【看護師向け】医療扶助とは? 生活保護受給者の受診ルールや医療機関側の対応時の注意点を解説
医療扶助とは、生活保護受給者が自己負担額ゼロで必要な医療を無料で受けることができる仕組みです。すべての医療機関で適用となる仕組みではないため、医療扶助についての詳細は把握していないという看護師も多いかもしれません。
しかし、患者から医療扶助について尋ねられる可能性や、転職によって、医療扶助が適用となる医療機関で働くことになる可能性も無きにしも非ずであるため、概要を知っておくに越したことはありません。そこで今回は、医療扶助について詳しく解説していきます。
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生活保護制度における「医療扶助」の基礎知識と受給条件
まずは、「医療扶助」および、医療扶助を含む8種類の扶助から成り立つ「生活保護制度」について解説していきます。
医療扶助と生活保護制度の関係性とは?
「生活保護制度」とは、本人が有している資産や能力などのすべてを活用してもなお、生活に困窮する人に対して、個々の困窮の程度に応じたサポートを行うことによって、健康で文化的な最低限度の生活を保障する制度です。また、本人の自立を助長することも目的としています。
最低限度の生活を保障するために、個々の生活状況に応じた8種類の扶助が用意されており、そのうちの1つが「医療扶助」です。
自立の助長のためには、ケースワーカーや就労支援者による就労指導や支援などが行われています。
8種類の扶助の内訳は次の通りで、すべて、最低限度の生活を営むための必要な費用であるとされています。
| 扶助の種類 | 具体的に何に使われる費用であるか | 支給内容 |
|---|---|---|
| 生活扶助 | 日常生活に必要な費用(食費・被服費・光熱水費など) | 基準額は次の2つを合算して算出 ・食費などの個人的費用(年齢別に算定) ・光熱水費などの世帯共通的費用(世帯人員別に算定) |
| 住宅扶助 | アパートなどの家賃など | 定められた範囲内で実費を支給 |
| 教育扶助 | 義務教育を受けるために必要な学用品費など | 定められた基準額(一部、定められた範囲内で実費)を支給 |
| 医療扶助 | 医療サービスの費用 | 費用は直接医療機関に支払い(本人負担なし) |
| 介護扶助 | 介護サービスの費用 | 費用は直接介護事業者に支払い(本人負担なし) |
| 出産扶助 | 出産費用 | 定められた範囲内で実費を支給 |
| 生業扶助 | 就労に必要な技能の習得などにかかる費用(高等学校などに就学するための費用を含む) | 定められた範囲内で実費(高等学校などに就学するための費用の一部は定められた基準額)を支給 |
| 葬祭扶助 | 葬祭費用 | 定められた範囲内で実費を支給 |
なお、生活保護を受けている人を「生活保護受給者」といいますが、生活保護受給者は8種類すべての扶助を受けるわけではありません。生活保護制度では、その人・その世帯の生活状況や必要性に応じて、必要な扶助が組み合わせられます。
たとえば、病気の治療が必要な人が受ける可能性がある扶助は、「生活扶助・住宅扶助・医療扶助など」と考えられます。生活保護制度は、世帯の収入・資産などを踏まえて最低生活費に対して不足する部分を保証する制度であるため、医療扶助は、生活扶助や住宅扶助などを組わせられるケースが多くなるためです。
なお、厚生労働省の公表によると、生活保護費負担金の実績額のうち、約半分は医療扶助であることがわかっています。つまり、生活保護受給者の多くが、医療扶助を必要としているということになります。
令和元年から令和5年にかけての実績額およびその内訳の推移は次の通りです。
| 年度 | 生活保護費総額 | 生活扶助 | 住宅扶助 | 介助扶助 | 医療扶助 | その他の扶助 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 令和元年 | 35,882億円 | 29.9% | 16.6% | 2.6% | 50.2% | 0.8% |
| 令和2年 | 35,258億円 | 29.9% | 16.9% | 2.6% | 49.7% | 0.8% |
| 令和3年 | 35,208億円 | 26.6% | 17.0% | 2.7% | 49.9% | 0.8% |
