看護記録の保存期間は何年?病院・クリニック・訪問看護の早見表と、訂正・持ち出しで問題にならない書き方
病院の看護記録は、医療法施行規則で2年間の保存が決まっています。保険診療を行う病院・クリニックでは、これとは別に保険医療機関及び保険医療養担当規則(療担規則)で、完結の日から3年間の保存が求められます。医師が書く診療録(カルテ)は5年間です。
訪問看護ステーションの記録は、医療保険・介護保険とも国の基準では2年間ですが、介護保険の分は自治体の条例で5年にしているところがあります。
どの法令がかかるかは、働いている場所で変わります。この記事では、記録の種類ごとの保存期間を早見表にまとめ、電子カルテでの扱い、訂正の書き方、退職時に記録を持ち出してはいけない理由まで整理します。
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看護記録の保存期間の早見表(根拠法令と起算点)
看護記録と、その周りの記録の保存期間です。法令が決めているのは最低限の期間で、職場の規程でこれより長くしていることがあります。
| 記録 | 保存期間 | 起算点 | 根拠 | かかる場所 |
|---|---|---|---|---|
| 看護記録(診療に関する諸記録) | 2年間 | 「過去2年間」の記録を備える | 医療法第21条第1項第9号、医療法施行規則第20条第10号 | すべての病院 |
| 看護記録(地域医療支援病院・特定機能病院) | 2年間 | 「過去2年間」 | 医療法第22条・第22条の2、同施行規則第21条の5・第22条の3 | 該当する病院 |
| 療養の給付の担当に関する帳簿・書類その他の記録 | 3年間 | 完結の日から | 療担規則第9条 | 保険医療機関(病院・クリニック) |
| 診療録(カルテ) | 5年間 | 医師法は起算点の定めなし。療担規則では完結の日から | 医師法第24条第2項、療担規則第9条ただし書 | 病院・クリニック |
| 助産録 | 5年間 | 定めなし | 保健師助産師看護師法第42条第2項 | 分娩介助をした病院・診療所・助産所 |
| 訪問看護記録書・訪問看護指示書・計画書・報告書(医療保険) | 2年間 | 完結の日から | 指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準 第30条 | 訪問看護ステーション |
| 主治医の指示の文書・訪問看護計画書・報告書・提供したサービスの記録など(介護保険) | 2年間(自治体の条例で5年の例あり) | 完結の日から | 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準 第73条の2 | 訪問看護ステーション |
| 施設サービス計画・提供したサービスの記録・身体的拘束の記録など | 2年間(基準は自治体の条例で定める) | 完結の日から | 介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準 第38条 | 介護老人保健施設 |
医療法施行規則が「診療に関する諸記録」として挙げているのは、病院日誌、各科診療日誌、処方せん、手術記録、看護記録、検査所見記録、エックス線写真、入院患者と外来患者の数を明らかにする帳簿、入院診療計画書です。
病院の看護記録は2年と3年のどちらで考えるか
病院の看護記録には、医療法施行規則の2年と、療担規則の3年の両方がかかります。保険診療をしている病院なら、長いほうの3年を守ることになります。
医療法施行規則第20条第10号は、すべての病院が備える「診療に関する諸記録」に看護記録を含めています。
職場の規程で法令より長く定めていることもあります。自分の病院で何年なのかは、文書管理規程や診療情報管理の部署で確かめられます。
クリニック(診療所)の看護記録は医療法の2年の対象外
医療法第21条の「診療に関する諸記録」は、病院だけにかかる規定です。クリニックで書く看護記録には、医療法施行規則の2年の規定はありません。
保険診療を行うクリニックは保険医療機関なので、療担規則の「療養の給付の担当に関する記録」として、完結の日から3年間の保存が求められます。クリニックの看護師は、まず3年と覚えておくと判断を誤りません。
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訪問看護・介護保険施設の記録は自治体の条例も確かめる
訪問看護ステーションは、医療保険と介護保険で根拠になる基準が違います。
| 利用者の保険 | 基準 | 名指しされている記録 |
|---|---|---|
