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転倒転落の看護記録の書き方と例文|発見時の状況・観察・報告・家族連絡の書き方、推測を書かない言い換え表とインシデントレポートとの書き分け

転倒転落の看護記録の書き方と例文|発見時の状況・観察・報告・家族連絡の書き方、推測を書かない言い換え表とインシデントレポートとの書き分け

転倒転落の看護記録は、後から読んだ人が「いつ、どんな状態で見つかり、何を観察し、誰に報告し、家族に何を伝えたか」を再現できるように書きます。中心になるのは、見たこと・聞いたこと・行ったことの事実です。

迷いやすいのは、原因や経緯を想像で埋めてしまうことと、インシデントレポートに書く内容まで看護記録に書いてしまうことです。この記事では、記録に書く4つの要素、推測を事実に置き換える言い換え表、インシデントレポートとの書き分け、場面別の例文を整理します。

転倒後の検査や処置の判断は医師が行います。記録の様式や報告の手順は、所属先の記載基準と医療安全のマニュアルに合わせてください。

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目次
  1. 転倒転落の看護記録に書く4つのこと(発見時の状況・観察・報告・家族連絡)
  2. 転倒転落の発見時の状況の書き方(目撃の有無・最終確認時刻・発見時の姿勢)
    1. 目撃したか、発見したかを分けて書く
    2. 最後に確認した時刻を書く
    3. 発見時の周りの状況を書く
    4. 本人の言葉はかぎかっこで残す
  3. 転倒転落後の観察の記録(頭部打撲の有無と意識・麻痺・瞳孔の経過)
    1. 頭部打撲の有無は「本人の言葉」と「外見」で書く
    2. 観察の値は、施設で使っている物差しで書く
    3. 翌日以降の経過も書く
  4. 転倒転落の看護記録で推測を書かない言い換え表
  5. 転倒転落の報告と家族連絡の記録の書き方
    1. 医師・上司への報告
    2. 家族への連絡
  6. 転倒転落の看護記録とインシデントレポートの書き分け(判定表)
  7. 転倒転落の看護記録の例文(目撃あり・目撃なし・翌日の経過)
    1. 目撃ありの例(日中・歩行中)
    2. 目撃なしの例(夜間・ベッドサイド)
    3. 翌日の経過の例
  8. よくある質問
    1. 転倒転落の記録は、経時記録とSOAPのどちらで書けばよいですか?
    2. 本人が「大丈夫」と言っている場合も、細かく書く必要がありますか?
    3. 後から思い出して書き足すときはどうしますか?
  9. まとめ
  10. 参考

転倒転落の看護記録に書く4つのこと(発見時の状況・観察・報告・家族連絡)

日本看護協会の「看護記録に関する指針」は、予期せぬ事態が起きた場合は経時的に書き、行った処置と時間だけでなく、発見・発生の状況、観察したこと、対処後の結果・反応も正確な時間とともに書くとしています。

厚生省(当時)の「リスクマネージメントマニュアル作成指針」も、予期せぬ出来事が起きたときは患者の状況、処置の方法、患者と家族への説明内容を診療録・看護記録に詳しく書くこと、そして想像や憶測に基づく記載をしないことを求めています。

これを転倒転落の場面に当てはめると、記録に書くことは次の4つに分かれます。

要素 書くこと
発見時の状況 発見した時刻、最後に確認した時刻、場所、発見時の姿勢、目撃の有無、本人の言葉
観察 頭部打撲の有無(本人の言葉と外見)、意識の状態、手足の動き、痛み・傷の部位、バイタルサイン、その後の経過
報告 誰に、何時に、何を報告したか。医師の診察の時刻と、受けた指示
家族連絡 誰に、何時に、どの手段で、何を伝えたか。家族の反応

転倒は同じ高さの床などで倒れること、転落はベッドや車椅子など高さのある場所から落ちることを指すのが一般的です。どちらに当たるかは、施設の報告の分類に合わせて書きます。

