【看護技術】問診(アナムネ)の正しい聞き方と項目|患者の緊張をほぐす問いかけ
看護師が日常業務で行う「問診(アナムネシス)」。患者さんの状態を正確に把握し、医師の診断や今後のケアにつなげるための非常に重要なプロセスです。
しかし、「患者さんが緊張してうまく話してくれない」「話が脱線してしまい、必要な情報が引き出せない」と悩む方も多いのではないでしょうか。
この記事では、看護師に向けて、問診の正しい聞き方や必須の質問項目、そして患者さんの緊張をほぐしながら正確な情報を引き出すコミュニケーションのテクニックを網羅的に解説します。
現場ですぐに使えるチェックリストも掲載していますので、日々の業務にお役立てください。
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問診(アナムネシス)の目的と基本の流れ
問診の目的と重要性
問診の最大の目的は、患者さんの訴え(主訴)や背景を的確に把握し、医師の正確な診断や安全な治療へとつなげることです。
たとえば「胸が痛い」という主訴一つをとっても、問診で「いつから」「どのような痛みか(締め付けられるか、チクチクするか)」「痛む場所は移動しているか」を詳しく聞き出すことで、命に関わる心筋梗塞や大動脈解離なのか、あるいは筋肉痛や神経痛なのか、診断の優先順位を絞り込む重要な手がかりになります。
厚生労働省が推進する「チーム医療」の観点からも、看護師が患者さんから得た情報を医師や他職種と適切に共有することは、医療安全の確保や質の高い医療の提供において不可欠とされています。
診察との違い
問診と診察はどちらも「患者さんの状態を把握する」という目的は同じですが、情報の集め方が異なります。
- 問診: 言葉によるコミュニケーションを通じて、患者さんの主観的な症状(痛み、苦しさなど)や過去の病歴を聞き出すこと。
- 診察: 医師が視診、触診、聴診、打診などを行い、客観的な身体的所見を確認すること。
問診で得られた主観的情報をもとに、医師が診察で客観的情報を照らし合わせることで、正確な診断が導き出されます。
事前Web問診と対面問診の役割分担
近年、医療DXの推進により、来院前にスマートフォン等で入力する「Web問診」を導入する医療機関が増えています。Web問診は、既往歴やアレルギーなどの基本情報を漏れなく収集し、待ち時間を短縮するうえで非常に有効です。
しかし、Web問診だけでは患者さんの「細かなニュアンス」や「本当の不安」までは汲み取れません。看護師による対面問診では、Web問診の回答をベースに深掘りし、表情や声のトーンといった非言語情報を拾い上げることが求められます。
【現場で使える】問診の必須項目チェックリスト
問診で聞き漏らしを防ぐための基本的な質問項目をまとめました。患者さんの状態に合わせて優先順位をつけながら聴取しましょう。
| 問診項目 | 確認内容・具体的な声かけ例 |
| 主訴(最も困っている症状) | 「今日はどのような症状で いらっしゃいましたか?」 |
| 現病歴 | 発症時期、部位、痛みの性質、経過 (良くなっているか悪くなっているか)、 症状が出たきっかけ |
| 既往歴 | 過去にかかった大きな病気、 手術歴、入院歴 |
| 家族歴 | 家族や血縁者の遺伝的疾患 (糖尿病、高血圧、がん、心疾患など) |
| アレルギー歴 | 薬、食物、アルコール、金属などへの アレルギーの有無 |
| 服薬歴 | 現在飲んでいる薬(お薬手帳の確認)、 サプリメントの利用 |
| 生活環境・社会背景 | 喫煙・飲酒の習慣、睡眠・排泄の状況、 職業、同居家族の有無 |
| 女性特有の項目 | 妊娠・授乳の有無、 月経周期(※必要に応じて) |
| 患者の希望・不安 | 「今日一番診てほしいことは何ですか?」 「何かご不安なことはありますか?」 |
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「開放的質問」と「閉鎖的質問」の使い分け
患者さんから正確かつスムーズに情報を引き出すためには、質問の技法である「開放的質問(オープン・クエスチョン)」と「閉鎖的質問(クローズド・クエスチョン)」の使い分けが重要です。
開放的質問(オープン・クエスチョン)