| 医療保険 | 指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準 第30条 | 訪問看護記録書、訪問看護指示書、訪問看護計画書、訪問看護報告書、市町村等への情報提供書、連絡調整の記録 |
| 介護保険 | 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準 第73条の2 | 主治医の指示の文書、訪問看護計画書、訪問看護報告書、提供したサービスの内容等の記録、身体的拘束等の記録、苦情の内容等の記録など |
どちらも国の基準は「完結の日から2年間」です。ただし介護保険の事業所の基準は、都道府県や市が条例で定めています。たとえば川崎市は、サービス提供の記録の保存期間を条例で5年としています。
介護保険の訪問看護や老健で働く人は、事業所がある自治体の条例と、事業所の運営規程の両方を見てください。
保存期間の起算点「完結の日」と「過去2年間」の違い
起算点の書き方は、法令によって違います。
- 療担規則・訪問看護・介護保険の基準:「その完結の日から」
- 医療法施行規則:「過去2年間の」記録を備える
- 医師法の診療録、保健師助産師看護師法の助産録:「5年間これを保存」とだけ書かれている
「完結の日」が治療の終わった日なのか、最後に記載した日なのかは、法令の条文には書かれていません。外来に何年も通う患者の記録は、完結の日が先へ延び続けます。迷うときは、職場の規程で起算点がどう決められているかを確かめてください。
電子カルテの看護記録は真正性・見読性・保存性で守られる
紙で保存が決まっている記録を電子カルテで残すときは、次の3つを満たす必要があります。厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」が示している条件です。
| 条件 | 意味 | 看護師がすること |
|---|---|---|
| 真正性 | 誰がいつ書いたかがわかり、書き換え・消去・混同が防がれている | 自分のIDでログインする。他人のIDで入力しない。離席するときはログオフする |
| 見読性 | 必要なときに、画面や紙ですぐ読める | システムが止まったときの代わりの記録方法を、職場の手順で確かめておく |
| 保存性 | 保存期間のあいだ、読める状態で残る | 記録を個人のUSBメモリなどに移さない |
電子カルテでは、確定した記録を後から直すと、更新の履歴が残ります。直す前と後の内容を照らし合わせられる仕組みなので、「こっそり書き直す」ことはできません。他人のIDでログインして入力すると、記録の作成者が事実と食い違い、真正性そのものが崩れます。
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看護記録の訂正が改ざんにならない書き方
日本看護協会の「看護記録に関する指針」は、改ざんを「記録の全部又は一部を意図的に、事実と異なる内容に書き換えること」としています。訂正そのものは問題ありません。問題になるのは、元の記載が読めなくなる直し方と、事実と違う内容に書き換えることです。
訂正・追記のチェックリスト
- [ ] 訂正した人、訂正した内容、訂正した日時がわかる
- [ ] 訂正する前の記載が読める形で残っている(紙なら二重線を引く。修正液や塗りつぶしは使わない)
- [ ] 追記は、いつの、どの記載への追記かがわかる
- [ ] 記載した日時と、記載した人の名前が残っている
- [ ] 職場の記載基準(署名の仕方・訂正の方法・使ってよい略語)に沿っている
訂正と追記の例文
| 場面 | 改ざんと受け取られる書き方 | 問題にならない書き方 |
|---|---|---|
| 体温を書き間違えた | 「38.5」を塗りつぶして「37.5」と書く | 「~~38.5~~ 37.5」とし、訂正日時と訂正者名を添える |
| 書き忘れた観察を後で書く | 当時の時刻の欄に、当時書いたように書き足す | 「10/8 16:30 追記(10/8 10:00の観察):腹部膨満なし。〇〇」 |
| 急変後に記録を整える | 経過を後から都合よく書き直す | 書いた時刻をそのまま残し、思い出して書いた内容は追記として区別する |
急変やインシデントの後は、記録を見直したくなる場面です。そのときほど、元の記載を残したまま追記で補う、という順番を守ってください。
退職時に看護記録を持ち出してはいけない理由
看護記録は、書いた看護師個人のものではありません。診療録や助産録の条文が保存の責任を「病院又は診療所の管理者」に置いているように、記録は職場が管理するものです。
持ち出しが問題になる理由は3つあります。
