ナースの勉強部屋

麻痺の評価スケールの使い分けと看護記録|ブルンストロームステージ・MMT・NIHSSの違い、どれを使うかの境界線と記録の例文

麻痺の評価スケールの使い分けと看護記録|ブルンストロームステージ・MMT・NIHSSの違い、どれを使うかの境界線と記録の例文

麻痺の評価スケールは、同じ「麻痺」を見ていても、測っているものが違います。ブルンストロームステージは回復の段階、MMTは筋力、NIHSSは脳卒中の神経症状全体の重さを表します。

「右上肢 BRS III」「右上肢 MMT 2」「NIHSS 8点」は、どれも正しい記録になりえますが、伝わる内容は別です。どのスケールを使ったかが分からない数字だけの記録は、次に読んだ人が取り違える原因になります。

この記事では、3つのスケールが測っているものと、看護記録での使い分けの境界線、記録の例文を整理します。診断や治療、リハビリの方針は医師と療法士が判断します。どのスケールを使うかは、所属先の病棟で決めているものに合わせてください。

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目次
  1. 麻痺の評価スケールとは(回復段階・筋力・脳卒中の重症度の3つ)
  2. ブルンストロームステージ(BRS)の6段階と記録の書き方
    1. BRSの記録で書き分けること
  3. MMT(徒手筋力テスト)を麻痺の記録で使うときの注意
  4. NIHSSの15項目と合計点(脳卒中の神経症状を点数にする)
  5. 麻痺の評価スケールの使い分けの境界線(BRS・MMT・NIHSS・使わない場面)
  6. 麻痺の評価スケールの看護記録の書き方と例文
    1. 記録に残す5つのこと
    2. 脳卒中の急性期の例(NIHSS)
    3. 急に変化があったときの例
    4. 回復期の例(BRS・MMT)
    5. 書き方で気をつけたいこと
  7. よくある質問
    1. 看護師がBRSを付けてもよいですか?
    2. NIHSSは毎回すべての項目を評価する必要がありますか?
    3. 申し送りでは、どのスケールの値を伝えればよいですか?
  8. まとめ
  9. 参考

麻痺の評価スケールとは(回復段階・筋力・脳卒中の重症度の3つ)

スケール 測っているもの 段階・点数 よく使われる場面
ブルンストロームステージ(BRS) 脳卒中後の片麻痺の、運動の回復の段階 I〜VIの6段階(上肢・手指・下肢で別々に) 脳卒中の病棟、回復期リハビリテーション病棟
MMT(徒手筋力テスト) 一つひとつの筋の筋力 0〜5の6段階 整形外科、神経内科、廃用による筋力低下
NIHSS 脳卒中の神経症状の重さ(意識・言語・麻痺など) 15項目、合計0〜42点 脳卒中の急性期、SCU・救急

BRSとMMTは「手足がどれくらい動くか」を、NIHSSは「脳卒中の症状全体がどれくらい重いか」を表します。NIHSSの中にも上肢と下肢の麻痺の項目がありますが、手足の動きの細かな回復を追うものではありません。

ブルンストロームステージ(BRS)の6段階と記録の書き方

ブルンストロームステージは、脳卒中後の片麻痺の回復を6つの段階で表す評価です。理学療法士のBrunnstromが、片麻痺の回復が一定の順序で進むことをもとに示しました。

ステージ 段階の目安
I 発症直後の弛緩した状態。随意的な動きがない
II 共同運動、またはその要素が出はじめる
III 共同運動のパターンで動かせる。痙縮が最も強く出る時期
IV 痙縮が弱まりはじめ、共同運動から外れた動きが一部できる
V 痙縮がさらに弱まり、共同運動から独立した動きができるようになる
VI 痙縮がほぼなく、協調した動きがほぼ正常にできる

(Brunnstromの回復段階の定義を、神戸大学の学位論文〈松本, 2017〉の要約から訳したもの)

