育休後に退職した看護師は失業手当をもらえる?受給要件の特例と受給期間延長、給付制限までの判定表
育休のあとに退職しても、失業手当(雇用保険の基本手当)は受け取れます。育休で給料が出なかった期間は、受給要件を判定するときに「さかのぼれる期間」を延ばす特例があるからです。
ただし、退職した時点ですぐ働ける状態かで手続きが分かれます。子どもの預け先が決まっておらずすぐに働けない人は、失業手当はすぐには出ません。代わりに「受給期間の延長」を申請して、働ける状態になってから受け取ります。
この記事では、育休明けに復帰せず辞める看護師、復帰してすぐ辞める看護師が、自分は失業手当をもらえるのか、いつ何をすればいいのかを判定できるように整理します。
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育休後に退職した看護師が失業手当をもらえるかの判定表
先に結論を表にまとめます。細かい条件は次の節から順に説明します。
| 退職時の状況 | 判定 | やること |
|---|---|---|
| 育休前に通算12か月以上働いていて、退職後すぐ働ける(保育園が決まっている等) | もらえる | 離職票を受け取ったらハローワークで求職の申込み |
| 育休前に通算12か月以上働いていたが、預け先が無く当面は働けない | 延長してからもらう | 受給期間の延長を申請し、働ける状態になってから求職の申込み |
| 育休から復帰して数か月働き、すぐ働ける状態で退職した | もらえる | 復帰後の勤務も被保険者期間に数えて判定 |
| 入職して1年未満で産休・育休に入り、通算の被保険者期間が足りない | もらえない可能性が高い | 育児を理由に離職し受給期間延長を受けると要件が6か月に緩和されるので、ハローワークで確認 |
| 退職後、しばらく働くつもりがない(専業で育児をする) | もらえない | 失業手当は「働く意思と能力がある人」が対象。3歳未満の育児中なら延長の申請だけはしておける |
「もらえない」の行に当てはまっても、延長の申請をしておけば、働けるようになったときに受給できる可能性が残ります。判断がつかないときは、離職票を持ってハローワークで確認するのが確実です。
失業手当の受給要件と、育休中の期間の数え方
原則は「退職前2年間に被保険者期間12か月以上」
失業手当を受け取るには、離職の日以前2年間に、被保険者期間が通算12か月以上必要です。倒産・解雇などの特定受給資格者と、正当な理由のある自己都合退職などの特定理由離職者は、離職の日以前1年間に6か月以上で足ります。
被保険者期間の1か月は、賃金の支払いの基礎になった日数が11日以上ある月、または労働時間が80時間以上ある月を指します。
育休中の月は「1か月」に数えない
育休中は病院から給料が出ないので、賃金の支払いの基礎になった日数は0日です。そのため、育休中の月は被保険者期間に数えられません。
たとえば産休・育休で1年半休んで、そのまま退職したとします。退職日から2年さかのぼっても、給料が出ていた月は半年ほどしかありません。このままでは12か月に届きません。
算定対象期間の延長の特例で、最大4年までさかのぼれる
ここで使われるのが「算定対象期間の延長」の特例です。離職前の2年間に、病気・けが・出産・育児などで引き続き30日以上賃金を受けられなかった期間がある場合は、その日数分だけさかのぼる期間を延ばせます。延ばせるのは最大で4年までです(雇用保険法第13条第1項)。
産休・育休で休んだ期間はこの特例の対象になります。育休前に1年以上同じ病院で働いていた看護師なら、育休が長くても多くの場合は要件を満たせます。この特例は自分で申請するものではなく、ハローワークが離職票をもとに判定します。
育休明けにすぐ働けない看護師は、受給期間の延長を申請する
失業手当は「すぐ働ける人」にしか出ない
失業手当の対象は、就職する意思と能力があり、いつでも就職できるのに仕事が見つからない人です。子どもの預け先が無く、いまは働けない状態だと、求職の申込みをしても失業手当は出ません。
さらに、失業手当を受け取れる期間(受給期間)は、原則として離職の日の翌日から1年間です。保育園に入れず1年以上働けないでいると、受け取らないまま期限が過ぎてしまいます。
延長すると、離職の翌日から最長4年まで受け取れる
妊娠・出産・育児(3歳未満の子)で30日以上続けて働けないときは、受給期間の延長を申請できます。本来の1年に、働けなかった日数を最長3年まで加えられるので、離職の日の翌日から最長4年以内に受け取ればよくなります。
延長の手続きは次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申請できる時期 | 働けない状態が30日以上続いた日の翌日以降、早めに。延長後の受給期間の最後の日までなら申請できる |
| 申請先 | 住所地を管轄するハローワーク |
| 申請方法 | 本人の来所のほか、郵送・代理人(委任状が必要)も可 |
| 主な書類 | 受給期間延長等申請書、離職票-2、本人確認書類、育児中であることが分かる書類 |
