ナースの勉強部屋

終末期看護とは?役割・仕事内容・緩和ケアとの違いまで徹底解説

終末期看護とは?役割・仕事内容・緩和ケアとの違いまで徹底解説

終末期看護とは、病気や老衰からの回復の見込みがない患者に対して、最期の瞬間までその人らしく生きることができるよう、医療従事者らが提供する看護のことを意味します。

この記事では、終末期看護で大切にすべきことはどんなことなのか、終末期看護に興味がある場合、どこで働けばよいのかなどについて詳しく解説していきます。

また、終末期看護のやりがい、大変なこと、向き・不向きについては、株式会社Donutsが独自に集計したアンケート結果もお伝えしていきます。

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目次
  1. 終末期看護とは
    1. 終末期の定義
  2. ≪重要≫「終末期医療」は2015年より「人生の最終段階における医療」に置き換えられている
  3. 終末期における看護師の役割・仕事内容
    1. 看護計画立案
    2. 疼痛コントロール
    3. 傾聴・受容
    4. 悲嘆ケア
      1. グリーフケア
    5. エンゼルケア
    6. 意思決定支援(ACP)
  4. 終末期に携わる看護師の働き方
    1. 一般病院(急性期・地域包括ケア病棟など)
    2. 在宅医療・訪問看護ステーション
    3. ホスピス型住宅・住宅型有料老人ホーム
    4. 有床診療所・在宅療養支援診療所
    5. 介護施設(特養・老健・有料老人ホーム)
    6. 緩和ケア病棟・ホスピス病棟
  5. 終末期看護と緩和ケアの違い
    1. WHOによる緩和ケアの定義
  6. 終末期看護に求められる能力
    1. 観察力・アセスメント力
    2. コミュニケーション能力
    3. 共感力
    4. 苦痛緩和の知識・技術
    5. 家族支援能力
    6. 倫理的判断力
    7. 多職種連携能力
    8. 感情コントロール・自己ケア能力・ストレスマネジメント
  7. 終末期看護のやりがい
  8. 終末期看護の大変さ
  9. 終末期看護に向いている人
  10. 終末期看護に携わる看護師の1日
    1. 終末期看護の1日の特徴
  11. 終末期看護からのキャリアパス
    1. 緩和ケア認定看護師
    2. 訪問看護・在宅看取り
    3. 地域包括ケア
    4. 一般病棟での緩和ケア担当
    5. がん看護関連
    6. 管理職・教育担当
    7. 研究・大学院進学
  12. 終末期看護に関してよくある質問とその答え
    1. Q. 終末期看護は辛い?
    2. Q. 新卒で終末期看護に携わることは可能?
  13. 終末期看護を経験することで、「看護の本質」を考えて行動できるようになる

終末期看護とは

終末期看護とは、人生の最期を迎える患者に対して、治療ではなく、“全人的苦痛の緩和”を目的に提供される看護を意味します。

「全人的苦痛(ぜんじんてきくつう=トータルペイン)」とは、主に医療や看護の分野で使われる言葉で、近代ホスピス運動の創始者と呼ばれるイギリスの医師、シシリー・ソンダースが提唱した概念です。

全人的苦痛は、次の4つの要因によって構成されます。

  • 身体的苦痛:身体の痛みや症状、日常生活動作の支障など
  • 精神的苦痛:不安、苛立ち、うつ状態、孤独感など
  • 社会的苦痛:経済、仕事、家庭、相続、人間関係などに関する問題
  • スピリチュアル(霊的)な苦痛:人生の意味への問い、死への恐怖、自責の念、価値観の変化など

参照: 公益社団法人日本看護化学学会「全人的痛み(トータルペイン)」

なお、このあと詳しく解説しますが、「終末期」という言葉に関して法的なルールはないものの、厚生労働省は2015(平成27)年以降はこの言葉を使っていません。

そのため、厚生労働省が終末期の定義について記したデータはそれ以前のものになりますが、2009(平成21)年に作成されたガイドラインにおいては、終末期は次のように定義されています。