共同運動は、たとえば腕を上げようとすると肘も一緒に曲がってしまうように、一つの関節だけを動かせず、決まった組み合わせで動いてしまう状態を指します。

BRSの記録で書き分けること

  • 上肢・手指・下肢を分けて書く(「右 上肢III・手指II・下肢IV」)。同じ患者さんでも部位によって段階が違うことが多いため
  • 誰が評価したかを書く。病棟では療法士の評価を共有していることが多く、看護師が付けた段階と区別できるようにする
  • 段階の間で迷ったときは、見た動きを書く。段階の境目ははっきりしないとされており、「肘を曲げずに腕を前に上げられない」のような観察があると経過を比べやすい

MMT(徒手筋力テスト)を麻痺の記録で使うときの注意

MMTは、筋力を0〜5の6段階で表す評価です。重力に逆らって動かせるか(3)、抵抗をかけても保てるか(4・5)などで段階を付けます。段階の基準と測り方はMMT(徒手筋力テスト)とは?6段階の評価基準で紹介しています。

麻痺の記録でMMTを使うときは、次の点に気をつけます。

  • 測った筋や動きを書く。「右上肢MMT 3」だけでは、肩なのか肘なのか分かりません。「右肘の屈曲 3」のように書く
  • 脳卒中の片麻痺では、BRSと並べて使うか、施設の決まりに合わせる。一般に、脳卒中の片麻痺では共同運動が出るため、一つの筋の力だけでは回復の様子を表しにくく、BRSが使われることが多くあります
  • 末梢神経のまひや、筋力低下が主な場合はMMTが合う。整形外科の術後や廃用による筋力低下では、MMTで経過を追うことが多くあります

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NIHSSの15項目と合計点(脳卒中の神経症状を点数にする)

NIHSS(National Institutes of Health Stroke Scale)は、脳卒中の神経症状の重さを点数で表すスケールです。日本脳卒中学会の「静注血栓溶解(rt-PA)療法 適正治療指針 第三版」は、NIHSSが最も一般的に使われており、意識、視野、眼球運動、顔面の麻痺、四肢の筋力、失調、知覚、言語などの15項目からなり、合計は0〜42点になると説明しています。

項目 点数の幅
意識水準 0〜3
質問(月名と年齢) 0〜2
命令(目と手の開閉) 0〜2
注視 0〜2
視野 0〜3
顔面の麻痺 0〜3
上肢の麻痺(左・右それぞれ) 0〜4
下肢の麻痺(左・右それぞれ) 0〜4
運動失調 0〜2
感覚 0〜2
言語 0〜3
構音障害 0〜2
消去現象と無視 0〜2

(日本脳卒中学会「静注血栓溶解(rt-PA)療法 適正治療指針 第三版」表5より項目と点数の幅を抜き出したもの)

点数が高いほど症状が重いことを表します。上肢・下肢の麻痺、運動失調、構音障害の項目には、切断や関節の癒合、挿管などで評価できないときに付ける「9」があり、指針の表は9を付けた理由を明記するとしています。

同じ指針は、NIHSSは短時間で神経症状を点数にでき、多職種で症状の認識を共有しやすい一方で、急性期に正確に評価するには訓練が必要であるとしています。評価の手順は、施設で採用している評価表と手順書に従ってください。

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麻痺の評価スケールの使い分けの境界線(BRS・MMT・NIHSS・使わない場面)

どのスケールが上というわけではなく、何を伝えたいかで選びます。

こういう場面・目的なら 合うもの 理由・注意
脳卒中の急性期で、症状が悪くなっていないかを多職種で共有したい NIHSS 意識や言語も含めた全体の重さを、時刻ごとに比べられる
脳卒中の片麻痺で、手足の回復の段階を追いたい BRS 上肢・手指・下肢を分けて段階で表せる
整形外科の術後、廃用、末梢神経のまひで、筋力の変化を追いたい MMT 筋ごとに筋力の変化を表せる
意識が保てない、指示が伝わらない BRS・MMTは付けにくい 自発的な動きや痛みへの反応の左右差を観察として書く。NIHSSは意識障害がある場合の付け方が決まっている
毎回の観察で、前回から変わっていないかだけを確かめたい スケールでなく観察の記録 「右手の握りが前回と同じ」「新しい脱力なし」など、施設で決めた観察項目で書く
新しい脱力やしびれが急に出た スケールを付けるより先に報告 発見した時刻と症状を書き、施設の急変時の手順に従って医師へ報告する

