看護のリフレクションの書き方|ギブスのリフレクティブサイクル6段階と例文(実習・新人看護師)
実習や新人研修で「リフレクションを書いてきてください」と言われ、書き始めたものの「もっと確認すればよかったです。次は気をつけます」で終わってしまう。そんな経験はないでしょうか。
リフレクションは、出来事を振り返り、次にどう行動するかを自分で見つけるための書き方です。反省文とは目的も書き方も違います。
この記事では、看護教育でよく使われるギブスのリフレクティブサイクルの6段階を表で整理し、看護学生の実習版と新人看護師版の例文を紹介します。反省文になってしまうときの直し方もあわせて解説します。
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看護におけるリフレクションとは
リフレクションは「省察」「内省」とも訳され、自分の経験を振り返って意味づけし、次の実践に活かすための思考のプロセスです。看護の現場では、実習記録、新人研修の課題、ラダーの評価資料など、さまざまな場面で求められます。
反省文との違いを整理すると、次のようになります。
| 比べる点 | 反省文 | リフレクション |
|---|---|---|
| 目的 | 失敗を認めて謝る | 経験から学びを取り出す |
| 中心になるもの | 自分の至らなさ | 何が起きたか、なぜそうなったか |
| 感情の扱い | 「申し訳ない」で終わる | 感情も材料として分析する |
| よかった点 | 書かない | 書く |
| 終わり方 | 「気をつけます」 | 具体的な行動計画 |
リフレクションでは、うまくいかなかったことだけでなく、うまくいったことも振り返りの対象になります。「なぜうまくいったのか」を言葉にできれば、次も同じように再現できるからです。
ギブスのリフレクティブサイクル6段階
ギブスのリフレクティブサイクルは、イギリスの教育学者グラハム・ギブスが1988年の著書で示した振り返りの枠組みです。6つの段階を順番にたどることで、感想文や反省文で終わらず、行動計画まで自然にたどり着けるのが特徴です。
| 段階 | 何を書くか | 問いかけの例 |
|---|---|---|
| 1. 記述 | 何が起きたか(事実) | いつ、どこで、誰が、何をしたか |
| 2. 感情 | そのとき何を感じ、考えたか | どう感じたか、何を思ったか |
| 3. 評価 | よかった点・よくなかった点 | うまくいったことは何か、困ったことは何か |
| 4. 分析 | なぜそうなったのか | 何が影響したか、ほかの見方はないか |
| 5. 結論 | ほかに何ができたか、何を学んだか | 別のやり方はあったか、そこから分かったことは何か |
| 6. 行動計画 | 次に同じ場面が来たらどうするか | 次は何を、いつ、どうやってするか |
6段階を書き終えたら、次に同じような場面を経験したときに、また1から振り返ります。1回で終わらず経験→振り返り→行動を繰り返す円(サイクル)になっているため、この名前で呼ばれています。
リフレクションの書き方のコツ(段階別)
1. 記述:評価を入れずに事実だけを書く
「うまく話せなかった」は評価です。「声をかけたが、返事がなく会話が1往復で終わった」のように、見たこと・聞いたこと・自分がしたことを書きます。
2. 感情:きれいにまとめず正直に書く
「焦った」「恥ずかしかった」「嬉しかった」など、そのときの感情をそのまま書きます。感情は、あとの分析で「なぜ焦ったのか」を考える手がかりになります。
3. 評価:よかった点を必ず1つ入れる
よくなかった点だけを並べると、反省文に近づきます。よかった点と、よくなかった点を両方書くのがポイントです。
4. 分析:自分の性格ではなく状況と行動を見る
「私の準備不足」で止めずに、「なぜ準備が足りなかったのか」「その場の状況はどうだったか」を考えます。授業や研修で学んだ知識と照らし合わせるのも有効です。
5. 結論:別のやり方を複数考える
「こうすればよかった」を1つに決めず、選択肢を2〜3個出してみると、学びが広がります。
6. 行動計画:いつ・何を・どうするかを具体的に
「気をつける」ではなく、「明日の実習では、訪室前に話したいことを3つメモしてから行く」のように、確認できる行動で書きます。
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【例文】看護学生の実習版
実習でよくある、受け持ち患者さんとのコミュニケーションの場面を例にします。
| 段階 | 例文 |
|---|---|
| 1. 記述 | 実習2日目の午前、受け持ちのAさんの部屋を訪問し「今日は何をして過ごしますか」と声をかけた。Aさんは「別に」と答え、窓の外を見た。私は何を話せばよいか分からず、「また来ます」と伝えて1分ほどで退室した。 |
| 2. 感情 | 返事が短く、嫌がられているのではないかと不安になった。沈黙が怖く、早くその場を離れたいと思った。 |
| 3. 評価 | 自分から名乗って声をかけられた点はよかった。一方で、沈黙を避けることを優先し、Aさんの様子を観察する前に退室してしまった。 |
