ナースの勉強部屋

看護師から救急救命士になるには?役割の違いや資格取得ルート・現実的な壁を徹底解説

看護師から救急救命士になるには?役割の違いや資格取得ルート・現実的な壁を徹底解説

救急医療の現場で働く中で、「病院到着前の最前線で患者を救いたい」と救急救命士の仕事に関心を持つ看護師は少なくありません。

しかし、同じ「命を救う」仕事であっても、両者の役割や活躍の場、必要な資格取得のルートには明確な違いがあります。

本記事では、看護師と救急救命士の違い、資格取得までの具体的な流れ、そして事前に知っておくべき現実的な壁について徹底的に解説します。

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目次
  1. 救急救命士と看護師の仕事内容や役割の違い
    1. 働く場所と役割の違い
    2. 行える医療行為と法的根拠の違い
    3. 年収や給与水準の違い
  2. 看護師から救急救命士になるための資格取得ルート
    1. 救急救命士の受験資格を得る
    2. 救急救命士国家試験の受験と合格率
    3. 消防官採用試験への合格
  3. 看護師から救急救命士を目指す際に知っておくべき現実的な壁
    1. 採用試験における年齢制限
    2. 学費と時間の大きな負担
    3. 採用枠の少なさと就職難易度
  4. 看護師が救急救命士の資格を取得するメリットと適性
    1. ダブルライセンス取得のメリット
    2. 救急救命士に求められるスキルや適性
  5. 看護師のまま救急現場で活躍する選択肢
    1. 救命救急センターや救急外来(ER)への配属
    2. 集中治療室(ICU)や高度治療室(HCU)での勤務
    3. DMATや災害支援ナースとしての活動
  6. 看護師と救急救命士に関するよくある質問(FAQ)
    1. Q.看護師資格を持っていれば試験科目は免除される?
    2. Q.看護師と救急救命士はどちらが難しい?
    3. Q.救急救命士と看護師はどちらが上?
  7. 救急医療の最前線で理想のキャリアを実現するために

救急救命士と看護師の仕事内容や役割の違い

救急救命士と看護師は、どちらも人命救助に関わる国家資格ですが、法的な位置づけや活動拠点において異なる役割を持っています。まずは両者の決定的な違いを比較表で確認しましょう。

比較項目救急救命士看護師
主な活動場所救急車内、災害現場、病院(救急外来)病院、クリニック、介護施設、訪問看護など
主な役割現場から病院到着までの救命処置(プレホスピタルケア)医師の診療補助、入院から退院までの継続的な療養支援
医療行為(処置)医師の具体的指示による特定行為(気道確保、静脈路確保など)医師の指示による幅広い診療の補助(採血、注射、点滴など)
平均年収約335万円〜約652万円(※)約524万円
※救急救命士の年収は厚生労働省データ(約335万円)と、総務省の地方公務員給与実態調査(約652万円)で開きがあり、所属先により大きく変動します。看護師の年収には夜勤手当などが含まれます。
出典:厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)看護師 / 救急救命士 / 総務省 地方公務員給与実態調査結果

 

働く場所と役割の違い

救急救命士の主な活動拠点は、消防署や救急車内、災害現場などのプレホスピタル(病院到着前)です。心肺停止などの重篤な状態にある傷病者に対し、迅速に状態を把握して救命処置を行い、医療機関へ引き継ぐまでの限られた時間に特化しています。

対する看護師は、外来での初期対応から入院中の療養サポート、退院後のケアまで、患者に対して継続的に関わる役割を担います。

行える医療行為と法的根拠の違い

救急救命士は「救急救命士法」に基づき、医師の具体的な指示のもとで救命に直結する「特定行為」を実施できます。具体的には、ラリンゲアルマスクや気管内チューブ等による気道確保、乳酸リンゲル液を用いた静脈路確保と輸液、低血糖患者へのブドウ糖溶液の投与などです。

一方、看護師は「保健師助産師看護師法」に基づき幅広い診療の補助を行いますが、現場の救急車内において、単独で救急救命士の特定行為と同等の活動を行うことはできません。

年収や給与水準の違い

厚生労働省のデータによれば、看護師の平均年収は約524万円です。夜勤手当や各種手当が加算されるため、比較的高い水準を維持しやすい傾向があります。

一方、救急救命士の給与は所属先により大きく異なります。各自治体の消防官として勤務した場合、公務員としての諸手当や勤続年数によって年収に大きな開きが出ます。

看護師から救急救命士になるための資格取得ルート

看護師免許を持っているだけでは、救急救命士として活動することはできません。新たに資格を取得し、採用試験を突破する必要があります。

救急救命士の受験資格を得る

救急救命士国家試験を受験するには、原則として厚生労働大臣が指定する大学や専門学校(2年〜4年制)の救急救命士養成課程を修了する必要があります。指定校によっては、看護学校で履修した基礎医学などの単位認定により、一部の授業が免除されるケースもあります。

※例外として、平成3年(1991年)8月15日時点で看護師免許を取得していた、または看護師養成所に在籍・卒業していた方に限り、養成課程を経ずに国家試験の受験資格が認められます。

救急救命士国家試験の受験と合格率

受験資格を得たのち、年1回実施される救急救命士国家試験を受験します。直近の国家試験合格率は約94%と高水準ですが、これは養成課程で専門的に学んだ受験者の数字です。