| 令和4年 | 35,059億円 | 29.5% | 17.2% | 2.8% | 49.7% | 0.8% |
| 令和5年 | 36,007億円 | 28.7% | 16.8% | 2.8% | 50.9% | 0.8% |
医療扶助とは? 自己負担ゼロの仕組み
先の表でも記した通り、医療扶助を受けた本人には、医療費を支払う必要が生じません。ただし、必要な医療を受けるためにかかった費用(現金)が本人に渡されるのではなく、かかった費用は医療機関に対して直接支払われます。
では、“誰が”その費用を医療機関に払っているかというと、国と地方自治体です。
生活保護費の財源は、原則として、国が4分の3(75%)、地方自治体が4分の1(25%)の割合で負担しており、原資は国民が収めた現金です。
また、支払窓口となっているのは生活保護受給者の居住地域を管轄する福祉事務所や担当ケースワーカーです。たとえば、生活保護受給者のAさんが病院を受診した場合の流れは次の通りです。
一般的な健康保険の仕組みと比べると、次のような違いがあるということになります。
| 一般の健康保険 | 医療扶助 |
|---|---|
| 医療費100% ↓ 保険給付+患者自己負担 (たとえば3割負担の場合、患者負担は30%) | 医療費100% ↓ 医療扶助(公費)で100%負担/患者負担なし |
生活保護を受給するための基本要件
前述の通り、生活保護制度は、資産や能力などのすべてを活用してもなお、生活に困窮する人および世帯が活用できる制度です。対象者となるかどうかは、主に次の4点で確認されます。
資産を活用していること
預貯金、不動産、保険など生活に利用できる資産がある場合、原則としてそれを生活のために活用することが求められます。つまり、「これらを活用してもなお生活できない状態であるかどうか」がチェックされるということになります。
能力を活用していること
働くことが可能な人については、その能力に応じて働くことが求められます。よって、働く能力があるか、働く意思があるか、実際にその能力を活用できる仕事があるか、などが総合的に判断されます。病気や障害などによって働くことが難しい場合、その事情も考慮されます。
年金・手当などの他の制度を利用していること
年金や各種手当など、他の制度から給付を受けられる場合、まずはそれらを利用することが求められます。たとえば年金を受給できる人であれば、年金を受給しても生活最低費をまかなうことができないかどうかがチェックされます。
扶養義務者から援助を受けられる場合、それを優先すること
親族などの扶養義務者から援助を受けられる場合、その援助が生活保護より優先されます。ただし、「親族がいるから生活保護を受けられない」という意味ではありません。扶養義務者がいても、実際に援助を受けることができない場合、生活保護の対象になり得ます。
上記4点について確認したうえで、「最低生活費」と「収入」を比較して。「世帯の収入<最低生活費」となっている場合、生活保護費の支給対象となります。たとえば、最低生活費が15万円で、年金・給与などの収入が10万円の場合、不足している5万円が支給される可能性があるという考え方です。
参照:厚生労働省「生活保護の基本的な実務」 厚生労働省「生活保護法」より「生活保護を受けるための要件および生活保護の内容」
医療扶助を受給するための基本要件
医療扶助を受給するための基本的な要件は次の2つです。
生活保護の対象者であること
先に説明した通り、医療扶助を受けるための前提は、生活保護受給者であることです。つまり、「医療費が高くて払えない」というだけで医療扶助の対象者になるということではないということです。
医療が必要であること
生活保護受給者であることに加えて、疾病やケガなどによって医療を必要としていることも要件となります。なお、生活保護法では、医療扶助は次に掲げる事項の範囲内で行われるものとされています。
- 診察
- 薬剤または治療材料
- 医学的処置、手術およびその他の治療並びに施術
- 居宅における療養上の管理およびその療養に伴う世話その他の看護
- 病院または診療所への入院およびその療養に伴う世話その他の看護
- 移送
参照:厚生労働省「生活保護法」
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医療扶助を利用する場合の基本的なルールと「後発医薬品使用の原則」とは?