終末期の定義

以下の3つの条件を満たす場合を「終末期」といいます 

  1. 医師が客観的な情報をもとに、治療により病気の回復が期待できないと判断すること 
  2. 患者が意識や判断力を失った場合を除き、患者・家族・医師・看護師などの関係者が納得すること 
  3. 患者・家族・医師・看護師などの関係者が死を予測して、対応を考えること

なお、③の“考えるべき対応”については追って詳しく解説していきますが、患者やその家族の希望にも耳を傾けながら決めていくことが大切です。

≪重要≫「終末期医療」は2015年より「人生の最終段階における医療」に置き換えられている

終末期看護についての理解を深めるためには、厚生労働省による用語の変更についても知っておくことが大切です。

「終末期」という言葉は、現在でも医療の分野で使われてはいますが、2015年、厚生労働省は「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」を「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」へと変更しています。加えて、本文中の「終末期医療」という用語もすべて「人生の最終段階における医療」に変更しています。

なぜ、この変更について知っておくべきかというと、終末期(と一般に呼ばれている概念)をとりまく社会背景が変わっているということだからです。

具体的には、“高齢多死社会”が進んでいることに伴い、地域包括ケアの構築の必要性が高まってきていることや、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)の概念を踏まえた取組が普及してきていることなどが大きな理由です。

なお、ACPとは、将来の健康状態の変化に備えて、自分が望む医療やケアについて前もって考えるとともに、家族や医療・ケアチームとも話し合うプロセスのことをいいます。

こうした背景があることから、改定されたガイドラインにおいては、ACPの取組の重要性などが強調されています。つまり、これから終末期看護に携わっていきたいという考えがあるなら、ACPについても理解を深めておくことが大切だということです。

また、詳しくは後述しますが、改定されたガイドラインでは、医療・ケアチームの対象に介護従事者が含まれることが明確化されていることから、医療従事者と介護従事者との連携がますます重要になることも明らかです。

参照:

厚生労働省「人生会議(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)してみませんか?」

厚生労働省「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」の改訂について

公益社団法人日本看護協会「人生の最終段階における医療と倫理」

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終末期における看護師の役割・仕事内容

ここまで説明してきたことをもとにすると、終末期における看護師の大切な役割は、

  • “全人的苦痛の緩和”をサポートすること
  • ACPを調整・支援すること

といえます。さらに、

  • 患者の家族の精神的苦痛を緩和すること
  • 患者が亡くなったあとのケア

なども重要な役割です。これを踏まえて、終末期における看護師の具体的な業務をみていきましょう。

看護計画立案

終末期看護においては、患者やその家族の価値観を尊重しながらも、患者が自身の症状とうまくつきあっていけるよう、「痛みや苦痛の軽減」「QOLの維持」に重きを置いた看護計画を立案することが大切です。

自覚症状や苦痛の有無、医師や看護に対する要望などの「主観的情報」、バイタルサインや各種検査データ、医師の見立て、排泄回数、食事の摂取量などの「客観的情報」の両方を踏まえたアセスメントを行い、“今後の予測”を防ぐためのケアを考えていきます。

疼痛コントロール

身体的苦痛を緩和するためには、「疼痛コントロール」が不可欠です。疼痛コントロールとは、薬物療法・理学療法・心理療法などによって、患者が抱えている痛みを管理することです。このうち、看護師が関わる割合が高いのは薬物療法です。

具体的には、非麻薬性・非ステロイド性・オピオイド系の鎮痛剤や漢方薬などを使って、患者の疼痛をコントロールします。どういった薬物を使うのかを判断するのは基本的には医師で、看護師は投与やケアに関わっていきます。

