2評価点「2」:構造の変化の性質(部分的欠損)
  • 第3評価点「1」:変化が生じている部位(右)

このように読み解くことで、「右前腕に、中等度の部分的欠損がある」という具体的な状態を、世界中どこでも共通の認識として把握することができます。

ICFを介護・看護・リハビリ現場に導入するメリット

患者・利用者に「本当に必要なケア」が明確になる

ICFを導入することで、「歩行が不安定だから車いすにする」「着替えに時間がかかるから全介助する」といった過剰な介護を防ぐことができます。

「ボタンを留めるのは難しいが、腕を通すことはできる」「手すりがあればトイレまで歩ける」というように、本人の残存能力と環境因子を掛け合わせて考えることで、本人の強みを最大限に活かした自立支援のケアが明確になります。

多職種連携・チーム医療での情報共有がスムーズになる

医療・福祉の現場では、医師は疾患を、看護師は日常生活援助を、理学療法士は歩行機能を、ケアマネジャーは在宅環境をと、それぞれの視点で患者を見ています。

ICFを活用すれば、これらの断片的な情報を「健康状態から個人因子まで」という一つの枠組みに統合できます。結果として、職種間の認識のズレがなくなり、「この人が望む生活を実現するために、チームでどう動くべきか」という一貫した支援方針を立てることが可能になります。

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まとめ

ICF(国際生活機能分類)は、患者や利用者の状態を単に分類し、コード化するためのツールではありません。その人が病気や障害を抱えながらも「よりよく生きていくため」の道筋を、多職種で一緒に見つけ出すための羅針盤です。日々の業務で複雑な分類コードをすべて暗記する必要はありません。

アセスメントを書く際、対象者を見る際に「何ができないか」だけでなく「何ができるのか」「何を大切にしているのか」「どんな環境なら可能になるのか」というICFの視点を取り入れるだけで、ケアの解像度は劇的に上がります。

ぜひ明日からの現場の実践に、この相互作用の視点を活かしてみてください。