再就職手当をもらってすぐ退職したら返金は必要?辞めた時期と理由で決まる判定表と、看護師が辞める前に確かめること
再就職手当をもらった後に新しい職場をすぐ辞めても、手当を返す必要は原則ありません。雇用保険法で返還を命じられるのは、「偽りその他不正の行為」で受け取った場合だけです(雇用保険法第10条の4)。
ただし、辞めたことで変わることが3つあります。辞めた後にもらえる失業手当(基本手当)は、再就職手当の分を差し引いた残りだけになります。6か月以上勤めないと就業促進定着手当は受け取れません。さらに、次の転職で再就職手当をもう一度受け取れるのは、今回の就職から3年が過ぎてからです。
この記事では、いつ・どんな理由で辞めたかごとに、返還の要否とその後にもらえるものを判定表にまとめます。
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再就職手当をすぐ退職しても返金不要な理由:返還は不正受給のときだけ
再就職手当は、失業手当の受給資格の決定を受けた後、所定給付日数の3分の1以上を残して早く就職した人に支給されます。支給額は、残っていた日数(支給残日数)に基本手当日額と給付率を掛けた額です。
| 就職した時点の支給残日数 | 給付率 |
|---|---|
| 所定給付日数の3分の2以上 | 70% |
| 所定給付日数の3分の1以上 | 60% |
支給の要件の1つに、「1年を超えて引き続き雇用されることが確実であると認められる職業」に就いたことがあります(雇用保険法施行規則第82条の2)。この要件は、就職した時点の雇用契約の形で判断されます。期間の定めのない雇用なら、実際に1年以上勤めたかどうかで後から判定し直す仕組みにはなっていません。
1年以下の有期契約でも、更新されることが確実と認められれば要件を満たします。逆に、更新に目標の達成などの条件が付いている契約や、1年以下の派遣就業は対象外です(厚生労働省「業務取扱要領」57052)。
雇用保険法の中で、受け取った給付の返還を命じる規定は第10条の4だけです。不正受給と判断されると、受け取った額の返還に加えて、その2倍以下の額の納付を命じられることがあります。なお、不正がなくても、支給の要件を満たしていなかったことが後から分かった場合は、誤って支払われた分として返還を求められることがあります。
不正受給に当たる例
- 求職の申込みをする前から内定をもらっていた職場なのに、内定日を偽って申請した
- 離職前の職場や、資本・人事・取引で密接な関係にある職場に再就職したのに、それを隠した
- 半年契約で更新の予定がないのに、1年を超える雇用だと偽った
- 再就職手当の申請書や、その後の失業の認定で、事実と違う内容を書いた
すぐ辞めたこと自体は不正ではありません。「入職してみたら合わなかった」「体調が悪くなった」といった理由で辞めても、申請の時点で事実どおりに書いていれば返還の対象にはなりません。
再就職手当をもらってすぐ退職したときの判定表:返金・失業手当・定着手当
辞めた時期と理由で、その後にもらえるものが変わります。
| 辞めた時期・理由 | 再就職手当の返金 | 辞めた後の失業手当 | 就業促進定着手当 |
|---|---|---|---|
| 再就職手当の支給決定の前に辞めた | 不要(申請を希望すれば先に支給される) | 再就職手当の分を差し引いた残日数の範囲で受け取れる | 対象外 |
| 受給後、前の離職日から1年以内に自己都合で辞めた | 不要 | 残日数を、前の離職日の翌日から1年の受給期間内に限って受け取れる | 対象外(6か月未満の場合) |
| 受給後、1年以内に倒産・解雇などで辞めた | 不要 | 残日数を受け取れる。受給期間も延びる(雇用保険法第57条) | 対象外(6か月未満の場合) |
| 前の離職日から1年を過ぎ、新しい職場で12か月未満で辞めた | 不要 | 前の受給期間が終わっているので受け取れない。新しい受給資格もない(倒産・解雇などは6か月以上で受給資格あり) | 対象外(6か月未満の場合) |