医療扶助には、一般的な健康保険とは異なる「受診のルール」があります。特に重要なのは、原則として、事前に福祉事務所を通して受診する医療機関が決まることと、医療券などによって医療扶助の資格を確認してから受診という流れになる点です。
原則として受診前に福祉事務所に相談・申請する
病気やケガで医療が必要になった場合、原則としてまず福祉事務所に医療扶助を申請します。
その後、次の流れで医療を受けることになります。
福祉事務所
↓
医療要否意見書などを発行
↓
指定医療機関で診察・必要事項の記入
↓
福祉事務所が医療扶助を決定
↓
医療券を発行
↓
指定医療機関を受診
なお、生活保護法の指定医療機関医療担当規定では、「指定医療機関は、保護の実施機関の発給した有効な医療券を所持する患者の診療を正当な事由がなく拒んではならない」と定められています。
参照:厚生労働省「医療扶助のオンライン資格確認システムの 導入を踏まえ、要否意見書の電子化に向けた具体的方策についての調査研究事業」 厚生労働省「指定医療機関医療担当規定」
原則として「指定医療機関」を受診する
医療扶助を利用する場合、どこの病院・クリニックでも自由に受診できるわけではありません。
原則として、福祉事務所が選定した指定医療機関で受診することになります。厚労省の通知でも、「福祉事務所が選定する医療機関を受診することが原則」とされています。
つまり、「今日はこの病院に行きたいから、自由に行って医療扶助を使おう」というように、一般の健康保険と同じ感覚で利用することはできません。
参照:厚生労働省「生活保護の医療扶助における適正受診等の推進について」
医療扶助の資格は「医療券」または「マイナンバーカード」で確認する
前述の通り、福祉事務所が医療扶助を決定したら、「医療券」が発行されます。
指定医療機関は、医療券がその人に対して発行されたものであり、かつ有効であることを確認したうえで診療することになっています。
これに加えて、2024年3月からは、生活保護の医療扶助についてもマイナンバーカードを領したオンライン資格確認が可能となっています。
「緊急時」は例外
前述の通り、生活保護受給者が医療機関を受診するためには、原則として受診前に福祉事務所に相談・申請することとされていますが、「緊急時」は例外です。
たとえば、次のようなケースが該当します。
(例)
・夜中に突然、激しい腹痛が起きた
・大ケガをした
・救急搬送された
・福祉事務所が閉まっている時間帯に急病になった
など
こうしたケースにおいては、事前に医療券を取得することは難しいと考えられます。しかしこうした場合、「医療券がないから受診できない」ということになりません。
ではどうするかというと、厚生労働省の資料によると、たとえば福祉事務所の閉庁時に急病になった場合、まずは指定医療機関を受診して、翌日、速やかに傷病届を提出して医療券などを医療機関に届けるという対応が示されています。
参照:厚生労働省「生活保護法による医療扶助における医療券等様式(診療報酬等請求様式)の変更に伴う留意事項等について 厚生労働省「年末年始における生活困窮者支援等に関する協力依頼等について」
つまり、基本的に次のような考え方であるということになります。
・通常時:事前に手続きしてから受診
・緊急時:まず必要な医療を受けて、後から手続きを整える
「調剤券」も事前に発行してもらうことが必要
医療扶助の利用者が医療機関で診察を受けた結果、医師のほうで薬が必要と判断した場合、医師は処方箋を発行します。
一般的な受診であれば、この後、患者はそのまま薬局に薬を処方してもらいに行きますが、医療扶助を利用している場合、医師が発行した処方箋に基づいて、患者が薬局で調剤を受けるためには、福祉事務所に「調剤券」を発行してもらう必要があります。
基本的な流れとしては次の通りです。
- 生活保護受給者が医療機関を受診する
- 医師が診察して、薬が必要と判断する
- 医師が処方箋を発行する
- 福祉事務所が、その処方に対応する調剤券を発行する
- 生活保護受給者が指定の薬局で調剤を受ける
- 薬局は調剤券などに基づいて調剤を行い、その費用を医療扶助として請求する
