看取りの看護記録の書き方と例文|看取り期から死亡確認・エンゼルケアまで、時刻の書き分けと家族の言動の残し方
看取りの看護記録は、本人と家族が最期の時間をどう過ごしたか、医療・ケアチームが何を話し合い、何を行ったかを残す記録です。後から家族が開示を求めることもあり、時刻と言葉の一つひとつが読まれます。
迷いやすいのは、死亡にかかわる時刻の書き方です。死亡を確認し、死亡診断書を書くのは医師です。看護記録には、看護師が観察した変化と、医師へ連絡した時刻、医師が確認した時刻を分けて書きます。
この記事では、看取りの看護記録を4つの場面に分けて、書くことと例文を整理します。記録の様式や家族への連絡の手順は、所属先の記載基準とマニュアルに合わせてください。
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看取りの看護記録に書く4つの場面(看取り期・臨終期・死亡確認・死後のケア)
看取りの記録は、時間の流れで4つの場面に分けると、書くことが整理しやすくなります。
| 場面 | 主に書くこと | 書き方 |
|---|---|---|
| 看取り期 | 本人の意向、家族との話し合いの内容、苦痛や不安の観察、行ったケア | SOAPやフォーカスなど、ふだんの書き方 |
| 臨終期 | 呼吸や反応の変化、家族への連絡、家族の到着と付き添いの様子 | 時刻の順に書く経時記録が向いている |
| 死亡確認 | 医師への連絡、医師の到着、医師が死亡を確認した時刻、家族への説明 | 経時記録 |
| 死後のケア | エンゼルケアの実施と家族の参加、お見送り、持ち物の確認 | 経時記録か、施設の所定の様式 |
日本看護協会の「看護記録に関する指針」は、看護実践を時間の経過とともに書くこと、時間を正確に書くこと、事実を正確に書くことを記録の基本としています。看取りの場面も、この基本は変わりません。
看取り期の看護記録の書き方(本人の意向・家族との話し合い・苦痛の観察)
本人の意向と、話し合いの内容を書く
厚生労働省の「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」は、本人・家族等と医療・ケアチームが話し合った内容を、その都度、文書にまとめておくことを求めています。本人の意思は変わることがあるため、話し合いをくり返すことも大切だとしています。
看護記録には、次のことを残します。
- 誰が同席した話し合いか(本人、家族の続柄、医師、看護師など)
- 医師から何が説明されたか(説明した医師と、説明の要点)
- 本人や家族が話したこと(かぎかっこで、できるだけ言葉どおりに)
- 決まったこと、まだ決まっていないこと
方針を決めるのは本人と医療・ケアチームです。看護記録には、話し合いの過程と本人・家族の言葉を残し、看護師が方針を決めたような書き方はしません。
苦痛や不安の観察を書く
痛み、息苦しさ、眠れない、落ち着かないなどの様子は、本人の言葉と観察した事実で書きます。痛みはNRSなど施設で使っている物差しで書くと、前後を比べられます。痛みの物差しの使い分けはペインスケールの看護での使い分けで紹介しています。
家族の付き添いと思いを書く
付き添いの有無、家族の疲れの様子、家族が話した不安や希望も記録に残します。グリーフケアは死亡の前から始まるといわれ、看取り期の家族の言葉は、その後のケアの手がかりになります。家族へのグリーフケアの考え方は看護師向けグリーフケア・グリーフワークとは?で紹介しています。
臨終期の看護記録の書き方(呼吸や反応の変化と家族への連絡)
臨終が近づくと、短い時間に変化が続きます。この時期は経時記録で、観察した変化と、行ったことを時刻とともに書きます。
| 書くこと | 例 |
|---|---|
| 呼吸の変化 | 下顎を動かすような呼吸になった、呼吸の間隔が空いてきた |
| 呼びかけへの反応 | 呼びかけに目を開けない、手を握ると握り返す |
| モニターの表示 | 施設の決まりで、表示された値や波形の変化を書く |
| 医師への報告 | 誰に、何時に、何を伝えたか |
| 家族への連絡 | 誰に、何時に、何を伝えたか。到着の時刻 |
| 家族の付き添い | 誰がそばにいたか、声をかけていた様子 |
表に書いた変化は「観察した様子」です。「死期が近い」「危篤」のような判断は、医師の説明として書くか、医師が説明した事実として書きます。
