医療現場の「電話対応マナー」基本とトークスクリプト|取り次ぎ・メモの取り方
看護師として働く中で、「電話対応に苦手意識がある」「これまで経験のないケースからの問い合わせに、どう対応していいか戸惑う」という方は多いのではないでしょうか。
病院やクリニックでの電話対応は、患者さんやご家族に安心感を与えるだけでなく、他部署や外部の医療機関とスムーズに連携するための重要なスキルです。
この記事では、すべての看護師が身につけておきたい「電話対応の基本マナー」から、そのまま使える場面別トークスクリプト、電話口での個人情報の扱い方、そして忙しい医師に正確に情報を伝えるための「ISBARC(アイズバーク)」を用いた報告のコツまでを網羅して解説します。
病院・クリニックの電話対応マナーの基本
社会人として、また医療従事者として押さえておきたい基本のアクションを解説します
電話は「3コール以内」に出る
電話が鳴ったら、可能な限り早く取ることが鉄則です。3コール以内に応答するのが理想ですが、ナースコールや処置などで超えてしまった場合は、第一声に「大変お待たせいたしました」と必ず一言添えましょう。
第一声はハキハキと名乗り、「もしもし」は使わない
仕事の電話で「もしもし」はNGです。
電話に出るときは「はい、〇〇病院(クリニック)の××病棟、看護師の△△です」と、所属と名前をしっかり名乗ります。外部からの電話には「お世話になっております」、午前中であれば「おはようございます」と付け加えると好印象です。
聞き取りやすい声のトーンとスピードを意識する
電話越しでは声が低く、こもって聞こえがちです。対面しているときよりも少しだけ「ワントーン高い声」を意識すると、声がクリアになり、相手に聞き取りやすくなります。不安を抱える患者さんや高齢の方からの問い合わせも多いため、普段より「ゆっくり・はっきり」発音することを心がけましょう。
正しい言葉遣いとNGフレーズの言い換え
日常で使いがちな言葉も、電話対応では失礼にあたる場合があります。
- ×「了解しました」 → ○「承知いたしました」「かしこまりました」
- ×「お名前を頂戴してもよろしいでしょうか」(※名前はもらうものではないためNG) → ○「お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか」
- ×「下のお名前は?」 → ○「フルネームでお伺いできますでしょうか」
- ×「分かりません」「知りません」 → ○「分かりかねます」「存じ上げておりません」
また、相手の病院や施設を呼ぶ際は「御院(おんいん)」「御施設(おんしせつ)」、または「〇〇病院様」と呼ぶのがマナーです(※「貴院」は書き言葉のため電話では使いません)。
受話器は「相手が切ってから」静かに置く
用件が終わっても、すぐにガチャンと切ってはいけません。相手が電話を切ったのを確認してから受話器を置くのがマナーです。固定電話の場合は、指でフックを静かに押して通話を切るようにすると、相手に不快な音を聞かせずに済みます。
【看護師ならではの注意点】現場で気をつけるべき3つのポイント
一般的なビジネスマナーに加え、医療現場ならではの注意点があります。実務において特に気をつけるべきポイントをまとめました。
電話口での「個人情報・病状説明」は慎重に
ご家族や友人、職場の方などから「〇〇さんの様子はどうですか?」「入院していますか?」といった問い合わせが来ることがあります。しかし、電話口の相手が本当にご家族なのか確認できない状態で、安易に患者情報を伝えてはいけません。
必ず「キーパーソン(連絡先として登録されているご家族)かどうか」を確認し、病院の個人情報保護マニュアルに従って対応しましょう。判断に迷う場合や初めてのケースでは「確認して折り返します」と伝え、独断で回答しないことが重要です。
医師からの「口頭指示」は必ず復唱し、記録に残す
夜間や緊急時など、電話越しに医師から薬剤の投与指示など(口頭指示)を受ける場面があります。聞き間違いは重大な医療事故に直結するため、「〇〇を〇〇mg、静脈内注射ですね」と必ず復唱確認(リードバック)を行ってください。そして、電話を切った後は速やかにカルテへ記録を残すことが鉄則です。
処置中・多重課題時の対応
ナースステーションで電話が鳴っても、自分の手が離せない処置中(点滴の準備中など)は無理に出ず、他のスタッフに任せるか、処置を安全な状態で中断してから出ましょう。
