ナースの勉強部屋

NYHA分類の判定基準表|Ⅰ〜Ⅳ度の見分け方、Ⅱ度とⅢ度で迷う境目と看護記録の例文

NYHA分類の判定基準表|Ⅰ〜Ⅳ度の見分け方、Ⅱ度とⅢ度で迷う境目と看護記録の例文

NYHA分類(NYHA心機能分類)は、心疾患のある人の自覚症状を、どのくらいの身体活動で症状が出るかによってⅠ度からⅣ度の4段階に分ける指標です。数字が大きいほど、軽い動作で息切れや動悸が出る状態を表します。

日本循環器学会と日本心不全学会の「2025年改訂版 心不全診療ガイドライン」は、NYHA分類を「心不全の重症度を身体活動に伴う自覚症状(症状閾値)によって簡便に分類する指標」と説明し、評価と記録を推奨しています。一方で、簡便な分、定量性や客観性が乏しいことも欠点として挙げています。

判定の材料になるのは、患者が普段の生活で何をすると苦しくなるかという情報です。食事やトイレ、更衣、入浴の場面に立ち会う看護師は、その情報をいちばん多く持っている立場にあります。この記事では、判定基準の表、症状の聞き取り方、迷いやすい境目、看護記録の書き方を整理します。

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目次
  1. NYHA分類の判定基準表(Ⅰ〜Ⅳ度)
    1. 症状が出る活動とMETsの目安
  2. NYHA分類は「症状が出る最低限の活動」で判定する
    1. 身体活動能力質問表(SAS)も手がかりになる
    2. 心臓以外の理由で動けないときは分けて書く
  3. NYHA分類で迷う境目(Ⅱ度とⅢ度、Ⅲ度とⅣ度)
    1. 急性期は「いつの状態か」を書く
    2. ステージ分類とは別の軸
  4. NYHA分類を評価・記録する場面
  5. NYHA分類の看護記録の書き方と例文
    1. 例文
  6. 循環器の看護師求人を探す
  7. よくある質問
    1. NYHA分類は看護師が判定してもよいですか?
    2. Ⅰ度は「心臓に問題がない」という意味ですか?
    3. 高齢であまり動かない人はどう判定しますか?
  8. まとめ
  9. 参考

NYHA分類の判定基準表(Ⅰ〜Ⅳ度)

厚生労働省の資料に載っている定義を、比べやすいように「身体活動の制限」「安静時」「症状が出る活動」に分けて並べると次のようになります。

分類 身体活動の制限 安静時の症状 疲労・動悸・呼吸困難・狭心症状が出る活動
Ⅰ度 制限なし なし 通常の身体活動では出ない
Ⅱ度 軽度の制限 なし 通常の身体活動で出る
Ⅲ度 高度の制限 なし 通常より軽い身体活動で出る
Ⅳ度 どんな身体活動にも制限 あり わずかな身体活動で強まる

Ⅰ〜Ⅲ度は、どれも安静時には症状がありません。違いは「どのくらいの活動で症状が出るか」だけです。安静にしていても症状があればⅣ度になります。

症状が出る活動とMETsの目安

ガイドラインでは、症状の増悪なく実施できる最低限の身体活動を、分類ごとに次のように示しています(図19「NYHA心機能分類と身体活動」)。

分類 症状なくできる活動の例 運動強度の目安
Ⅰ度 時速8kmのジョギング、階段を急ぎ足で昇る、11kg程度の荷物を持って階段を昇る 6METs以上
Ⅱ度 時速6kmの平地歩行、階段1階分を普通の速度で昇る 3.5〜5.9METs
Ⅲ度 時速4kmの平地歩行、階段1階分を昇る、休まずにシャワー、衣服の着脱 2〜3.4METs
Ⅳ度 どんな身体活動でも症状が出る、安静時にも症状が出る 2METs以下