| 新しい職場で12か月以上働いて辞めた | 不要 | 新しい受給資格で受け取る。前の受給資格の残日数は消える | 6か月の時点で要件を満たしていれば、辞めた後でも申請できる |
| 申請内容に偽りがあった | 返還を命じられる(2倍以下の納付命令もある) | ― | ― |
辞めた後の失業手当は「残日数から再就職手当の分を引いた日数」
再就職手当を受け取ると、その額を基本手当日額で割った日数分の失業手当を、すでに受け取ったものとみなされます(雇用保険法第56条の3第4項)。
厚生労働省の業務取扱要領には、次の例が載っています。
| 項目 | 日数 |
|---|---|
| 所定給付日数 | 300日 |
| 就職した時点の支給残日数 | 200日 |
| 再就職手当として受け取った分(200日×70%) | 140日分 |
| 再び辞めた後に受け取れる失業手当 | 60日分(受給期間の1年以内に限る) |
所定給付日数が90日の看護師が、給付制限の期間中に就職した場合も同じ考え方です。支給残日数90日の70%にあたる63日分を再就職手当で受け取ったとみなされ、辞めた後に残るのは27日分です。
注意したいのは受給期間です。失業手当を受け取れるのは、前の職場を辞めた日の翌日から原則1年の間だけです(雇用保険法第20条第1項)。新しい職場で半年働いてから辞めると、残日数があっても、1年の期限までに受け取りきれない日数は消えます。
倒産・解雇などで辞めたときは受給期間が延びる
新しい職場の倒産、事業の縮小・廃止、解雇などで辞めた場合は、受給期間が延長されます(雇用保険法第57条)。延長後の受給期間は、前の離職日の翌日から再離職の日までの期間に、14日と、受け取れる残日数を足した期間です(施行規則第85条の2)。
自己都合で辞めた場合は、この延長はありません。
12か月以上働いた後は「新しい受給資格」に切り替わる
新しい職場で雇用保険に入って12か月以上働くと(倒産・解雇や、更新を希望したのに雇止めになった場合などは6か月以上)、辞めたときに新しい受給資格を得られます(雇用保険法第13条)。
新しい受給資格を得ると、前の受給資格の残日数は使えなくなります(同法第20条第3項)。また、新しい受給資格の被保険者期間には、前の受給資格を得る前に働いた期間は数えません(同法第14条第2項第1号)。前の病院と今の病院の勤続を足して12か月にすることはできない、ということです。
就業促進定着手当は「6か月以上勤めた人」だけ
就業促進定着手当は、再就職手当を受け取った人が、同じ職場に雇用保険の被保険者として6か月以上勤め、その6か月の賃金が前の職場より下がったときに支給されます(施行規則第83条の2)。
6か月に届かずに辞めると対象外です。一方、6か月以上勤めた後なら、申請する時点で辞めていても受け取れます(業務取扱要領57262)。申請の期限は、就職した日から6か月目にあたる日の翌日から2か月以内です(施行規則第83条の4)。
2025年4月1日以降に就職した人の上限は、基本手当日額×支給残日数×20%です。それより前に就職した人は、上限の割合が異なります。就業促進定着手当を受け取った場合も、その額を基本手当日額で割った日数分の失業手当を受け取ったものとみなされ、辞めた後に残る日数はその分減ります(雇用保険法第56条の3第4項)。
次の転職で再就職手当を受け取れるのは3年後から
再就職手当は、就職した日の前3年以内の就職について再就職手当を受けたことがあると支給されません(雇用保険法第56条の3第2項、施行規則第82条の4)。
すぐ辞めて次の職場を探す場合、残日数の失業手当は受け取れても、次の就職で再就職手当はもらえない前提で考えておきます。
再就職手当をもらった看護師が退職する前のチェックリスト
辞めると決めてからでは間に合わないものがあります。退職届を出す前に、次の点を確かめておきましょう。
- [ ] 前の職場を辞めた日(雇用保険受給資格者証に書かれた離職年月日)と、その翌日から1年の受給期間がいつ終わるか
- [ ] 再就職手当の支給決定通知書に書かれた支給額と、残っている失業手当の日数(ハローワークで確認できる)