傾聴・受容

身体的苦痛の緩和には、薬物療法をはじめとする疼痛コントロールが有効ですが、精神的苦痛・社会的苦痛・スピリチュアルな苦痛の緩和には、薬物療法以外も必要です。

迫りくる死への恐怖、孤独感などの「不安」や、特にガン患者の終末期に発症しやすい「せん妄」、“眠るともう二度と目覚められないのだろうか”などの恐怖心からくる「不眠」などの症状を抱えた患者に寄り添い、傾聴することはとても大切です。

悲嘆ケア

患者が抱える悲しみや苦しさ、患者の家族が抱える辛さや、遺された家族の喪失感などを受け止めて、必要なケアを行っていきます。

悲嘆ケアは、患者やその家族との関係性の構築なしには成立しません。なぜかというと、関係性ができていない相手に対して、心の内を晒すことは難しいためです。そのため、まずは患者やその家族との関係性を築くことからのスタートということになります。

グリーフケア

悲嘆ケアのうち、患者に先立たれた家族の悲しみに寄り添い、立ち直りのプロセスを支援することを「グリーフケア」といいます。

なお、病棟におけるグリーフケアは、臨終後に家族と患者が一緒に過ごせる環境・時間を用意することや、家族にエンゼルケアへの参加を促すことなどが基本となりますが、訪問医療や在宅医療の場合、看取り後に遺族のもとに出向いて傾聴するなどのグリーフケアを行うこともあります。

また、患者の療養生活開始時から、看取りへの不安や動揺を少しでも減らせるよう、家族に寄り添うことも、グリーフケアの一環であるといえます。

エンゼルケア

患者が亡くなった後、全身の清拭および傷口やチューブ跡の処置によってご遺体を清潔に保ち、生前に近い穏やかな姿に整えることによって、故人の尊厳を守ることをいいます。

意思決定支援(ACP)

人生の最終段階の過ごし方・大事にしたいことなどを、患者自身が選択・決定できるようサポートします。意思決定支援(ACP)においては、単に“現時点の意思を確認する”のではなく、患者の人生観・価値観などを深く・広く把握することが大切です。

また、「どうしたいのか」を聞くより前に、患者とその家族に、病状やケアについてきちんと説明して、それを踏まえたうえで、受けたい医療や残りの人生の過ごし方について考えてもらうことが大切です。

終末期に携わる看護師の働き方

終末期医療・終末期看護、別の言い方をすれば「人生の最終段階における医療」は、患者や家族の希望・病状においてさまざまな場所で受けられます。

つまり、終末期看護を提供する看護師が働く場所は病院に限定されないということです。

具体的にどのような場所で働くことがあるのかをみていきましょう。

一般病院(急性期・地域包括ケア病棟など)

特に、がん病棟、呼吸器内科神経内科、ICU後方病棟、地域包括ケア病棟などでは、治療継続と並行して終末期ケアを行うケースがあります。

急変対応や医療処置も多く、治療と看取りの両方を経験しやすい職場です。

在宅医療・訪問看護ステーション

利用者の自宅へ訪問して、症状観察、症状観察、医療用麻薬管理、家族支援、エンゼルケア、在宅看取りなどを行います。

在宅医療・訪問看護は、「その人らしい生活」を重視した看護を実践しやすいです。

ホスピス型住宅・住宅型有料老人ホーム

施設内で24時間看護体制を設けて、終末期患者や難病患者に対応します。また、次のような特徴があります。

  • 病院より自宅での生活に近い日常が送れる
  • 施設内訪問看護形式が多い
  • 看取り件数が多い
  • がん末期・ALSなど医療依存度が高い利用者が多い

有床診療所・在宅療養支援診療所

在宅と入院の中間的な役割を担います。レスパイト入院、短期入院、在宅復帰支援、看取りなどを通して、地域密着型の終末期看護を経験できます。

介護施設(特養・老健・有料老人ホーム)

特別養護老人ホーム、介護付き有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅などで、終末期ケアに携わる看護師の需要はとても増えています。

