ナースの勉強部屋

ペインスケールの看護での使い分け|NRS・VAS・VRS・フェイススケールの境界線と看護記録の書き方

ペインスケールの看護での使い分け|NRS・VAS・VRS・フェイススケールの境界線と看護記録の書き方

ペインスケールは、患者さんが自分で痛みを伝えられるかどうかで選びます。数字で答えられる成人ならNRS、数字が難しければ言葉のVRSや顔の絵のフェイススケール、自分で訴えられない人には観察型のスケールです。

もう一つ大事なのは、同じ患者さんには同じスケールを使い続けることです。朝はNRS、夕方はフェイススケールと記録がばらばらになると、痛みが良くなったのか悪くなったのかを誰も判断できなくなります。

この記事では、スケールごとの違いと選び方の境界線、患者さんへの聞き方、評価のタイミング、看護記録での書き方を順に整理します。鎮痛薬の選び方や痛みの原因の見立ては扱いません。

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目次
  1. ペインスケール4種類(NRS・VAS・VRS・フェイススケール)の違い
  2. 患者に合うペインスケールを選ぶ境界線
    1. 自分で痛みを訴えられない患者には観察型スケールを使う
    2. バイタルサインだけで痛みを判断しない
  3. ペインスケールで痛みを聞くときの聞き方の例
    1. NRSの聞き方
    2. VRSの聞き方
    3. フェイススケールの聞き方
    4. 強さ以外にも聞いておくこと
  4. ペインスケールを使う評価のタイミング
  5. 看護記録でのペインスケールの書き方
    1. 記録の書き方の例
    2. 避けたい書き方
  6. よくある質問
    1. NRSで毎回「10」と答える患者さんには、どう対応すればいいですか?
    2. ペインスケールは施設ごとに決まっているものですか?
    3. 痛みが0になったら、評価をやめてもいいですか?
  7. まとめ
  8. 参考

ペインスケール4種類(NRS・VAS・VRS・フェイススケール)の違い

日本緩和医療学会のがん疼痛ガイドラインでは、痛みの強さを測るツールとしてNRS・VAS・VRS・フェイススケールの4つを挙げ、一般的にはNRSを推奨しています。

スケール 測り方 向いている場面 気をつけること
NRS(数値評価スケール) 痛みなしを0、考えられる最悪の痛みを10として、0〜10の11段階の数字で答えてもらう 数字で答えられる成人。口頭だけで聞けるので病棟・外来の標準 数字の意味が伝わらない人には使えない
VAS(視覚アナログスケール) 左端が「痛みなし」、右端が「最悪の痛み」の10cmの線に印を付けてもらい、左端からの長さを測る 術前から説明でき、理解力のある人の細かい変化を追うとき 紙と筆記用具が要る。「最悪の痛み」の基準があいまいになりやすい
VRS(言語評価スケール) 「痛みなし・少し痛い・痛い・かなり痛い・耐えられないくらい痛い」など、言葉の段階から選んでもらう 数字は苦手でも言葉なら答えられる人 段階が少なく、小さな変化は拾いにくい
フェイススケール(FRS/FPS) 痛みの程度を表す顔の絵から、今の痛みに一番近い顔を選んでもらう 小児(3歳以上で有用性の報告あり)、言葉や数字での表現が難しい人 笑顔や泣き顔の絵は、痛みより気分で選ばれることがある

NRSが標準になっているのは、紙も器具もいらず、ベッドサイドでも電話でも同じ聞き方ができるからです。VASは線の長さをミリ単位で測れるぶん細かく追えますが、紙を渡して印を付けてもらう手間があります。

フェイススケールには、泣き顔や笑顔の入ったもの(FRSと呼ばれることが多い)と、笑顔や涙を使わないFPS-R(改訂版フェイスペインスケール)があります。国際疼痛学会(IASP)は、FPS-Rで笑顔や涙を使わない理由を「見た目の表情ではなく、子どもが内側でどう感じているかを測るため」と説明しています。自施設でどちらの絵を使っているかは、一度確認しておきましょう。