METsは安静に座っている状態を1としたときの運動強度です。病棟では「階段」「歩く速さ」「シャワー」「着替え」が判定の手がかりになります。

NYHA分類は「症状が出る最低限の活動」で判定する

NYHA分類は、検査値ではなく本人の自覚症状で決まります。「心臓の働きがどれくらい悪いか」ではなく、「どの程度の動作で苦しくなるか」を聞き取って当てはめる、と考えると迷いが減ります。

聞き取りは、重い活動から順に下りていくより、具体的な場面を挙げて確かめる方が答えがぶれません。次の順で聞くと、表のどこに当たるかを絞り込めます。

  1. 横になって休んでいるときも、息苦しさや動悸があるか(あればⅣ度の候補)
  2. 着替えやシャワー、トイレまでの歩行で息が切れるか(あればⅢ度の候補。図19では着替えや休まずのシャワーを症状なく行えるのがⅢ度なので、安静時の症状の有無とあわせて見る)
  3. 階段1階分を普通の速さで昇る、人と同じ速さで歩くと息が切れるか(あればⅡ度〜Ⅲ度の候補。図19ではこれらを症状なく行えるのがⅡ度)
  4. 急ぎ足で階段を昇る、早歩きをしても平気か(平気ならⅠ度の候補)

身体活動能力質問表(SAS)も手がかりになる

厚生労働省が心臓機能障害の身体障害認定に関する事務連絡で示した「身体活動能力質問表(Specific Activity Scale)」には、「夜、楽に眠れますか?」「着替えが一人でできますか?」「健康な人と同じ速度で2階まで昇っても平気ですか?」のように、生活動作ごとのMETsが付いた質問が並んでいます。ガイドラインも、Ⅱ度の患者の評価ではSASが補完的に有用としています。どこで苦しくなるかを聞くときの質問例として使えます。

心臓以外の理由で動けないときは分けて書く

膝の痛みや脳卒中の後遺症、認知機能の低下などで、そもそも階段や歩行をしていない人もいます。この場合、「階段で息が切れない」のは症状がないからではなく、その活動をしていないからです。症状で判定できない部分は、「歩行は膝痛のため病棟内のみ。病棟内の歩行では息切れなし」のように、していない理由と一緒に記録しておくと、読み手が判定の根拠を確かめられます。

NYHA分類で迷う境目(Ⅱ度とⅢ度、Ⅲ度とⅣ度)

ガイドラインは、代償期の心不全患者のほとんどがⅡ度とⅢ度に分類され、その間では客観的な指標との相関が限られると指摘しています。いちばん迷いやすいのがこの境目です。

迷う場面 付け方の考え方
階段1階分は昇れるが、昇り切ると息が上がって立ち止まる 普通の速さで昇れて症状が出るならⅡ度寄り。昇る途中で休まないと昇れないならⅢ度寄り
平地は歩けるが、人より遅く歩かないと息が切れる 普通の速さで症状が出ているのでⅡ度以上。ゆっくりでも病棟内の歩行で息が切れるならⅢ度
シャワーの途中で休憩が要る、更衣の後に肩で息をしている 通常より軽い活動で症状が出ているのでⅢ度の候補
安静時は落ち着いているが、会話や食事で息が切れる 安静時に症状がなければⅢ度。食事や会話のようなわずかな活動で強まり、安静でも症状が残るならⅣ度の候補
夜間に息苦しくて目が覚める、横になると苦しく座っている 安静時の症状を示す情報。記録に必ず残す

急性期は「いつの状態か」を書く

ガイドラインは、急性期のように短い期間で状態が変わる場面では、NYHA分類による重症度の評価の意義は乏しいとしています。入院直後と退院前では同じ人でも分類が変わります。記録には分類だけでなく、評価した時点(入院時・退院前など)と、その時点で何をすると症状が出たかを書いておきましょう。

ステージ分類とは別の軸

心不全には、病期の進み具合をA〜Dで表す「ステージ分類」もあります。ステージは病気の経過の中のどこにいるかを、NYHA分類はいまの自覚症状の強さを表すもので、測っているものが違います。記録で「ステージC、NYHAⅡ度」のように並ぶことがあっても、取り違えないようにしましょう。