看護師として培った解剖生理学などの知識は有利に働きますが、プレホスピタルケアに特化した知識は新たに学び直す必要があります。

消防官採用試験への合格

日本では救急業務を消防機関が担っているため、救急救命士の資格取得後に救急車に乗務するには、各自治体が実施する消防職員採用試験(地方公務員試験)に合格し、「消防官」として採用される必要があります。

民間救急や病院内救急救命士の求人もありますが、大半は消防職への就職を目指すことになります。

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看護師から救急救命士を目指す際に知っておくべき現実的な壁

キャリアチェンジを決断する前に、以下の現実的なハードルを直視する必要があります。

採用試験における年齢制限

救急救命士として救急車に乗るためには消防官になる必要がありますが、多くの自治体では、消防官の採用試験に「30歳前後」という年齢上限を設けています(自治体により異なります)。

養成機関に通う期間(2〜3年)を逆算すると、20代半ばまでには進学を決断しなければ受験資格を満たせなくなるため、早めの行動が不可欠です。

学費と時間の大きな負担

養成機関に進学する場合、200万〜300万円程度の学費に加えて、2〜3年間の学習時間が必要です。働きながら通える夜間の専門学校は少なく、実質的に看護師を退職するか非常勤に切り替える必要があるため、経済的な負担は非常に大きくなります。

採用枠の少なさと就職難易度

国家試験に合格しても、希望する地域の消防本部に採用枠がなければ現場に立つことはできません。消防職員の採用枠は毎年限られており、競争率も高いため、資格取得後に結果として看護師の業務に戻るケースも存在します。

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看護師が救急救命士の資格を取得するメリットと適性

高いハードルを越えてダブルライセンス(看護師×救急救命士)を取得することには、独自の強みがあります。

ダブルライセンス取得のメリット

プレホスピタルケアの専門知識と、病院内での継続的な看護・病態把握の知識を併せ持つ人材は非常に希少です。ドクターカーやドクターヘリの搭乗スタッフとして医師を円滑にサポートできるほか、DMAT(災害派遣医療チーム)の現場でも高度なトリアージ能力を発揮できます。

さらに、2021年の法改正で救急救命士が救急外来等で救命処置を行えるようになったため、「病院内救急救命士」としてプレホスピタルから院内対応までをシームレスに繋ぐ中核人材として評価されます。

救急救命士に求められるスキルや適性

救急救命士には、過酷な天候や危険な事故現場でも迅速に行動できる「体力」、情報が極端に少ない中で優先順位を見極める「冷静な判断力」、そして目前の命を救いたいという「強い意志」が求められます。

看護師のまま救急現場で活躍する選択肢

年齢制限や学費の壁を感じる場合は、資格を取り直すのではなく、現在の看護師免許を最大限に活かして救急医療に携わるルートも検討すべきです。

救命救急センターや救急外来(ER)への配属

三次救急を担う救命救急センターやERへ異動・転職することで、重症患者の初期治療に最前線で関わることができます。看護師としての知識を活かしたまま、救急救命士から傷病者を引き継ぐ重要なポジションを担えます。

集中治療室(ICU)や高度治療室(HCU)での勤務

一命を取り留めた後の重症患者に対し、継続的なモニタリングと全身管理を行うICU・HCUでの業務も、救急志向の強い看護師に最適です。クリティカルケア認定看護師などの資格を取得すれば、さらなるキャリアアップが望めます。

DMATや災害支援ナースとしての活動

平時は病院勤務を続けながら、所定の研修を修了してDMATや災害支援ナースに登録する道もあります。大規模災害の発生時には被災地に派遣され、救急医療の最前線で活動することが可能です。

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看護師と救急救命士に関するよくある質問(FAQ)

Q.看護師資格を持っていれば試験科目は免除される?

A.国家試験の試験科目は免除されません。

指定の養成校に通う過程で、基礎医学などの一部の授業単位が免除される可能性はありますが、国家試験自体は全科目を受験して合格基準を満たす必要があります。

Q.看護師と救急救命士はどちらが難しい?

A.直近の合格率を見ると、救急救命士が約94%、看護師が約88%と救急救命士の方がやや高くなっていますが、どちらも専門の養成課程での学習を前提とした数字です。

就職活動を含めると、求人が豊富な看護師に対し、消防官採用枠の狭い救急救命士のほうがキャリアを築く難易度は高いと言えます。

Q.救急救命士と看護師はどちらが上?

A.資格に優劣はありません。

救急救命士は「病院到着前の初期対応と迅速な処置」のプロフェッショナルであり、看護師は「療養全体の継続的なケアと診療補助」のプロフェッショナルです。両者が連携することで初めて命を繋ぐことができます。

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救急医療の最前線で理想のキャリアを実現するために

看護師から救急救命士への転身は、養成機関での学び直しや公務員採用試験の年齢制限、経済的負担といった現実的な壁が立ちはだかります。

しかし、それらを乗り越えて手にするダブルライセンスは、ドクターカーや災害医療、病院内救急救命士としての活動において唯一無二の武器となります。

ゼロから救急救命士を目指すのか、あるいは現在の看護師資格を活かして救急外来やICUで専門性を高めていくのか。自分が「救急医療のどのフェーズで、患者にどう関わっていきたいのか」を冷静に整理し、ご自身のライフプランに合った後悔のないキャリア選択につなげてください。