仰臥位・側臥位・ファウラー位の違い|クッションを使った安楽な体位の作り方
看護の現場において、体位変換は患者さんの安楽確保や褥瘡(じょくそう)予防、呼吸・循環器機能の維持に欠かせない重要なケアです。
しかし、誤ったポジショニングは皮膚トラブルや関節の拘縮(こうしゅく)、神経障害を招くリスクもあります。
この記事では、基本となる体位の言葉の意味から、クッションを活用した具体的なポジショニングの手順までを図解入りで分かりやすく解説します。
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基本体位(仰臥位・側臥位・腹臥位)の名称と意味比較
まずは、臨床で頻繁に用いられる基本体位の特徴と、それぞれのメリット・デメリットを整理しましょう。目的に応じて適切な体位を選択することが重要です。
| 体位の名称 | 読み方 | 姿勢の特徴 | 主な目的・メリット |
|---|---|---|---|
| 仰臥位 | ぎょうがい | 仰向けに寝た状態。支持基底面が最も広く安定する。 | 安静、診察、処置。エネルギー消費が少なく血流が安定しやすい。 |
| 側臥位 | そくがい | 左右どちらかを下にして横向きに寝た状態。 | 褥瘡予防(体圧分散)、呼吸機能の改善(健側を下にする)、嘔吐時の誤嚥予防。 |
| 腹臥位 | ふくがい | うつ伏せに寝た状態。顔は横に向ける。 | 背部の処置や手術。重症呼吸不全時の換気血流比の改善(背側の肺胞を広げる)。 |
| ファウラー位 | ふぁうらーい | 上半身を45度程度起こした半座位。 | 呼吸困難の軽減、食事介助や経鼻胃管からの栄養注入時の逆流予防。 |
ワンポイント:右側臥位と左側臥位の使い分け
経管栄養時は胃の形状から嘔吐・逆流を防ぐために左側臥位が有効なケースが多く、逆に胃から腸への排出を促したい場合は右側臥位が選択されることがあります。
【図解】安楽な姿勢を作るクッション・ピローの配置方法
ただ指定の姿勢をとるだけでは、隙間が生じて局所に体圧が集中してしまいます。クッションやピロー(枕)を用いて身体とベッドの隙間を埋め、体圧を広く分散させることが「安楽なポジショニング」の基本です。
仰臥位のクッション配置

仰臥位では、仙骨部や踵(かかと)、後頭部などに体圧が集中しやすくなります。
- 頭頸部: 顎が上がりすぎたり引きすぎたりしないよう、首のカーブに沿って枕を当てます。
- 肩・腕: 巻き肩を防ぐため、肩甲骨の下から腕にかけて薄めのクッションを入れ、胸を開くようにサポートします。
- 膝・腰: 膝を軽く曲げた状態を保つため、膝裏にクッションを入れます。これにより腰の反りが軽減され、腰痛予防にもつながります。
- 足元: ふくらはぎの下にクッションを敷き、踵(かかと)がベッドから少し浮くようにして局所を除圧します。
側臥位(30度側臥位)のクッション配置

完全な側臥位(90度)は腸骨や大転子部などの骨突出部に圧力が集中しやすいため、褥瘡予防には背中にクッションを入れて身体を30度程度傾ける「30度側臥位」が強く推奨されます。
- 頭部: 下側の肩幅と同じ高さになるように枕を調整し、頸椎がまっすぐになるようにします。
- 背部: 背中から腰にかけて大きめのクッションや丸めた布団を入れ、30度の傾斜を安定させます。
- 両脚の間: 上側の脚の重みで骨盤がねじれないよう、両膝から足首の間にクッションを挟み込みます。
- 上側の腕: 胸が圧迫されないよう、上側の腕の下に抱き枕のようなクッションを配置します。
ファウラー位のクッション配置

ベッドの頭側を上げる際は、身体が足元へ滑り落ちる「ずれ力(剪断応力)」が発生しやすく、これが皮膚を深く傷つける原因になります。
- 膝上げを先に行う: 頭を上げる前に、ベッドの膝上げ機能を使い(または膝下にクッションを入れ)、身体が下方に滑るのを防ぎます。
- 背部の除圧: ギャッチアップ後は背中や腰の皮膚が引っ張られた状態になるため、一度患者さんの肩や腰を軽く浮かせ、「背抜き・尻抜き」を行って皮膚のつっぱりを解消します。
- 腕の支持: 両腕が落ち込まないよう、両サイドにクッションを置いて腕を乗せ、肩や首への負担を減らします。
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体位変換時の声かけと患者の安楽確保
体位変換は、患者さんにとって苦痛や恐怖を伴うことがあります。介助者の身体的負担(腰痛など)を減らしつつ、安全でスムーズに仰臥位から側臥位へ移行するための手順を確認しましょう。
事前の声かけと環境調整(同意を得て不安を和らげる)
「これから横向きになりますね」「少しベッドの高さを上げますね」と必ず声をかけ、同意を得ます。介助者が無理のない姿勢をとれるよう、ベッドを腰の高さまで上げます。
身体を小さくまとめる(摩擦と抵抗を減らす)
患者さんの両腕を胸の上で組んでもらい、両膝を立ててもらいます。支持基底面を狭くすることで、少ない力で身体を動かすことができます。
手前に引き寄せる(水平移動)
向きたい側の反対側に立ちます。患者さんの頭部〜肩下、腰部〜膝裏に手を差し入れ、身体全体を介助者側(頭側・足側の順番)へ水平に引き寄せます。
側臥位へ回転させる(てこの原理を活用)
患者さんが向く側に移動します。患者さんの肩と立てた膝に手を添え、膝を倒す力を利用して、身体全体を手前(側臥位)へゆっくりと回転させます。
クッションの配置と除圧・安楽の確認
背中や脚の間にクッションを配置して姿勢を安定させます。最後に、下敷きになっている肩(下側の肩)を少し手前に引き出し、肩関節への圧迫を逃がします。「痛いところはありませんか?」「息苦しくないですか?」と必ず声に出して確認しましょう。
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まとめ:正しい体位の理解とクッション活用で、患者さんにも看護師にも優しいケアを
仰臥位、側臥位、腹臥位、ファウラー位といった基本体位には、それぞれに目的とリスクが存在します。単に身体の向きを変えるだけでなく、「なぜその体位にするのか(褥瘡予防、呼吸改善、誤嚥防止など)」を正しくアセスメントした上で実践することが重要です。
クッションを適切に配置して体圧を分散し、体位変換時に「背抜き」などのひと手間を取り入れることで、患者さんの苦痛は大きく軽減されます。同時に、ボディメカニクスを活用した無理のない介助手順は、看護師自身の腰痛予防にも直結します。日々のケアにぜひお役立てください。