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NYHA分類を評価・記録する場面

看護師がNYHA分類に関わる主な場面は次のとおりです。

場面 関わり方
入院時・退院前 症状が出る活動を聞き取り、カルテの分類と照らし合わせる。退院前は自宅の生活動作に当てはめて確かめる
DPCの調査への入力 厚生労働省の平成21年度「DPC導入の影響評価に係る調査」の調査実施説明資料では、心不全のNYHA分類を入院時または心不全が発症した時点で入力し、1入院中に複数回生じた場合は最も重症な分類を入力するとしている(現行の要領は最新の通知で確認)
身体障害認定の書類 心臓機能障害の認定で医師が意見書を書く際、身体活動能力質問表が参考の一つとされている
外来・訪問 前回の受診・訪問からの症状の変化を、同じ質問で聞いて比べる

分類を最終的にカルテに記載するのは医師であることが多いものの、その根拠になる「どこで苦しくなったか」は看護記録に残っていることがほとんどです。

NYHA分類の看護記録の書き方と例文

記録には、分類の数字だけでなく、症状が出た活動と出なかった活動を書きます。「NYHAⅡ」だけでは、次の人が同じ基準で比べられません。

書く要素は次の4つです。

  • 評価した時点(入院時・退院前・外来受診時など)
  • 症状が出た活動と、そのときの症状(息切れ・動悸・疲労など)
  • 症状が出なかった活動、していない活動とその理由
  • 安静時や夜間の症状の有無

例文

入院時の例

安静臥床では息苦しさの訴えなし。トイレまでの歩行(約15m)で息切れあり、ベッドに戻ると数分で落ち着く。更衣の後にも肩呼吸あり。夜間は枕1つの仰臥位で休めており、息苦しさの訴えなし。通常より軽い活動で症状が出ており、医師記録のNYHAⅢ度と一致。

退院前の例

病棟内を一人で歩行し、息切れなし。階段1階分を普通の速度で昇ると、昇り切ったところで息切れあり、立ち止まって1分ほどで回復。シャワーは休憩なしで終えられた。安静時・夜間の症状なし。通常の身体活動で症状が出るため、Ⅱ度相当。

訪問看護の例

前回訪問時は自宅2階の寝室へ休まず昇れていたが、今回は途中で1回休むと本人より。平地は家の中の移動のみで息切れなし。夜間に息苦しさで目が覚めることはない。前回からの変化として主治医へ報告。

報告するかどうかの基準は、施設のマニュアルや主治医の指示に従います。変化を伝えるときも、「Ⅱ度からⅢ度になった」という分類より、「階段の途中で休むようになった」という活動の変化を先に伝える方が、相手に状況が伝わります。

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よくある質問

NYHA分類は看護師が判定してもよいですか?

分類をカルテに記載するのは医師であることが多いですが、判定の材料になる症状の聞き取りと記録は看護師の大事な役割です。看護記録に分類を書くかどうかは、施設の取り決めに従ってください。

Ⅰ度は「心臓に問題がない」という意味ですか?

違います。Ⅰ度は、心疾患はあるものの、通常の身体活動では症状が出ない状態です。分類はあくまで自覚症状で決まるため、検査の結果とは別に考えます。

高齢であまり動かない人はどう判定しますか?

普段している範囲の活動で、症状が出るかどうかを確かめます。階段や長い距離の歩行をしていない場合は、していない理由を記録に書き、トイレ歩行や更衣、入浴など実際にしている活動での症状を根拠にします。

まとめ

  • NYHA分類は、心疾患のある人の自覚症状を、症状が出る活動の重さでⅠ〜Ⅳ度に分ける
  • Ⅰ〜Ⅲ度は安静時に症状がなく、どの程度の活動で症状が出るかで分かれる。安静時にも症状があればⅣ度
  • 迷いやすいのはⅡ度とⅢ度の境目。「普通の速さでの階段・歩行」で出るか、「シャワー・更衣・ゆっくりの歩行」でも出るかで見分ける
  • 記録には分類の数字に加えて、症状が出た活動・出なかった活動・評価した時点を書く

参考