ナースの勉強部屋

就労継続支援A型とは?看護師の役割や仕事内容・退院支援のポイント

就労継続支援A型とは?看護師の役割や仕事内容・退院支援のポイント

「就労継続支援」とは、身体・知的・精神障害や発達障害、難病などにより一般企業での就労が難しい方へ、働く場所と訓練を提供する障害福祉サービスです。

本記事では、就労継続支援A型とB型の違いや、事業所で働く看護師の役割、仕事内容、そして病棟から就労継続支援A型へつなぐ退院支援のポイントまで網羅的に解説します。

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目次
  1. 就労継続支援A型とは?
    1. 就労継続支援A型事業所の定義と対象者
    2. 就労継続支援B型や就労移行支援などとの明確な違い
      1. 就労継続支援A型=「支援を受けながら働く」
      2. 就労継続支援B型=「雇用契約を結ばずに働く」
      3. 就労移行支援=「就職するための訓練」
  2. 就労継続支援A型の事業所における看護師の役割・業務内容
    1. 看護師の主な役割は、健康管理・服薬指導・メンタルケア
    2. 急変時対応と関係機関との連携
    3. 【補足】看護師の1日のスケジュール例・給与相場
  3. 看護師が就労継続支援A型事業所で働くメリット・デメリット
    1. 看護師が就労継続支援A型事業所で働くメリット1:「生活・就労支援」に関われる
    2. 看護師が就労継続支援A型事業所で働くメリット2:夜勤・残業が少なく働きやすい
    3. 看護師が就労継続支援A型事業所で働くデメリット1:医療処置が少ない
    4. 看護師が就労継続支援A型事業所で働くデメリット2:一人職場や役割の曖昧さ
    5. 就労継続支援A型事業所勤務に向いている看護師は?
  4. 【病棟看護師向け】患者を就労継続支援A型事業所へ繋ぐ退院支援の手順
    1. 退院支援の8つのステップ
    2. 看護師にとっての重要ポイント
  5. 退院後の患者がその人らしく生きられるよう、看護師にできることを考えよう

就労継続支援A型とは?

就労継続支援A型とは、一般企業で働くことが難しい障害のある方に対し、雇用契約を結んだうえで働く機会を提供する障害福祉サービスです。仕事を提供するだけでなく、働くために必要な知識や能力を高めるための訓練・支援も行います。

参照:厚生労働省「障害福祉サービスについて」 厚生労働省「障害者の就労支援対策の状況」

就労継続支援A型事業所の定義と対象者

就労継続支援A型では、利用者と事業所が原則として雇用契約を締結します。福祉サービスを受けながら、労働基準法などが適用される「労働者」として働くのが大きな特徴です。

参照:厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく障害福祉サービス事業の設備及び運営に関する基準」

【具体的な仕事内容の例】

  • 食品加工・調理
  • 清掃・農作業
  • パソコンを使ったデータ入力・事務
  • 軽作業・商品の梱包・発送・製造 など

【対象者】

企業への就労が困難な方のうち、雇用契約に基づく継続的な就労が可能な方。具体的には以下のような方が対象です。

  1. 就労移行支援事業を利用したが、企業雇用に結びつかなかった方
  2. 特別支援学校を卒業して就職活動を行ったが、企業雇用に結びつかなかった方
  3. 過去に就労経験があるが、現在は雇用関係がない方※条件を満たす場合は65歳以上でも利用対象となります。

参照:厚生労働省「障害福祉サービスについて」

就労継続支援B型や就労移行支援などとの明確な違い

障害福祉サービスのうち、「訓練」を含む3つの就労支援サービスの違いは以下の通りです。「雇用契約の有無」と「利用目的」が重要な違いとなります。

就労継続支援A型就労継続支援B型就労移行支援
主な目的働く場の提供+一般就労に向けた支援働く機会・生産活動の場の提供一般企業への就職
雇用契約原則ありなしなし
対価賃金(給与)工賃原則なし
対象一般就労は難しいが、雇用契約に基づく就労が可能雇用契約に基づく就労が難しい一般企業への就職が可能と見込まれる
働き方労働者として働く体調や能力に合わせて作業就職に必要な訓練・求職活動
利用期間原則制限なし原則制限なし標準2年

就労継続支援A型=「支援を受けながら働く」

最大のポイントは「雇用契約があること」です。労働の対価として最低賃金以上の「賃金」を受け取ります。「福祉サービス+雇用」と考えるとわかりやすいでしょう。

就労継続支援B型=「雇用契約を結ばずに働く」

A型よりも働くハードルを下げた仕組みです。雇用契約を結ばず、体調やペースに合わせて作業を行います。対価は「工賃」と呼ばれます。

参照:厚生労働省「就労継続支援A型の制度趣旨について」

就労移行支援=「就職するための訓練」

働く場所の提供よりも、「一般企業への就職に向けた準備・訓練」が中心です。ビジネスマナーやパソコンスキル、面接対策などを行います。

参照:厚生労働省「障害者総合支援法における就労系障害福祉サービス」

就労継続支援A型の事業所における看護師の役割・業務内容

就労継続支援A型の事業所では、利用者が安定して働き続けられるよう、健康面からサポートするために看護師が常駐するケースがあります。特に生活介護の併設や、医療的ケア(たん吸引・経管栄養など)が必要な利用者を受け入れている事業所では配置割合が高くなります。

看護師の主な役割は、健康管理・服薬指導・メンタルケア

1. 健康状態の確認・健康管理

  • バイタルサイン(血圧・体温)の測定
  • 疲労、睡眠、食事など生活状況の把握
  • 健康診断結果を踏まえた相談、受診の判断サポート利用者は不調をうまく伝えられないことがあるため、日頃からの状態把握が重要です。