医療券と調剤券との違いは次の通りです。
| 医療券 | 調剤券 | |
|---|---|---|
| 対象 | 病院・診療所など | 薬局 |
| 発行されるきっかけ | 医療扶助による診療 | 処方箋に基づく調剤 |
| 主な役割 | 医療機関が医療扶助の資格を確認 | 薬局が医療扶助の資格を確認 |
| 費用 | 医療扶助として公費負担 | 医療扶助として公費負担 |
なお、調剤券に関しても、医療券同様、現在ではオンラインで資格確認する仕組みも導入されています。そのため、必ずしも紙の調剤券を患者本人が薬局に持参するとは限りません。
【重要】後発医薬品(ジェネリック医薬品)使用の原則
医療扶助では、原則として後発医薬品(ジェネリック医薬品)が処方されます。平成30年の法改正によって、医学的知見に基づいて問題ない場合、後発医薬品の使用を原則化することとされているためです。
参照:厚生労働省「生活保護制度の概要」より「適正受診・医薬品の適正使用・健康管理支援の取組」
ただし、あくまでも「原則として」であって、必ずしも後発医薬品でなければならないというわけではありません。たとえば、医師が医学的に先発医薬品を使用する必要があると判断した場合などには、先発医薬品が使用されることがあります。
なぜ、後発医薬品が原則かというと、一番大きな理由は、医療扶助が公費(税金)によって賄われている制度であるからです。つまり、先発医薬品と同じ有効成分を含みながらも、一般に先発医薬品より薬価が低く設定されている後発医薬品を使用することで、医療扶助にかかる公費負担を抑え、限られた公費を有効に活用しようというわけです。
なお、後発医薬品使用の原則については、生活保護法第34条3項において次のように定められています。
「医療を担当する医師または歯科医師が医学的知見に基づき後発医薬品を使用することができると認めたものについては、原則として、後発医薬品によりその給付を行うものとする」
参照:生活保護法
また、例外として先発医薬品が使用されるケースとしては、先に解説した理由を含め、次のようなケースが挙げられます。
(例)
・医学的な理由から先発医薬品が必要であると判断される
・後発医薬品の薬価が先発医薬品の薬価と比べて同額以上となっている
・ジェネリックでは治療上の問題がある
・薬局にジェネリックの在庫がない
・その他、制度上認められる例外に該当する
参照:厚生労働省「生活保護の医療扶助における後発医薬品の使用促進について」
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臨床現場での看護師の対応・他職種連携の実践ポイント
医療扶助を利用する患者への対応においては、単に制度について説明するだけではなく、患者が必要な医療を継続して受けられるように、医療機関内の多職種と福祉事務所をつなぐ役割が重要です。
特に看護師は、患者と日常的に接するなかで、生活上の困りごとや受診・服薬上の問題を早期に発見できる立場にあります。そのため、医療扶助を利用する患者に適切に対応できるよう、必要な知識を身に着けておくことが大切です。
ケースワーカー(CW)・医療ソーシャルワーカー(MSW)への連絡が必要なタイミング
次のような場合には、必要に応じて、ケースワーカー(CW)や医療ソーシャルワーカー(MSW)に連絡することが大事です。
医療扶助の利用について患者が困っているとき
(例)
・医療機関変更を希望している
・転院・退院後の受診先について困っている
・薬局や調剤券についてわからないことがある
・医療費のことで不安を訴えている
など
このような場合、看護師のみで制度上の判断をすることなく、ケースワーカーや医療ソーシャルワーカーにつなぐことが重要です。
受診・治療の継続が難しくなっているとき
(例)
・「病院にくる交通費がない」
・「薬を取りに行けない」
・「退院しても一人では生活できない」
・「次の受診にくることができるかわからない」
などの発言があった場合
上記のような場合、単なる受診忘れではなく、経済的・社会的な問題が影響している可能性があります。そのため、こうしたサインを把握した場合、看護師からケースワーカーや医療ソーシャルワーカーに情報共有を行い、必要な支援につなげます。