患者に合うペインスケールを選ぶ境界線

スケールに優劣の順位はありません。患者さんが何で答えられるかで線を引きます。

患者さんの状態 使うスケール 境界線の考え方
成人で、0〜10の数字の意味が分かる NRS まずNRSを試す。説明して答えが返ってくれば、それで統一する
成人・高齢者で、数字を聞くと迷う・答えが毎回ぶれる VRS、またはフェイススケール 「3か4か」で止まる人は、言葉か絵に切り替えたほうが答えが安定する
小児(おおむね3歳以上) フェイススケール 数字の大小と0〜10の意味が分かる年齢になったら、NRSに移る。切り替えの年齢は施設や病棟の基準に合わせる
認知症が進み、自分で痛みを訴えられない PAINADなどの観察型スケール 本人が答えられるうちは自己申告を優先する。答えられなくなったら観察型に切り替える
人工呼吸中などで自己申告できない(ICU) BPS、CPOT 日本集中治療医学会のJ-PADガイドラインが推奨する観察型スケール
研究や術後の細かい推移を追いたい、理解力が十分ある VAS 紙を使える場面に限る。ふだんの病棟ならNRSで足りる

自分で痛みを訴えられない患者には観察型スケールを使う

PAINADは、認知症で自分で痛みを訴えられない人のためのスケールです。呼吸、ネガティブな発声(うめき声など)、表情、体の動き、なだめやすさの5項目を観察して点数を付けます。

J-PADガイドラインは、痛みを自己申告できる患者さんの評価が「ゴールドスタンダード」であり、言葉で伝えられないからといって痛みが無いとは言えない、としています。自己申告ができない人には、妥当性が確かめられた観察型スケールで医療者が評価します。

注意したいのは、PAINADの日本語版はがん疼痛ガイドライン(2020年版)の時点で「未検証」とされていることです。点数は目安として使い、チームで同じ見方をそろえることが大切です。

バイタルサインだけで痛みを判断しない

血圧や脈拍の上昇は、痛み以外の理由でも起こります。J-PADガイドラインは、バイタルサインだけで痛みを評価しないよう提案しています。バイタルの変化は「痛みを詳しく評価するきっかけ」として使い、評価そのものはスケールで行います。

ペインスケールで痛みを聞くときの聞き方の例

スケールは聞き方で答えが変わります。初回にスケールの意味をきちんと伝えておくと、2回目以降の答えがそろいます。

NRSの聞き方

初回は、両端の意味を先に伝えます。

  • 「痛みがまったくないのを0、考えられる一番ひどい痛みを10とすると、今の痛みはいくつくらいですか?」

2回目以降は短くて構いません。

  • 「朝と同じ0から10で聞きますね。今はいくつですか?」

「5くらいですか?」のように、こちらから数字を出して聞くのは避けます。患者さんはその数字に引っ張られます。

VRSの聞き方

  • 「今の痛みは、この中だとどれが近いですか? 痛みなし、少し痛い、痛い、かなり痛い、耐えられないくらい痛い」

紙に書いて見せると、高齢の方でも選びやすくなります。

フェイススケールの聞き方

  • 「この顔は、左から右にいくほど痛いという意味です。今の痛みに一番近い顔はどれかな?」

「今の気持ち」ではなく「今の痛み」を選んでもらうことを、はっきり伝えます。泣き顔の絵がある場合、痛みより不安や眠さで選ぶ子もいるからです。

強さ以外にも聞いておくこと

がん疼痛ガイドラインは、痛みの強さを「今の痛み」「一番強いとき」「一番弱いとき」「1日の平均」に分けて聞くとよい、としています。安静時と体を動かしたときで分けて聞くと、さらに情報が増えます。

  • 「一番痛かったのは何時ごろで、そのときはいくつでしたか?」
  • 「じっとしているときと、起き上がるときでは違いますか?」

あわせて、痛む場所、痛みの性質(ズキズキ、ジンジンなど)、強くなるきっかけ・楽になる方法、睡眠や食事への影響も聞いておくと、医師や他のスタッフとの共有がしやすくなります。

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ペインスケールを使う評価のタイミング

痛みは1回測って終わりではなく、変化を追うために繰り返し測るものです。評価するタイミングは次の場面が基本になります。

タイミング 目的
入院時・初診時 基準となる痛みの強さを残す。以後の比較の起点になる
定時の観察(勤務帯ごと、バイタル測定時など) 痛みの推移を追う。施設で決めた頻度に従う
患者さんが痛みを訴えたとき その時点の強さを記録し、医師への報告や指示の実施につなげる
痛みを伴う処置・リハビリ・体位変換の前後 体動時の痛みを把握する
鎮痛薬を使ったあと 効果が出たかを確かめる。何分後に再評価するかは施設の手順や医師の指示に従う
痛みの訴えや様子が急に変わったとき 新しい痛みが出ていないかを確認し、医師に報告する

鎮痛薬を使ったあとの再評価は、特に抜けやすい記録です。「使った」だけが残り、「痛みがどう変わったか」が残っていないと、次の勤務帯の看護師も医師も判断ができません。

