業務独占資格の一覧|医療職で「その資格がないとできない」仕事の範囲
「業務独占資格」という言葉は求人や資格の紹介でよく使われるが、何が独占されているのかまで説明されていないことが多い。
看護師は業務独占資格である。ただし独占しているのは「看護師という呼び方」ではなく「特定の行為」で、そこを分けて理解すると、他職種との線引きが見えてくる。
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業務独占と名称独占は別の仕組み
| 意味 | 違反したときの例 | |
|---|---|---|
| 業務独占 | その資格がないとその行為をしてはいけない | 無資格で採血する |
| 名称独占 | その資格がないとその名前を名乗れない | 資格がないのに「看護師」と名乗る |
看護師は両方を持つ。保健師助産師看護師法で、業務(第31条)と名称(第42条の3)の両方が制限されている。
一方で、名称独占だけの資格もある。栄養士・管理栄養士、保育士、介護福祉士などがこれにあたる。行為そのものは無資格でも行えるが、名乗ることはできない。
医療系の業務独占資格
| 資格 | 独占されている行為の中心 | 根拠法 |
|---|---|---|
| 医師 | 医業(診断・治療・処方) | 医師法 |
| 歯科医師 | 歯科医業 | 歯科医師法 |
| 薬剤師 | 調剤 | 薬剤師法 |
| 看護師・准看護師 | 療養上の世話、診療の補助 | 保健師助産師看護師法 |
| 助産師 | 助産、妊婦・じょく婦・新生児の保健指導 | 同上 |
| 診療放射線技師 | 人体への放射線照射 | 診療放射線技師法 |
| 臨床検査技師 | 一部の生理学的検査・採血 | 臨床検査技師等に関する法律 |
| 理学療法士・作業療法士 | 診療の補助としての理学療法・作業療法 | 理学療法士及び作業療法士法 |
| 歯科衛生士 | 歯牙・口腔への処置 | 歯科衛生士法 |
| 救急救命士 | 救急救命処置 | 救急救命士法 |
| 臨床工学技士 | 生命維持管理装置の操作 | 臨床工学技士法 |
| 言語聴覚士 | 診療の補助としての一部の検査・訓練 | 言語聴覚士法 |
「診療の補助」を業とできるのは、看護師・准看護師のほか、法律で個別に認められた職種に限られる。理学療法士や臨床検査技師が一定の行為を行えるのは、各法で「保健師助産師看護師法の規定にかかわらず」と定められているためである。
看護師の業務独占はどこまでか
保健師助産師看護師法第5条は、看護師の業務を「療養上の世話または診療の補助」と定めている。
療養上の世話
- 食事・排泄・清潔の援助
- 体位変換、移動の介助
- 療養環境の調整
- 症状の観察と記録
この範囲は介護職の業務と重なる部分がある。家族や介護職が行っても違法にならない行為が多く、「看護師でなければできない」と言い切れるのはごく一部になる。
診療の補助
- 注射、点滴の管理
- 採血
- 創傷処置
- 医療機器の操作
- 検査の介助
こちらは原則として医師の指示が前提になる。指示なしに独自の判断で行うと、診療の補助の範囲を超える。
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「医行為ではない」とされた行為
厚生労働省は、原則として医行為ではないと考えられる行為を通知で示している。介護職員等が行っても差し支えないとされているものである。
- 体温測定(腋窩、外耳道)
- 自動血圧測定器による血圧測定
- パルスオキシメータの装着
- 軽微な切り傷・擦り傷等の処置
- 一定の条件下での医薬品の使用介助(一包化された内服薬の服薬介助など)
- 爪切り、口腔ケア、耳垢の除去(いずれも条件つき)
条件が細かく付いている。「容態が安定している」「専門的な管理が必要でない」といった前提があり、判断は個別になる。
特定行為は「独占の外」ではなく「手順書で行える範囲」
特定行為に係る看護師の研修制度は、医師の判断を待たずに手順書により特定行為を行える仕組みである。業務独占の範囲を広げたのではなく、指示の受け方を変えた制度と理解するのが正確になる。
名称独占のみの資格(医療・福祉)
| 資格 | 行為そのものは |
|---|---|
| 管理栄養士・栄養士 | 無資格でも行える(特定給食施設等では配置義務がある) |
| 保育士 | 無資格でも保育はできる(施設の配置基準では必要) |
| 介護福祉士 | 無資格でも介護はできる(一部の医療的ケアを除く) |
| social福祉士・精神保健福祉士 | 相談援助は無資格でも行える |
| 公認心理師 | 心理支援は無資格でも行える |
「名称独占だから価値が低い」ということではない。配置基準や加算の要件になっている資格が多く、施設側には必要性がある。
資格を活かす場面で押さえること
- 求人票の「資格必須」が業務独占によるものか、配置基準によるものかで意味が変わる
- 業務独占の資格は、資格停止・取消の対象にもなる。行政処分の記録は残る
- 名称独占のみの資格でも、加算の要件になっていれば実務上は必須になる
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よくある質問
看護助手は何ができますか。
療養上の世話のうち、医行為に当たらない範囲を行える。環境整備、物品の準備、患者の移送などが中心になる。注射・採血・与薬といった診療の補助は行えない。施設ごとに業務範囲を明文化しておくのが安全になる。
准看護師も業務独占資格ですか。
業務独占資格である。行える行為の範囲は看護師と同じく療養上の世話と診療の補助だが、医師・歯科医師・看護師の指示を受けて行う点が異なる。免許を出すのも都道府県知事になる。
業務独占資格は名称独占も兼ねますか。
多くは兼ねている。看護師は業務・名称の両方が制限されている。ただし制度上は別の規定なので、片方だけの資格も存在する。
家族が医療的ケアを行うのは違法ですか。
違法とはされない。医師法の医業は「反復継続の意思をもって業として行う」ことが要件になっており、家族が自分の家族に対して行う行為はこれに当たらないと解されている。ただし安全上、指導を受けてから行う。
まとめ
- 業務独占は行為の制限、名称独占は名前の制限。看護師は両方を持つ
- 看護師の業務独占は「療養上の世話または診療の補助」。前者は介護職の業務と重なる部分がある
- 「診療の補助」を業とできるのは、法律で個別に認められた職種だけ
- 医行為ではないとされた行為が通知で示されている。ただし条件が細かく付いている
- 特定行為研修は独占範囲を広げた制度ではなく、指示の受け方を変えた制度
- 求人票の「資格必須」が、業務独占か配置基準かで意味が変わる