医療処置は病院より少ない一方、長期的な関係性、生活支援、家族との対話を重視した看護が特徴です。

緩和ケア病棟・ホスピス病棟

緩和ケア病棟やホスピス病棟などでは、がん終末期などの患者に対して、疼痛緩和、呼吸苦・倦怠感への対応、精神的ケア、家族ケア、看取りなどを行います。

なお、「緩和ケア病棟」は日本の医療制度で正式に位置づけられている病棟で、「緩和ケア病棟入院料」の診療報酬も設定されています。緩和ケア病棟では、主にがんや難治性疾患の患者に対して、人生の最終段階のケアや、痛みや苦痛の緩和サポートを行います。

一方、「ホスピス」とは欧米発祥の概念で、「苦痛を和らげる」「尊厳を大切にする」「その人らしい時間を支える」などの特徴があるケアの理念です。日本では、「緩和ケア病棟」と「ホスピス病棟」がほぼ同義で使われることもありますが、厳密には、ニュアンスに次のような違いがあります。

  • 緩和ケア病棟:制度上の正式名称
  • ホスピス病棟:理念・終末期ケアを重視した表現

なお、「終末期看護」と「緩和ケア」の違いについてもこのあと詳しく解説していきます。

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終末期看護と緩和ケアの違い

終末期看護と緩和ケアの違いを理解するために、まずは、WHO(世界保健機関)による緩和ケアの定義を確認しましょう。

なお、WHOによって緩和ケアの定義が策定されたのは2002年ですが、2026年現在も国際的な基本方針として広く採用されています。

WHOによる緩和ケアの定義

「緩和ケアとは、生命を脅かす病に関連する問題に直面している患者とその家族のQOLを、痛みやその他の身体的・心理社会的・スピリチュアルな問題を早期に見出し、的確に評価して対応することで、苦痛を予防して和らげることを通して向上させるアプローチである

緩和ケアとは……

  • 痛みやその他の辛い症状を和らげる
  • 生命を肯定して、死にゆくことを自然な過程と捉える
  • 死を早めようとしたり遅らせようとしたりするものではない
  • 心理的およびスピリチュアルなケアを含む
  • 患者が最期までできる限り能動的に生きられるように支援する体制を提供する
  • 患者の病の間も死別後も、家族が対処していけるように支援する体制を提供する
  • 患者と家族のニーズに応えるためにチームアプローチを活用して、必要に応じて死別後のカウンセリングも実施する
  • QOLを高める。さらに、病の経過にも良い影響を及ぼす可能性がある
  • 病の早い時期から化学療法や放射線療法などの生存期間の延長を意図して行われる治療と組み合わせて適応でき、つらい合併症をよりよく理解して対処するための精査も含む

参照:

特定非営利活動法人 日本緩和医療学会「WHO(世界保健機関)による緩和ケアの定義(2002)」定訳

特定非営利活動法人 日本ホスピス緩和ケア協会「ホスピス緩和ケアの歴史と定義

定義を見たらわかる通り、終末期看護と緩和ケアには大きな違いはなく、全体的な方向性としては同じです。

一つだけ違いがあるとすれば、上記定義のうち下線を引いた部分です。つまり、“開始する時期”に違いがあり、病を発症していると診断された段階からでも開始する可能性があるという点です。

ただし、診断された時点で回復の可能性がないこともあり得るので、そうした場合においては、“ほぼ違いがない”ととらえることができます。

また、定義上の違いではありませんが、日本では、緩和ケア病棟はがん患者を対象としているケースが多いです。これに対して、終末期看護は、人生の最終段階にあるすべての患者が対象とされています。

なお、厚生労働省が緩和ケアについて説明しているページでも、次のように、緩和ケアを“がん患者へのケア”として説明しています。

「『がん対策推進基本計画(平成24年6月閣議決定)』において、緩和ケアについては、「がんと診断された時からの緩和ケアの推進」が重点的に取り組むべき課題として位置付けられています」