最後の行は特に大切です。急に出た麻痺は、点数を付けるために報告を遅らせない、という判断になります。記録では「〇時〇分、右手の脱力に気づく」「〇時〇分、医師へ報告」と、時刻を分けて書きます。

麻痺の評価スケールの看護記録の書き方と例文

記録に残す5つのこと

書くこと 例
スケールの名前 BRS / MMT / NIHSS
部位と左右(MMTは筋や動き) 右 上肢・手指・下肢 / 左肘の屈曲
結果 BRS 上肢III、MMT 3、NIHSS 6点
評価した時刻と、評価した人 10:00 看護師 / PT評価(〇月〇日)
結果の根拠になった様子と、前回との比較 前回より肘の伸びが良い、前回と変化なし

脳卒中の急性期の例(NIHSS)

6:00 NIHSS 5点(前回0:00は5点)。右上肢は挙上できるが、決めた時間保てずに下がる。言葉は聞き取れるが、ろれつが回りにくい。意識の状態は変わらず。
9:00 NIHSS 5点。変化なし。

急に変化があったときの例

14:20 訪室時、右手でコップを持てず落とす。「急に右手に力が入らない」と話す。
14:22 担当医へ報告。
14:30 担当医が診察。NIHSSを評価(看護師同席)。結果は医師記録に記載。

回復期の例(BRS・MMT)

BRS(〇月〇日 PT評価)右 上肢III・手指II・下肢IV。
病棟での様子:右腕を前に上げようとすると肘が曲がる。右手でスプーンを持つが、口まで運ぶ途中で落とす。歩行器での歩行時、右足のつま先が床にすれることがある。

左人工膝関節の術後。左膝の伸展 MMT 3(前回2)。ベッド上で左膝を伸ばしたまま足を持ち上げられる。

書き方で気をつけたいこと

  • 「麻痺あり」「麻痺増悪」と一言で書かず、どの動きができて、どの動きができないかを書く
  • 前回と違う人が評価したときは、そのことが分かるように書く(評価者による差を見分けるため)
  • 「改善」「悪化」と書くときは、何の数字や動きが変わったかを一緒に書く

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よくある質問

看護師がBRSを付けてもよいですか?

決まりはありません。療法士の評価を記録で共有している病棟も、看護師が付けている病棟もあります。誰が付けたかが分かるように書くことと、段階の間で迷ったときは見た動きを書き添えることが大切です。

NIHSSは毎回すべての項目を評価する必要がありますか?

施設の手順によります。急性期の決まった時間にはすべての項目を評価し、その間は意識や手足の動きなどの観察で経過を見る運用もあります。施設の観察の決まりと医師の指示に従ってください。意識レベルの記録はJCS(ジャパン・コーマ・スケール)とは?でも紹介しています。

申し送りでは、どのスケールの値を伝えればよいですか?

病棟で決まっているスケールの直近の値と、前回からの変化を伝えます。数字だけでなく、「右手でスプーンを持てるようになった」など、ケアに関係する動きを添えると、次の勤務の看護師がケアを組み立てやすくなります。

まとめ

  • BRSは回復の段階、MMTは筋力、NIHSSは脳卒中の神経症状全体の重さを表す。数字の意味が違う
  • 脳卒中の片麻痺の回復はBRS、筋ごとの筋力の変化はMMT、急性期の全体の重さはNIHSSと、伝えたいことで選ぶ
  • 急に出た麻痺は、点数を付けるより先に報告し、時刻を分けて記録する
  • 記録には、スケールの名前、部位と左右、結果、時刻と評価者、根拠になった動きを書く

参考