せん妄の評価スケールの使い分けと看護記録|CAM-ICU・ICDSC・DSTの違い、どれを使うかの境界線と記録の例文
せん妄の評価スケールは、せん妄が起きているかを、看護師が同じ基準でくり返し確かめるための物差しです。ICUではCAM-ICUとICDSC、一般病棟では国内で作られたDSTなどがよく使われています。
スケールによって、見ている時間の幅も、判定のしかたも違います。「CAM-ICU陰性」と「ICDSC 2点」は、同じ患者さんでも別のことを言っています。記録に点数だけを書くと、次に読んだ人がその意味を取り違えることがあります。
この記事では、スケールごとの見ている項目と判定の考え方、どれを使うかの境界線、記録の書き方と例文を整理します。せん妄の診断や治療の方針は医師が判断します。どのスケールを使うかは、所属先で採用しているものに合わせてください。
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せん妄の評価スケールとは(リスクの確認・スクリーニング・診断は別の段階)
せん妄にかかわる「チェック」には、目的の違う3つの段階があります。記録でもこの3つを混ぜないことが大切です。
| 段階 | 何をするか | 主に使うもの | 誰が判断するか |
|---|---|---|---|
| リスクの確認 | せん妄が起きやすい要因があるかを確かめる | 施設のチェックリスト | 看護師などがチェックし、対策を立てる |
| スクリーニング | いま、せん妄の可能性がある状態かを確かめる | CAM-ICU、ICDSC、DSTなど | 看護師が評価し、結果を医師へ伝える |
| 診断・治療 | せん妄かどうか、原因と治療を決める | 医師の診察 | 医師 |
リスクの確認には、診療報酬の「せん妄ハイリスク患者ケア加算」の仕組みがかかわります。令和8年度の留意事項の通知では、入院患者全員にせん妄のリスク因子の確認を行い、ハイリスクの患者に対策を行うこと、その確認と対策は各医療機関が作るチェックリストに基づいて行うこと、ハイリスクの患者は定期的にせん妄の有無を確認することが示されています。
リスクのチェックリストで「ハイリスク」と付いても、せん妄が起きているという意味ではありません。せん妄が起きているかを確かめるのが、この記事で扱う評価スケールです。
CAM-ICUの4つの所見と判定(RASSで評価できるかを先に見る)
CAM-ICU(Confusion Assessment Method for the Intensive Care Unit)は、評価したその時点でせん妄があるかを判定する方法です。日本集中治療医学会のJ-PADガイドラインは、CAM-ICUとICDSCを、ICU患者にとって最も妥当性と信頼性のあるせん妄モニタリングの方法としています。
CAM-ICUで見るのは次の4つの所見です(J-PADガイドラインの日本語版の表による)。
| 所見 | 何を見るか |
|---|---|
| 急性発症または変動性の経過 | ふだんの精神状態から急に変わったか、過去24時間で行動が変動したか |
| 注意力欠如 | 注意を集中させるのが難しいか(聴覚か視覚の注意力のテストで見る) |
| 無秩序な思考 | 簡単な質問への答えや、指示に従えるかで、思考のまとまりを見る |
| 意識レベルの変化 | 評価時の意識が清明以外か(RASSが0以外か) |
判定:「急性発症または変動性の経過」と「注意力欠如」の両方があり、さらに「無秩序な思考」か「意識レベルの変化」のどちらかがあれば、せん妄陽性とします。
CAM-ICUの前に、RASSで鎮静の深さを確かめます。ガイドラインは、RASS −4と−5の深い鎮静や昏睡の状態ではせん妄かどうか評価できないとしています。RASSの付け方はRASSの評価表と判定手順で紹介しています。
注意力のテストや質問の手順は、施設で採用している日本語版の手順書に従います。手順を省いたり言い方を変えたりすると、結果が比べられなくなります。
ICDSCの8項目と合計点(勤務帯を通した観察で付ける)
ICDSC(Intensive Care Delirium Screening Checklist)は、一定の時間を通した観察から付けるチェックリストです。J-PADガイドラインは、CAM-ICUがある一時点の状態を評価するのに対し、ICDSCは過去24時間以内の状態を評価する点が本質的に違うとしています。
| 項目 | 1点になる例(ガイドラインの日本語版の表から要約) |
|---|---|
| 1. 意識レベルの変化 | 傾眠や、反応に軽度〜中等度の刺激が要る。過覚醒も1点 |