参照: 厚生労働省「緩和ケアについて」

終末期看護に求められる能力

終末期看護においては、単に医療処置を行うだけでなく、「患者が最期までその人らしく過ごせるようサポートする能力」が求められます。

特に重要とされる能力を整理していきます。

観察力・アセスメント力

終末期では、痛み、呼吸困難、食欲低下、せん妄、倦怠感など多様な症状が発症するだけでなく、それぞれの症状は日々変化します。そのため、変化を早期に察知することが大切です。

特に、言葉で訴えることが難しくなった患者の変化は敏感に感じ取ることが求められます。

コミュニケーション能力

終末期では、「治すための会話」よりも、「支えるための会話」が中心になります。

そのため、「傾聴」「沈黙を受け止める力」「感情を否定しない姿勢」が大切です。また、「家族との対話」「多職種との連携」も大事にすることで、サポート力を強化できます。

患者とのコミュニケーションにおいては、「死ぬのが怖い」「家に帰りたい」「家族に迷惑をかけたくない」などの言葉の背景を理解する力も求められます。

共感力

単に感情移入するだけでなく、患者や家族の気持ちを理解しようとすることや、苦しみを尊重すること、相手の立場に寄り添って関わっていくことが大切です。

特に、患者が孤独感や喪失感、後悔、怒り、死への不安などを示した際には、「そう感じるのですね」「辛いですよね」とまずは受け止めることが大切です。

“まず受け止める”を大事にせず、すぐに励ましたり、無理に前向きにさせたりすると、患者からすると「この気持ちはわかってもらえない」としか感じられず、患者の辛い気持ちをかえって増幅させてしまいます。

苦痛緩和の知識・技術

終末期看護においては、身体的苦痛だけでなく、精神的・社会的・スピリチュアルな苦痛への理解が必要です。

前者に関しては、オピオイド管理、呼吸苦への対応、口腔ケア、安楽な体位調整など、具体的に何をすればいいかがわかりやすい場合が多いです。

精神的・社会的・スピリチュアルな苦痛に対しては、まずは患者の気持ちに寄り添うことが必要ですが、苦痛に対して適切に対処するためには、「苦痛緩和のためにどうすればいいのか」の知識・技術が不可欠です。

家族支援能力

終末期看護では、患者だけでなく家族もケア対象です。

家族は、看取りへの不安、介護疲れ、後悔、悲嘆を抱えています。そのため、状態説明の補足、面会時の支援、看取り準備、グリーフケア(悲嘆ケア)などが必要です。

倫理的判断力

終末期では「正解が1つではない場面」が多くあります。

たとえば、「延命治療をどうするか」「本人意思をどう尊重するか」「家族の希望と患者意思が違う場合、点滴や経管栄養をどうするか」などについても考えなければなりません。

そのため、「ACP」「倫理的意思決定支援」「患者の価値観の尊重」に関する理解が求められます。

多職種連携能力

終末期ケアはチーム医療です。

医師や薬剤師、リハビリ職だけでなく、管理栄養士、医療ソーシャルワーカー、臨床心理士、チャプレン(病院やホスピスで心のケア・スピリチュアル的なケアを行う宗教者)などとも連携します。

そのなかで看護師は「患者に最も近い職種」として、情報共有の中心的役割を担うことが多いです。

感情コントロール・自己ケア能力・ストレスマネジメント

終末期看護では、死別の積み重なりなどにより、無力感やバーンアウトなどが起こりやすいです。

そのため、感情を抱え込みすぎないことや、自分自身をケアすることも非常に大切です。

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終末期看護のやりがい

終末期看護では、患者とじっくり関わる時間を比較的取りやすい傾向にあります。

そのなかで、相手が大切にしていることを聴かせてもらい、最期の希望を支えることによって、「ありがとう」「あなたがいてよかった」と感謝されることがあります。患者からのこうした言葉をもらえることを、大きなやりがいだと感じる看護師は多いです。

