ナースの勉強部屋

フィンクの危機モデルとは?4段階(衝撃・防御的退行・承認・適応)の見分け方と関わり方、アギュララ・コーンとの使い分け

フィンクの危機モデルとは?4段階(衝撃・防御的退行・承認・適応)の見分け方と関わり方、アギュララ・コーンとの使い分け

がんの告知を受けた直後の患者さん、交通外傷で手足の機能を失った患者さん。受け持ちになって、何を話せばよいか分からない。実習記録には「フィンクの危機モデルを使ってアセスメントすること」と書かれている。そんなときに確認できるよう、この記事ではフィンクの危機モデルの4段階と、段階ごとの関わり方、ほかの危機モデルとの使い分けをまとめます。

段階は、患者さんを型に当てはめるためのものではありません。いまの言動がどの段階に近いかを見て、関わり方を選ぶための目安として使います。

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目次
  1. フィンクの危機モデルとは|喪失から適応までを4段階で見る
  2. フィンクの危機モデルの4段階と、患者さんの言動の見分け方
    1. 防御的退行と承認は取り違えやすい
    2. 段階は行ったり戻ったりする
  3. 段階ごとの看護師の関わり方
    1. 防御的退行の段階で、現実を突きつけない
    2. 承認の段階では、励ましより先に受け止める
  4. アギュララ・コーンの危機モデルとの使い分け
    1. アギュララのモデルを選ぶとき
    2. どれも使わないほうがよい場面
  5. フィンクの危機モデルを使ったアセスメント・看護記録の例文
    1. アセスメントの例文
    2. 看護記録の例文
  6. よくある質問
    1. フィンクの危機モデルの4段階の順番は?
    2. 患者さんが適応の段階まで進まないこともありますか?
    3. 家族にもフィンクの危機モデルは使えますか?
  7. まとめ
  8. 参考

フィンクの危機モデルとは|喪失から適応までを4段階で見る

フィンクの危機モデルは、米国の心理学者スティーブン・L・フィンク(Stephen L. Fink)が1967年に発表した理論です。外傷性脊髄損傷で身体の機能を失った人が、危機に直面してから適応に至るまでの過程を4つの段階で表しました。

もとになったのは、マズローの欲求階層の考え方です。危機の直後は安全を守ることが最優先になり、適応に近づくにつれて、新しい自分を築く方向へ関心が移っていく、と捉えます。

看護では、障害の受容に限らず、がんの告知、ストーマの造設、四肢の切断など、大きな喪失を経験した患者さんや家族の心の動きを捉えるときに使われます。看護師国家試験でも、段階の順番や各段階の特徴がくり返し問われています。

フィンクの危機モデルの4段階と、患者さんの言動の見分け方

4つの段階は、次の順に進むとされています。

段階 患者さんの状態 よく見られる言動・反応
1. 衝撃 強い不安とパニック。考えがまとまらない 呆然としている、泣き叫ぶ、説明を聞いても覚えていない、動悸や不眠などの身体症状
2. 防御的退行 現実から目をそらし、心を守ろうとする 「何かの間違いだ」「すぐ元どおりに歩ける」と話す、病気の話題を避ける、楽観的にふるまう
3. 承認 現実に直面し、喪失を認め始める 怒り、深い悲しみ、抑うつ、「もう何もできない」「生きていても仕方ない」という言葉
4. 適応 新しい自分を受け入れ、できることを探し始める リハビリや自己管理の練習に前向きになる、今後の生活について具体的に質問する

見分けるときに手がかりになるのは、患者さんが現実をどう扱っているかです。

  • 現実を受け止められず混乱している → 衝撃
  • 現実を否定したり、避けたりしている → 防御的退行
  • 現実を認めたうえで、苦しんでいる → 承認
  • 現実を前提に、次のことを考えている → 適応