| 2. 注意力欠如 | 会話の理解や指示に従うのが難しい、注意がそれやすい |
| 3. 失見当識 | 時間・場所・人物の明らかな誤認 |
| 4. 幻覚、妄想、精神障害 | 幻覚や、幻覚によると思われる行動がある |
| 5. 精神運動的な興奮あるいは遅滞 | ラインを抜くなどの過活動、または活動の低下 |
| 6. 不適切な会話あるいは情緒 | まとまらない会話、状況にそぐわない感情の表出 |
| 7. 睡眠・覚醒サイクルの障害 | 4時間以下の睡眠、頻回な夜間の覚醒、ほぼ一日中眠っている |
| 8. 症状の変動 | 上の症状が24時間のなかで変化する |
各項目0点か1点で、合計8点です。ガイドラインの表では、合計4点以上をせん妄と評価するとしています。また、1〜3点を亜症候性せん妄として分類する場合があることにも触れています。
1の意識レベルで、ほとんどの時間が昏睡や昏迷の場合は、点数を付けずに評価をそこで止めます。点数を0と書くのではなく、「評価できない」と分かるように記録します。
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DSTなど一般病棟で使うせん妄スクリーニングツール
CAM-ICUとICDSCは、もともとICUの患者向けに作られたものです。一般病棟では、DST(Delirium Screening Tool、せん妄スクリーニング・ツール)のように、看護師がふだんの観察から意識・認知・精神の状態の変化を見るツールを採用している施設もあります。
DSTの項目の並びや、陽性と判断する条件は、施設が採用している版と手順書で確かめてください。病棟独自にチェック項目を足している場合もあります。
一般病棟の記録で大切なのは、ツールの名前よりも、同じ患者さんに同じツールを、決めたタイミングで使い続けることです。ツールが途中で変わると、点数の上がり下がりを比べられません。
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病院・正社員の求人を見るせん妄の評価スケールの使い分けの境界線(CAM-ICU・ICDSC・DST・使わない場面)
どのスケールが優れているかではなく、どんな条件ならどれが合うかで考えます。J-PADガイドラインも、どのツールを選ぶかは各施設の臨床の現状と、ツールごとの限界をふまえて決めるべきとしています。
| こういう条件なら | 合うもの | 理由・注意 |
|---|---|---|
| ICUで、決めた時刻にその時点の状態を判定したい | CAM-ICU | 一時点で陽性・陰性を出す。RASSと一緒に付ける |
| ICUで、勤務帯を通した変化を点数で追いたい | ICDSC | 一定時間の観察から付ける。日中と夜間の違いを拾いやすい |
| 一般病棟で、看護師の観察で変化を拾いたい | DSTなど施設で採用しているツール | 項目と判定は施設の手順書に従う |
| RASS −4・−5など、深い鎮静や昏睡の状態 | どれも使わない(評価できない) | 「評価不能」と書き、鎮静の深さを記録する |
| 入院時に、せん妄の起きやすさを確かめたい | 評価スケールではなく、リスクのチェックリスト | 「ハイリスク」と「せん妄あり」を混ぜない |
| すでに医師がせん妄と診断し、治療している | 施設で決めたスケールを続ける | 診断の代わりではなく、経過を同じ物差しで追うために使う |
ガイドラインは、CAM-ICUについて看護師がルーチンで評価したときに感度が低いという報告や、RASS −2・−3の患者ではせん妄と誤って判断されやすいという報告にも触れています。陰性でも、ふだんと様子が違うと感じたことは、点数とは別に観察として書いておきましょう。
せん妄の評価スケールの看護記録の書き方と例文
記録に残す5つのこと
| 書くこと | 例 |
|---|---|
| 使ったスケールの名前 | CAM-ICU / ICDSC / DST |
| 評価した時刻(ICDSCは対象の時間帯) | 10:00 / 日勤帯(8:30〜17:00) |
| 結果 | CAM-ICU陽性、ICDSC 5点、評価不能(RASS −4) |
| 結果の根拠になった観察 | 本人の言葉、行動、睡眠の様子 |
| 誰に報告し、何をしたか | 医師へ報告した時刻、行ったケア |
点数だけでなく、どんな様子から付けたかを書くと、次の勤務の看護師が同じ基準で評価できます。
ICUの例(CAM-ICU)