家族支援でも同様です。「きちんとお別れできた」「悔いが少なかった」などの言葉をもらえたことで、看護の意義を確認できることがあります。

そうした経験を通して、看護観・人生観が深まり、これまで以上に患者の立場に立った看護を実践できるようになったと感じる人も多いです。

なお、現役看護師へのアンケートでは次のような声が上がっています。

「患者さんと信頼関係を築いて、最期を迎えるにあたっての本音を聞き出し、患者さんやその家族のためにできることや、いかに苦痛を和らげてあげられるかを考えることは、終末期看護においてしかできないことです」(juninoaloveさん・30代女性)

「終末期看護においては、患者の身体的・精神的・社会的・スピリチュアルな観点における苦痛や不安を和らげることが看護師の大きな役割です。そのため、患者やその家族とコミュニケーションをとって、一人ひとりの生きてきた背景や人生観などと向き合うことを通して、多様な価値観に触れることができます」(まゆみさん・40代女性)

「亡くなっていく人が、最期の時間をどのように生きていきたいのか、何を叶えてほしいのかなどを考える機会は、終末期看護にしかないものです」(りょうさん・30代女性)

患者一人ひとりが、人生の最終段階に望むことに耳を傾け、自分にできることを考えることで、看護師としても人としても成長を感じられることになるでしょう。

終末期看護の大変さ

終末期看護には大きなやりがいがありますが、一方で、精神的にも身体的にも負担が大きい分野でもあります。特に、「人の死に継続的に向き合うこと」は、他の領域とは異なる大変さにつながります。

長く関わった患者が亡くなったときほど、喪失感や無力感に苛まれやすくなります。若い患者、家族とのかかわりが深かった患者などの看取りも、強い感情負担になりやすいです。

一方で、家族対応が難しいケースもあります。終末期患者の家族は、患者本人同様、強いストレスを抱えているため、治療への強い希望やクレームなどの言動によって、医療者に感情をぶつけてくることがあります。

それに対して辛抱強く付き合ったり、冷静に対処したりすることに大変さを覚えることもあるでしょう。

また、家族や患者への対応に関しても処置に関しても、「正解がない」難しさがあります。

身体的負担に関しては、清潔ケア、体位変換、排泄介助、夜間対応などが挙げられます。夜間中の看取り対応が重なることもあります。

なお、現役看護師へのアンケートでは次のような声が上がっています。

「(急性期や回復期の場合)看護師は患者の退院を笑顔で見送ることが多いが、終末期は回復して退院することはないので、精神的な強さが求められる」(jnuninoaloveさん・30代女性)

「終末期の患者は回復していく可能性はほぼなく、最期の苦しむ姿を目の当たりにすることが多いため、希望を持てずに辞めていってしまう看護師も多いです」(yukariさん・30代女性)

「患者の家族に対して、死に至る経過を説明して、家族のグリーフケアを行う責務も担っていること」(まきさん・30代女性)

実際、精神的な負担が大きいことから、終末期から離れてしまう看護師は多いです。

終末期看護に向いている人

終末期看護に向いている人の特徴としては、患者の気持ちに寄り添い、小さな変化にも気づいて対処できることや、患者や家族の気持ち・考えを尊重できることなどが挙げられます。また、答えのない問題を前に、「何が患者にとって大切か」を考えられることや、チームで協力できることも大切な要素です。

自分の考えを優先するのではなく、相手を尊重して、相手のペースに合わせられるという意味で、「静かなタイプ」も向いているといえます。穏やかで落ち着いている雰囲気の看護師だと、安心できると感じる患者も多いです。

なお、現役看護師へのアンケートでは次のような声が上がっています。

「精神的に強い人、急変時の対応がしっかりできる人。患者の家族によっては、DNRなどの希望があるので、そうした個別の希望に落ち着いて応えられる人が向いています」(さささん・20代女性)