転倒転落の発見時の状況の書き方(目撃の有無・最終確認時刻・発見時の姿勢)

発見時の状況は、後から一番確かめられる部分です。次の項目を順に書くと抜けが出にくくなります。

目撃したか、発見したかを分けて書く

転倒の瞬間を見た場合と、倒れているところを見つけた場合では、書ける事実が違います。

  • 目撃あり:「〇時〇分、トイレへ歩行中に右膝から崩れるように床に座り込むところを看護師が目撃」
  • 目撃なし:「〇時〇分、物音で訪室し、ベッド右側の床に仰向けでいるところを発見」

目撃していないのに「ベッドから転落した」と書くと、看護師が経緯を決めつけたことになります。目撃がなければ、見つけたときの位置と姿勢だけを書きます。

最後に確認した時刻を書く

発見の時刻に加えて、その前に最後に姿を確認した時刻を書きます。どのくらいの時間のあいだに起きたかが分かるためです。時刻の書き方の詳しい考え方は経時記録の書き方|急変・処置中に使う場面と時刻の書き方で紹介しています。

発見時の周りの状況を書く

ベッド柵の状態、ベッドの高さ、ナースコールの位置、履物、床の濡れ、点滴やドレーンの状態など、見たままを書きます。「柵が下がっていた」は事実ですが、「柵を下げ忘れたため」は原因の推測です。原因の分析はインシデントレポートや振り返りの場で行います。

本人の言葉はかぎかっこで残す

「トイレに行こうと思って立ったら、ふらっとした」のように、本人が話したことはそのまま書きます。本人の言葉で経緯が語られた場合も、看護師の判断としてではなく、本人の発言として残します。

転倒転落後の観察の記録(頭部打撲の有無と意識・麻痺・瞳孔の経過)

日本医療安全調査機構の「医療事故の再発防止に向けた提言 第9号」は、入院中の転倒・転落による頭部外傷の死亡事例を分析しています。提言では、頭部打撲(疑いも含む)の場合、受傷直後に異常がなくてもその後急に悪化することがあるとして、意識レベル、麻痺、瞳孔所見などの神経学的所見やバイタルサインを経時的かつ頻回に観察することを挙げています。

記録では、観察した項目と結果を時刻とともに残します。

頭部打撲の有無は「本人の言葉」と「外見」で書く

  • 本人が「頭は打っていない」と話した → その言葉をそのまま書く
  • 目撃がなく、本人も覚えていない → 「頭部打撲の有無は不明」と書く
  • 外見 → 「後頭部に〇cm程度の腫れあり」「頭部に傷・腫れは見当たらない」など、見た事実を書く

提言の概要版は、本人の訴えや頭の皮膚の所見の有無にかかわらず症状が出ることがあると注意しています。「本人が打っていないと言うので打撲なし」と、看護師の判断に置き換えて書かないようにします。頭部を打った可能性がある場合の検査や観察の間隔は、医師の指示と施設のマニュアルに従います。

観察の値は、施設で使っている物差しで書く

意識の状態はJCSやGCSなど施設で使っている評価法で、手足の動きは左右を比べて書きます。値はフローシートに書き、経過記録には変化と対応を書く、と分けている施設も多くあります。意識レベルの評価の書き方はJCS(ジャパン・コーマ・スケール)とは?で紹介しています。

翌日以降の経過も書く

転倒の直後は問題がなくても、時間がたってから痛みや腫れが出ることがあります。医師の指示で観察を続けた期間は、その結果を「変化なし」で終わらせず、何を見て変化がなかったのかを書きます。