防御的退行と承認は取り違えやすい

迷いやすいのは、2の防御的退行と3の承認です。どちらも患者さんが落ち込んで見えることがあるためです。

防御的退行では、患者さんは喪失そのものを認めていません。「リハビリをがんばれば元に戻る」と、実際より楽観的な見通しを話すことがあります。承認では、喪失を認めたからこそ、怒りや抑うつが表に出ます。「もう歩けないんでしょう」と、現実を言葉にするのが特徴です。

段階は行ったり戻ったりする

4つの段階は順に進むとされますが、実際の患者さんは一直線には進みません。承認の段階にいた人が、検査結果をきっかけに防御的退行へ戻ることもあります。1回のアセスメントで段階を決めつけず、日ごとの言動の変化を記録に残して見ていきます。

段階ごとの看護師の関わり方

段階によって、患者さんが必要としているものは違います。

段階 関わりの目標 看護師の関わり方
1. 衝撃 安全を守り、そばにいる 転倒や自傷がないよう環境を整える。説明は短く、必要なことに絞る。そばにいる時間をつくり、ひとりにしない
2. 防御的退行 心を守る時間を保証する 否認を無理に否定しない。患者さんの話を否定も肯定もせず聴く。家族の不安にも目を向ける
3. 承認 現実に向き合うのを支える 怒りや悲しみの表出を受け止める。患者さんが知りたいことに合わせて情報を伝える。睡眠や食事、「死にたい」などの言葉に注意する
4. 適応 新しい生活を一緒に組み立てる できることを一緒に確かめる。リハビリや自己管理の練習を支える。退院後に使える社会資源へつなぐ

防御的退行の段階で、現実を突きつけない

防御的退行は、強すぎる衝撃から心を守るための反応です。この段階で「もう歩けないんですよ」と事実を突きつけると、患者さんはさらに心を閉ざすことがあります。

ただし、事実と違う約束はしません。「きっと元どおりになりますよ」と話を合わせると、承認の段階で患者さんが看護師への信頼を失うおそれがあります。否定も肯定もせず、「そう思っていらっしゃるんですね」と気持ちを受け止める言葉を選びます。

承認の段階では、励ましより先に受け止める

承認の段階で出てくる怒りや悲しみは、現実と向き合い始めたしるしでもあります。「がんばりましょう」と励ますより先に、患者さんの言葉をそのまま受け止めます。

抑うつが強いときや、「死にたい」という言葉があるときは、ひとりで抱えず、医師やチームに報告して対応を相談します。

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アギュララ・コーンの危機モデルとの使い分け

危機の理論には、フィンクのほかにもいくつかのモデルがあります。看護の現場や実習でよく出てくるのは、アギュララの危機モデルと、コーンの障害受容モデルです。

モデル 何を見るか 向いている場面
フィンクの危機モデル 喪失を経験した人が、適応に向かう心の動き(4段階) 障害、告知、身体の一部の喪失など、大きな喪失を時間をかけて受け止めていく過程を追うとき
アギュララの危機モデル 危機に陥るかどうかを分ける3つの要因(出来事の知覚・社会的支持・対処機制) 出来事の直後に、本人の受け止め方と支えの有無を見て、何を補えば危機を防げるかを考えるとき
コーンの障害受容モデル 障害を受け入れていく過程(ショック・回復への期待・悲嘆・防衛・適応の5段階) 身体障害の受容を、回復への期待を含めて細かく追うとき

アギュララのモデルを選ぶとき

アギュララ(Donna C. Aguilera)のモデルは、問題解決型の危機モデルとも呼ばれます。ストレスの強い出来事が起きたとき、次の3つがそろっていれば危機を回避でき、どれかが欠けると危機に陥る、と考えます。

  • 出来事の知覚:出来事を現実に沿って受け止められているか
  • 社会的支持:頼れる家族や友人、支援者がいるか
  • 対処機制:これまで使ってきたストレスへの対処法が使えるか