「保育園の結果が出るまで様子を見たい」という人も、延長の申請だけは先に済ませておくと安心です。預け先が決まったら、ハローワークで求職の申込みをして受給に進みます。
育児で退職して延長を受けると、特定理由離職者として扱われる
妊娠・出産・育児などで離職し、受給期間の延長を受けた人は、ハローワークの基準で特定理由離職者に当たります。特定理由離職者は、受給要件が「離職の日以前1年間に6か月以上」に緩和されます。
入職から日が浅いうちに産休に入った看護師は、ここで要件を満たせることがあります。離職理由の判定はハローワークが行うので、育児が理由で辞めたことを窓口で伝えましょう。
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自己都合で退職したときの給付制限は、2025年4月から原則1か月
待期7日のあと、原則1か月は支給されない
失業手当は、求職の申込みをした日から通算7日間の「待期」のあいだは支給されません。さらに、正当な理由のない自己都合退職の場合は、待期のあとに給付制限がかかります。
| 退職の理由 | 給付制限 |
|---|---|
| 自己都合(2025年4月1日以降の離職) | 原則1か月 |
| 自己都合で、離職日からさかのぼる5年間に2回以上、自己都合退職で受給資格の決定を受けている | 3か月 |
| 自分の重大な責任による解雇 | 3か月 |
| 倒産・解雇など会社都合(特定受給資格者) | かからない |
| 正当な理由があるとハローワークが判断した自己都合 | かからない |
以前は自己都合退職の給付制限が2か月でしたが、雇用保険法の改正で2025年4月1日以降の離職から原則1か月に短くなりました。また、離職前1年以内や、2025年4月以降の離職後に、厚生労働大臣が指定する教育訓練を受けた場合は、給付制限が解除されます。
育休後の退職でどちらになるか
給付制限は、雇用保険法第33条で「正当な理由がなく自己の都合によって退職した場合」にかかると定められています。正当な理由があるかどうかは、ハローワーク(公共職業安定所長)が国の基準に沿って判断します。
「復帰する予定だったけれど、保育園に入れず辞めることにした」のように育児が理由の退職は、正当な理由があると判断されれば給付制限はかかりません。ただし、育児を理由にした退職がすべて正当な理由と認められるとは限らないので、離職票を持ってハローワークで確認してください。一方で、復帰して働いたあとに「別の病院に移りたい」といった理由で辞めると、通常の自己都合退職として1か月の給付制限がかかります。
育児休業給付金と失業手当は同時にもらえない
育休中は育児休業給付金、退職後は失業手当
育児休業給付金は、在職したまま育休を取っている人に出る給付です。失業手当は、退職して仕事を探している人に出る給付です。どちらも雇用保険から出ますが、対象になる期間が重ならないので、同じ期間に両方は受け取れません。
退職日までの育児休業給付金は受け取れる
育休中に退職することになった場合、2025年4月1日以降に退職した人は、退職日までの分が育児休業給付金の支給対象になります。すでに受け取った育児休業給付金を返す必要もありません。
ただし、育児休業給付は職場に戻ることを前提にした給付です。育休に入る時点ですでに退職を決めていた場合は、支給の対象になりません。育休中の状況が変わって退職を決めたのであれば、対象になります。
失業手当の給付日数には、育休の期間を数えない
失業手当を何日分受け取れるか(所定給付日数)は、雇用保険に入っていた年数で決まります。この年数を数えるときは、育児休業給付金を受け取った期間を除きます。長く休んでいた人は、そのぶん勤続年数が短く数えられることを見込んでおきましょう。
失業手当の金額は、原則として育休に入る前の給料で計算される
失業手当の1日あたりの額(基本手当日額)は、離職前の6か月に毎月決まって支払われた賃金の合計を180で割った「賃金日額」の、およそ50〜80%です(60〜64歳は45〜80%)。賃金が低い人ほど率が高くなります。
この「離職前の6か月」は、雇用保険法第17条で「算定対象期間において被保険者期間として計算された最後の6か月間」と定められています。育休中の月は被保険者期間に数えないので、育休明けに復帰せず辞めた人は、産休・育休に入る前の6か月の給料が基準になります。夜勤手当を含めて働いていた頃の給料で計算されるため、育休前に夜勤をしていた看護師は、その分も反映されます。
一方、復帰して時短勤務で6か月以上働いてから辞めた場合は、時短勤務中の下がった給料が基準になります。金額を重視するなら、退職のタイミングと勤務形態の関係を事前に確認しておくと判断しやすくなります。
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育休後に退職する看護師の、退職日と手続きの順番
退職を決めてから受給するまでの流れは次のとおりです。
- 退職日を決める。育休中に退職する場合は、育児休業給付金が退職日まで出ることを踏まえて日付を決める