10:00 RASS 0。CAM-ICU評価。昨日の夕方から時間の答えが合わないことがあると夜勤から申し送りあり。注意力のテストでは数字の聞き取りで手を握るタイミングがずれる。質問への答えのうち2つが合わない。CAM-ICU陽性。
10:10 担当医へ評価の結果と様子を報告。
ICUの例(ICDSC)
夜勤帯(17:00〜8:30)ICDSC 4点(注意力欠如、失見当識、精神運動的な興奮、睡眠・覚醒サイクルの障害)。
23:00ごろから「家に帰る」と話し、ベッドから降りようとする。点滴のラインを触る。呼びかけると会話はできるが、話題が変わりやすい。眠ったのは3:00〜5:00の2時間程度。
6:00 当直医へ報告。
一般病棟の例(評価できない場面を含む)
14:00 呼びかけに目を開けるがすぐに閉じる。強く呼びかけると短く返答。施設のせん妄スクリーニングは、覚醒が保てないため評価できず。意識の状態はJCSで記録。
14:05 担当医へ報告。
書き方で気をつけたいこと
- 「せん妄あり」と書く前に、それがスクリーニングの結果なのか、医師の診断なのかを分けて書く
- 「不穏」と一言で書かず、何をしていたかを書く(ラインを触る、ベッドから降りようとする、など)
- 点数が下がったときも、何の項目がなくなったかを書く
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病院・正社員の求人を見るよくある質問
CAM-ICUとICDSCを両方付ける必要はありますか?
決まりはありません。施設で採用しているスケールを使います。J-PADガイドラインも、どちらを選ぶかは施設の現状とツールの限界をふまえて決めるべきとしています。両方を付けている施設では、それぞれ何の時点・時間帯の評価かを分けて書きます。
スクリーニングで陽性になったら、看護師はせん妄と記録してよいですか?
「CAM-ICU陽性」「ICDSC 5点」のように、スケールの結果として書きます。せん妄の診断と、原因や治療の判断は医師が行います。結果と観察した様子を医師へ報告し、報告した時刻も記録します。
認知症のある患者さんにも使えますか?
使っている施設は多くありますが、ふだんの様子との比べ方が難しくなります。入院前のふだんの様子を家族などから聞いて記録しておくと、変化を判断する手がかりになります。認知機能の評価の記録は長谷川式認知症スケール(HDS-R)とは?で紹介しています。
まとめ
- せん妄の「リスクの確認」「スクリーニング」「診断」は別の段階。記録でも混ぜない
- CAM-ICUはその時点の判定、ICDSCは一定時間の観察から付ける点数で、見ている時間の幅が違う
- 深い鎮静や昏睡ではどのスケールも評価できない。点数を0と書かず「評価不能」と書く
- 記録には、スケールの名前、時刻、結果に加えて、結果の根拠になった様子と報告を書く
参考
- 日本集中治療医学会 J-PADガイドライン作成委員会「日本版・集中治療室における成人重症患者に対する痛み・不穏・せん妄管理のための臨床ガイドライン」日本集中治療医学会雑誌 2014;21:539-579 https://www.jsicm.org/pdf/2015-J-PAD-guideline.pdf
- 厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」(令和8年3月5日保医発0305第6号)別添1 A247-2 せん妄ハイリスク患者ケア加算 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
- Ely EW, et al. Delirium in mechanically ventilated patients: validity and reliability of the Confusion Assessment Method for the Intensive Care Unit (CAM-ICU). JAMA. 2001;286(21):2703-2710. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11730446/
- Bergeron N, et al. Intensive Care Delirium Screening Checklist: evaluation of a new screening tool. Intensive Care Medicine. 2001;27(5):859-864. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11430542/