電話に出たもののすぐに対応できない要件だった場合は、「申し訳ございません。ただいま手が離せないため、〇分後にこちらから折り返しご連絡してもよろしいでしょうか」と伝え、相手の連絡先を控えて一度電話を切るのがスマートです。
【場面別】外来・他院・クレーム対応例(基本的なトークスクリプト)
実際の業務でよく遭遇する場面別の基本的なトークスクリプト(台本)を紹介します。
パターンA:症状に関する問い合わせ(患者さんから)
不安を抱える患者さんには、ドライな事務対応にならず「共感」を示すことが大切です。
- 患者:「昨日もらった薬を飲んでも、熱が下がらないのですが……」
- 看護師:「そうでしたか。それはおつらいですね。現在の体温は何度でしょうか?」
- 患者:「38.5度です。」
- 看護師:「承知いたしました。担当の医師に確認いたしますので、そのまま少々お待ちいただけますでしょうか?(保留にする)」
パターンB:担当者が不在の場合の取り次ぎ
その場で解決できない用件や、担当医・スタッフが不在(または処置中)の場合は、相手を長く待たせずに「折り返し」を提案します。
- 看護師:「お待たせいたしました。申し訳ございません。現在〇〇医師は診察中(席を外しております)です。手が空き次第、こちらから折り返しお電話いたしましょうか?」
- 相手:「お願いします。」
- 看護師:「恐れ入りますが、念のためご連絡先のお電話番号と、お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか。」
パターンC:自分から電話をかける場合(外部連携・患者さんへ)
相手の時間を奪っているという意識を持ち、まずは都合を確認します。
- 看護師:「いつもお世話になっております。〇〇病院〇〇病棟の看護師、△△と申します。〇〇の件でご連絡いたしました。今、5分ほどお時間よろしいでしょうか?」
パターンD:クレームやトラブルへの対応
「待ち時間が長い」「説明が足りない」などのクレームを受けた場合は、言い訳をせず、まずは謝罪と事実確認に徹します。
- 看護師:「大変申し訳ございません。お待たせしてしまい、ご不快な思いをおかけいたしました。ご来院いただいた日時とお名前を教えていただけますでしょうか。」
- (事実を確認し、自分一人で抱え込まず、必ず師長や責任者に報告・エスカレーションを行う)
忙しい先輩・医師への「正確な電話メモ」と報告のコツ
電話を受けた後、「誰から」「どんな用件」だったのかを正確に引き継ぐのも重要なスキルです。
報告用と記録用のメモを分け、必ず「復唱」する
記憶に頼るのは聞き間違いや漏れの原因になります。電話に出る際は、手元にメモとペンを必ず用意しましょう。そして、聞いた内容は「〇〇ということでお間違いないでしょうか」と相手に復唱します。
メモを取る際は、5W1H(いつ・誰が・誰宛に・何の件で・どうしてほしいのか)を意識し、カルテに残す「記録用」と、医師にすぐ伝える「報告用」の情報を整理しましょう。
「ISBARC(アイズバーク)」を活用して報告する
忙しい医師や先輩に電話の内容や患者の状況を報告する際は、ISBARC(アイズバーク)というフレームワークに当てはめて伝えると、情報が整理され、相手が知りたい情報を短時間で的確に伝えられます。
| ISBARC | 意味 | 報告の例 |
| I (Identify) | 誰から・誰について | 「〇〇病棟の△△です。301号室の山田様についてご報告です。」 |
| S (Situation) | 現在の状況・主症状 | 「朝から38.5度の発熱と、強い腹痛の訴えがあります。」 |
| B (Background) | 背景・病歴 | 「〇月〇日に〇〇の手術をしており、現在術後3日目です。」 |
| A (Assessment) | アセスメント(評価) | 「術後感染の疑いがあるのではないかと考えています。」 |
| R (Recommendation) | 提案・要求 | 「一度、診察に来ていただけますでしょうか?」 |
| C (Confirm) | 指示の復唱・確認 | 「(指示を受けて)採血と腹部エコーの準備ですね。承知いたしました。」 |
まとめ:電話対応は「正確さ」と「思いやり」がカギ
看護師の電話対応は、経験を重ねることで様々なケースに臨機応変に対応できるようになります。「失敗したらどうしよう」と避けるのではなく、メモを手元に準備して積極的に電話に出ることが確かな対応力を身につける近道です。
相手の顔が見えないからこそ、「聞き取りやすい声」と思いやりのある対応を意識し、焦らず正確に情報を伝達していきましょう。