看護記録でのペインスケールの書き方

日本看護協会の「看護記録に関する指針」は、看護実践を時間の経過とともに、遅滞なく、正確な時間で記載することを求めています。ペインスケールの記録も同じで、ポイントは3つです。

  1. スケール名と数値をセットで書く。「痛み5」ではなく「NRS 5/10」とし、フェイススケールなら使った絵の段階数も分かるようにする
  2. 時刻と状況(安静時か体動時か)を書く。同じ人でも、寝ているときと歩いたときでは数値が違う
  3. 同じスケールで時系列に並べる。途中でスケールを変えたら、変えた理由を一言残す

記録の書き方の例

  • 10:00 右下腹部の創部痛の訴えあり。NRS 6/10(体動時)、NRS 3/10(安静時)。ズキズキする痛み。起き上がりで増強
  • 10:05 医師の指示に基づき鎮痛薬を使用
  • 11:00 NRS 2/10(体動時)。「起き上がるのが楽になった」と発言。自力で端座位可能

このように並んでいると、次の勤務帯の看護師が見ても、痛みの強さ・性質・対応・効果が一目で追えます。

避けたい書き方

避けたい書き方 理由 書き換え例
「痛み強い」「疼痛あり」 強さが比較できない 「NRS 7/10(安静時)」
「痛み5」 どのスケールか分からない 「NRS 5/10」「VRS:痛い」
朝はNRS、夕方はフェイススケール 数値が比べられない 同じスケールで統一。変えるときは理由を記載
「鎮痛薬使用」で終わり 効果が分からない 再評価の時刻と数値を追記
観察型スケールの合計点だけ どの項目で点が付いたか分からない 合計点に加え、表情・うめき声など点が付いた項目を記載

フェイススケールとNRSは、どちらも0〜10で表せる場合がありますが、同じ数字でも同じ強さとは限りません。スケールを変えたときに前後の数値をそのまま比べないよう、記録にはスケール名を必ず残しましょう。

略語(NRS、VRSなど)は、施設で決められた略語一覧に沿って使います。看護記録に関する指針でも、略語は施設内で統一することが望ましいとされています。

よくある質問

NRSで毎回「10」と答える患者さんには、どう対応すればいいですか?

まず、0と10の意味が伝わっているかを確認します。それでも10が続く場合は、数字の大小より「朝と比べてどうか」「眠れたか」「食事がとれたか」など生活への影響も合わせて記録します。数値と様子が大きく食い違うときは、不安やせん妄などが隠れていないかにも目を向け、医師やチームで共有します。

ペインスケールは施設ごとに決まっているものですか?

多くの施設では、病棟や患者層ごとに使うスケールが決まっています。まずは自施設の手順やクリニカルパスを確認しましょう。そのうえで、決められたスケールでは答えにくそうな患者さんがいれば、スケールの変更をチームで相談します。

痛みが0になったら、評価をやめてもいいですか?

痛みの評価は、痛みがあるときだけのものではありません。0が続いていることも大事な情報なので、定時の観察では「NRS 0/10」と記録を続けます。体を動かしたときや処置の前後など、痛みが出やすい場面では引き続き確認しましょう。

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まとめ

  • ペインスケールは、患者さんが自分で痛みを伝えられるか、何で答えられるかで選ぶ
  • 数字で答えられる成人はNRS、言葉ならVRS、小児や数字が難しい人はフェイススケール
  • 自分で訴えられない人には、PAINAD(認知症)、BPS・CPOT(ICU)など観察型スケールを使う
  • 聞き方は初回にそろえ、「今の痛み」を、こちらから数字を出さずに聞く
  • 入院時・定時・訴えがあったとき・処置の前後・鎮痛薬を使ったあとに評価する
  • 看護記録は「スケール名+数値+時刻+状況」を、同じスケールで時系列に残す

参考

  • 日本緩和医療学会「がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン 2020年版」Ⅱ章 2 痛みの包括的評価 https://www.jspm.ne.jp/files/guideline/pain_2020/02_02.pdf
  • 日本ペインクリニック学会「痛みの評価法」 https://www.jspc.gr.jp/igakusei/igakusei_hyouka.html
  • 日本集中治療医学会「日本版・集中治療室における成人重症患者に対する痛み・不穏・せん妄管理のための臨床ガイドライン(J-PADガイドライン)」 https://www.jsicm.org/pdf/2015-J-PAD-guideline.pdf
  • 日本看護協会「看護記録に関する指針」 https://www.nurse.or.jp/nursing/home/publication/pdf/guideline/nursing_record.pdf
  • International Association for the Study of Pain「Faces Pain Scale – Revised」 https://www.iasp-pain.org/resources/faces-pain-scale-revised/