患者さんに自由に答えてもらう質問方法です。
- 具体例: 「今日はどうされましたか?」「どのような痛みですか?」
- メリット: 患者さん自身の言葉で表現できるため、思いがけない情報や患者さんの本当の不安・心情を引き出しやすくなります。
- 活用シーン: 問診の導入時や、患者さんの全体的な状態、感情を把握したい場面に最適です。
閉鎖的質問(クローズド・クエスチョン)
「はい・いいえ」や、選択肢から選んで答えてもらう質問方法です。
- 具体例: 「熱はありますか?」「痛みはズキズキしますか、それともチクチクしますか?」
- メリット: 短時間で明確な事実を確認できます。患者さんも答える際の心理的ハードルが下がります。
- 活用シーン: 症状の詳しい性質や部位を特定したいとき、または体調が悪く長く話せない患者さんに対して有効です。
基本は、オープン・クエスチョンで広く話しやすい雰囲気を作り、クローズド・クエスチョンで情報を絞り込んでいくのが理想的な流れです。
話が脱線する・うまく話せない患者からの情報聴取テクニック
実際の現場では、マニュアル通りに問診が進まないことも多々あります。患者さんのタイプに合わせた接遇マナーと聴取テクニックを紹介します。
話が脱線する患者への対応
不安が強い患者さんや高齢の患者さんに多く見られるのが、関係のない話へ脱線してしまうケースです。この場合、話を無理に遮断すると信頼関係が損なわれる恐れがあります。
共感と軌道修正
「そうだったのですね、それは大変でしたね」と一度しっかり受け止め、共感を示します。そのうえで、「ところで、先ほどおっしゃっていた胃の痛みの件ですが…」と、角を立てずに本来のテーマへ話を戻します。
クローズド・クエスチョンへの切り替え
話が広がりすぎている場合は、選択肢を提示する質問に切り替えることで、患者さんの回答を誘導し、焦点を絞りやすくなります。
うまく話せない患者からの情報聴取
自分の症状をどう表現していいか分からない患者さんには、視覚的なツールや具体的な表現を提示してサポートします。
ペインスケールの活用
「全く痛くない状態を0、想像できる最も強い痛みを10とすると、今はいくつくらいですか?」と数値化してもらうことで、痛みの程度を客観的に共有できます。
身体図やジェスチャーの活用
「お腹のどのあたりですか? ここを指差してみてください」と、実際に指で示してもらうことで、正確な部位を把握できます。
具体的な例示を出す
「重苦しい感じですか? それとも締め付けられるような感じですか?」と、よくある症状の表現をこちらから複数提示することで、患者さんが直感的に選びやすくなります。
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まとめ:患者に寄り添う問診が適切な医療の第一歩
問診(アナムネシス)は、単なる情報収集の作業ではありません。患者さんの不安に寄り添い、信頼関係を築くための重要なコミュニケーションの場です。
Web問診等のデジタル化が進む現代においても、対面で「いつから」「どこが」「どのように」といった必須項目を深掘りし、言葉の裏にある不安を汲み取る看護師の役割は非常に重要です。
オープン・クエスチョンとクローズド・クエスチョンを効果的に使い分け、患者さんのペースに合わせた問いかけを行うことで、診断に必要な情報を正確に引き出すことができます。今回ご紹介したチェックリストや聴取テクニックを意識して、日々の業務に活かしてみてください。
参考資料・出典
- 厚生労働省「チーム医療の推進について」https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000002161.html
- 厚生労働省「患者の安全を守るための共同行動(医療安全推進総合対策)」https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/igyou/igyou.html
- 厚生労働省「医療DXの推進に関する工程表(問診等のデジタル化・情報共有化関連)」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000199739_00004.html