- 守秘義務に触れる。看護師は、業務上知った人の秘密を、正当な理由なく漏らしてはいけません。看護師をやめた後も同じです(保健師助産師看護師法第42条の2)。違反すると6か月以下の拘禁刑または10万円以下の罰金です(同法第44条の4。告訴がなければ起訴されない)
- 職場の保存義務を損なう。記録の写しが外に出ると、職場は保存性や漏えい防止の責任を果たせなくなります
- 個人のメモやワークシートも同じ扱いになる。患者名や病状が書かれていれば、患者の個人情報です
退職前に、ロッカーや自宅に患者の情報が書かれたメモ、申し送りの紙、印刷した記録が残っていないかを確かめて、職場の手順でシュレッダーや回収に回してください。研究や事例検討で記録を使いたいときは、退職前に所属の手続きで許可を取ります。
よくある質問
保存期間を過ぎた看護記録は、すぐ捨ててよいのですか?
法令の期間を過ぎても、職場の規程でもっと長く残すことになっていることがあります。日本看護協会の指針も、法令どおりの保存に加えて、証拠としての保管を考える必要があるとしています。捨てるかどうかは個人で判断せず、職場の規程に従います。
看護記録の保存期間について、国家試験の勉強ではどう覚えればよいですか?
数字だけでなく、根拠の法令とセットで覚えると混同しません。診療録は医師法で5年、助産録は保健師助産師看護師法で5年、看護記録は医療法施行規則で2年、保険診療の記録は療担規則で3年です。
保健師助産師看護師法には、看護記録の保存期間は書かれていないのですか?
書かれていません。同法が記載と保存を定めているのは、助産師が書く助産録(5年間)だけです。看護記録の保存期間は、医療法施行規則や療担規則、訪問看護・介護保険の基準など、働く場所ごとの法令で決まります。
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まとめ
- 病院の看護記録は医療法施行規則で2年。保険診療を行う病院・クリニックは療担規則で完結の日から3年
- クリニックは医療法の2年の対象外で、療担規則の3年が根拠になる
- 訪問看護・介護保険施設は国の基準で2年。介護保険分は自治体の条例で5年の例がある
- 電子カルテでは自分のIDで入力し、確定後の訂正は履歴が残る前提で行う
- 訂正は元の記載を読める形で残し、追記はいつの何への追記かを明記する。退職時は記録もメモも持ち出さない
参考
- e-Gov法令検索「医療法」https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000205
- e-Gov法令検索「医療法施行規則」https://laws.e-gov.go.jp/law/323M40000100050
- e-Gov法令検索「医師法」https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000201
- e-Gov法令検索「保健師助産師看護師法」https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000203
- e-Gov法令検索「保険医療機関及び保険医療養担当規則」https://laws.e-gov.go.jp/law/332M50000100015
- e-Gov法令検索「指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準」https://laws.e-gov.go.jp/law/412M50000100080
- e-Gov法令検索「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100037
- e-Gov法令検索「介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準」https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100040
- 厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第7.0版」https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000516275_00006.html
- 日本看護協会「看護記録に関する指針」https://www.nurse.or.jp/nursing/home/publication/pdf/guideline/nursing_record.pdf
- 川崎市「記録の整備・保存」https://www.city.kawasaki.jp/350/cmsfiles/contents/0000105/105693/kirokunoseibi_hozon.pdf