段階を追うのではなく、欠けている要因を見つけて補うのが特徴です。たとえば、家族の急な入院で混乱しているキーパーソンに対して、支えになる人がいるか、不安への対処ができているかを見て、足りない部分に関わります。

どれも使わないほうがよい場面

段階に当てはめることにこだわると、患者さん一人ひとりの言動が見えにくくなることがあります。次のような場面では、モデルに当てはめるより、患者さんの言葉と行動をそのまま記録し、チームで共有することを優先します。

  • 入院して間もなく、患者さんの普段の様子が分からない
  • 意識障害やせん妄があり、言動が心の動きを表しているとは限らない
  • 患者さん自身が、モデルの段階とは違う形で気持ちを整理している

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フィンクの危機モデルを使ったアセスメント・看護記録の例文

記録には、段階の名前だけでなく、そう判断した根拠となる言動を残します。次の担当者が同じ見方で変化を追えるようにするためです。

  • 患者さんの実際の言葉(「」で書く)と、表情・行動
  • 段階を判断した根拠
  • 行った関わりと、それへの反応
  • 今後の関わりの方針

アセスメントの例文

交通外傷による脊髄損傷で両下肢の麻痺がある。受傷から2週間がたち、「リハビリを続ければ、来月には歩けるようになる」と話す。主治医から歩行の再獲得は難しいと説明を受けているが、説明の内容には触れず、話題を変えることが多い。現実を否認して心を守っている状態であり、フィンクの危機モデルの防御的退行の段階にあると考える。現時点で現実を突きつけることは避け、患者の話を否定せずに聴く関わりを続ける。承認の段階への移行に備えて、抑うつや睡眠の変化を観察する。

看護記録の例文

11/4 15:00 S)「もう一生車いすなんでしょう。何のために生きているのか分からない」 O)ベッド上で臥床し、カーテンを閉めている。昼食は2割摂取。表情は硬く、涙ぐむ場面あり。 A)麻痺が残ることを言葉にしており、現実を認め始めている。怒りと抑うつが強まっており、承認の段階に入ったと考える。「何のために生きているのか分からない」との発言があるため、注意深い観察が必要。 P)訪室の回数を増やし、気持ちの表出を促す。睡眠と食事量を継続して観察する。発言内容を主治医と受け持ちチームに報告済み。

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よくある質問

フィンクの危機モデルの4段階の順番は?

衝撃、防御的退行、承認、適応の順です。看護師国家試験では、この順番や各段階の特徴が問われます。「問題解決」や「否認」といった言葉が段階名として出てきた場合は、フィンクのモデルの段階名ではないので注意してください。

患者さんが適応の段階まで進まないこともありますか?

あります。段階は目安であり、すべての人が同じ速さで進むわけではありません。適応に向かうまでに長い時間がかかる人もいれば、途中の段階を行き来する人もいます。進まないことを問題とせず、いまの段階に合った関わりを続けます。

家族にもフィンクの危機モデルは使えますか?

使えます。患者さんの家族も、告知や障害によって大きな喪失を経験します。家族が防御的退行の段階にあるときに、患者さんと同じ速さで現実を受け止めるよう求めると負担が大きくなります。患者さんと家族で段階が違うこともあるので、それぞれの言動を分けて見ます。

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まとめ

フィンクの危機モデルは、喪失を経験した人が適応に向かう過程を、衝撃・防御的退行・承認・適応の4段階で表した理論です。段階を見分けるときは、患者さんが現実をどう扱っているかに注目します。防御的退行では否認を無理に否定せず、承認では怒りや悲しみを受け止め、適応では新しい生活を一緒に組み立てます。出来事の直後に危機を防ぐための関わりを考えるならアギュララのモデル、障害の受容を細かく追うならコーンのモデルも選択肢になります。どのモデルを使う場合も、記録には段階の名前だけでなく、判断の根拠となった言動を残しましょう。

参考