- [ ] 新しい職場での雇用保険の加入期間が、12か月(倒産・解雇などなら6か月)に届くか
- [ ] 入職から6か月を過ぎるか。過ぎるなら、給与が前の病院より下がっていれば就業促進定着手当を申請できる
- [ ] 辞める理由が、体調不良・家族の介護・通勤困難・労働条件が求人票と違ったなど、自己都合でも「正当な理由」に当たるものか。給付制限の有無に関わるので、離職票の離職理由と合っているかを見る
- [ ] 再離職の理由で給付制限がかかるかどうかを、ハローワークで確かめる
- [ ] 再就職手当の申請書に書いた内定日・雇用期間・紹介元が事実どおりだったか
- [ ] 次の職場が決まっている場合、その就職では再就職手当を受け取れない(3年以内)前提で収入を見込む
辞めた後は、新しい職場から離職票を受け取り、前の受給資格者証と一緒にハローワークで再び求職の申込みをします。
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再就職手当の受給後、次は長く働ける看護師の求人を探す
入職してすぐ辞めることになった理由が、夜勤の回数や配属先、残業の多さなど、求人票では見えなかった条件にあるなら、次は応募前にそこを確かめておきたいところです。
受給期間の残りが短いときは、失業手当の残日数を受け取りながら、勤務条件を比べて次の職場を選ぶ形もあります。
よくある質問
再就職手当の申請中に辞めた場合、手当はもらえなくなりますか?
もらえることがあります。厚生労働省の業務取扱要領では、再就職手当の支給対象者が受給前に辞めて再び求職の申込みをした場合、本人が希望すれば先に再就職手当を支給し、そのうえで残日数の範囲で失業手当を支給する、としています(57151)。申請した時点の内容が事実どおりであることが前提です。
試用期間中に辞めた場合も、返金は必要ありませんか?
必要ありません。返還を命じられるのは不正受給の場合だけで、試用期間中に辞めたかどうかは関係しません。ただし、申請のときに「1年を超えて雇用されることが確実」ではない契約だと分かっていたのに偽っていた場合は、不正受給に当たります。
再就職手当の受給後にパートで働き始めた場合、失業手当の残日数はどうなりますか?
雇用保険に入る働き方(週20時間以上で31日以上の雇用見込み。雇用保険法第6条)をすると、就職したことになり、その間は失業手当を受け取れません。雇用保険に入らない短時間の仕事でも、働いた日は失業の認定の際に申告が必要です。申告しないまま失業手当を受け取ると不正受給になります。
まとめ
- 再就職手当は、すぐ辞めても原則返す必要はない。返還を命じられるのは偽りや不正で受け取った場合だけ
- 辞めた後の失業手当は、残日数から再就職手当の分を引いた日数を、前の離職日の翌日から1年以内に限って受け取れる
- 倒産・解雇などで辞めたときは受給期間が延びる。自己都合では延びない
- 就業促進定着手当は6か月以上勤めた人だけ。6か月を過ぎていれば、辞めた後でも申請できる
- 次の就職で再就職手当を受け取れるのは3年後から
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参考
- e-Gov法令検索「雇用保険法」(第6条・第10条の4・第13条・第14条・第20条・第33条・第56条の3・第57条)https://laws.e-gov.go.jp/law/349AC0000000116
- e-Gov法令検索「雇用保険法施行規則」(第82条〜第83条の5・第85条の2〜第85条の4)https://laws.e-gov.go.jp/law/350M50002000003
- 厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「再就職手当のご案内」https://www.hellowork.mhlw.go.jp/doc/saishuushokuteate.pdf
- 厚生労働省職業安定局雇用保険課「業務取扱要領 雇用保険給付関係(就職促進給付)」https://www.mhlw.go.jp/content/001239141.pdf