家族への連絡は、つながらなかった場合も時刻とともに残します。「2:10 長男へ電話。つながらず、留守番電話に折り返しの依頼を残す」のように書きます。
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死亡確認の看護記録の書き方(確認するのは医師、時刻の書き分け)
死亡を確認し、死亡診断書を書くのは医師
医師法第20条は、医師が自ら診察しないで診断書を交付することを禁じており、厚生労働省の「死亡診断書(死体検案書)記入マニュアル」は、ここでいう診断書に死亡診断書も含まれると説明しています。看護記録に「死亡」「永眠」と書くのは、医師が死亡を確認した後です。
看護師が先に呼吸の停止などに気づいた場合も、その時点では観察した事実を書きます。
看護記録に残す時刻は4つある
看取りの場面では、似た時刻がいくつも出てきます。何の時刻かを言葉で添えて書き分けます。
| 時刻 | 誰の行為か | 書き方の例 |
|---|---|---|
| 変化に気づいた時刻 | 看護師の観察 | 3:02 訪室時、胸の動きが見られない。呼びかけに反応なし |
| 医師へ連絡した時刻 | 看護師の行為 | 3:03 当直医へ電話で報告 |
| 医師が到着した時刻 | 医師の行為 | 3:15 当直医到着 |
| 医師が死亡を確認した時刻 | 医師の行為 | 3:20 当直医が死亡を確認。家族(妻・長男)同席 |
死亡診断書の「死亡したとき」の欄について、記入マニュアルは「死亡確認時刻ではなく、死亡時刻を記入」するとしています。つまり、死亡診断書に書かれる時刻と、医師が死亡を確認した時刻は同じとは限りません。死亡時刻を判断して死亡診断書に書くのは医師です。
看護記録では、医師が確認した時刻を「死亡確認」と書き、医師が死亡時刻を示した場合は「医師が死亡時刻を〇時〇分と説明」のように、医師の説明として書きます。看護師が死亡時刻を決めたように読める書き方はしません。
家族への説明と、家族の様子を書く
医師が家族へ説明した内容の要点と、同席した家族、家族の言葉や様子を書きます。説明の中身を詳しく残すのは、医師の記録の役割であることも多いため、看護記録には「誰が・誰に・何について説明したか」と家族の反応を書きます。
エンゼルケアとお見送りの看護記録の書き方
死後のケアの記録には、次のことを残します。
| 書くこと | 例 |
|---|---|
| 開始と終了の時刻 | 4:00 開始、4:50 終了 |
| 実施した人と、家族の参加 | 看護師2名で実施。妻が整髪を一緒に行う |
| 家族の希望 | 「この服を着せてあげたい」と浴衣を持参 |
| 体の状態で気づいたこと | 皮膚の傷や、医療器具を抜いた部位の状態など、見た事実 |
| 持ち物・貴重品の確認 | 眼鏡、入れ歯、指輪を妻へ返却。確認者 |
| お見送り | 6:00 葬儀社の迎えで退院。見送った職員 |
エンゼルケアの手順や、医療器具の扱いは施設のマニュアルに従います。目的や流れはエンゼルケアとは?看護師向けの実践マニュアルで紹介しています。
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家族の言葉や様子は、看護師の解釈に置き換えずに、見たこと・聞いたことで書きます。
| 解釈が入った書き方 | 事実で書いた書き方 |
|---|---|
| 家族は死を受け入れている | 長女「お母さん、よく頑張ったね」と声をかけ、手をさすっている |
| 家族は納得された | 医師の説明後、妻「分かりました。家に連れて帰ります」と話す |
| 家族は不穏 | 長男が病室の外で声を荒げ「なぜもっと早く連絡しなかったのか」と話す |
| 家族は悲嘆が強い | 妻が涙を流し、ベッドのそばから離れない |
| 家族の協力が得られない | 「仕事があるので夜は来られない」と話す |
| 穏やかな最期だった | 3:00 まで呼びかけに手を握り返す。家族3名が付き添い、声をかけていた |
家族の言葉は、受け止め方が人によって違います。記録は家族が読む可能性もあるため、評価する言葉や決めつけの言葉は使わないようにします。
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看取りの看護記録の例文(看取り期・夜間の臨終・エンゼルケア)