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転倒転落の看護記録で推測を書かない言い換え表

記録で一番多いつまずきは、事実のつもりで推測を書いてしまうことです。次の表は、よくある書き方と、事実に置き換えた例です。

推測が入った書き方 事実に置き換えた書き方
ベッドから転落した(目撃なし) ベッド右側の床に仰向けでいるところを発見した
自分でトイレに行こうとして転倒 「トイレに行こうとした」と話す
頭は打っていない 「頭は打っていない」と話す。頭部に傷・腫れは見当たらない
ナースコールを押さずに歩いた ナースコールは枕元にあった。押された記録はない
意識清明、問題なし 呼びかけにすぐ返答。日付と場所を正しく答える(JCSなど施設の評価法の値も記載)
せん妄のため 「ここはどこ」と繰り返し話し、点滴の管を触っていた
不注意で柵を下げたまま 発見時、右側のベッド柵は下がっていた
骨折の疑いあり 右股関節の痛みの訴えあり。右脚を動かすと顔をしかめる。医師へ報告
家族は納得された 長女へ電話で説明。「分かりました。明日面会に行きます」と話す

右の列は、ほかの人が読んでも同じ場面を思い浮かべられる書き方です。病名や原因の判断は医師が行います。看護記録には、その判断の材料になる観察を残します。

転倒転落の報告と家族連絡の記録の書き方

医師・上司への報告

報告の記録は、誰に・何時に・何を伝え・どんな指示を受けたかの4点を書きます。

3:00 当直医(〇〇医師)へ電話で報告。発見時の状況、右肘の擦過傷、本人の「頭は打っていない」との発言、発見時から変化がないことを伝えた。
3:15 当直医が来棟し診察。医師の指示により、右肘の傷の処置を実施。観察の間隔は指示簿のとおり。

指示の中身(検査や薬)は、指示簿など所定の場所に記録されることが多いため、経過記録には「指示により〇〇を実施」と、行った事実と時刻を書きます。どこに何を書くかは施設の記載基準に従います。

家族への連絡

家族への説明は、トラブルになったときに確認される部分です。前述のマニュアル作成指針も、患者と家族への説明内容を記録するよう求めています。

書くこと 例
連絡した相手 長女(キーパーソン)
時刻と手段 7:30 電話
誰が説明したか 担当医から説明。看護師同席 / 看護師から連絡し、医師の説明の予定を伝えた
伝えた内容 転倒したこと、現在の状態、今後の観察の予定
家族の反応・質問 「分かりました。明日面会に行きます」と話す
つながらなかった場合 7:30 電話するもつながらず。留守番電話への伝言はせず。9:00 再度連絡予定

施設によって、夜間の転倒を家族へいつ連絡するか、誰が説明するかの決まりがあります。記録には、実際に誰がいつ何を伝えたかを書きます。

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転倒転落の看護記録とインシデントレポートの書き分け(判定表)

看護記録は、施設が保管する診療記録の一つで、患者さんから求められれば開示の対象になります。インシデントレポート(ヒヤリハット報告書)は、同じことをくり返さない仕組みを考えるための院内の報告です。目的が違うため、書く内容も分けます。

こういう内容なら 看護記録 インシデントレポート
発見時刻・最終確認時刻・発見時の姿勢 書く 書く
観察した事実と経過、行った処置 書く 要点を書く
医師への報告と指示、家族への説明 書く 書く
本人・家族の言葉 書く 必要な範囲で書く
発生要因の分析(環境・薬・人員配置など) 書かない 書く
再発防止の改善策 看護計画の見直しとして書く 書く
影響度レベル 書かない 書く
「インシデントレポートを提出した」こと 施設の決まりに従う ―

看護記録で改善策にあたるのは、転倒転落のリスクの評価のやり直しと看護計画の変更です。「ベッドを最も低い位置にした」「離床センサーを設置した」のように、行った対策を事実として書きます。

インシデントレポートの項目や書き方、影響度レベルの考え方は看護師のヒヤリハット報告書・インシデントレポートの書き方で詳しく紹介しています。

看護記録の中に「インシデントレポート提出済み」と書くかどうかは、施設によって決まりが違います。所属先の医療安全の担当部署の取り決めを確認しましょう。

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転倒転落の看護記録の例文(目撃あり・目撃なし・翌日の経過)

