【看護技術】呼吸数の正常値と正しい測定方法|患者に意識させずに測定するコツ
呼吸数は、患者さんの全身状態を敏感に反映する重要なバイタルサインの一つです。一見安定しているように見えても、呼吸数のわずかな変化が、病状悪化や急変の前兆となることもあります。
この記事では、看護師が日々の業務で知っておくべき「呼吸数の正常値(基準値)」を年代別に一覧で解説します。
また、患者さんに意識させずに正確な呼吸数を測るコツや、頻呼吸・徐呼吸などのアセスメントポイント、併せて観察すべき他のバイタルサインについてもまとめました。日常のフィジカルアセスメントにぜひお役立てください。
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成人・小児・高齢者の呼吸数の正常値一覧
呼吸数の正常値は、身体の成長や発達段階によって大きく異なります。一般的に、代謝が活発で体が小さい小児ほど1分間の呼吸数は多く、成長に伴って減少していく傾向があります。
年代別の正常値(基準値)は以下の通りです。
成人の呼吸数の正常値
成人の呼吸数の正常値は、1分間あたり12~20回が目安です。
健康な成人であれば、規則正しく一定のリズムで胸郭や腹部が上下します。睡眠時には体温や血圧の低下に伴い、呼吸数も12〜16回程度とやや少なくなる傾向があります。
小児の呼吸数の正常値
子どもの呼吸数は、体の成長とともに変化します。年齢が上がるにつれて肺胞の数が増え、1回の換気量が増加するため、呼吸数は徐々に落ち着いていきます。
- 新生児: 30~70回/分程度
- 乳児: 25~55回/分程度
- 幼児: 20~30回/分程度
- 学童期: 15~25回/分程度
子どもは生理機能が未熟でバイタルサインが変動しやすく、泣いたり動いたりすることで測定値が大きく変わります。落ち着いている状態や、寝ている間に測定することが正確な数値を把握するポイントです。
高齢者の呼吸数の正常値
高齢者の呼吸数の正常値は、1分間あたり14~30回程度と、成人に比べて幅広く、やや多くなる傾向があります。
加齢に伴い肺の弾力性や呼吸筋の筋力が低下すると、肺機能が衰えて酸素の吸収効率が下がります。その不足分を補うために、自然と呼吸数が多くなるためです。高齢者は個人差が大きいため、一般的な正常値だけで判断せず、「その患者さんの普段の数値(ベースライン)」を把握しておくことが重要です。
意識されると変わる!自然な呼吸数を測るための裏ワザ
呼吸は、バイタルサインの中で唯一「自分の意思でコントロールできる(意識的に変えられる)」という特徴を持っています。そのため、「今から呼吸数を測りますね」と伝えてしまうと、患者さんが緊張してしまい、正確な安静時の呼吸数を測ることができません。
脈拍測定のふりをする
患者さんに意識させずに自然な呼吸数を測る一番の裏ワザは、「脈拍測定のふりをしながら呼吸数を数える」ことです。
手首の橈骨動脈に指を当て、脈を測っている姿勢を保ちながら、目線は患者さんの胸部や腹部の上下動に向けます。こうすることで、患者さんは「脈を測られている」と思っているため、自然な呼吸を維持しやすくなります。
測定の基本的な手順とポイント
- 安静な状態か確認する体動、会話、痛み、処置の直後は呼吸が変動するため、できるだけ落ち着いているタイミングを選びます。
- 胸部や腹部の上下動を観察する息を「吸って吐く」動きを合わせて1回と数えます。成人は胸式呼吸、腹部手術後や小児では腹式呼吸が目立つ場合があるため、呼吸様式に応じて観察部位を変えましょう。
- 1分間しっかりカウントする呼吸はリズムが不規則になることがあるため、15秒や30秒での換算では誤差が生じやすくなります。基本的には、省略せずに1分間測定しましょう。
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頻呼吸・徐呼吸・無呼吸のアセスメント
呼吸数が正常値から外れている場合、呼吸器疾患だけでなく、循環器・神経系の異常や代謝異常など、さまざまな背景が隠れている可能性があります。
呼吸の異常とアセスメントポイント
| 状態 | 基準(目安) | 主な原因・見られる状態 | 観察・アセスメントのポイント |
| 頻呼吸 | 1分間に25回以上 | 肺炎、喘息、心不全、発熱、低酸素状態など | ・呼吸苦やチアノーゼの有無を確認 ・敗血症の指標「qSOFAスコア」でも22回/分以上は危険なサイン |
| 徐呼吸 | 1分間に12回以下 | 鎮静薬・睡眠薬の影響、頭蓋内圧亢進、低体温など | ・呼吸のリズムが不規則になっていないか確認 ・意識レベルの低下がないか確認 |
| 無呼吸 | 10秒以上の呼吸停止 | 睡眠時無呼吸症候群(SAS)、脳障害など | ・睡眠中のいびきの有無を観察 ・日中の強い眠気がないか観察 |
呼吸数と併せて評価したい!その他のバイタルサイン基準値
臨床において、呼吸数だけで患者をアセスメントすることは危険です。呼吸の異常は他のバイタルサインの変化と連動することが多いため、以下の基準値も併せて把握しておきましょう。
体温・脈拍・血圧の基準値(成人)
- 体温(腋窩): 36.0~37.0℃程度
- 脈拍: 60~100回/分程度(60回未満は徐脈、100回以上は頻脈)
- 血圧: 収縮期120mmHg未満 かつ 拡張期80mmHg未満(※『高血圧治療ガイドライン2019』に基づく正常血圧)
※小児の血圧測定ではマンシェットの幅が重要です(新生児~3か月は幅3cm、3~6歳は幅7cmなど、年齢に合わせたサイズを選択します)。
意識レベルの評価(JCS / GCS)
呼吸数の異常(特に徐呼吸など)がある場合は、意識レベルの評価(JCSまたはGCS)が不可欠です。
- JCS(ジャパン・コーマ・スケール):「覚醒しているか」を短時間で評価。数字が大きいほど重症(Ⅰ:覚醒している、Ⅱ:刺激で覚醒する、Ⅲ:刺激しても覚醒しない)。
- GCS(グラスゴー・コーマ・スケール):「開眼(E)」「言語反応(V)」「運動反応(M)」の合計(3〜15点)で評価。数字が小さいほど重症。
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まとめ:呼吸数の正常値と正しいアセスメントで患者のサインを見逃さない
呼吸数は、患者さんの全身状態の悪化をいち早く知らせてくれる重要なサインです。正常値は成人で「12~20回/分」ですが、年齢や疾患によってベースラインは異なります。
測定時は「脈拍を測るふり」をして患者さんに意識させない工夫をし、異常が見られた場合は血圧や脈拍、意識レベルなど、ほかのバイタルサインと組み合わせて総合的にアセスメントする視点を持ちましょう。
参考・引用資料
本記事内の基準値および医学的根拠は、以下の公的機関・学会のガイドライン等に基づき作成しています。