2. 服薬に関する支援

  • 服薬状況の確認、飲み忘れ防止の注意喚起
  • 副作用の確認と相談対応自己判断での変更はせず、主治医の指示に沿って服薬をサポートします。

3. メンタルヘルスへの支援

  • 不安やストレスに関する相談
  • 睡眠や食欲の変化から、精神疾患悪化のサインを早期発見働くことに伴う緊張や環境変化がもたらす精神面への影響をケアします。

急変時対応と関係機関との連携

1. 急な体調変化への対応

発熱、けいれん、呼吸苦、精神状態の急変などが発生した際、休養・早退・受診・救急要請などの応急対応や判断を行います。

2. 医療機関・主治医との連携

利用者の健康状態に変化があれば、主治医、訪問看護、薬剤師などと情報共有を行い、症状の悪化を防ぎながら就労を支援します。

3. 事業所内の多職種連携

看護師、サービス管理責任者、職業指導員、生活支援員などで連携し、作業中の様子や支援計画の見直しを共有します。医療と福祉・就労をつなぐ重要な役割です。

【補足】看護師の1日のスケジュール例・給与相場

就労継続支援A型で働く看護師の一般的なスケジュールと給与相場です。

  • 給与相場:月給20万円〜25万円前後(夜勤・残業が少ないため、病院勤務より低めになる傾向があります)
  • 1日の流れ(例)
    • 09:00 出勤・朝礼・申し送り
    • 09:30 利用者のバイタルチェック・体調確認
    • 10:00 作業の見守り・服薬確認・健康相談
    • 12:00 昼休憩
    • 13:00 午後の作業見守り・メンタルケア
    • 15:30 記録作成・支援員とのミーティング
    • 17:00 退勤

看護師が就労継続支援A型事業所で働くメリット・デメリット

メリットデメリット
利用者の「働く」を直接支援できる病院に比べ医療処置の機会が少ない
急性期対応が少なく精神的負担が軽い看護師一人職場になる場合がある
夜勤や残業が少ない求人が多い看護師と支援員の役割が曖昧になりやすい
利用者と長期的にじっくり関われる福祉・就労支援などの幅広い知識が必要
多職種連携(福祉・就労機関)を経験できる病院勤務(夜勤あり)より年収が下がる傾向

看護師が就労継続支援A型事業所で働くメリット1:「生活・就労支援」に関われる

「病気を治す看護」だけでなく、「その人が自分らしく働き続けるための看護」という新しいやりがいに携われます。

看護師が就労継続支援A型事業所で働くメリット2:夜勤・残業が少なく働きやすい

日中の支援が中心のため、ワークライフバランスを整えやすい環境です。

看護師が就労継続支援A型事業所で働くデメリット1:医療処置が少ない

採血や点滴などのスキルを使う場面が少なく、看護技術を向上させたい方には物足りなく感じる可能性があります。

看護師が就労継続支援A型事業所で働くデメリット2:一人職場や役割の曖昧さ

看護師が自分一人というプレッシャーや、生活支援員との業務境界線が曖昧になるケースがあります。入職前の確認が重要です。

就労継続支援A型事業所勤務に向いている看護師は?

  • 医療処置よりも、利用者一人ひとりとじっくり関わりたい
  • 障害福祉や就労支援に強い関心がある
  • 夜勤なしで生活リズムを整えたい※「急性期を経験したい」「医療技術を磨きたい」という方にはミスマッチの可能性があります。

【病棟看護師向け】患者を就労継続支援A型事業所へ繋ぐ退院支援の手順

病棟から就労継続支援A型へつなぐ際は、「退院先を探す」だけではなく、「退院後も無理なく働き続けられる状態か」を多職種で評価することがポイントです。

退院支援の8つのステップ

  1. 本人の就労希望を確認する:退院後に働きたいか、希望する仕事や勤務ペースを丁寧にヒアリングし、本人の意思を起点にします。
  2. 患者の「就労アセスメント」を行う:身体面(疲れやすさ等)、精神面(ストレス耐性等)、就労面(集中力や作業負荷等)から「どのような配慮があれば働けるか」を評価します。
  3. A型が適しているか多職種で検討する:一般就労やB型との比較を含め、主治医やMSW(医療ソーシャルワーカー)を交えて検討します。
  4. 主治医から医学的情報を確認する:就労に関する制限や禁忌、症状悪化のサインなどを確認し、必要範囲で共有する準備をします。
  5. MSW・相談支援専門員につなぐ:看護師からMSWへ、患者のADLや必要な配慮などの情報を引き継ぎます。
  6. 地域の就労支援機関と連携する:ハローワークや障害者就業・生活支援センターなどと連携し、最適な選択肢を探ります。
  7. 事業所の見学・体験につなげる:実際の作業スピードや職場環境、体調不良時の対応などを本人と一緒に確認します。
  8. 退院後の医療・生活・就労支援をつなぐ:就職後も、体調変化時に早期対応できるよう、地域の医療機関や支援者との連携体制を構築します。

看護師にとっての重要ポイント

病棟看護師の役割は「事業所を紹介すること」ではありません。日々の関わりから得た「この患者は何が体調悪化のきっかけになるか」「どのような配慮があれば働き続けられるか」という医療面の情報を、多職種へ橋渡しすることが最大のミッションです。

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退院後の患者がその人らしく生きられるよう、看護師にできることを考えよう

患者を「治療の対象」としてだけでなく、「一人の生活者」として捉える視点が大切です。退院後、障害を抱えながらもその人らしく生きていくための選択肢として、就労継続支援A型などの福祉サービスの知識は大いに役立ちます。

看護師一人がすべてを抱え込む必要はありません。必要に応じて多職種と連携し、患者一人ひとりの「その人らしい生活」を支える体制を築いていきましょう。