「人の気持ちに寄り添うことができて、感情移入することなく、患者様第一に考えられる人が向いています」(にくまんさん・20代女性)

「患者本人だけでなく、患者に関わっている人にも目を向ける必要があるため、コミュニケーション能力があって広い視野で全体を見渡せる人に向いています」(りょうさん・30代女性)

「元気が取り柄の人より、一緒にいてホッとできるような穏やかな人のほうが向いていると思う」(さっしーさん・20代女性)

回答に出てきた「DNR」は、「Do Not Resuscitate(蘇生処置拒否)」の略で、心停止や呼吸停止に陥った場合に、心臓マッサージや人工呼吸などの心肺蘇生を行わないことを意味します。

こうした希望を含め、患者やその家族の意思を尊重して、最期まで寄り添えることは、終末期看護においてもっとも大切なことであるといえるでしょう。

終末期看護に携わる看護師の1日

終末期看護は、急性期看護のような「処置・検査・治療をどんどん回す」という流れとはかなり異なります。患者と関わる時間、会話や苦痛緩和に使う時間の比重が高く、家族ケアにも時間をかけます。

ホスピス病棟などで働く看護師のスケジュール例は次の通りです。

時間業務内容終末期での具体的な
関わり・ポイント
【比較】
急性期看護との違い
8:30出勤・申し送り疼痛、呼吸状態、せん妄の有無、看取りの可能性など「生活・心理面」を中心に共有します。急性期はバイタル異常、検査、手術など「治療進行」の情報が中心になります。
9:00ラウンド・朝のケア清潔・口腔ケア等を行いながら、苦痛や“その人らしさ”を確認します。「家に帰りたい」等の本音が出ることもあります。急性期では「効率よく処置を回す」時間になりやすい傾向があります。
10:30カンファレンス症状緩和、ACP、家族支援など、「何を大切にし、どう過ごしたいか」という価値観の共有を行います。急性期では治療計画、退院調整、検査結果の共有が中心となります。
11:30家族対応状態説明の補足、面会支援、不安の傾聴など。「家族の感情を受け止め、看取り準備を支える」役割を担います。(終末期特有の心理的・倫理的サポートの比重が非常に高くなります)
12:30休憩看取りが近い患者がいる場合はゆっくり休めず、病棟全体が緊張感を持つこともあります。
13:30午後のラウンド好きな音楽を流す、足浴、会話など、「今この時間をどう過ごすか」を支えるゆっくりとした関わりを持ちます。急性期では「次の治療へ進めるための準備」にあてる時間となります。
15:00看取り対応状態悪化時は呼吸観察、苦痛緩和、家族付き添いを支援。看取り後はエンゼルケアやグリーフケアを行います。
16:00記録・情報共有痛みスケール、表情変化、家族の反応、本人の希望など「数値化しにくい情報」を丁寧に記録してシェアします。
17:00申し送り・退勤夜勤担当へ、今後の状態変化予測、看取りの可能性、家族の状況、不安の強さなどを引き継ぎます。