服薬を継続できていないとき
(例)
・薬を飲めていない
・薬局に行けていない
・薬を紛失した
・処方された薬を受け取っていない
・薬について患者さんが不安を感じている
など
こうした場合、単に「きちんと薬を飲んでください」と指導するのではなく、「なぜ服薬できないのか」を確認することが重要です。生活環境や経済的問題、認知機能、独居、通院手段などが背景にある場合は、多職種で対応する必要があります。
退院支援が必要になったとき
生活保護を利用している患者は、退院後の生活環境が治療継続に大きく影響することがあります。
たとえば次のような場合です。
(例)
・独居
・住居が不安定
・訪問診療・訪問看護が必要
・介護サービスが必要
・退院後の通院先が決まっていない
・服薬管理が難しい
など
こうした場合、退院直前になって相談するのではなく、できるだけ早期からケースワーカーや医療ソーシャルワーカー、ケアマネジャーなどと連携することが重要です。
患者の生活上の問題が治療に影響しているとき
看護師が患者との日々の関わりのなかで、「このままでは治療を継続できないのでは?」と感じた場合は、早めに相談することが大切です。
たとえば、「生活上の問題 → 受診できない → 治療中断 → 症状悪化」という悪循環を防ぐためです。
医療従事者としての倫理的配慮とスティグマへの対応
医療扶助を利用していることを理由に、患者を特別扱いしたり、否定的な見方をしたりすることは避けなければなりません。また、周囲が当該患者に対して否定的な見方をすることから、守ってあげることも、看護師の大切な役目です。
これらに関して、特に次の点には注意しましょう。
「生活保護=医療費を払わない人」という見方をしない
生活保護は、生活に困窮した人の最低限度の生活を保障して、自立を支援するための社会保障制度です。医療扶助もその一部です。「無料で利用できるからといって、医療を受けることを大切にしていない人」といった先入観を持って患者を見ることは適切ではありません。
「生活保護だから」という理由だけで診療・看護上の対応を変えない
患者の経済状況は、必要な社会的支援を考えるうえで重要な情報です。一方で、生活保護を利用していることと、その人の人格・治療への意欲・人間性は別の問題です。必要な医療を公平に提供して、一人の患者として尊重する姿勢が基本となります。
患者の尊厳とプライバシーを守る
「生活保護」という情報は、患者にとって周囲に知られたくない情報である場合があります。そのため、プライバシーへの配慮が重要です。たとえば次のような点に気を付ける必要があります。
・待合室などで大きな声で制度について話さない
・他の患者に聞こえる場所で生活保護の話をしない
・必要以上に職員間で情報を共有しない
・電子カルテなどの情報を適切に管理する
「自己責任」と決めつけない
たとえば、患者が受診を中断した場合、「本人に治療する気がない」と判断するのではなく、「なぜ受診できなかったのか」を確認することが重要です。
背景には、たとえば次のような問題が存在していることがあります。
・交通手段
・住居
・経済状況
・家族関係
・精神的な問題
・認知機能
・仕事・生活環境
つまり、本人だけでは解決しにくい問題が存在している可能性があるということです。
≪看護師に求められる基本姿勢≫
医療扶助を利用している患者と接するうえで特に重要なのは、「制度を利用している患者」ではなく、「制度を利用しながら生活している一人の患者」としてみることです。
そのうえで、次のような流れを意識すると、医療扶助における多職種連携のポイントが整理できます。
・患者の変化を最も身近で捉える
↓
・困りごと・リスクを発見する
↓
・看護師だけで抱え込まない
↓
・MSW・ケースワーカー・薬剤師・医師・ケアマネジャーなどにつなぐ
↓
・患者が必要な医療を継続できるよう支援する
つまり、看護師の役割をまとめると、生活保護受給者を「特別な患者」として扱うことなく、患者の生活背景にも目を向けながら、必要な支援を早期に発見して多職種につなぐことです。
【当事者向け】看護師・看護学生自身は生活保護を受給できる?