以下の例文に出てくる患者さんの情報は、すべて架空のものです。値や処置の中身は省き、記録の形だけを示しています。

目撃ありの例(日中・歩行中)

14:20 トイレからの帰りに廊下を歩行中、右膝から崩れるように床に座り込むところを看護師が目撃。床に手をついており、頭部は床に当たっていない。「急に膝の力が抜けた」と話す。
14:22 呼びかけにすぐ返答。右膝の痛みの訴えあり。腫れ・傷は見当たらない。看護師2名で車椅子へ移乗を介助し帰室。
14:25 バイタルサイン測定(値はフローシートに記載)。
14:30 担当医へ報告。14:45 担当医が診察。
15:00 歩行時は看護師が付き添うことを本人へ説明。「次から呼びます」と話す。
16:00 妻へ電話で連絡。転倒したこと、医師が診察したこと、今後の観察の予定を伝えた。「分かりました」と話す。

目撃なしの例(夜間・ベッドサイド)

2:10 巡視時、ベッドで入眠中を確認。右側のベッド柵は上がっていた。
2:48 物音で訪室。ベッド右側の床に仰向けでいるところを発見。右側のベッド柵は下がっていた。ナースコールは枕元にあった。
2:49 呼びかけに返答あり。「何があったか覚えていない」と話す。頭部打撲の有無は不明。後頭部に腫れ・傷は見当たらない。手足は左右とも動かせる。
2:52 看護師2名でベッドへ移動を介助。意識の状態と瞳孔を観察(値はフローシートに記載)。
2:55 当直医へ電話で報告。頭部打撲の有無が不明であることを伝えた。
3:10 当直医が来棟し診察。以降、医師の指示の間隔で観察を継続。
3:15 ベッドを最も低い位置にした。
7:30 長男へ電話で連絡。夜間の転倒、医師の診察、観察を続けていることを伝え、担当医から日中に説明する予定であることを伝えた。「よろしくお願いします」と話す。

翌日の経過の例

10:00 転倒後の観察を継続。呼びかけにすぐ返答し、昨日と同じく日付と場所を答える。手足の動きに左右差なし。「頭は痛くない」と話す。後頭部の腫れ・傷は見当たらない。
10:10 転倒転落のリスクの評価を再度実施し、看護計画に夜間の離床センサーの使用を追加。

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よくある質問

転倒転落の記録は、経時記録とSOAPのどちらで書けばよいですか?

発見から医師の診察までのように、短い時間に出来事が続く間は経時記録が向いています。落ち着いた後の評価や計画の見直しは、ふだんの書き方(SOAPやフォーカスなど)に戻すと読みやすくなります。どの書き方を使うかは施設の記載基準に従ってください。

本人が「大丈夫」と言っている場合も、細かく書く必要がありますか?

必要です。「大丈夫」は本人の言葉として書いたうえで、看護師が観察した事実(意識の状態、痛みの部位、手足の動き、傷の有無)も書きます。本人の言葉と観察を分けて書くことで、後から経過を比べられます。

後から思い出して書き足すときはどうしますか?

日本看護協会の指針は、追記する場合はいつの、どの箇所への追記かが分かるようにすること、訂正する場合は訂正した人・内容・日時が分かるようにし、訂正前の記載を読める形で残すことを求めています。前の記載を消して書き直すことはしません。

まとめ

  • 転倒転落の看護記録は、発見時の状況・観察・報告・家族連絡の4つに分けて、時刻とともに事実を書く
  • 目撃したか発見したかを分け、目撃がなければ発見時の位置と姿勢だけを書く
  • 「頭は打っていない」「大丈夫」は本人の言葉として書き、観察した事実を並べて書く
  • 原因の分析と影響度レベルはインシデントレポートに書き、看護記録には行った対策と計画の見直しを書く

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