終末期看護の1日の特徴

終末期看護においては、1日を通して、「何かを“する”看護」ではなく、「その場にいる看護」が大切になります。

たとえば、「沈黙を共有する」「手を握る」「不安な気持ちに耳を傾ける」といったことに時間をかけることが求められます。

終末期看護からのキャリアパス

終末期看護で経験を積んだ看護師には、さまざまなキャリアパスがあります。

終末期看護で培われる、苦痛緩和の知識、家族支援力、倫理的判断力、多職種連携力、コミュニケーション力などが、多くの領域で高く評価されるためです。

主なキャリアパスは次の通りです。

緩和ケア認定看護師

資格を取得することによって、痛み・症状緩和、意思決定支援、家族ケア、看取り支援などの専門性をさらに高めることができます。

資格取得後は、同じ職場内でスタッフ教育を担うこともあれば、がんセンターや在宅医療などに移る場合もあります。

参照: 公益社団法人日本看護協会「認定看護師」

訪問看護・在宅看取り

在宅では、がん末期、老衰、神経難病などの看取り支援が多いため、終末期経験者は非常に重宝されます。

前半で解説した通り、「病院ではなく家で最期を迎えたい」というニーズも増加しているぶん、需要も高まっています。

地域包括ケア

訪問看護・在宅看取りと同じ理由で、地域包括ケア病棟においても、終末期看護経験者のニーズが高まっています。

高齢多死社会においては、「人生の最終段階」を支える力が、病院以外でも重要視されています。

一般病棟での緩和ケア担当

近年は、「終末期だけでなく、治療中から緩和ケアを行う」流れが広がっています。たとえば、苦痛緩和、家族対応、ACP支援などのスキルは、がん病棟、内科病棟、ICU、外科病棟などでも歓迎されます。

がん看護関連

終末期看護は、がん看護との関連が深いです。そのため、がん看護、がん相談支援、化学療法看護などに進む人も多いです。

管理職・教育担当

終末期領域においては、倫理調整、チーム支援などが重要なため、マネジメント能力が培われやすいです。そのため、病棟主任、看護師長、教育担当者などへの道を進む人もいます。

研究・大学院進学

終末期ケアは研究対象としても重要です。たとえば、グリーフケア、スピリチュアルケア、ACP、家族看護などは、今後さらなる発展が期待される領域です。そのため、大学院進学後、研究者や看護教育の道に進む人もいます。

終末期看護に関してよくある質問とその答え

続いては、終末期看護に関してよくある質問とその答えをみていきます。

Q. 終末期看護は辛い?

A.終末期看護に対して、「辛い」という感情を持つ人は多いです。

特に、人の死や家族の悲しみに継続的に向き合うことから、精神的負担は大きくなります。

ただし、「辛いだけ」ではありません。患者やその家族と精神的にも深くかかわることによって、大きなやりがいを見出せる瞬間もたくさんあります。

「“その人らしさ”を支えられたという実感を持てた」「家族から感謝された」「人生観が変わった」という経験を重ねることによって、「辛いこともあるけど、終末期看護の仕事を続けたい」と感じる人は多いです。

Q. 新卒で終末期看護に携わることは可能?

A.可能です。

実際に、新卒でホスピスやがん専門病院に入職する看護師もいます。ただし、病院によって考え方は大きく異なるため、どこでも受け入れてくれるというわけではありません。

一般病棟経験後に、終末期の患者を対象とした病棟などに異動となるパターンのほうが多いです。病院によっては、「まずは急性期経験を積んでから」という方針をとるところもあります。

新卒で終末期看護に進むと、精神的に辛いシーンも多く経験しますが、人生、尊厳、苦痛、家族などについて自ずと深く考えるようになることから、看護観が育ちやすいといわれています。

一方、終末期においても、点滴、吸引、排泄介助、急変対応などの基本技術は必須なので、基礎技術習得と並行するかたちで、患者の精神的ケアや家族対応を学ぶことで、負担が大きくなりやすいです。

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終末期看護を経験することで、「看護の本質」を考えて行動できるようになる

「看護の本質」は時代や立場によってさまざまに語られますが、多くの看護理論や現場で共通している考えとしては、“その人が、その人らしく生きることを支えること”が挙げられます。

つまり、単に病気を治すことはなく、苦痛を和らげること、安心を与えること、寄り添うこと、生活を支えること、尊厳を守ることなどが看護の重要な役割だということです。

終末期看護を経験すると、自然とこの視点を持って看護を提供できるようになるため、看護師にとっては非常に大きな意義があります。

そう考えると、将来的にどういった方向に進みたいかはさておき、一度は終末期看護を経験することが大切だといえるでしょう。