以下の例文に出てくる患者さんと家族の情報は、すべて架空のものです。値や薬の名前は省き、記録の形だけを示しています。
看取り期の例(SOAP)
S:本人「家に帰るのはもう無理かな。家族がそばにいてくれたらいい」
O:日中はうとうとしている時間が長い。呼びかけには目を開け、返答あり。妻が午後から付き添い。
A:本人は病院で家族と過ごすことを望んでいる。妻の付き添いの負担が増えている。
P:妻の休める時間を一緒に考える。本人の希望を医療・ケアチームのカンファレンスで共有する。
15:00 担当医から本人・妻・長男へ病状の説明。看護師同席。妻「最期までここでお願いしたい」と話す。説明の内容は医師記録に記載。
夜間の臨終から死亡確認までの例(経時記録)
1:30 下顎を動かすような呼吸。呼びかけに目を開けない。手を握ると弱く握り返す。
1:32 当直医へ電話で報告。医師の指示で家族へ連絡。
1:35 妻へ電話で連絡。状態が変わってきていることを伝える。「すぐ行きます」と話す。
2:10 妻・長男到着。妻が手を握り声をかけている。
2:48 呼吸の間隔が空いてきた。家族へその様子を伝える。
3:02 胸の動きが見られない。呼びかけに反応なし。
3:03 当直医へ電話で報告。
3:15 当直医到着。
3:20 当直医が死亡を確認。妻・長男同席。当直医から家族へ説明。妻「最後まで一緒にいられてよかった」と話す。
エンゼルケアの例
3:50 家族へエンゼルケアの流れを説明。妻が一緒に行うことを希望。
4:00 看護師2名でエンゼルケアを開始。妻が髪を整え、持参した浴衣を着せる。
4:50 終了。眼鏡、入れ歯、腕時計を妻へ返却(看護師2名で確認)。
6:00 葬儀社の迎えで退院。看護師2名と当直医で見送り。
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正社員の求人を見るよくある質問
看護記録に「死亡」と書くのは、いつからですか?
医師が死亡を確認した後です。それまでは、呼吸や反応などの観察した変化を書きます。医師が死亡を確認した時刻は「当直医が死亡を確認」のように、誰が確認したかが分かる形で書きます。
家族が間に合わなかったときは、どう書きますか?
家族へ連絡した時刻、家族が到着した時刻、到着時の様子と言葉を事実として書きます。「間に合わなかった」と書くより、時刻が並んでいるほうが、後から読んだ人に経過が伝わります。家族への声のかけ方は施設のマニュアルと、チームでの振り返りで確かめておきましょう。
訪問看護の看取りでも書き方は同じですか?
観察した変化と時刻、医師への連絡、医師が確認した時刻を分けて書く考え方は同じです。在宅では、家族が先に変化に気づいて連絡してくることも多いため、「家族から何時に、どんな連絡を受けたか」も書きます。記録の様式は事業所の決まりに従ってください。
まとめ
- 看取りの看護記録は、看取り期・臨終期・死亡確認・死後のケアの4つの場面に分けて書く
- 看取り期は、本人の意向と話し合いの内容を、本人と家族の言葉でその都度残す
- 死亡を確認し、死亡時刻を判断するのは医師。看護記録には、看護師が気づいた変化、医師へ連絡した時刻、医師が確認した時刻を分けて書く
- 家族の言動は、評価の言葉に置き換えず、聞いた言葉と見た様子で書く
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参考
- 日本看護協会「看護記録に関する指針」(2018年) https://www.nurse.or.jp/nursing/home/publication/pdf/guideline/nursing_record.pdf
- 厚生労働省「令和8年度版死亡診断書(死体検案書)記入マニュアル」 https://www.mhlw.go.jp/toukei/manual/
- 医師法(昭和23年法律第201号)第20条 https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000201
- 厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」 https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000194853.pdf