- 離職票を受け取る。退職後、病院から離職票-1・2が届く。離職理由の欄が実態と合っているかを確認する
- すぐ働けるかで分かれる。預け先が決まっていればハローワークで求職の申込み。決まっていなければ受給期間の延長を申請する
- 待期・給付制限のあとに受給。求職の申込みから7日の待期、自己都合なら原則1か月の給付制限を経て支給が始まる
失業手当は非課税なので確定申告に書く必要はありませんが、年の途中で退職した年は所得税の還付を受けられることがあります。詳しくは失業手当に確定申告は必要?で解説しています。
育休後の働き方に合う看護師の求人を探す
育休後に病院を辞める看護師の多くは、夜勤やシフトの負担を理由にしています。日勤のみのクリニックや、時短・パートで働ける職場を探しておくと、失業手当を受けながら次の職場を比べられます。
受給中に早めに再就職が決まれば、条件を満たすと再就職手当を受け取れる場合もあります。勤務形態や勤務時間で絞り込んで、求人を見てみてください。
よくある質問
育休中に退職した場合、会社都合になりますか?
育児を理由に自分から退職した場合は、原則として自己都合退職です。ただし、育児で離職して受給期間の延長を受けた人は特定理由離職者に当たり、受給要件が緩和されます。給付制限がかかるかどうかは、退職に正当な理由があるかをハローワークが判断して決まります。職場で育休に関する嫌がらせなどを受け、事業主が必要な措置をとらなかったために辞めた場合は、特定受給資格者(会社都合と同じ扱い)に当たることがあります。
保育園に入れなかった場合、失業手当を受けられますか?
預け先が無く、すぐに働けない状態では失業手当は受けられません。子どもが3歳になるまでの育児で30日以上働けない場合は、受給期間の延長を申請しておけば、離職の翌日から最長4年以内であれば、預け先が決まってから受給できます。
育休から復帰してすぐ辞めた場合も、特例は使えますか?
使えます。算定対象期間の延長の特例は、離職前の2年間に育休などで30日以上賃金が無かった期間があれば対象です。復帰後に働いた月も被保険者期間に数えるので、育休前の期間と合わせて12か月以上あるかを確認します。
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まとめ
- 育休中の月は被保険者期間に数えないが、算定対象期間の延長の特例で最大4年までさかのぼって判定される
- 退職後すぐ働けない場合は、受給期間の延長を申請すれば離職の翌日から最長4年以内に受け取れる
- 自己都合退職の給付制限は2025年4月1日以降の離職から原則1か月。育児が理由の退職は、ハローワークが正当な理由ありと判断すればかからない
- 育児休業給付金と失業手当は同じ期間に受け取れない。育休中に退職を決めた場合は退職日まで育児休業給付金が出る
- 育休明けに復帰せず辞めた人の失業手当は、原則として育休前の給料で計算される
参考
- 雇用保険法(e-Gov法令検索)第13条・第17条・第33条 https://laws.e-gov.go.jp/law/349AC0000000116
- ハローワークインターネットサービス「基本手当について」 https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_basicbenefit.html
- ハローワークインターネットサービス「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」 https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_range.html
- 東京労働局 ハローワーク「求職者給付に関するQ&A」 https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-hellowork/kakushu_jouhou/koyouhoken/koyouhoken/QA/kyuusyokusyakyuufu_QA.html
- 兵庫労働局「受給期間の延長申請について」 https://jsite.mhlw.go.jp/hyogo-roudoukyoku/roudoukyoku/_105009/_111627_00165.html
- 厚生労働省「令和7年4月以降に教育訓練等を受ける場合、給付制限が解除され、基本手当を受給できます」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000160564_00045.html
- 厚生労働省「令和6年雇用保険制度改正(令和7年4月1日施行分)について」 https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/001293213.pdf
- 厚生労働省「Q&A~育児休業等給付~」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000158500.html