| 4. 分析 | 「会話を続けなければならない」と思い込み、自分が話すことばかり考えていた。「何をして過ごしますか」という質問は答えが広く、答えにくかった可能性がある。また、Aさんが窓の外を見ていたことに気づいていたのに、それを会話のきっかけにできなかった。 |
| 5. 結論 | 沈黙は必ずしも拒否ではない。窓の外の景色の話題を出す、少しそばにいて様子を見る、答えやすい質問にするなど、別のやり方があった。コミュニケーションは話すことだけでなく、相手を観察することも含むと学んだ。 |
| 6. 行動計画 | 明日は訪室前に、答えやすい話題を3つメモしておく。沈黙になっても、すぐに退室せず1分は様子を見る。午後に指導者さんに今日の場面を報告し、声のかけ方について助言をもらう。 |
【例文】新人看護師版
新人看護師の、業務の優先順位や報告にかかわる場面を例にします。
| 段階 | 例文 |
|---|---|
| 1. 記述 | 日勤で受け持ち4名を担当していた。10時、受け持ちのBさんの家族から「退院の日程について聞きたい」と声をかけられ、私は「確認します」と答えた。その後、別の業務が続き、リーダーに伝えたのは12時過ぎだった。家族からは「まだですか」と再度声をかけられた。 |
| 2. 感情 | 家族を待たせてしまい申し訳なく、焦った。同時に、業務が次々に入り、自分だけでは回らないと感じた。 |
| 3. 評価 | 家族の質問をその場で受け止め、「確認します」と返事をした点はよかった。一方で、いつまでに答えるかを伝えず、リーダーへの相談も遅れた。 |
| 4. 分析 | 質問を頭の中だけで覚えていたため、別の業務が入ったときに後回しになった。また、退院日程は自分では答えられない内容だったのに、すぐにリーダーにつなぐ判断ができなかった。「自分で何とかしなければ」という思いが強かったことも影響している。 |
| 5. 結論 | 自分で答えられない質問は、その場で「◯時までにお返事します」と目安を伝え、すぐにリーダーへ相談すればよかった。メモに書いておく、優先順位の低い業務と入れ替えるといった方法もあった。一人で抱えないことが、結果として家族を待たせないことにつながると学んだ。 |
| 6. 行動計画 | 明日から、患者さんや家族からの質問はポケットのメモに時刻と一緒に書く。自分で答えられない内容は、受けてから15分以内にリーダーへ相談する。1週間後の振り返り面談で、実践できたかをプリセプターと確認する。 |
よくある失敗と直し方
| よくある失敗 | どうなってしまうか | 直し方 |
|---|---|---|
| 記述に「できなかった」「悪かった」を書く | 最初から反省文になる | 見たこと・したことだけを書く |
| 感情を書かない | 分析の手がかりがなくなる | 「焦った」「不安だった」を1文入れる |
| よくなかった点しか書かない | 自己否定で終わる | よかった点を必ず1つ書く |
| 分析が「自分の努力不足」で止まる | 次の行動が見えない | 「なぜ」を2回繰り返し、状況や思い込みを見る |
| 行動計画が「気をつける」 | 実行したか確認できない | 「いつ・何を・どうする」を入れる |
| 1つのレポートに複数の出来事を詰め込む | どれも浅くなる | 場面を1つにしぼる |
提出前のチェックリスト
- □ 振り返る場面を1つにしぼった
- □ 記述に自分の評価の言葉が混ざっていない
- □ そのときの感情を書いた
- □ よかった点を1つ以上書いた
- □ 分析で「なぜ」を掘り下げた
- □ 別のやり方を2つ以上考えた
- □ 行動計画に「いつ・何を・どうする」が入っている
- □ 患者さんが特定される情報(氏名・部屋番号など)を書いていない
実習記録やレポートでは、患者さんの個人情報の扱いにも注意が必要です。イニシャルや「Aさん」などの表記にするなど、学校や施設のルールに沿って書きましょう。
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よくある質問
Q. リフレクションの題材が思いつきません。
大きな失敗である必要はありません。「なぜかうまくいった声かけ」「少しモヤモヤした場面」「先輩の対応で印象に残ったこと」も題材になります。その日の記録を読み返し、感情が動いた場面を探すと見つけやすくなります。
Q. どのくらいの分量で書けばいいですか?
学校や施設の指定がある場合はそれに従います。指定がない場合は、6段階それぞれを数行ずつ書き、とくに分析と行動計画を厚めにするとバランスがよくなります。記述だけが長くなるのは避けましょう。
Q. ギブス以外の書き方でもいいですか?
振り返りの枠組みはギブスのサイクル以外にもあり、学校や施設によって指定される型が違います。指定された型がある場合はそちらを使いましょう。どの型でも、「事実を書く」「理由を考える」「次の行動を決める」という流れは共通しています。
まとめ
看護のリフレクションは、失敗を謝る反省文ではなく、経験から学びを取り出し、次の行動を決めるための書き方です。ギブスのリフレクティブサイクルの記述・感情・評価・分析・結論・行動計画の6段階に沿って書くと、自然と行動計画までたどり着けます。
まずは今日の実習や勤務の中から、感情が動いた場面を1つ選び、「何が起きたか」を事実だけで3行書くところから始めてみてください。