生活保護は、職業や学生であることだけを理由に対象外になる制度ではありません。
原則として、生活保護支給の可否は世帯単位で判断されます。“世帯としての”収入・資産・働く能力などを活用しても最低生活費に満たない場合、その不足分について保護されることとなります。
したがって、「看護師あるいは看護学生だから生活保護を受けられない」ということはありません。また、「退職した看護師なら自動的に生活保護を受けられる」ということでもありません。
また、看護師は「働く能力」があると判断されやすい職種なので、退職・休職している場合には、「なぜ働けないのか」「就労に向けてどのような状況なのか」などが確認されることになります。
現役看護師が休職・退職した場合
前述の通り、看護師は、休職あるいは退職したからといって必ずしも生活保護を受けることができるわけではありません。
休職中の場合
看護師が休職中で給与がない、あるいは給与の額が大幅に減っている場合、生活保護を申請すること自体は可能です。ただし、利用可能な資産や制度があり、それらを活用すれば、最低生活費に足りている場合は、生活保護の受給対象者とはみなされません。
利用可能な資産や制度とは、たとえば次のようなものです。
(例)
・傷病手当金
・雇用保険
・会社からの求職中の給与
・預貯金
・その他の収入・資産
など
退職して失業中の場合
退職して失業中の場合、まずは雇用保険の基本手当(失業給付)などが利用できるかどうかについて確認されます。
雇用保険の基本手当は、退職すれば自動的に受け取ることができるものではなく、一定の受給要件を満たしていなくてはなりません。まず、原則として、離職前2年間に被保険者期間が12か月以上あることが前提とされています。
ただし、倒産・解雇などの理由に寄って離職した場合や、期間の定めのある労働契約が更新されなかったことその他やむを得ない理由によって退職した場合は、離職前1年間に被保険者期間が通算で6か月以上必要とされています。
参照:厚生労働省「Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~」
これらの条件を満たしていないか、あるいは雇用保険の失業給付を受け取ってもなお生活費が不足している場合には、生活保護の要件を満たしているかどうかが別途検討されることとなります。
看護師の場合に特に重要なポイント
看護師は国家資格を持っているため、生活保護の申請時には、「看護師として働く能力があるのではないか?」という点が確認される可能性があります。
しかし、これは、「看護師免許を持っている=必ず働かなければならない=生活保護を受けられない」という意味ではありません。たとえば次のような場合、個々の事情が考慮されることになります。
(例)
・病気・ケガなどで就労が難しい
・医師から休養が必要とされている
・心身の状態から看護師としての勤務が困難
・退職後に就職活動をしているが就職できない
・高齢・家庭事情などによって就労に制約がある
など
看護学生の場合(世帯分離の特例)
生活保護の支給可否判断時には、原則として、同じ世帯の収入・資産がまとめて判断されます。しかし、一定の要件を満たす大学生などについては、「世帯分離」という扱いが認められる場合があります。
「世帯分離」とは、同居している家族が住民票上で別の世帯として扱われる制度です。ただし、住所は変わることはありません。行政上の「世帯」だけが分離されることになります。
厚生労働省の実施要領では、保護開始時にすでに大学で就学している者について、その課程を修了するまでの間で、就学が特に世帯の自立助長に効果的と認められる場合などには、世帯分離が認められるとされています。
たとえば、母親と看護学生の娘の2人世帯において、母親が生活に困窮して生活保護を申請した場合、娘が看護大学・看護系専門課程に在学中であれば、娘が卒業して看護師として就職することが「世帯の自立」につながります。
このケースでは、看護学生を世帯分離したうえで、母親について生活保護を適用するという扱いが検討される可能性があります。
なお、世帯分離された看護学生については、原則として本人の生活費や学費は奨学金やアルバイトなどで確保する必要があります。あるいは、一定の条件を満たす進学者であれば、進学準備給付金の制度を利用するという手もあります。
参照:厚生労働省「生活保護法による進学準備給付金の取扱いについて」
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生活保護制度・医療扶助について正しく理解することは非常に大切
看護師が生活保護制度・医療扶助について一定の知識を持っておくことは、臨床現場で非常に重要です。
生活保護を利用している患者は、病院・診療所・訪問看護など、さまざまな医療現場にいます。そのため、看護師自身が制度の基本を理解していることで、患者への適切な説明や、多職種との連携がしやすくなります。
さらに、医療扶助や生活保護制度についてきちんと理解することは、患者の生活背景を理解するうえで役立ちます。反対に、正しく理解できていなければ、無意識のうちにも患者に対して偏見を持ってしまうこともあり得ます。
また、転職先によっては、生活保護を利用する患者が多くなる可能性もあるので、現状は医療扶助を利用している患者がいない場合も、制度について正しく知っておくと後々役に立つことでしょう。